PSYCHOBREAK2
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あの後かなりの時間を有し手紙を書き上げた。
リリーとオブスキュラにじっくりと見られながら。
絵を描くのが得意なリリーはすらすら描きあげたためだ。早々に描きあげた絵を巻いて先程言っていたように赤いリボンで蝶々結び。プレゼントの完成だ。
しかしななしはそのプレゼントが完成した後もなかなか手が進まず万年筆を回すだけ。
リリーとオブスキュラにあぁだこうだ言われながらようやく完成したのは始めた頃から何時間もたったあと。
手紙と写真をこれまた都合よく見つかった封筒に入れたななしはつかれたと、机に突っ伏した。
『あー、頭が痛い。知恵熱出るわ』
「喜んでくれるかな?」
『それは心配無いよ、ステファノさんは優しいから。リリーの絵を見てきっと喜んでくれるって』
「うん!じゃ、渡しに行こう!」
『お、お~!』
改まってプレゼントというのもとても気恥しいのだが、せっかく作ったのだ。
あげないわけには行かない。
若干引け腰のななしはリリーと、オブスキュラに手を引かれてステファノの自室に向かった。
ゆっくり扉をノックしてステファノの返事を待つ。
「なんだ?」と開く前に扉が開かれ中からカメラを持ったステファノが顔を出した。
「おや、みんな集まって僕になんのようだい?」
『ぁ。あ、えっと、あの、えー、ステファノさん』
「?」
「おじさん」
「なんだい、リリー」
ななしの足にしがみついたリリー。やはり本人は少し怖いようであった。
しゃがんだステファノに顔を隠すリリーだが、ゆっくり先程描いた絵を出した。
一度頷いて意を決したようにリリーはリボンがついた絵をステファノに渡す。
「おや。なんだいこれは」
「…お誕生日、おめでとう」
「あぁ。そうか、僕の誕生日か。フフ、リリーからのプレゼントか。祝われる歳でもないけどありがたく受け取るよ」
「…うん!」
ステファノはリリーのプレゼント、ならぬ絵を受け取るとリボンを引く。真っ赤なリボンをリリーの手首に巻いてやり絵を開いた。
「……これは、リリー。君には僕達がこんなふうに映っているのか。君の父はゴッホ級であるけど君はそうだね。ピカソ級だ。とても素晴らしい才能だよ。得にこの関節部分に才能と狂気を感じるよ。曲がらぬ方向に曲がっているから、マネキンのように無機質さを醸し出しているしオブスキュラに関しては実物より美しい!アートだ!あとは少し血を巻き散らせばまより素晴らしいだろう!」
『アンタ…最低だな』
「喜んでくれてるのかな?」
『喜んでくれてるよ!』
「リリーへの意外な才能を見つけてしまったよ。それにしてもこの猫。リリーは猫が好きなのかい?」
『っ!?ね、猫好きなんだよな?リリー!』
「だって、おじさんとななしが見せてくれな『だー!あ、あのステファノさん!これ!俺から』ななし?」
「君も僕にくれるのかい?」
『あ、当たり前だろ!』
ムードも何も無いがななしは半ば無理やり手紙を押し付け逃げるように走った。
猫については触れないでいただきたい。恥ずかしさが爆発する。
いや、既にステファノに手紙を渡すだけで恥ずかしさで爆発しているか。
さすがにこれ以上爆発しては、本当に物理的に爆発してしまいそうなので稀に見る速さでななしは与えられている自室へと逃げ込んだ。
ぽかんとななしを見るリリー。一人残されアワアワしだしたリリーはササッとオブスキュラに隠れる。
「手紙か…なかなかにいじらしいね」
そんなリリーの頭を撫でるとステファノはその場から青い残像を残し消えたのだ。
再び取り残されたリリーはオブスキュラと顔を見合わせると、コテンと首をかしげ「変なの」とケタケタ笑った。
一方稀に見る速さで走ったななしはヘトヘトになりながらベッドにて寝転がっていた。
柄にもないことをすると疲れる。体も精神的にも。とてもいい意味で、だが。
「やぁ」
『あわ!?ステファノさん!』
「逃げるのはなにか疚しいことがあるからかな?」
『いや。別にそんなことはないけどね』
お得意の瞬間移動でやってきたのはステファノ。
ベッドで寝そべるななしの隣に腰を下ろしたステファノは手紙をスーツから取り出すと封をナイフで綺麗に切った。
中から取り出した写真と手紙を見つめて楽しそうに口を歪めたステファノからななしは嫌そうに目を逸らす。
「ふむ、」
『え。あ!?今読むなよ!俺いる場所で読むなっ』
「僕がもらったんだ。どこで読もうが関係ないだろう?」
『か、関係ないけど』
「…バケモノだらけでまぁまぁ怖い世界だけどステファノさんが一緒ならなんとなく生きてけそうな気がします。これからもよろしく『ステファノさん!?読むなって!』あいし『わぁあー!!』なかなかに、内容が薄い」
『あげたんだから文句言うなよ〜!』
「恩着せがましいね、まったく」
『……本心だもん』
「あぁ、知っているよ」
『うわっ』
寝そべるななしの上にステファノが抱きつく。重みに苦しげに息をつくななしだが、お構い無しに腕に力を入れるステファノ。
ぐえぐえ唸るななしの項に鼻をすり寄せながら「君らしい」と笑う。
たまに嬉しそうにオブスキュラと昔の写真を見ているステファノを見たことがあるが、それよりも嬉しそうな笑い声な気がする。自惚れかも知れないが。
