PSYCHOBREAK2
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朝も夜も存在しないこの世界にもだいぶ慣れた。
一人で寝るには大きすぎるくらいのベッドをステファノはななしに与えたし、今日もそのベッドでオブスキュラの不協和音な声が奏でる子守唄で眠りについた。
習慣になるほど繰り返してきたはずなのに、今日は何故かいつもとは違ったのだ。
ベッドで寝ていたはずのななしが目を開けた時そこは、何故か道路の真ん中だった。
暖かなワインレッドの毛布を被っていたのになぜ今裸足で道路にたっているのか。
ななしは頭が混乱するばかりだ。
『…ステファノさん?』
小さく呟いてみたが彼の声や気配は全くない。
ななしはステファノにより市庁舎からでることを禁止されていた。
理由は「君が外に出れば死ぬ」からだそうだ。
その後ななしが頷くまで「ロストなんかに殺されるなんて美しくないよ。…いや、あるいはあの醜悪なロストと生き人形のように美しい君は相対でありながらも絶妙にマッチするんじゃないかな?その白い肌に突き刺さる鋭い爪…裂ける肌から現れる肉と骨っ、…いい!!」とボツボツ呟いていたのは忘れもしない。
死にたくはないし痛いのも嫌だとななしは市庁舎からは出ずにいたのだが、何故か今のタイミングで外に来てしまったらしい。
どうにかして市庁舎に戻られればいいのだが、如何せんはじめての外。どちらに市庁舎があるのかも全くわからない。
もしかしてステファノに捨てられたのであろうか。
『ま、まじかよ…』
そうであったら一巻の終わりだ。
ななしに待ち受けるのはステファノのが夢にまで見た"死"しかない。
しかしそんなのは絶対に嫌だとななしはあたりを見渡す。
近くにあった車に近寄る。
隠れつつ周りに何もいないのを確認してとりあえず身を隠せそうな場所を目指すことにしよう。それが一番だといいきかせななしは走り出した。
『はぁっ、はっ、はっ!』
ステファノの言うロストはあたりにはいなかった。
破裂した水道管から水が溢れあたりが一面濡れているし、至る所に血溜りがあったが死体などはない。
ここで死体とご対面しても気の弱いななしは腰を抜かして足がすくむに違いない。不幸中の幸いとはこのことだ。
ななしは無我夢中で走った。
しかしどれだけ走っても市庁舎はない。看板を頼りに走るが市庁舎は見当たらなかった。
息も耐え耐えのななしはどうにもならない不安で胸が張り裂けそうである。
息が苦しくて泣き出してしまいそうな目頭を抑えた。
『ちくしょ〜…なんだってんだよぅ…ステファノさん、どこだよぉ』
道路の真ん中、点滅する街灯に照らされながらななしは三角座りをし現実から目を背けるように顔を伏せ耳を塞いだ。
これは悪い夢だ。
だってベッドに入ったんだから。眠ったんだから。
そう夢に違いない。だから、早く覚めて。
ななしは『覚めろ』を唱え続けた。
しかしそのうち訳が分からなくなって。変わらない現状に苛立たしげに顔を上げた。
『あ』
顔をあげなければよかった。そう思うほど醜悪で気味の悪いバケモノが目の前にいたのだ。
右手に包丁を持ち掠れた声で「ぁぁ、あっ、あぁ、」とうなっている。白のワンピースをきているところを見るにこの化物は女なのだろうか。
長い髪はもちろん、頭皮はずるむけほとんど中身が見えている。震える度に露出した脳から何か得体の知れない液が頬を伝い地面へと滴った。
剥き出しの歯は黒ずみ人間の面影はまるでない。
そんな化物が目の前に現れ驚いたななしは叫ぶのを忘れつばを飲み込んだ。
なんとかしなければ、なんとかってなんだ?どうすればいい?
