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『ちっ…』
しくじってしまった。
目の前には豪華な椅子に座り銃を見ながら楽しげにわらっている男がいる。彼はななしらのファミリーとは対立関係にある組織のいわばボスである。
普段情報を収集するのがななしの仕事。前衛、もしくは戦闘はななしの管轄外である。
その為に出かける時は腕利きの小隊員をつれるか、おそ松達と行くか。そうでもしなければ対立している組織にすぐ捕まってしまう。ななしはそれほどに弱く、なにもできない。
なのに、捕まってしまったのはおそ松らが今朝その対立マフィアに乗り込んだ為気を緩めていた。チョロ松からはっきりと「終わっから今帰る」と電話をもらった時、既にななしの緊張や危機感はすべてなくなっていた。
トド松から頼まれたミネストローネを作る材料を買いに行く途中。いとも簡単に捕まってしまった。
気が緩んでいたにしろ、あってはならない失態だ。昨日カラ松に似た気な話をしたためことさら歯がゆく、悔しい。
縄で縛られた手をなんとか動かし携帯を探す。
1度一松から関節を外す技を教えてもらったがななしにはできなかった。何より痛みが強く一松以外にはできなさそうだ。
「ガサガサやってるねぇ、それで助けを呼ぶんだ?」
『……』
「アンタのとこは死神の次男がいるんだろ?」
『……っ』
「例えここに来たって死ぬし、来なくたって死ぬ。だから、携帯でも何でも探しな。俺は止めないよ」
男は控えている部下からウィスキーを受け取り飲み込む。至極愉快そうにしている真意は定かではないがそれすら不愉快であるななしは歪めた顔で舌打ちする。
男が言うのは確かなこと。
カラ松と約束した。
「捕まったらその手で殺してくれ」と。頷きこそしなかったが死神はきっとエリート中のエリート。
被害が最小限に済むなら弟も殺すだろう。いつも胸に刻まれている掟。忘れてはいないが人間である以上死にたくないともやもや不思議な気持ちになる。
そう思うと足でまといであったなと走馬灯にもにた記憶が頭をかすめた。
『いい、でもまだまって』
「?」
『……お前みたいなやつには殺されたくない』
「ほぉ、肝が座ってるんだな」
『……これは、兄さんだけしか駄目…』
「健気な奴は嫌いじゃないぜ、ほら」
『…い、いらないから』
「一つだけ選択肢をやるよ」
『……は?』
「俺のファミリーに入れ」
『っ、』
男の指輪だらけの指がななしの顎を掬った。
続け様に「殺しはしない」と言う。
生き続けられるのはとても素敵で魅力的なことだ。しかしそこにカラ松や兄弟達、小隊の仲間がいないのであれば意味を持たない。
ななしが生きる意味は彼らと共に生きることにある。ましてや、敵と生きるというならば死を決断した方がましだ。
顔をそらし手から逃げる。何も言わずに下を向いていれば部屋の外がガヤガヤ騒がしくなる。
部下らが駆け出していく中、銃声と怒号が響いてくる。
「ななしっ!!」
「無事!?」
『……っ、無事だけど…』
「おっと、よるなよお前ら」
やはりおそ松達は強く。雑魚など1発らしい。
怪我一つしていない彼らを一瞥した男はななしの頭に銃を突きつけた。瞬間ざわめく仲間。死はそこまで来ている。
しかしななしはそれどころではなかった。
おそ松、チョロ松、一松、十四松、トド松。何度見てもカラ松の姿はなかった。
せめてこの馬鹿な男の手にかかるくらいなら殺して欲しいと思っていた。昨日の夜もそう約束した。しかしカラ松は現れなかった。ある意味それはなによりも残酷だ。
殺すでもなく、姿を現す訳でもなく、見放す。
カラ松にとって捕まったななしは面倒臭いものでしかないのだ。
『……カラ松、兄さんは?』
「ななし、カラ松は…」
「別件だよ!!な!トド松!」
「そう、だね、また足のつかない金がどうとか騒いでたよ」
『……っ、そうか、殺してもくれないか、死神は』
