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何故こんなふうにもやもやしなければならないんだろうか。
一枚の板チョコを手で遊ばせながらななしははぁっと長く深いため息をつく。
先程まで赤のリボンが可愛らしく付いていた板チョコも手の中でじわじわ溶け、リボンもほどけ始めている。やるせないと言うよりは少しだけムカムカする。行き場のない気持ちを抱えながら瞬きをして、再びため息。
三角座りしたまま壁にせをあずけてどうしてこんな気持ちになったのか、ぼんやり先程の出来事を思い起こしてみる。
それはたまたまトド松と2人で外をぶらついている時だった。なにをするでもなく駄弁りながら歩いていた。
トド松がバレンタインって太るよねと軽くチョコレート貰ってますよ発言をしてななしに自慢する。ななしもバイト先では少なからずもらって入るが太るほどももらってはいない。
別段どうだっていいのだがトド松の勝った!感が非常にうざったらしくもあったため、ななしは彼のみぞおちを軽くつつく。
そんな可愛らしいやり取りをしていればちょうど行きつけのパチンコ屋の店が見えた。勿論行きつけなのはななし以外だ。
そのまま気にもとめず過ぎ去る予定だったのだが、ななしには見逃せないものがチラリと視界に入ったのだ。
ちょうどトド松も見ていたようで二人の足はピタッと止まる。
「うわぁ、おそ松兄さんじゃないあれ?と、トト子ちゃんもいるし」
『……なにしてるんだろ』
「あー、ちょ、ななしななし!」
『?』
「こっちから見てみなよ!あれは!」
『……っチョコレート…?』
二人がたまたま目撃したのはトト子がおそ松に綺麗にラッピングされた何かを渡しているところであった。今日はバレンタイン、あれは絶対に甘いお菓子にちがいない。
おそ松が顔を赤らめながら得意げに鼻の下をこする。トト子も満更ではないみたいであった。
「まぁ、あれでいてなんとなくモテるからねおそ松兄さんは」
『……ありえない』
「わかるよ、その気持ち。ありえないよねー」
『……っ、帰る』
「え?あ、ななし!」
後ろでトド松が「まって」と叫ぶ声が聞こえたが、正直それどころでないななしは足早に我が家を目指す。
ドタバタ家に上がり込んで七つ子ルームに入る。ななしの服をしまってあるタンスを開けて下に埋めるように隠してある板チョコを取り出してから冒頭に至るのだ。
溶けてぐしゃぐしゃになったチョコレートを床においてななしは足に顔を埋めた。
おそ松とトト子、二人が楽しげに話していた場面が頭から離れない。
嫌だなぁ
それは率直な感想。
おそ松がチョコレートを貰っていたことも、トト子がおそ松にチョコレートをあげたことも全部全部。
それにトト子がおそ松に渡したチョコレートのあの見事なラッピング。赤色のリボンが綺麗に巻かれて高級そうな包装紙に包まれていた。それに比べて自分がおそ松に渡そうとしている板チョコのつまらないこと。恥ずかしくて渡せそうにもない。
思考がだんだん暗くなりななしのテンションも底なしに下がっていく一方。
『はぁ』
いっそ、バレンタインなんてなければなぁなどと身も蓋もないことを呟いてみるが現状は変わらず。
仕方ないとななしは板チョコに手を伸ばす。
彼に渡せず捨てるなくらないなら自分で食べてしまおう。
封を開ければ瞬間に甘い香り。とけているからなおさらだ。チョコレートを一口サイズに割りながらもぐもぐ食べていく。スウィートチョコレートなだけあってかなり甘い。
せっかくおそ松にあげようとしたチョコレートは見るも無残なほど、ボロボロに。
それなのにちっとも気持ちが晴れやかにならないのはなぜなのか。