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「ななし、何してるの?」
『……あ、一松兄さん』
「フッ、今日は俺とマイブラザー2人か」
『と、カラ松兄さん』
茶の間の扉を開いたのは寝癖をつけた一松と鏡を持ったカラ松。
茶の間の炬燵でなにか作業をしているななしを発見した一松は、後ろから抱きつくようにしてすわった。
今の今まで寝ていた一松の温いこと。回された手に頬を緩めながらななしは『これ』と一松に1枚の紙を渡した。
「……激安、一人暮らしするならここ。お得なマンション特集」
「ひ、一人暮らし?」
「好条件…ペットも可……は?」
『……はって、はぁ?だよ。一松兄さん』
「ななし、ひ、一人暮らしするのか!?」
「本気?」
『……母さんからの了承も得たし』
「「駄目!」」
『……え?なんで』
「駄目なものは駄目なんだ!」
「許さないし」
はい、許可しませんとばかりに2人は否定的な言葉を吐く。
それにむっすとしたななしはさらに広告を漁る。
目星をつけた物件を片っ端からインターネットでしらべ、小さなメモ用紙にメモしていく。
既に家具などの金も書き出されておりななしが如何に本気かが伺える。
しかし、カラ松も一松も非ー常に不本意だ。ななしが一人暮らしなんて考えられない。可愛い可愛い末弟が一人暮らしなんて冗談じゃない。俺も連れてけ…ではなくて、なにがなんでも阻止し手元から離れないようにしなければならない。
カラ松も一松も考えは同じだ。
いつもなら考えられないが、ここは一致団結する他ない。
「ななしは何故一人暮らししたいんだ?」
『……逆にカラ松兄さんは一人暮らししたくないの?不思議』
「っ…」
『……まぁ、ニートだしね』
「うっ」
弟、しかも可愛らしい顔つきで馬鹿にされたカラ松のダメージはかなり深手だ。鏡を持ったまま白くなるカラ松の足を思い切り蹴りながら一松は小さく舌打ちする。
…チッ、早から使い物にならなくなった。クソ松が。
「いいの?一人暮らしなんてして」
『?』
「幽霊怖いんでしょ?」
『……っ、こ、怖くないし』
「知らないよ。怖い夢見たって隣にいるトド松もクソ松もいないし、俺達もいない。トイレいけんの?」
「そうだ、怖くてもても繋げなくなるんだ。いいのか?」
『…っ、……』
「は?クソ松、手繋いでんの?」
「?時々。ななしが寝れない時はだいたいつなぐぞ?」
「クソ松が、ぶちのめすぞ」
「え」
『……お、俺怖くないもん。インコ飼う予定だし…』
一松の手に収まるななしの肩がプルプル震えているのに気がつく。
どうやら心底迷っているみたいだ。そんなに幽霊が怖いのか!と、思いつつあと一押しだと、カラ松と一松はアイコンタクトをする。
「あ、この物件」
『……目星つけてるやつ?』
「ななし、そこに暮らすの?あーぁ、ご愁傷様」
『ぇ、な、なに。一松兄さんっ』
「……そこ、地縛霊でるから」
『…え、』
「一松の言う通りだ。そこには出る。十四松も言っていた」
全~部嘘なのだが、ななしの顔は青白くなった。信じたようである。
よくこんな嘘が並べられるなとお互いに呆れつつもななしが一人暮らしを取りやめるなら万々歳だ。
よし、言いくるめるぞ。一松。
…ウザ、まぁ。わかったけど。
え、
「ほら、ななしにはまだ早『……でも、』…?」
『……一人暮らしするし。決めたから』
「!?(ここまで来てまさかの事態!?)」
「ななし頑なだね(落ち着けよクソ松が。ぶっ殺すぞ)」
「(え)」
『……一松兄さんも、カラ松兄さんも頑固』
「じゃあ、いいの?」
『……』
「もう二度と会えないよ?」
『……あ、会えないはオーバーでしょ?』
「いや、会えないぞななし。朝飯を一緒に食えなくなるし、昼間だって一緒にいられなくなる」
「俺と散歩もできないし、皆でお風呂もいけない」
「背中の流しあいもなくなるし、クイズ大会も、コーヒー牛乳もなくなるんだ」
「一緒に寝れなくなるし、プロレスごっこもできない」
『…っ、』
「それで、いいのか?」
「ななし?」
『……うっ、』
一人暮らししたいという願望は高校生の時からずっとあったななし。
しかしカラ松や一松が言う今までの日常を、無くしたくないのも事実。
皆で馬鹿し合うのも、一緒に遊ぶのも楽しかった。
一人暮らししたら、そんな楽しさも消えてしまうのか。
それは、寂しいんじゃないか。
ななしの心はぐらつき始めた。
「俺はまだななしといたい。ダメか?」
「俺もななしがいなきゃ、何するかわかんない。一緒にいてよ」
『…カラ松兄さん、一松兄さん』
「ななし…」
「…ななし」
『う、う、』
「え!?ななし!!」
「ななしっ!」
2人の圧に、視線に耐えられなくなったななしは俯き泣き出してしまった。
本当は多分みんなと離れたくない。さみしいのも怖いのも嫌だ。
だけど一人暮らしできないのもいやだ。
わがままで思考回路がめちゃくちゃになったななしは泣くしかなかった。
それに驚いたのはカラ松と一松だ。
肩が震えだしたあたりから雲行きが怪しかったがまさか泣き出すとは思わなかった。
正面にいたカラ松も慌ててななしの元に駆け寄り優しく頭をなでる。
『…っう。う、』
「すまない、混乱してしまったな」
「まじないから。クソ松死んで詫びて」
「え」
「泣かないでくんない?ななし。ほら」
『ぅぐ、』
一松は強引にななしを抱き寄せる。ななしの頭に乗っていたカラ松の手を弾いたが、問題はない。
よしよしと背をさすりながら机の広告に目を移す。
顎で広告をさせばカラ松はこくりと頷いた。やることは1つ。
抹消!
カラ松は力の限り広告をぐしゃぐしゃにして、ゴミ箱に放り入れた。
「あ、一松とカラ松だ。珍しいね2人でいるの……あれ?一松なにしてんの?」
『ぁ、おそ松兄さんっ、』
「……ふぅん。カラ松、一松」
運悪く帰ってきたおそ松。
このあと再びひと悶着起きるわけだが、結局ななしの一人暮らしは消滅したのだった。
「あ、チョロ松帰ってきた!チョロ松ー」
「なに。うるさいな。……は?何したの?カラ松、一松」
悪魔が2人、降臨なさいました。
馬鹿と馬鹿と馬鹿
(みーんな馬鹿です)