短編 男主
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(仁王/同級生/付き合いたて/夢主←ブン太)
親友である丸井ブン太から「仁王はペテンだからお前も気をつけろよなぁ。言動全ー部嘘だぜ?」と聞いたのは昨日の休み時間。思わず『はぁ?』と声が漏れた。
その言葉は恋愛的な意味で雅治と付き合い出した自分には程々に似合わず、『なんでそういうことを言うんだよ』と思わずブン太の柔らかい頬をつねってしまった。
その言葉は自分は雅治との関係を崩壊させかねない。
恋愛で浮かれた(言い方は悪いが)自分達に何故、そうも無神経な言い方ができるのか。
とても空気の読めない発言に腹立たしくも感じたが、何か言いたげだったブン太に自分は深く言い返せずに『気にしないし』と素っ気なく返してしまった。
あれ以降特にブン太の態度が変わるわけでもなく問題なく授業や部活を終わらせ帰宅したのだが、どうにも落ち着かない。
"言動全ー部嘘だぜ?"
その言葉が頭から離れない。
それは自分と付き合ったことも含めているのだろうか。
大好きな雅治と付き合える喜びと幸福感で満たされていた心が、急に冷たく冷えきっていったのを感じた。無性に悲しくて、今すぐにでも雅治に会いたくなる。
スマホを手に取りLI〇Eを開けば一番上には雅治の文字。可愛らしいスタンプで会話は途切れている。
なにか会話をしようと開くのだが、指が動くことはなく。心に穴が開くような感覚に苛まれながらスマホをベッドに投げ捨てた。
「ななし」
優しくも低く、癖になるような声が耳にこだました。ゆっくりと瞳を開けば目の前には美しい銀色。鼻にかすめる銀色の髪にくすぐったくて仕方が無い。
見下ろしている雅治の少し長い前髪を耳にかけてやれば彼は少しはにかんだ。
そのまま雅治の頬に手を添え温もりを感じていれば、急にものすごい力でその手を払われた。
『えっ、ま、雅治?』
「やめるぜよ」
『っ、』
もう一度自分を見た雅治の口は笑っておらず、それどころか眉は怪訝そうに顰められている。
嫌そうな舌打ちが耳に届く。すると雅治はゆっくりと手を動かし自分の首に添えた。
苦しくない程度にキュッと力が入れられ、焦る焦る。
『な、なにするんだよ!雅治!』
「よぉ、見てみんしゃい」
『え?』
「俺の顔」
『…ま、雅治…っ』
「騙されるおまんの顔…なかなか面白かったぜよ?」
ヒュッと喉から空気が漏れる。
声も出せないくらいの衝撃だ。
雅治が自分から離れていく時、彼は小さく「全部嘘じゃ」と言うのだ。
上から退いた雅治の後ろ姿が見えてから、堰を切ったように涙が頬を伝っていく。
『や、やだぁ、雅治っ!雅治!!』
手を伸ばしてもどれだけ叫んでも彼が振り向くことはなく。
ただ1人残された自分はそこでひたすら涙を流していた。
『……ぁ、』
暗闇に紛れ自分の輪郭さえ見えなくなった。
なんとなく妙な感覚だ。そう思いゆっくり瞳を開ければ見慣れた天井。あぁ、夢だと理解し半身を起こせば頬が濡れていた。
泣いていたのかと頬をこすれば目に入ったのはスマホだ。
『あ、雅治から…L〇NE…』
"ななし"
"ななしー?"
"暇ナリ"
"寝とるんか?"
"プピーナ"
思わず笑ってしまうような変な言葉が数件並んでいた。
どう返信をするか考えあぐねていた時、LIN〇の画面がきりかわり雅治の文字が表示された。
電話だ。
少しためらったが、無視をするわけにも行かずにその電話に出る。
『はい?』
[はいとは酷いナリ。ななしの恋人なのにのぉ]
『うん、雅治。ごめんな』
[寝とったんか?]
『そう。いつの間にか寝てた。L〇NE気づかなくてごめん』
[ななし、おまん…泣いたんか?]
