PSYCHOBREAK2
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今日も今日とて、とてつもなく陰鬱な市庁舎。
相も変わらずそこでくらすななしだが最近新しいお友達リリーができた。
二人はよく気があったし、すぐに仲良くなり今では兄妹のようになりつつある。
リリーは未だにステファノが怖いらしくそれを除けばかなり順調だ。
この市庁舎での生活も大分慣れたリリーは現在、寝そべるななしの背で紙に絵をかいていた。
背に置かれた紙越しに伝わるクレヨンの感触にうつらうつら微睡むななし。
誰がどう見たって仲の良い兄妹だ。
心地の良い沈黙に癒されていたななしの耳にリリーの「できた」と嬉しそうな声が聞こえた。
何ができたの?と背にいるリリーに問えばいそいそ背からおりてきた。そのまななしと同じように寝転がり絵をニコニコと見せてくれるリリー。
「ななしと、私とオブスキュラ」
『(あ、ステファノさんはいないのか)』
「で、これはね」
『ん、猫?』
「そう、猫ちゃん」
リリーが指さすのは猫の絵。指さしながらなぜかムッとしてななしを見てくるため、彼はなにがどうしたかとあたふたした。
『うぇ?何怒ってるの?』
「なんで私にも見せてくれないの?」
『え?何を?』
「猫ちゃん」
『ん?市庁舎に猫はいないよ?』
「いるもん!いつもね、リリーがオブスキュラと寝る時ね、声が聞こえるの。にゃあ、にゃあって」
『…にゃあ、にゃあ…寝る時…』
「うん!ななしとおじさんだけ猫ちゃんと遊んでるのずるい。私も猫ちゃんと遊びたいの」
『……寝る時だけ?』
「うーん、私はいつも寝る時に聞こえるの」
『……』
市庁舎に猫はいない。にもかかわらずにゃあ、にゃあと聞こえるらしい。しかもリリーが眠る時。
全てにおいて、ピンっときてしまったななしは顔をこれでもかと赤くし声にならない声を上げながら枕に突っ伏した。
耳を枕で覆うようにして足をジタバタする姿にリリーは首をかしげる。
「どうしたの?ななし」
『…な、なんでもない』
「猫ちゃんにあわせてくれる?」
『…うん、ステファノさんに聞いておくよ』
「やったー。ありがとうね、ななし」
屈託の無い笑顔に心の底から罪悪感を感じる。
あぁ、ごめんね。リリー。猫はいないんだよ。
でもね。ネコはいるんだよ、しかも今リリーの目の前にいるんだよ。
とは、死んでも言えないななしは謝る代わりにそっとリリーの頭を撫でてやった。
嬉しそうに笑うリリーにまた胸がいたんだななし。
永遠にヨシヨシと頭を撫でていたななしと、ニコニコしていたリリー。
なんとも穏やかな時間を過ごしていた2人だが、そんな空間を破るようにドカドカやって来たのはかなり慌てた様子のオブスキュラだった。
ベッドの前まで走ってきたオブスキュラは血走ったような目(血走っているように見えるカメラレンズ)で見つめてくるため、何事かとななしらは顔を見合わせる。
『どったの?』
「何か持ってる!」
『なに、なに、…カレンダー?』
「んはぁあぁあん!! 」
『激しいな…』
「この日付?22日…何かあるの?」
『今日だよ、22日』
圏外のスマホ片手にななしは言う。
未だ興奮が冷めやらぬオブスキュラはリリーの使っていたクレヨンで真っ白な紙に綺麗とは言いがたい字で書くのだ。「ステファノの誕生日」と。
『は!え、はぁぁあ!?た、誕生日!?』
「おじさんの、お誕生日?」
『聞いてない聞いてない!なんで当日にいうの!?俺なんにも用意してないよ!?ね?ね!?』
「ななし…怖い…」
『あ。ごめんごめん、あぁ…誕生日か…』
「おじさんお誕生日あるんだね」
『そりゃ、リリーにもあるだろう?』
「なにかプレゼントするの?」
『しない訳にはいかないだろ〜!ステファノさんは俺のこっ、…しない訳にはいかない!』
恋人だぞ、っとついて出そうになった言葉を飲み込みななしは考える。
しかし、しない訳にはいかないと言っても限度があるのだ。ここはSTEM。限りある空間で限りあるものしかない市庁舎でプレゼントを選ぶのはなかなかに難しい。
ステファノが作り出した空間でもあるゆえ、ここにあるプレゼントはたぶん何も意味が無い。
薔薇の花…いやいや、死ぬほど見ている。紅茶?…形に残らないものは嫌だ。
どうにかステファノの心に残り、ずっと形あるものがいいと思う。
悩み唸るななしの隣。