気恥しいばかりだったが、やはりステファノが喜んでくれたことがなによりも嬉しく。
ステファノの腕の中で俯けから仰向けになんとか姿勢を変えた。
ステファノの顔がみたかったから。
『…笑ってる』
「僕はいつだって笑ってるよ」
『毒気がない』
「失礼な」
『嬉しい?』
「君いわく毒気がない笑顔なのに、喜んでないと思うのかい?君の目は節穴だね」
『…誕生日おめでとう』
「粋な計らい、面白かったよ」
『んっ』
ステファノの細くもたくましい首に手を回し、見つめ合えば自然と唇が重なり合った。
優しい優しいキス。
蕩けてしまいそうなくらい穏やかで優しいキスに、ななしは顔を真っ赤にしながらステファノの腕の中で悶えた。
気持ちが通じあったキスとはとても気持ちがいいと、改めえ思ったのだ。
『なんか、恥ずかしい』
「どうして?」
『分からないけどね、言葉にすることって大事なんだなぁって思った』
「それはよかったね」
『愛されてるって。感じ』
「君が?」
『そう、』
「逆だろう」
『えぇー?』
「間違ってはいないけどね」
『ステファノさんっ』
「歳をとるのかも分からないけど、記憶には一番残る誕生日だ。リリーの絵も君の手紙と写真も。あぁ、写真といえば…」
『な、なに?』
オブスキュラに撮ってもらった写真だ。
裏にななしは無い知恵を働かせ必死にイタリア語で「生まれてきてくれてありがとう」と書いた写真。
なにか不手際があったのかと青くなるななしにステファノはほらここと、文字を指さす。
「君にしては綺麗な字だけどスペルが違うよ」
『えぇ!?!?』
「これじゃ。意味のわからない言葉になってしまうよ」
『ステファノさん、そういうのは言わないで胸にしまっておいてほしい』
「君のためにならないと思うけどね」
『い、イタリア語なんて使わないもん』
「僕の母国語をなんて呼ばわり。はは、偉くなったねぇ。ななし」
『いや、そんなつもりじゃないけど』
「ここはeだよ、eは分かるだろう?」
『ちょ。ちょっと、くすぐったい』
ほら、書き方はこうだよとななしの腹あたりでeの文字をゆっくり、まるで焦らすように人差し指で書くステファノ。
へそ周りをくるくる回る指に擽ったさで身をよじるななし。「次はここだよ。lじゃなくてrだ」とまた違う動きで彼を翻弄していく。
終いには恥骨あたりまで指が滑るので、笑い声ではなく艶やかな吐息が漏れた。恥ずかしさでステファノの指をつかむななしだが淡い快感に力が入らない。
ステファノは楽しげに「最後はaじゃなくてeだよ」と言って、ななしの服をめくりあげた。
胸あたりまでめくりあげられた服を必死に戻そうとするもダメだよと静止されなす術なしなななしは顔を真っ赤にしながら唾を飲み込む。
『あ、っ。う…』
「はは、悩ましい体だね。そうだ…僕の誕生日なんだった。どうせならこれもらおうかな?」
心臓あたりにキスをされまたピクンと体を揺らすななし。
体はステファノから与えられる快感を待ち望んでいるようだ。本人は意識とは裏腹に潤んだひとみでステファノを煽る。
『早くしてよ』とばかりに。
そこまでされて手を出さないわけにはいかないステファノ。
誕生日だからとは言いつつ、いつだってななしと繋がりたい。そんな気持ちを隠すことはせずにななしの唇を奪いながら服を脱がせた。
『やっぱり、だめ!リリーが寝た後っ!』
「ん?やけに理性的じゃないか。いつもは若さに乗じて早く早くと強請るくせに」
『あっ。ね、猫!』
「猫?あぁ、絵にもいたね」
『あれ、俺なんだよ。あ、喘ぎが夜な夜な聞こえるって……にゃあ、にゃあって。そしたら会わせてって言われたんだよ…だ、だから、駄目っ。俺、声我慢出来ないからっ』
「…何が言いたいのか理解し難いが…煽ってるんだよね?」
『違う!あっ、だ、駄目ったら。ステファノさんっ』
「僕はそんなに寛大じゃない。見くびらないでくれ」
『あ、あっん…ぅっ、』
「僕の誕生日なんだからお願いくらい聞いてくれ、ななし」
ね?と笑いかけるステファノにキュンと胸を鷲掴みにされたななしはもうどうにでもなれ、とゆっくり頷いた。
『誕生日、おめでとうっ。ステファノさん』
「あぁ」
それから2人が裸で愛し合うまで時間はかからなかった。
寝床で繋がりあっているななしに声を我慢する余裕などはなく。結局また『にゃあ、にゃあ』と甲高い声で鳴いてしまったのだ。
傍らでリリーがまた猫の声、と反応したのを必死に宥めるオブスキュラ。
誕生日、二人仲良く過ごしてもらいたいとリリーの遊び相手になる。これがオブスキュラからステファノへの「優雅な時間」のプレゼント。
ずるいずるいと騒ぐリリーの頭を撫でながら宥めては時が経つのを今しばらく待とう。
「ねぇ!オブスキュラ、私も猫ちゃんに会いたいの」
「んはぁん」
「ダメなの?」
「んはぁ」
「うーん、じゃぁ、冒険ごっこしよう?ね?それならいいでしょ?」
「んはぁあん!」
「私を背中に乗せて!パパを探すの!」
「んはぁん!?」
「しゅっぱつ、オブスキュラ号!」
「ん、んはぁあぁあん!」
オブスキュラの苦労の末、ななしとステファノは文字通り熱く滾るような誕生日を過ごせたらしい。
Grazie per cssele neto
(Grazie per essere nato/生まれてきてくれてありがとう)