「可哀想な奴。見捨てられたんだよ。でもどうだ?お前の望んだ結果だろ?死神は足でまといを排除した。それだけだ、なにも悲しむことは無いだろ」
『……そうだね』
「ななし!話聞いちゃダメだって!俺ら来たじゃん!」
「そうだよ、助けてあげるから!」
「あぁ、こら!動くなよ?こいつマジで死ぬぞ?」
「くそっ、…ななし、頼むから顔を上げてくる」
そんななにもかも諦めた顔するなよ。
チョロ松が悔しげに唇をかみしめた。
顳かみに当てられたひんやりしたマズル。セーフティレバーがかちりと解除されいよいよななしは瞳を閉じた。
願わくば、カラ松に殺されたかった。それがかなわないならせめて本当に足でまといになる前に誰でもいい。殺して。
閉じられた瞳から流れた涙に銃を持っていた男はトリガーを引いた。
「ななし!!」
おそ松が叫んだ。
同時にパァアンと一つの銃声が響いた。
『……ぁ、れ?』
痛みやその他の感覚は涙を流したななしには訪れなかった。
どこか的外れな場所から煙が上がっている。
「よぉ」
低く唸るような声。
ななしには聞き覚えがあり過ぎてさらに涙を流したのだ。
男の頭上から現れたカラ松。
銃を撃つ男の腕を蹴りあげ軌道を変えたのだ。ななしを背に回すと持っていたコンバットナイフを男の喉元に突きつけた。
まるで瞬きの間に行われた所業に、おそ松達は驚く。
これが"死神"と言われた男。
「接近戦は、こっちの方が有利なんだ、知らなかったか?」
「っは!死神が!甘っちょろいんだよ!!」
「……死神なんて、買い被りすぎだ」
カラ松は容赦なくコンバットナイフを突き刺した。
溢れ出した血を避けるように二、三歩下がる。
ななしに向き直ると縄をナイフできり、未だに現状を飲み込めない彼を優しく抱きしめた。
「……ななし、」
『……は、はは、殺す相手を、間違えてる』
「あぁ、そうだな、」
『……』
「ななし、約束をしよう」
『……?』
「いつか、またこんな事が起きたら俺はお前を殺すだろう。約束だ」
『うん、約束』
「は、はぁ!?そんな約束にいちゃん許さないから!?」
「ていうか!来るならはじめから…も~う!ななしが泣いてた時カラ松兄さんガチで殺そうと思ったじゃん!!」
「死神を、か?」
「クソ松、買い被ってんのどっちだよ。死ね」
「そうだな。死神を買い被ってるのは俺かもしれないな」
「ん?兄さんが死神なに兄さんを買い被ってんの?よくわかんないや!!」
「…わかんなくていいよ。十四松。カラ松、ななしを泣かせたこと僕は許さないけど。君のいう約束、きちんと果たしてね」
「な、何言ってんだよチョロ松!!」
「そうだよ!シコ松兄さん!」
「シコ松いうな!はぁー、この先"2度も同じような事"が起きたならの約束だろ」
「は、は?」
「馬鹿松とトッティは黙ってなさい。さぁ、帰るよ」
既にななしとカラ松は外に出ていた。
革手袋をした手でななしの目尻をなでるカラ松。どうやら涙は止まったらしいが赤く痛々しい。
その感覚が妙にくすぐったくもあり肩を縮こませた
ななし。
カラ松は堪らずななしに口付けをした。
「……約束、果たせる日が来るといいな」
『……どうだろう、そんな日は来るかなぁ?』
「はっ、来ないさ。俺が隣にいる限りは」
またこんな事が起きたなら俺はお前を殺すだろう
その言葉の裏には2度とななしを攫わせないという強い信念が込められている。そう、そばにいてやればななしが他のマフィアにさらわれることは無い。
それに気づいたのはチョロ松とカラ松とななしだけ。
『……ん!』
「どうした?」
『……ミネストローネの材料買わなくちゃ』
「しょうがないな、付き合うさ」
『……カラ松兄さんはそばにいなくちゃいけないもんね?』
「俺は死神なんかじゃなくて、ななし直属のボディーガードだな」
再びキスを交わして、ゆったりと歩き出した。
2人は約束が途切れてしまわないように、ずっとずっと手を繋いでこの先も歩いていくと誓ったのだ。