再び紙に向かうのはリリーだ。彼女はふんふんと鼻歌を歌いながら楽しそうにクレヨンを滑らせる。その絵をステファノにプレゼントするつもりなのだろうか。ステファノのことが怖い彼女だが惜しみなくプレゼントをあげるところを見ると本当に心が優しいのだろう。
すぐにプレゼントが思いつく柔軟さを羨みつつ、ななしは未だ悩ましげに貧乏ゆすりをした。
なかなか解決策が見つからない。
「これをね、プレゼントするの!」
『うん、素敵なプレゼント』
「描き終わったらくるくる巻いて真っ赤なリボンを蝶々結びするの」
『いいなぁ。すぐに思いついて、きっとステファノさん喜ぶよ』
「ななしは?」
『ん?』
「ななしは何にするの?」
『悩む、悩むよね』
「うーん。お手紙は?どう?私パパのお誕生日にお手紙書いたよ!喜んでくれた!」
『手紙…』
「いつもはね、言えないことが言えるの。パパと喧嘩した時もねお手紙を書くの。そうしたらね、仲直りできるから」
『言えないことが言える…』
「そう、そうしたら仲良くなれるかも」
『はは、もう仲良しだよ。でも、もっと仲良くなれるかも…手紙、書いてみようかな』
「うん!」
リリーの笑顔に後押しされてななしは近場にある引き出しにひっそり置かれていた万年筆を手に取った。
ステファノに、日ごろ言えないこと。
ありがとうから大好きまで伝えられたらきっと素敵なプレゼントになるのではないだろうか。
『オブスキュラ!写真!写真撮って』
「んはぁあぁあん!」
『リリー、こっちむいて』
「なぁに?」
『一緒に写真撮ろう』
「うん!」
『はい!チーズ!』
「あはぁん!」
パシャリ
オブスキュラは体をくねらせながらカメラに手を添え写真を撮った。
出てくる写真を受け取り、ななしはリリーとそれを眺める。
やはりなかなか陰鬱な空間である市庁舎だが、そんな雰囲気をものともしない素敵な笑顔が二つ。
なんだか見かたによっては闇が深〜い写真にも見えなくもない。
『うーん』
「ななしの顔楽しそう!」
『そう?』
「うん。おじさん喜ぶよ!」
『ならこれでいいか!』
確かに闇が深い写真にみえなくもないかもしれない。それでも気持ちがない訳では無いし、些細だが立派なプレゼントだ。
オブスキュラが撮ってくれた貴重な写真。
この写真とともに手紙を贈ろう。
相も変わらずそこでくらすななしだが最近新しいお友達リリーができた。
二人はよく気があったし、すぐに仲良くなり今では兄妹のようになりつつある。
リリーは未だにステファノが怖いらしくそれを除けばかなり順調だ。
この市庁舎での生活も大分慣れたリリーは現在、寝そべるななしの背で紙に絵をかいていた。
背に置かれた紙越しに伝わるクレヨンの感触にうつらうつら微睡むななし。
誰がどう見たって仲の良い兄妹だ。
心地の良い沈黙に癒されていたななしの耳にリリーの「できた」と嬉しそうな声が聞こえた。
何ができたの?と背にいるリリーに問えばいそいそ背からおりてきた。そのまななしと同じように寝転がり絵をニコニコと見せてくれるリリー。
「ななしと、私とオブスキュラ」
『(あ、ステファノさんはいないのか)』
「で、これはね」
『ん、猫?』
「そう、猫ちゃん」
リリーが指さすのは猫の絵。指さしながらなぜかムッとしてななしを見てくるため、彼はなにがどうしたかとあたふたした。
『うぇ?何怒ってるの?』
「なんで私にも見せてくれないの?」
『え?何を?』
「猫ちゃん」
『ん?市庁舎に猫はいないよ?』
「いるもん!いつもね、リリーがオブスキュラと寝る時ね、声が聞こえるの。にゃあ、にゃあって」
『…にゃあ、にゃあ…寝る時…』
「うん!ななしとおじさんだけ猫ちゃんと遊んでるのずるい。私も猫ちゃんと遊びたいの」
『……寝る時だけ?』
「うーん、私はいつも寝る時に聞こえるの」
『……』
市庁舎に猫はいない。にもかかわらずにゃあ、にゃあと聞こえるらしい。しかもリリーが眠る時。
全てにおいて、ピンっときてしまったななしは顔をこれでもかと赤くし声にならない声を上げながら枕に突っ伏した。
耳を枕で覆うようにして足をジタバタする姿にリリーは首をかしげる。
「どうしたの?ななし」
『…な、なんでもない』
「猫ちゃんにあわせてくれる?」
『…うん、ステファノさんに聞いておくよ』
「やったー。ありがとうね、ななし」
屈託の無い笑顔に心の底から罪悪感を感じる。
あぁ、ごめんね。リリー。猫はいないんだよ。
