PSYCHOBREAK2
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ステファノは女性を美しい、と言う。
たおやかで、白く柔らかい。筋肉は少ないが男性とは違う弾力がある、らしい。
ななしにはそれが到底理解できない。
ななしは元々ゲイである。それゆえ女性の柔らかさなど知りもしないし、これから先理解したいとはあまり思わなかった。
ななしはそう思うが、ステファノは「君は何もわかっていないね。女性とはそれだけで作品になりうる美しさと儚さを持っているんだ」というのだからあまり釈然としない。
目の前で、また不気味な"アート"を作っているステファノ。ななしはそれをぼんやり後ろから眺めている。
作品はやはり女性をモチーフにしているし、よく考えたらオブスキュラも女性だ。
「やはり仕上がりが美しいのは女性だね。硬すぎない肉は扱いやすくて助かる…だが、難点があるならあの劈くような声だ。僕を苛立たせるには充分だ」
『(…女性、か)』
「さぁ、ななし」
『?』
「一区切りついた。お茶でも飲んでひと休みしようか」
『うん』
いつものインディゴのジャケットをぬいで、ベストとワイシャツ姿のステファノは近くにあった椅子に座り、とうにぬるくなった紅茶をティーカップで飲み込んだ。
すぐ真横には血濡れの肉塊。部屋中に充満するのは噎せ返る様は鉄の香り。
よく、こんな中で紅茶を飲めるな、と関心しつつ未だにぼんやりななしは作品を見つめていた。
『(どれもこれも、女。俺にはあのやわらかさもないんだろうけど…ステファノさんは優しいから俺と恋人になってくれたんだろうか…、俺が女だったらステファノさんはどうしてたんだろう)』
とても、モヤモヤする。
作品になりたいという訳では無い。女性になりたいのか?と問われれば、そういう訳でも無い。
何が言いたいのかは自分でも見つけられず、モヤモヤはさらに濃くなっていく。
多分、難しい顔をしていたのだろう。
ステファノがななしの顔を覗き込んできたのだ。
『わっ、』
「君らしくないね。眉間にシワがよってる」
『び、びっくりした…』
「眠いのかい?」
『違うよ。女性ってそんなにいいものかなぁって?』
「触ってみるかい?」
ステファノはティーカップ片手に肉塊を指さす。
誰がそんなもの触るかと、勢いよく首を横に振るななし。
それにあんなに血塗れの肉を触ったって女性の柔らかさなど分からないだろう。
「一度触れればわかると思うんだけどね」
『やだよ!?それなら知らなくていいし』
「実に眇眇たる答えだ。君は僕の感性を理解したいとは思わないのかい?」
『俺、見ても触っても多分女性がいいなんて思わない。俺男好きだし』
「君は頑なだね。じゃぁ、この作品はどうだい?白い肌に真っ赤な薔薇。死の美しい顔、まさに琥珀に閉じ込められた虫のようだ。しかし儚くもある、死とは一瞬だからね。その儚さがより強調されるのは女性だ」
『…気持ち悪い』
「君ねぇ…、僕の作品を気持ち悪いと言うのは君くらいだ。全く、理解し難い。君の感性はなかなか疑わしいよ」
『世間一般ではステファノさんをサイコパスとか言うんだよ。感性が疑わしいのはアンタだ』
「常人には理解できないさ。いや、むしろされなくていい。僕の感性を理解できるのは僕と同じく才能に溢れた者だけだ。ななしは美しいけど、才能はないね」
『うっさい』
女性、の話から何故かステファノの作品の話に脱線してしまった。
結局女性の良さはあまり理解出来なかった。したいと思う、と言う心変わりもない。
しかし、ステファノと話していて明確にわかったことがある。その美しいと思う気持ちが自分でない誰(女性や、死体含め)かに向けられているのはとてもつまらないという事だ。
名も知らない、ましてや肉塊にそう感じるのは馬鹿げているのだが気持ちは裏腹に誰かも分からない"女性"にイラついている。そう、嫉妬しているのだ。
自分がこんなにもステファノに貪欲であったのか。
モヤモヤの正体があまりに心の狭い嫉妬であると分かった途端、恥ずかしいやら居た堪れないやら。
幼稚な嫉妬にその場には居れないとななしは真っ赤な顔のままステファノのアトリエから出ていったのだ。