死神達は嘘を吐き続ける
しくじってしまった。
目の前には豪華な椅子に座り銃を見ながら楽しげにわらっている男がいる。彼はななしらのファミリーとは対立関係にある組織のいわばボスである。
普段情報を収集するのがななしの仕事。前衛、もしくは戦闘はななしの管轄外である。
その為に出かける時は腕利きの小隊員をつれるか、おそ松達と行くか。そうでもしなければ対立している組織にすぐ捕まってしまう。ななしはそれほどに弱く、なにもできない。
なのに、捕まってしまったのはおそ松らが今朝その対立マフィアに乗り込んだ為気を緩めていた。チョロ松からはっきりと「終わっから今帰る」と電話をもらった時、既にななしの緊張や危機感はすべてなくなっていた。
トド松から頼まれたミネストローネを作る材料を買いに行く途中。いとも簡単に捕まってしまった。
気が緩んでいたにしろ、あってはならない失態だ。昨日カラ松に似た気な話をしたためことさら歯がゆく、悔しい。
縄で縛られた手をなんとか動かし携帯を探す。
1度一松から関節を外す技を教えてもらったがななしにはできなかった。何より痛みが強く一松以外にはできなさそうだ。
「ガサガサやってるねぇ、それで助けを呼ぶんだ?」
『……』
「アンタのとこは死神の次男がいるんだろ?」
『……っ』
「例えここに来たって死ぬし、来なくたって死ぬ。だから、携帯でも何でも探しな。俺は止めないよ」
男は控えている部下からウィスキーを受け取り飲み込む。至極愉快そうにしている真意は定かではないがそれすら不愉快であるななしは歪めた顔で舌打ちする。
男が言うのは確かなこと。
カラ松と約束した。
「捕まったらその手で殺してくれ」と。頷きこそしなかったが死神はきっとエリート中のエリート。
被害が最小限に済むなら弟も殺すだろう。いつも胸に刻まれている掟。忘れてはいないが人間である以上死にたくないともやもや不思議な気持ちになる。
そう思うと足でまといであったなと走馬灯にもにた記憶が頭をかすめた。
『いい、でもまだまって』
「?」
『……お前みたいなやつには殺されたくない』
「ほぉ、肝が座ってるんだな」
『……これは、兄さんだけしか駄目…』
「健気な奴は嫌いじゃないぜ、ほら」
『…い、いらないから』
「一つだけ選択肢をやるよ」
『……は?』
「俺のファミリーに入れ」
『っ、』
男の指輪だらけの指がななしの顎を掬った。
続け様に「殺しはしない」と言う。
生き続けられるのはとても素敵で魅力的なことだ。しかしそこにカラ松や兄弟達、小隊の仲間がいないのであれば意味を持たない。
ななしが生きる意味は彼らと共に生きることにある。ましてや、敵と生きるというならば死を決断した方がましだ。
顔をそらし手から逃げる。何も言わずに下を向いていれば部屋の外がガヤガヤ騒がしくなる。
部下らが駆け出していく中、銃声と怒号が響いてくる。
「ななしっ!!」
「無事!?」
『……っ、無事だけど…』
「おっと、よるなよお前ら」
やはりおそ松達は強く。雑魚など1発らしい。
怪我一つしていない彼らを一瞥した男はななしの頭に銃を突きつけた。瞬間ざわめく仲間。死はそこまで来ている。
しかしななしはそれどころではなかった。
おそ松、チョロ松、一松、十四松、トド松。何度見てもカラ松の姿はなかった。
せめてこの馬鹿な男の手にかかるくらいなら殺して欲しいと思っていた。昨日の夜もそう約束した。しかしカラ松は現れなかった。ある意味それはなによりも残酷だ。
殺すでもなく、姿を現す訳でもなく、見放す。
カラ松にとって捕まったななしは面倒臭いものでしかないのだ。
『……カラ松、兄さんは?』
「ななし、カラ松は…」
「別件だよ!!な!トド松!」
「そう、だね、また足のつかない金がどうとか騒いでたよ」
『……っ、そうか、殺してもくれないか、死神は』