でもね。ネコはいるんだよ、しかも今リリーの目の前にいるんだよ。
とは、死んでも言えないななしは謝る代わりにそっとリリーの頭を撫でてやった。
嬉しそうに笑うリリーにまた胸がいたんだななし。
永遠にヨシヨシと頭を撫でていたななしと、ニコニコしていたリリー。
なんとも穏やかな時間を過ごしていた2人だが、そんな空間を破るようにドカドカやって来たのはかなり慌てた様子のオブスキュラだった。
ベッドの前まで走ってきたオブスキュラは血走ったような目(血走っているように見えるカメラレンズ)で見つめてくるため、何事かとななしらは顔を見合わせる。
『どったの?』
「何か持ってる!」
『なに、なに、…カレンダー?』
「んはぁあぁあん!! 」
『激しいな…』
「この日付?22日…何かあるの?」
『今日だよ、22日』
圏外のスマホ片手にななしは言う。
未だ興奮が冷めやらぬオブスキュラはリリーの使っていたクレヨンで真っ白な紙に綺麗とは言いがたい字で書くのだ。「ステファノの誕生日」と。
『は!え、はぁぁあ!?た、誕生日!?』
「おじさんの、お誕生日?」
『聞いてない聞いてない!なんで当日にいうの!?俺なんにも用意してないよ!?ね?ね!?』
「ななし…怖い…」
『あ。ごめんごめん、あぁ…誕生日か…』
「おじさんお誕生日あるんだね」
『そりゃ、リリーにもあるだろう?』
「なにかプレゼントするの?」
『しない訳にはいかないだろ〜!ステファノさんは俺のこっ、…しない訳にはいかない!』
恋人だぞ、っとついて出そうになった言葉を飲み込みななしは考える。
しかし、しない訳にはいかないと言っても限度があるのだ。ここはSTEM。限りある空間で限りあるものしかない市庁舎でプレゼントを選ぶのはなかなかに難しい。
ステファノが作り出した空間でもあるゆえ、ここにあるプレゼントはたぶん何も意味が無い。
薔薇の花…いやいや、死ぬほど見ている。紅茶?…形に残らないものは嫌だ。
どうにかステファノの心に残り、ずっと形あるものがいいと思う。
悩み唸るななしの隣。
再び紙に向かうのはリリーだ。彼女はふんふんと鼻歌を歌いながら楽しそうにクレヨンを滑らせる。その絵をステファノにプレゼントするつもりなのだろうか。ステファノのことが怖い彼女だが惜しみなくプレゼントをあげるところを見ると本当に心が優しいのだろう。
すぐにプレゼントが思いつく柔軟さを羨みつつ、ななしは未だ悩ましげに貧乏ゆすりをした。
なかなか解決策が見つからない。
「これをね、プレゼントするの!」
『うん、素敵なプレゼント』
「描き終わったらくるくる巻いて真っ赤なリボンを蝶々結びするの」
『いいなぁ。すぐに思いついて、きっとステファノさん喜ぶよ』
「ななしは?」
『ん?』
「ななしは何にするの?」
『悩む、悩むよね』
「うーん。お手紙は?どう?私パパのお誕生日にお手紙書いたよ!喜んでくれた!」
『手紙…』
「いつもはね、言えないことが言えるの。パパと喧嘩した時もねお手紙を書くの。そうしたらね、仲直りできるから」
『言えないことが言える…』
「そう、そうしたら仲良くなれるかも」
『はは、もう仲良しだよ。でも、もっと仲良くなれるかも…手紙、書いてみようかな』
「うん!」
リリーの笑顔に後押しされてななしは近場にある引き出しにひっそり置かれていた万年筆を手に取った。
ステファノに、日ごろ言えないこと。
ありがとうから大好きまで伝えられたらきっと素敵なプレゼントになるのではないだろうか。
『オブスキュラ!写真!写真撮って』
「んはぁあぁあん!」
『リリー、こっちむいて』
「なぁに?」
『一緒に写真撮ろう』
「うん!」
『はい!チーズ!』
「あはぁん!」
パシャリ
オブスキュラは体をくねらせながらカメラに手を添え写真を撮った。
出てくる写真を受け取り、ななしはリリーとそれを眺める。
やはりなかなか陰鬱な空間である市庁舎だが、そんな雰囲気をものともしない素敵な笑顔が二つ。
なんだか見かたによっては闇が深〜い写真にも見えなくもない。
『うーん』
「ななしの顔楽しそう!」
『そう?』
「うん。おじさん喜ぶよ!」
『ならこれでいいか!』
確かに闇が深い写真にみえなくもないかもしれない。それでも気持ちがない訳では無いし、些細だが立派なプレゼントだ。
オブスキュラが撮ってくれた貴重な写真。
この写真とともに手紙を贈ろう。