短編(sss)

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良い子、悪い子、普通の子
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会いたい。

会いたい。

会いたい。


何度も心の内で繰り返される欲求。
きみは今日も屋上で授業をさぼっているのだろう。ぼくも気分が悪いと言ってこの教室から抜け出してしまおうか。そしてきみに会いに行こうか。……するとこうなる。


「おやおや、おぼっちゃんの反抗期かい?」

爽やかな夏の風が物陰に隠れたきみの髪を揺らす。ぼくは自分の両腰に手を沿えて仁王立ちする。そして少しだけ得意気にフフンと鼻で笑い、きみを見おろす。

「そうさ。ぼくだって決まり事に逆らいたくなる時があるんだ。こと、きみに関することであればこれからいつだって同じような行動がとれる」
「それで得することは何もないけどな」
「あるさ」
「ないな」
「きみとこうして言い合いができる」
「……意外とあんた、バカだったんだな」

──なんて、優等生には到底真似できない妄想を脳内で繰り広げてみる。

そうだ。バカだ。

本当にそんなことをして万が一先生に嘘がばれたらどうなる。相手を丸め込ませるような言い訳なんてとっさに出てくるものではない。

……いや、出てくるか。

ぼくには無理でも、彼にならできる。
たぶん。きっと。

静かな教室にガタッと椅子の傾く音が鳴る。
教壇に立つ男教師は振り返った。
白髪の少年は額を掌でおさえながらふらついていた。

「どうしたんだ?大丈夫か?」
「はい、先生。ぼくちょっと──…」


END.
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