そんなななしの後ろ姿を「今日は一段と変だな」と呟きながらステファノは見ていた。もちろんその言葉はななしには聞こえず、噎せ帰るほどの部屋にただただ反響したのだった。
ななしはと言うと、与えられている部屋に入りベッドに飛び込んでいた。
『(俺死体に嫉妬するとか頭ヤバイかも)』
はぁ、と、長い長いため息が口から漏れた。
何もする気が起きない。
このまま眠ってしまいたいし、なんでもいいから気持ちいい事をしたい。
ステファノを連れてくればよかった、などと悶々と考えるななし。
しかし、ベッドの上でごろごろしていれば意識しなくても眠たくなるもので。
『(女になったらステファノさんの"美しい"が分かるのかなぁ……?)』
あれやこれやと考えているうちにまぶたは閉じ、深い深い眠りについていた。
****
スー、スー、寝息だけが小さく響く部屋。
そんな部屋の扉が二、三度ノックされた。
眠っているななしが反応するはずもなく、しばしの間の後ゆっくりと扉が開かれステファノがひょこっと現れたのだ。
先程ななしの様子を気にしていたステファノは呑気にぐーすか眠る彼を見、「杞憂だったみたいだ」と苦笑い。
なんとなく元気がなかったように思えたが、これほど豪快に眠っているのだからきっとななしが変であったのは些細な理由であったに違いないと決めつけステファノはゆったりベッドに座った。
ついでに眠りながらよだれをたらすななしの写真を一枚撮っておいた。
「人の気も知らないで呑気なものだね。まぁ、君らしいけど………ん?」
せっかく構い倒して(弄り倒して)やろうとしていたステファノだが、眠るななしを見て普段とはどこか雰囲気が違うことに気づいた。
どこと言われればすぐには答えられないが、いつもとは明らかに何かが違う。
ひと房髪を取り親指で感触を確かめた。
柔らかいし、毛質そのものは変わってはいないが心做しか、いつもより長い。
それに眠る彼の目元もいつもと違う。大きな目を覆うまつ毛が髪同様いつもより長いのだ。
ステファノはいつも死ぬほどななしをカメラに収めているためそれが気のせいでないことがよく分かる。
うつ伏せで眠るななしの肩をつかみ、仰向けに変えた。
「これは…」
いつもは真っ平らなそこは膨らみ、男にはない谷間ができていたのだ。
「ありえない、ななし、起きて。ななし」
『んっ、なにっ』
もぞもぞ動くななしの声はいつもより格段に高い。
何がどうなったのかはさっぱり。理由など"STEMであるから何が起きてもおかしくない"で片付いてしまう。実際、この間はななしが幼児になってしまった時も深くは追求せず"STEMのせい"にしてきた。
なんと都合の良い言葉だろうか。
今日もステファノは"STEMのせい"にしてはっきりくっきり女性になってしまったななしを見、にやりと口角を上げたのだ。
『ん、あれ、おはよ、ステファノさん』
「体はいつもと同じ?」
『え?…なに、起き抜けに…ん、ん?』
「どう?」
『胸…バインバインだ』
「うん」
『手が、小さい…股がヒューヒューする!?』
「うん(あぁ、無くなるとヒューヒュー?するのか)」
『な、なんで、俺、女!?ステファノさん何かした?』
「ひとぎきわるいなぁ。僕は何も手を下してないよ?」
『ま、まじで?』
「この前も君子供になっていたし、女性になることも不思議ではないだろ?」
『不思議だから!!なんでまたこんな目にあってんの、俺!?最悪だよ』
「最悪なのかい?」
『最悪だよ!俺は男のままがいいんだ。な、なんで女なんかっ』
「女なんか、ねぇ。あ、そうだななし。いいことを思いついた」
『え?なに』
長くなった髪が鬱陶しいらしく、せわしなく耳にかけるななしを他所にステファノはいやらしく笑いながらいいことを思いついたと言う。
悪い笑顔だな〜とジト目でステファノを睨むななし。
なんとなく嫌な予感がする。
ステファノは今からとんでもないことを言うんじゃないか、そう感じ距離を取るようにベッドの端に逃げる。
しかしステファノががしりと随分細くなった手をつかむため逃走はあっけなく終了した。
「君、女性のよさを理解できないと言ったね」
『ぇ、あ、そうだけど』
「これはいい機会だと僕は思う。今から君を使って説明して見せよう」
『は?』
「女性の可能性と芸術性について、僕が一から十まできっちり説明してあげる」