しかし。
ゆっくりとゆっくりと。
化物が顔を上げるのだ。
見てはいけない、早く逃げなくては殺される。
しかし恐怖で思うように体がうごかずななしはその動作を見つめるしかない。
あぁ、終わりだ。
「ぁあぁあ!!!」
『うっ、わぁあ!!!』
見つかった。
化物は金切り声をあげると、見た目に似合わないほど機敏な動きでななしに包丁を振り下ろす。
『あ、ぶなっ、』
間一髪で避けたななしだが攻撃は一手では終わらない。続けて包丁を振り回す化物。
咄嗟に走るななしだが、化物も走る。しかも化物の足は頗る速い。
『うぐっ』
背中に強烈な熱を感じななしは転がるように転倒した。
ドクドクと脈打つ感触が体全体を蝕んだ。
手で背中を触れば熱くぬるりとした嫌な触感。
確かめなくたってわかるこれは血だ。
背中をあの包丁で切られたのだ。
『うぁあ!!痛い!痛い!やめろっ!』
途端に襲う強烈な痛み。背中を中心に体全体が軋むように痛む。
抵抗できないななしに化物は馬乗りになると細く病的な腕を振り上げ包丁を振り下ろした。
『あっ、がはっ、あ!?うぐっ、はぁ!いっ、だぁ!』
ズブリ、ズブリ、ズブリ。
何回も繰り返し刺され抜かれ。
痛みに悶えるななしなど気にもとめない化物は包丁をぶんぶん振り回していく。
背中、肩、腹、足、ありとあらゆる場所に包丁が刺さる。
あまりの痛みに涙が溢れ出てくる。口からもとめどなく血が溢れ地面に広がった。
『やだっ、死にたくないっ!やだ!!ステファノさん!!』
痛みと溢れ出る血で意識が薄れ、もうダメだと最後の力を振り絞り叫んだ。
体は痛むしそこら中から血があふれでたが気にしていられるか。
化物の金切り声などめじゃないくらいめちゃくちゃに叫んだななし。
『助けてっ!!!!』
強く、強く、必死に叫んだ。
すると眩いほどの光がななしを包んだのだ。あまりの眩しさに強く瞳を閉じる。
それは一瞬の出来事で、ハッとして目を開いた次の瞬間にはななしは道路ではなく眠りについたベッドの中にいた。
『はあ、…はぁっ、ん、はぁ、ゆ、夢』
刺された背中をまさぐる。汗で濡れてはいるが切り開かれている様子はない。
『うぐぅ、』
「おや、ななしおはよう。まだ1時間ほどしか寝ていないが早いね」
『ステファノ、さん?』
「なんだい?」
『本物?包丁もってない?』
「あぁ、ナイフは持ってるけど……ななし泣いているのかい?」
『ステファノさぁん!』
受け入れられないほどリアルな夢で、苦しくて痛くて。ステファノに捨てられたかと思うほど絶望して。とにかく最悪だった。
しかしようやく本物のステファノに会えたことでななしの全てが爆発した。
涙が我先にと溢れ出ていく。カメラの手入れをしていたステファノに駆け寄りギュッとだきついたななし。
ステファノは驚きながらも「どうしたの?」と優しく背を撫でてくれた。
『夢っ、夢!俺、刺されてっ、ぐちゃぐちゃされてっ!痛くて!う、うわぁぁん!』
「ちょっと、スカーフで涙をふかないでくれ。ほら、こっちのハンカチでふきなよ」
『うっ、うっステファノさんに、捨てられたかと思ったじゃん。ひっ、うっ、うぅ、…体痛いし、っ、ひっく。う、うぇ…』
「あぁ、君は泣いても美しいけれど僕の意思で泣いてくれていないのは実につまらないな。ほら、泣き止んで僕にもう少し詳しく説明してご覧よ」
『う、ぅん』
革の手袋をはめた親指がななしの目尻に溜まった涙を拭って、優しく撫でる。
そんな優しい動作にすりよるななしをステファノは見つめた。
彼はカメラをかまえたくてうずうずしているが、それをぐっと堪えななしが話し出すのを待った。
ぽつりぽつりと呟くように言葉を紡ぐななし。
彼がいうには目が覚めたらユニオンシティにおり化物(おおかたヒステリックだ)に刺され、気づいたらベッドにいたそうだ。 普通ならありえない話だが如何せんここはSTEM。何が起こるかはわからない。
「あはは、あながち夢ではないかもしれないね、それ」
