森の民さんたちから・*.°

【そらこさん‐君と僕の軌跡(閉鎖)】
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手のひらの温もり
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西ブロックの冬は寒い。

だから僕はネズミに手編みの手袋を贈りたくて、こっそり内緒で編んでいた。

「よしっ、完成!」

毛糸や編み棒は力河さんに頼んで調達してもらったけど、初めて編んだにしては上手く出来たんじゃないかって思ってる。

色は深い紺色。

ネズミの髪色に合わせてみたんだけど、気づいてくれるかな?

「ただいま……って、紫苑何してんの?」
「あっ、おかえり。ネズミ。」

タイミング良くネズミが帰ってきた。

ネズミは不思議そうな顔をして僕に近づき、出来立ての手編みの手袋をひょいっと取り上げる。

「これあんたが編んだの?」
「うん。西ブロックは寒いから、もう1つ予備に手袋を持ってても良いかなって思って編んでたんだ。」
「そうか。………ありがとう、紫苑。」

ネズミはふわりと優しく笑って、僕の頭をくしゃりと撫でた。

初めてネズミの役に立てた気がして舞い上がっていたけど、ネズミが放った次の言葉で僕のテンションは急降下する事になる。

「でも、多分使わないと思う。」
「えぇっ!!!!」

そ、そんなぁ。ネズミってば酷い。

「頑張って編んだのに……。」
「まぁまぁ。そう落ち込むな、紫苑。なにも捨てるとまでは言っていない。大切に保管させてもらうさ。ただ俺には必要ないんだよ。」
「そう、だよね。君には立派な革の手袋があるし……。」
「……そうじゃなくて。」

ネズミは大きく溜め息をついた。

なんだよ。僕の方が溜め息つきたいぐらいなのに。

「あんたの素手がいいって言ってんの。」
「へっ?」
「あんたの手は人一倍温いからな。手袋なんていらないんだよ。」そう言えば最近外に出る時、ネズミは手袋をせず執拗に僕の手を求めて握っていた。

そうか。そう言う事だったんだ。

理由が分かってほっこりと心が温まった所で僕は笑い、そしてネズミも笑う。

「それでは陛下の機嫌も直った所で、本日のディナーを作るといたしますか。」
「じゃあ、僕も手伝うよ。」


END.
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