軽やからにウィンクをしたステファノは懐にあったナイフを取り出すと、大きくなった胸のせいてはち切れそうなワイシャツを切りつけたのだ。
たおやかで、白く柔らかい。筋肉は少ないが男性とは違う弾力がある、らしい。
ななしにはそれが到底理解できない。
ななしは元々ゲイである。それゆえ女性の柔らかさなど知りもしないし、これから先理解したいとはあまり思わなかった。
ななしはそう思うが、ステファノは「君は何もわかっていないね。女性とはそれだけで作品になりうる美しさと儚さを持っているんだ」というのだからあまり釈然としない。
目の前で、また不気味な"アート"を作っているステファノ。ななしはそれをぼんやり後ろから眺めている。
作品はやはり女性をモチーフにしているし、よく考えたらオブスキュラも女性だ。
「やはり仕上がりが美しいのは女性だね。硬すぎない肉は扱いやすくて助かる…だが、難点があるならあの劈くような声だ。僕を苛立たせるには充分だ」
『(…女性、か)』
「さぁ、ななし」
『?』
「一区切りついた。お茶でも飲んでひと休みしようか」
『うん』
いつものインディゴのジャケットをぬいで、ベストとワイシャツ姿のステファノは近くにあった椅子に座り、とうにぬるくなった紅茶をティーカップで飲み込んだ。
すぐ真横には血濡れの肉塊。部屋中に充満するのは噎せ返る様は鉄の香り。
よく、こんな中で紅茶を飲めるな、と関心しつつ未だにぼんやりななしは作品を見つめていた。
『(どれもこれも、女。俺にはあのやわらかさもないんだろうけど…ステファノさんは優しいから俺と恋人になってくれたんだろうか…、俺が女だったらステファノさんはどうしてたんだろう)』
とても、モヤモヤする。
作品になりたいという訳では無い。女性になりたいのか?と問われれば、そういう訳でも無い。
何が言いたいのかは自分でも見つけられず、モヤモヤはさらに濃くなっていく。
多分、難しい顔をしていたのだろう。
ステファノがななしの顔を覗き込んできたのだ。
『わっ、』
「君らしくないね。眉間にシワがよってる」
『び、びっくりした…』
「眠いのかい?」
『違うよ。女性ってそんなにいいものかなぁって?』
「触ってみるかい?」
ステファノはティーカップ片手に肉塊を指さす。
誰がそんなもの触るかと、勢いよく首を横に振るななし。
それにあんなに血塗れの肉を触ったって女性の柔らかさなど分からないだろう。
「一度触れればわかると思うんだけどね」
『やだよ!?それなら知らなくていいし』
「実に眇眇たる答えだ。君は僕の感性を理解したいとは思わないのかい?」
『俺、見ても触っても多分女性がいいなんて思わない。俺男好きだし』
「君は頑なだね。じゃぁ、この作品はどうだい?白い肌に真っ赤な薔薇。死の美しい顔、まさに琥珀に閉じ込められた虫のようだ。しかし儚くもある、死とは一瞬だからね。その儚さがより強調されるのは女性だ」
『…気持ち悪い』
「君ねぇ…、僕の作品を気持ち悪いと言うのは君くらいだ。全く、理解し難い。君の感性はなかなか疑わしいよ」
『世間一般ではステファノさんをサイコパスとか言うんだよ。感性が疑わしいのはアンタだ』
「常人には理解できないさ。いや、むしろされなくていい。僕の感性を理解できるのは僕と同じく才能に溢れた者だけだ。ななしは美しいけど、才能はないね」
『うっさい』
女性、の話から何故かステファノの作品の話に脱線してしまった。
結局女性の良さはあまり理解出来なかった。したいと思う、と言う心変わりもない。
しかし、ステファノと話していて明確にわかったことがある。その美しいと思う気持ちが自分でない誰(女性や、死体含め)かに向けられているのはとてもつまらないという事だ。
名も知らない、ましてや肉塊にそう感じるのは馬鹿げているのだが気持ちは裏腹に誰かも分からない"女性"にイラついている。そう、嫉妬しているのだ。
自分がこんなにもステファノに貪欲であったのか。
モヤモヤの正体があまりに心の狭い嫉妬であると分かった途端、恥ずかしいやら居た堪れないやら。
幼稚な嫉妬にその場には居れないとななしは真っ赤な顔のままステファノのアトリエから出ていったのだ。
そんなななしの後ろ姿を「今日は一段と変だな」と呟きながらステファノは見ていた。もちろんその言葉はななしには聞こえず、噎せ帰るほどの部屋にただただ反響したのだった。