「可哀想な奴。見捨てられたんだよ。でもどうだ?お前の望んだ結果だろ?死神は足でまといを排除した。それだけだ、なにも悲しむことは無いだろ」
『……そうだね』
「ななし!話聞いちゃダメだって!俺ら来たじゃん!」
「そうだよ、助けてあげるから!」
「あぁ、こら!動くなよ?こいつマジで死ぬぞ?」
「くそっ、…ななし、頼むから顔を上げてくる」
そんななにもかも諦めた顔するなよ。
チョロ松が悔しげに唇をかみしめた。
顳かみに当てられたひんやりしたマズル。セーフティレバーがかちりと解除されいよいよななしは瞳を閉じた。
願わくば、カラ松に殺されたかった。それがかなわないならせめて本当に足でまといになる前に誰でもいい。殺して。
閉じられた瞳から流れた涙に銃を持っていた男はトリガーを引いた。
「ななし!!」
おそ松が叫んだ。
同時にパァアンと一つの銃声が響いた。
『……ぁ、れ?』
痛みやその他の感覚は涙を流したななしには訪れなかった。
どこか的外れな場所から煙が上がっている。
「よぉ」
低く唸るような声。
ななしには聞き覚えがあり過ぎてさらに涙を流したのだ。
男の頭上から現れたカラ松。
銃を撃つ男の腕を蹴りあげ軌道を変えたのだ。ななしを背に回すと持っていたコンバットナイフを男の喉元に突きつけた。
まるで瞬きの間に行われた所業に、おそ松達は驚く。
これが"死神"と言われた男。
「接近戦は、こっちの方が有利なんだ、知らなかったか?」
「っは!死神が!甘っちょろいんだよ!!」
「……死神なんて、買い被りすぎだ」
カラ松は容赦なくコンバットナイフを突き刺した。
溢れ出した血を避けるように二、三歩下がる。
ななしに向き直ると縄をナイフできり、未だに現状を飲み込めない彼を優しく抱きしめた。
「……ななし、」
『……は、はは、殺す相手を、間違えてる』
「あぁ、そうだな、」
『……』
「ななし、約束をしよう」
『……?』
「いつか、またこんな事が起きたら俺はお前を殺すだろう。約束だ」
『うん、約束』
「は、はぁ!?そんな約束にいちゃん許さないから!?」
「ていうか!来るならはじめから…も~う!ななしが泣いてた時カラ松兄さんガチで殺そうと思ったじゃん!!」
「死神を、か?」
「クソ松、買い被ってんのどっちだよ。死ね」
「そうだな。死神を買い被ってるのは俺かもしれないな」
「ん?兄さんが死神なに兄さんを買い被ってんの?よくわかんないや!!」
「…わかんなくていいよ。十四松。カラ松、ななしを泣かせたこと僕は許さないけど。君のいう約束、きちんと果たしてね」
「な、何言ってんだよチョロ松!!」
「そうだよ!シコ松兄さん!」
「シコ松いうな!はぁー、この先"2度も同じような事"が起きたならの約束だろ」
「は、は?」
「馬鹿松とトッティは黙ってなさい。さぁ、帰るよ」
既にななしとカラ松は外に出ていた。
革手袋をした手でななしの目尻をなでるカラ松。どうやら涙は止まったらしいが赤く痛々しい。
その感覚が妙にくすぐったくもあり肩を縮こませた
ななし。
カラ松は堪らずななしに口付けをした。
「……約束、果たせる日が来るといいな」
『……どうだろう、そんな日は来るかなぁ?』
「はっ、来ないさ。俺が隣にいる限りは」
またこんな事が起きたなら俺はお前を殺すだろう
その言葉の裏には2度とななしを攫わせないという強い信念が込められている。そう、そばにいてやればななしが他のマフィアにさらわれることは無い。
それに気づいたのはチョロ松とカラ松とななしだけ。
『……ん!』
「どうした?」
『……ミネストローネの材料買わなくちゃ』
「しょうがないな、付き合うさ」
『……カラ松兄さんはそばにいなくちゃいけないもんね?』
「俺は死神なんかじゃなくて、ななし直属のボディーガードだな」
再びキスを交わして、ゆったりと歩き出した。
2人は約束が途切れてしまわないように、ずっとずっと手を繋いでこの先も歩いていくと誓ったのだ。
死神達は嘘を吐き続ける