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『俺、カラ松が好きなんだ』
そうななしから聞いたのは一体いつだったか。
あいつがクソ松を好いていたのはだいぶ前、あいつ自身がいう前からなんとなくわかってた。クソ松を見る目だとか、仕草だとか。生憎気づいてないのはクソ松本人だけ。
それでも健気にアピールしていたななしに少なからずイラついた。同級生でいつだって一緒にいた俺ではなくてクソ松を、好きになったから。6つ子なんだ、顔も変わらないのになぜクソ松なんだ。
ムカつく。
高校三年、最後のお正月。
年越しは家で過ごした。問題は明日。ななしに頼まれてしまったことがある。クソ松と初詣に行きたいらしい。
あいつは馬鹿だから何度相談されたって俺は適当だし。生返事しかしてない。それでもクソ松が好きなんだから正直かなり好きなんだろうと思う。けど、仲を取り持つ気なんてななしにカミングアウトされた瞬間からさらさらなかったから。
結局、明日の初詣だってクソ松に伝え
なきゃそれで終わりだ。
意味なんてない。ななしは俺を信用しすぎ。何もわかってない。俺の気持ちも。
「…面倒くさ」
結局いい策なんて思い浮かびもしないまま朝。ななしはクソ松を好きなんだって考えただけで進展すらしなかった。隣で口開けてねるクソ松にどれだけ蹴りを入れたことか。一度も起きなかったこのバカはかなり鈍いらしい。
携帯にはななしからのLINEが数件来ていた。大丈夫だった?どう?一松まだ寝てる?の三件。俺は、適当に夕方4時に神社裏とだけを書いてディスプレイを消す。
ただ、なにも策が無いまま俺は4時までまだまだあるため二度寝した。
次に目が覚めたのは昼。十四松が来た。
「兄さん、なんか、嬉しそうだね?」
「は?」
「いいことあった!?」
「…強いていうなら今からあるかも」
「そっか!よかったね!あ、お昼食べようよ!」
「…うん」
十四松に手を引かれて起き上がる。
寝ぼけ眼で歩いていたせいで柱に頭をぶつけた。ムカつく。
「なぁなぁ!初詣いこうぜ!」
「いいな。おそ松」
「人いっぱいだろうねぇ。でも明日も変わらないか」
「くじ引く!」
「大吉だといいねー」
「一松もいくだろ?」
「…4時にいかない?」
「別に構わないよ?な?カラ松!」
「平気だが、なにかあるのか?」
「…別に」
4時。
ゆったり歩いて神社にむかう。
賑やかそうな兄弟の数歩後から俺も行く。足元にいる猫を見ながらポケットにあるものにサラリと触れる。
もし、うまく行けばななしは実際誰でも良かったことになる。
罠。といはうにはかなり浅はかな作戦であるが、6つ子という事は生かしてもいいと思う。
どうせ、すぐ、卒業だし。最悪うまくいかなくたっていい。
ただクソ松を見るのをやめさえすればそれでいい。
兄さん達から離れて神社のうらっかわにまわる。木に隠れて見てみればななしはすぐに見つかった。マフラーを巻いていて鼻先までもちあげている。登校中もいつもそうだ。
ポケットから俺はサングラスをだした。クソ松から盗んできた。
『カラ松?』
「…」
『遅かったね』
「…」
『カラ松?』
ほら、黙ってたら見分けなんてつかないんじゃん。ななしにとってはクソ松も俺も変わらないんだろ。だったらそんなの何だっていいじゃん。
クソ松が俺でも構わないだろ。
俺は首をかしげるななしに近寄り、ななしが口を開く前に胸ぐらをつかんで強引にキスをした。
もう、これで言い訳なんてできない。既成事実、キスしたのは紛れもない事実。
顔を赤らめてこちらを見るななし。ばらさなくてもいいんだけど、それじゃ、あまり意味が無い。俺はサングラスをとって、小さく名前を呼んだ。
『い、一松!?』
「…やっと気づいた?」
『な、何してっ、俺、俺!』
「…ななし、誰でもいいんだ」
『違う!!』
「…だって、キスした」
『一松が強引に!!』
「…俺のせいにするの?嫌だって思えば振り解けたしそうしなかったのはアンタだろ。あんまり調子のいいこと言うなよ」
『っ、い、ちま、つ、』
あーあ、ないちゃった。
でも、泣いた顔結構そそる。
でもまだダメ。ななしがクソ松を諦めるまでとめてはいけない。
「所詮、女と一緒。顔なんて誰でもいい。言い当てれないなら意味無いし。好きだなんて嘘になる」
『ひどいっ、一松』
「酷いのはどっち?」
『ん、っ!!?』
なんだよ。ひどいって。それは俺だけはが悪い?ななしがクソ松と俺を簡単に間違えたことはもっとひどい。だってそれは俺達を否定するのと同じ。
誰が誰でも同じなら1人でいいじゃん。なんで六人いるわけ?
むかついたから。マフラーをひっぱってまたキスした。
「…ななし?一松?」
あー、マジウザイ。タイミング考えろよ。クソ松。
茂みから来たクソ松はキスしている俺らを見て真っ赤になった。童貞が。
かと思うとつかつかやって来て強引に引き離す。
「痛いんだけど」
『か、ら松』
「なにをしてるんだ!一松」
「は?キスだけど」
「ななしが泣いているだろ!」
「……泣いてるからなに?ばっかじゃないの?」
「ななし大丈夫か?」
『…カラ松……俺っ、』
「そのバカ。俺とお前間違えたんだよ」
「っ、」
『一松っ』
「初詣デートしたかったんだって。ちょうどいいじゃん。デートしてやりなよ」
『ひっ。うっ…ふ』
「一松」
「っつ、」
バカ力。殴られた頬が痛いし。
クソ松が怒った。は?怒りたいのはこっち。
クソ松が泣きじゃくるななしの肩をだく。恋人気取りかよ。一々腹がたつ。
「一松。見損なったぞ」
「勝手に言ってれば」
「…ななしを騙そうとしたこと自体が俺には驚きだ」
「案の定ひっかかってさ、馬鹿みたいだよね」
「…好きな相手をためすな、ななし立てるか?」
「は?ためす?」
「男なら真正面から伝えた方がいい。どんな時だって」
ななしの手を引くクソ松。
イラつくイラつくイラつくイラつくイラつくイラつくイラつくイラつくイラつくイラつくイラつくイラつくイラつく!!
好かれてるやつはなんとだって言える。結局好かれているんだから俺の気持ちなんて理解出来ないだろ。
一挙一動が腹をふつふつ怒らせる。
ななしに、触れるな。
ななしを、取るな
ななしを、返せ
「あ」
俺もななしが好きなんだ。
だからどうしろっていうんだよ。結局俺は俺のやり方しか知らないからこうなるんだ。
クソ松のサングラスを叩きつける。あっけなく割れて粉々になるサングラス。
脆いな。
そしてななしも酷く脆い。
俺もクソ松も。
やっぱり脆いんだ。
「だるっ」
壊さないようにななしを振り向かせられるだろうか。
叶わないならいっそ、壊れてしまえばいいのに。
end