ななしはと言うと、与えられている部屋に入りベッドに飛び込んでいた。
『(俺死体に嫉妬するとか頭ヤバイかも)』
はぁ、と、長い長いため息が口から漏れた。
何もする気が起きない。
このまま眠ってしまいたいし、なんでもいいから気持ちいい事をしたい。
ステファノを連れてくればよかった、などと悶々と考えるななし。
しかし、ベッドの上でごろごろしていれば意識しなくても眠たくなるもので。
『(女になったらステファノさんの"美しい"が分かるのかなぁ……?)』
あれやこれやと考えているうちにまぶたは閉じ、深い深い眠りについていた。
****
スー、スー、寝息だけが小さく響く部屋。
そんな部屋の扉が二、三度ノックされた。
眠っているななしが反応するはずもなく、しばしの間の後ゆっくりと扉が開かれステファノがひょこっと現れたのだ。
先程ななしの様子を気にしていたステファノは呑気にぐーすか眠る彼を見、「杞憂だったみたいだ」と苦笑い。
なんとなく元気がなかったように思えたが、これほど豪快に眠っているのだからきっとななしが変であったのは些細な理由であったに違いないと決めつけステファノはゆったりベッドに座った。
ついでに眠りながらよだれをたらすななしの写真を一枚撮っておいた。
「人の気も知らないで呑気なものだね。まぁ、君らしいけど………ん?」
せっかく構い倒して(弄り倒して)やろうとしていたステファノだが、眠るななしを見て普段とはどこか雰囲気が違うことに気づいた。
どこと言われればすぐには答えられないが、いつもとは明らかに何かが違う。
ひと房髪を取り親指で感触を確かめた。
柔らかいし、毛質そのものは変わってはいないが心做しか、いつもより長い。
それに眠る彼の目元もいつもと違う。大きな目を覆うまつ毛が髪同様いつもより長いのだ。
ステファノはいつも死ぬほどななしをカメラに収めているためそれが気のせいでないことがよく分かる。
うつ伏せで眠るななしの肩をつかみ、仰向けに変えた。
「これは…」
いつもは真っ平らなそこは膨らみ、男にはない谷間ができていたのだ。
「ありえない、ななし、起きて。ななし」
『んっ、なにっ』
もぞもぞ動くななしの声はいつもより格段に高い。
何がどうなったのかはさっぱり。理由など"STEMであるから何が起きてもおかしくない"で片付いてしまう。実際、この間はななしが幼児になってしまった時も深くは追求せず"STEMのせい"にしてきた。
なんと都合の良い言葉だろうか。
今日もステファノは"STEMのせい"にしてはっきりくっきり女性になってしまったななしを見、にやりと口角を上げたのだ。
『ん、あれ、おはよ、ステファノさん』
「体はいつもと同じ?」
『え?…なに、起き抜けに…ん、ん?』
「どう?」
『胸…バインバインだ』
「うん」
『手が、小さい…股がヒューヒューする!?』
「うん(あぁ、無くなるとヒューヒュー?するのか)」
『な、なんで、俺、女!?ステファノさん何かした?』
「ひとぎきわるいなぁ。僕は何も手を下してないよ?」
『ま、まじで?』
「この前も君子供になっていたし、女性になることも不思議ではないだろ?」
『不思議だから!!なんでまたこんな目にあってんの、俺!?最悪だよ』
「最悪なのかい?」
『最悪だよ!俺は男のままがいいんだ。な、なんで女なんかっ』
「女なんか、ねぇ。あ、そうだななし。いいことを思いついた」
『え?なに』
長くなった髪が鬱陶しいらしく、せわしなく耳にかけるななしを他所にステファノはいやらしく笑いながらいいことを思いついたと言う。
悪い笑顔だな〜とジト目でステファノを睨むななし。
なんとなく嫌な予感がする。
ステファノは今からとんでもないことを言うんじゃないか、そう感じ距離を取るようにベッドの端に逃げる。
しかしステファノががしりと随分細くなった手をつかむため逃走はあっけなく終了した。
「君、女性のよさを理解できないと言ったね」
『ぇ、あ、そうだけど』
「これはいい機会だと僕は思う。今から君を使って説明して見せよう」
『は?』
「女性の可能性と芸術性について、僕が一から十まできっちり説明してあげる」
軽やからにウィンクをしたステファノは懐にあったナイフを取り出すと、大きくなった胸のせいてはち切れそうなワイシャツを切りつけたのだ。