『…アンタはそうやってすぐひどいことを言うんだ』
「ごめん、ごめん、もう二度と同じことは繰り返さないとは思うけど…もしそうなったら。その場を動かない方がいい。彼らはみみざといからね。足音だけでも君を発見するだろう。だからそういう時は何もせずに隠れて、僕が来るのを待っていた方がいい」
『本当に来てくれるのかよ?遅かったらまた刺されて死んじゃうかんな』
「死なせないよ。君の生死を握っていられるのは僕だけだからね」
『…嬉しくない』
「冗談だよ。さぁ、寝なくていいのかい?」
『寝ないもん。また嫌な夢見るし…』
リアルすぎる夢など二度とゴメンだ。それにその夢で死ぬのも。
ステファノが生死を握っているというのも気に食わないが、何より嫌なのは痛みだ。耐え難い苦痛など1度で十分だ。
寝ないからね!とステファノにしがみついたまま離れないななし。
困ったね、とあながち満更でもないような顔つきでお手上げポーズをするステファノ。
「じゃぁ、オブスキュラと僕とななしで眠るかい?」
『ぇ?ステファノさんって寝るの?』
「眠りは必要ないだけで眠れないわけじゃない」
『オブスキュラは?』
「オブスキュラは寝ないよ。ベッドになってもらう」
『…寝る』
「ははは。そうだろうね。目がトロンとしてる」
「さぁ、オブスキュラ。ここに座って」とベッドを指さす。オブスキュラは楽しげに三本の足でベッドに飛び乗るとさぁ、おいでとばかりに大きな手を広げた。
すかさず飛び込むななし。ステファノもあとに続いた。
『オブスキュラってひんやりしてるよね』
「まさに芸術だね」
『はいはい』
「おやすみ、ななし」
『おやすみなさい、ステファノさん。オブスキュラ』
肉と骨と血で作られ、歪な体をしたオブスキュラに寄りかかりながらななしは小さく丸まった。
そんなななしをステファノは優しく抱きしめる。
すぐに寝息が聞こえ始めると、ステファノとオブスキュラはホッとしたように力を抜いた。
「なかなか手のかかるアートだよ。だが、そこがいいんだ」
眠るななしの額にキスをし、ステファノもゆっくりと目をとじたのだった。
終わりは始まりと言うけれど
(終わってしまえば意味が無いのです)
一人で寝るには大きすぎるくらいのベッドをステファノはななしに与えたし、今日もそのベッドでオブスキュラの不協和音な声が奏でる子守唄で眠りについた。
習慣になるほど繰り返してきたはずなのに、今日は何故かいつもとは違ったのだ。
ベッドで寝ていたはずのななしが目を開けた時そこは、何故か道路の真ん中だった。
暖かなワインレッドの毛布を被っていたのになぜ今裸足で道路にたっているのか。
ななしは頭が混乱するばかりだ。
『…ステファノさん?』
小さく呟いてみたが彼の声や気配は全くない。
ななしはステファノにより市庁舎からでることを禁止されていた。
理由は「君が外に出れば死ぬ」からだそうだ。
その後ななしが頷くまで「ロストなんかに殺されるなんて美しくないよ。…いや、あるいはあの醜悪なロストと生き人形のように美しい君は相対でありながらも絶妙にマッチするんじゃないかな?その白い肌に突き刺さる鋭い爪…裂ける肌から現れる肉と骨っ、…いい!!」とボツボツ呟いていたのは忘れもしない。
死にたくはないし痛いのも嫌だとななしは市庁舎からは出ずにいたのだが、何故か今のタイミングで外に来てしまったらしい。
どうにかして市庁舎に戻られればいいのだが、如何せんはじめての外。どちらに市庁舎があるのかも全くわからない。
もしかしてステファノに捨てられたのであろうか。
『ま、まじかよ…』
そうであったら一巻の終わりだ。
ななしに待ち受けるのはステファノのが夢にまで見た"死"しかない。
しかしそんなのは絶対に嫌だとななしはあたりを見渡す。
近くにあった車に近寄る。
隠れつつ周りに何もいないのを確認してとりあえず身を隠せそうな場所を目指すことにしよう。それが一番だといいきかせななしは走り出した。
