短編(sss)

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花のような美しさ、なんて誇張だと思ってた。
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透けるような綺麗な髪。
紫苑によく似合っている。

紫苑が隣にいて手持ち無沙汰になると気付いたら必ず指に絡めてしまう。頻繁に触れていた為初めは紫苑も気にしていたのだが、今では当たり前の様に生活している。見た目もそうだが触り心地が何より良いと思う。

「クセになるな、あんたの髪」

二人はソファーに座っていた。右手に本。左手に紫苑(の髪)。視線は本に向けながらネズミは呟いた。

「髪?確かにくせっ毛だけど…、コレ昔からなんだ」

紫苑は指先でクルクルと毛先を弄ぶ。

「は?違う。そういう意味じゃない」

怪訝そうに横目で見ると、紫苑はきょとんとした眼をネズミの方へ向けた。気の抜けた表情にフッと笑いがもれた。優しく髪を撫でてやる。

「『ずっと触れていたくなる』って言ってるんだ」
「…ぁ、そう言う事か」

照れているのか、紫苑は肩を竦めて顔を俯かせた。静かな空間で、ネズミが本のページをめくる音だけが耳に入る。

「きみはぼくの髪が好き?」
「あぁ」
「真っ白なのに?」
「まだ気にしてるのか?」
「前ほどではないかな、それこそきみが毎日触るから」
「触るから?」
「なんか、嬉しくて…」

ハニカみながらへらりと笑う少年に対し、不覚にも可愛いと思ってしまった。

内も外も真っ白。
なのに時々見せる掴み所のない一面はまるで刺のようで―…。

「あんたはよく分からない」

無意識にでた言葉に、ネズミはハッとした。
紫苑が顔をのぞき込む。

「ネズミ?」
「いや、なんでもない」
「?」
「なんでもないけど…。やっぱりあんたは白い方が似合うと思うぜ」

そうでないと俺が困る。
もちろん髪のことではない。

紫苑には紫苑らしく、何色にも染まらないでいて欲しい。

どうか、

どうか、

真っ白な花のままで。


「ありがとう」

ネズミの言葉を素直に受け取った紫苑は嬉しそうに感謝を述べた。


(花のような美しさ、なんて誇張だと思ってた。あんたに出会うまではね。)

END.

title by 確かに恋だった
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