『はぁっ、はっ、はっ!』
ステファノの言うロストはあたりにはいなかった。
破裂した水道管から水が溢れあたりが一面濡れているし、至る所に血溜りがあったが死体などはない。
ここで死体とご対面しても気の弱いななしは腰を抜かして足がすくむに違いない。不幸中の幸いとはこのことだ。
ななしは無我夢中で走った。
しかしどれだけ走っても市庁舎はない。看板を頼りに走るが市庁舎は見当たらなかった。
息も耐え耐えのななしはどうにもならない不安で胸が張り裂けそうである。
息が苦しくて泣き出してしまいそうな目頭を抑えた。
『ちくしょ〜…なんだってんだよぅ…ステファノさん、どこだよぉ』
道路の真ん中、点滅する街灯に照らされながらななしは三角座りをし現実から目を背けるように顔を伏せ耳を塞いだ。
これは悪い夢だ。
だってベッドに入ったんだから。眠ったんだから。
そう夢に違いない。だから、早く覚めて。
ななしは『覚めろ』を唱え続けた。
しかしそのうち訳が分からなくなって。変わらない現状に苛立たしげに顔を上げた。
『あ』
顔をあげなければよかった。そう思うほど醜悪で気味の悪いバケモノが目の前にいたのだ。
右手に包丁を持ち掠れた声で「ぁぁ、あっ、あぁ、」とうなっている。白のワンピースをきているところを見るにこの化物は女なのだろうか。
長い髪はもちろん、頭皮はずるむけほとんど中身が見えている。震える度に露出した脳から何か得体の知れない液が頬を伝い地面へと滴った。
剥き出しの歯は黒ずみ人間の面影はまるでない。
そんな化物が目の前に現れ驚いたななしは叫ぶのを忘れつばを飲み込んだ。
なんとかしなければ、なんとかってなんだ?どうすればいい?
しかし。
ゆっくりとゆっくりと。
化物が顔を上げるのだ。
見てはいけない、早く逃げなくては殺される。
しかし恐怖で思うように体がうごかずななしはその動作を見つめるしかない。
あぁ、終わりだ。
「ぁあぁあ!!!」
『うっ、わぁあ!!!』
見つかった。
化物は金切り声をあげると、見た目に似合わないほど機敏な動きでななしに包丁を振り下ろす。
『あ、ぶなっ、』
間一髪で避けたななしだが攻撃は一手では終わらない。続けて包丁を振り回す化物。
咄嗟に走るななしだが、化物も走る。しかも化物の足は頗る速い。
『うぐっ』
背中に強烈な熱を感じななしは転がるように転倒した。
ドクドクと脈打つ感触が体全体を蝕んだ。
手で背中を触れば熱くぬるりとした嫌な触感。
確かめなくたってわかるこれは血だ。
背中をあの包丁で切られたのだ。
『うぁあ!!痛い!痛い!やめろっ!』
途端に襲う強烈な痛み。背中を中心に体全体が軋むように痛む。
抵抗できないななしに化物は馬乗りになると細く病的な腕を振り上げ包丁を振り下ろした。
『あっ、がはっ、あ!?うぐっ、はぁ!いっ、だぁ!』
ズブリ、ズブリ、ズブリ。
何回も繰り返し刺され抜かれ。
痛みに悶えるななしなど気にもとめない化物は包丁をぶんぶん振り回していく。
背中、肩、腹、足、ありとあらゆる場所に包丁が刺さる。
あまりの痛みに涙が溢れ出てくる。口からもとめどなく血が溢れ地面に広がった。
『やだっ、死にたくないっ!やだ!!ステファノさん!!』
痛みと溢れ出る血で意識が薄れ、もうダメだと最後の力を振り絞り叫んだ。
体は痛むしそこら中から血があふれでたが気にしていられるか。
化物の金切り声などめじゃないくらいめちゃくちゃに叫んだななし。
『助けてっ!!!!』
強く、強く、必死に叫んだ。
すると眩いほどの光がななしを包んだのだ。あまりの眩しさに強く瞳を閉じる。
それは一瞬の出来事で、ハッとして目を開いた次の瞬間にはななしは道路ではなく眠りについたベッドの中にいた。
『はあ、…はぁっ、ん、はぁ、ゆ、夢』
刺された背中をまさぐる。汗で濡れてはいるが切り開かれている様子はない。
『うぐぅ、』
「おや、ななしおはよう。まだ1時間ほどしか寝ていないが早いね」
『ステファノ、さん?』
「なんだい?」
『本物?包丁もってない?』
「あぁ、ナイフは持ってるけど……ななし泣いているのかい?」
『ステファノさぁん!』
受け入れられないほどリアルな夢で、苦しくて痛くて。ステファノに捨てられたかと思うほど絶望して。とにかく最悪だった。
しかしようやく本物のステファノに会えたことでななしの全てが爆発した。
涙が我先にと溢れ出ていく。カメラの手入れをしていたステファノに駆け寄りギュッとだきついたななし。
ステファノは驚きながらも「どうしたの?」と優しく背を撫でてくれた。
『夢っ、夢!俺、刺されてっ、ぐちゃぐちゃされてっ!痛くて!う、うわぁぁん!』
「ちょっと、スカーフで涙をふかないでくれ。ほら、こっちのハンカチでふきなよ」
『うっ、うっステファノさんに、捨てられたかと思ったじゃん。ひっ、うっ、うぅ、…体痛いし、っ、ひっく。う、うぇ…』
「あぁ、君は泣いても美しいけれど僕の意思で泣いてくれていないのは実につまらないな。ほら、泣き止んで僕にもう少し詳しく説明してご覧よ」
『う、ぅん』
革の手袋をはめた親指がななしの目尻に溜まった涙を拭って、優しく撫でる。
そんな優しい動作にすりよるななしをステファノは見つめた。
彼はカメラをかまえたくてうずうずしているが、それをぐっと堪えななしが話し出すのを待った。
ぽつりぽつりと呟くように言葉を紡ぐななし。
彼がいうには目が覚めたらユニオンシティにおり化物(おおかたヒステリックだ)に刺され、気づいたらベッドにいたそうだ。 普通ならありえない話だが如何せんここはSTEM。何が起こるかはわからない。
「あはは、あながち夢ではないかもしれないね、それ」
『…アンタはそうやってすぐひどいことを言うんだ』
「ごめん、ごめん、もう二度と同じことは繰り返さないとは思うけど…もしそうなったら。その場を動かない方がいい。彼らはみみざといからね。足音だけでも君を発見するだろう。だからそういう時は何もせずに隠れて、僕が来るのを待っていた方がいい」
『本当に来てくれるのかよ?遅かったらまた刺されて死んじゃうかんな』
「死なせないよ。君の生死を握っていられるのは僕だけだからね」
『…嬉しくない』
「冗談だよ。さぁ、寝なくていいのかい?」
『寝ないもん。また嫌な夢見るし…』
リアルすぎる夢など二度とゴメンだ。それにその夢で死ぬのも。
ステファノが生死を握っているというのも気に食わないが、何より嫌なのは痛みだ。耐え難い苦痛など1度で十分だ。
寝ないからね!とステファノにしがみついたまま離れないななし。
困ったね、とあながち満更でもないような顔つきでお手上げポーズをするステファノ。
「じゃぁ、オブスキュラと僕とななしで眠るかい?」
『ぇ?ステファノさんって寝るの?』
「眠りは必要ないだけで眠れないわけじゃない」
『オブスキュラは?』
「オブスキュラは寝ないよ。ベッドになってもらう」
『…寝る』
「ははは。そうだろうね。目がトロンとしてる」
「さぁ、オブスキュラ。ここに座って」とベッドを指さす。オブスキュラは楽しげに三本の足でベッドに飛び乗るとさぁ、おいでとばかりに大きな手を広げた。
すかさず飛び込むななし。ステファノもあとに続いた。
『オブスキュラってひんやりしてるよね』
「まさに芸術だね」
『はいはい』
「おやすみ、ななし」
『おやすみなさい、ステファノさん。オブスキュラ』
肉と骨と血で作られ、歪な体をしたオブスキュラに寄りかかりながらななしは小さく丸まった。
そんなななしをステファノは優しく抱きしめる。
すぐに寝息が聞こえ始めると、ステファノとオブスキュラはホッとしたように力を抜いた。
「なかなか手のかかるアートだよ。だが、そこがいいんだ」
眠るななしの額にキスをし、ステファノもゆっくりと目をとじたのだった。
終わりは始まりと言うけれど
(終わってしまえば意味が無いのです)