『え?』
[鼻啜っとるぜよ]
『き、気のせいだろ!』
[怪しいナリ…]
『な、泣いてないって!ま、また明日な!!』
そのまま通話をきる。
泣いているのがバレるのが嫌なんじゃない、泣いていた理由がバレるのが嫌なんだ。
雅治を信じていない訳では無いのに、なぜだか余裕が無くなりつつある。
あれもこれもブン太のせいだ。変なことを言うから。
もやもや。もやもや。
燻った気持ちは晴れることなどなく、むしろ広がっていく気さえする。
何も考えたくないとまた目を閉じる。眠った方が楽なような気がするから。
今度は夢を見ませんように。
祈るように手を合わせてから布団を被る。
しかしそれを遮るように再びスマホが身を震わせた。
『なに…』
手に取ればまた雅治から着信である。
出るのはためらわれた。先程無理やり切ってしまったから。しかし、雅治に嫌われるのは嫌だ。既に少なからず嫌われているような気がするが、この脆くも愛おしい関係を崩さぬようにスマホを手に取った。
『ま、雅治?』
[はぁっ、窓、開けんしゃい]
『え?』
雅治の声は嫌に途切れ途切れ。息が上がっているのだと気づく。そして窓を開けろの言葉にハッとした。
自分は急いで部屋から飛び出し階段を駆け下りる。母がうるさい!と叫ぶのを無視し、玄関を飛び出した。
『ま、雅治!』
「おぉ、ななし。でてきたんか?」
『な、なにしてんだよ…』
「こっちのセリフぜよ」
『んっ』
急いで走ってきたのか姿はスウェットだ。
髪も結われておらずいつもと少しだけ違う雅治に胸がどきりと脈打つ。
そんな雅治が白くも逞しい腕で自分を抱きしめた。
よろめいた自分を抱きとめ首筋に顔をうずめる雅治は「俺以外に惑わされるんはやめんしゃい」と小さく呟いた。
言っている意味がイマイチ分からず『うん?』と答えておく。
「ブンちゃんから聞いたぜよ」
『なにを?』
「ななしをからかったそうじゃのぉ」
「お、おい!仁王!!」
「仁王先輩!速すぎっしょ!!」
『あ、ブン太と赤也君だ』
抱きしめられたまま会話していると肩口から走るふたりの人物が見えた。
ブン太と赤也君。よく雅治の家にいるらしいが今日もそうだったらしい。
慌てた様子のブン太と走り疲れた赤也君がやって来ると雅治は「スタミナ不足じゃのぉ」と言ってのける。さっき息を切らしていたじゃんとはあえて言わないで雅治の腕のぬくもりを堪能した。
「とりあえずななしに謝るぜよ」
「はぁ!?やだね!」
「丸井先輩、早くあやまってくださいよー」
「うっ、なんだよー。赤也までぇ」
『…とりあえず謝ってブン太』
「便乗するなよ!」
「元はと言えばブンちゃんがななしをからかったのが発端ナリ。俺のななしを泣かせた罪は重いぜよ」
「わぁーたよぃ!ななしきにすんな、あれ嘘だし」
『あれ?』
「ペテンがどうとかだよ」
『あぁ、昨日の?』
「そうそれ」
『嘘?』
恐ろしい夢を見、泣くほど翻弄された言葉。
胸が苦しくて今後雅治と上手くやっていけるかそんな不安が胸を充満した言葉。
その言葉がブン太曰く。嘘だ、とのこと。
『ブン太ぁあ!』
「な、なんだよぃ!」
『明日弦一郎の刑に処す』
「はぁ!?」
「はは!名案すね!」
「赤也は黙ってろよ!」
「賛成ナリ」
「仁王!てめぇ!」
「言ったろ?俺のななしを泣かせた罪は重いって」
「とりあえずよくわかんねぇっすけどもういいんすか?」
『まぁ、俺は平気』
もやもやが少し晴れたから。
確かにコート場ではかなりの詐欺師らしい。
けれどいつの日か「好いとうよ」と言ってくれた雅治を疑うことだけはしたくなくて。
ブン太がそう言った本心はよくは分からないが、その言葉が嘘であるとわかった今心底安心した。
これで疑うことをせずにすむ。
よかった、よかったよ…そうひっきりなしに呟く自分の頭を撫でながら優しく抱きしめてくれる雅治とスキンシップをはかっていればブン太と赤也君は2人ともゆったり踵を返した。
横目で見つつ手を降れば赤也君がぶんぶんふりかえしてくれた。ブン太はまたなにか言いたげな顔だ。
『ブン太…何か言いたげだなぁ』
去っていくブン太の背中を見つめつつそう言えば雅治は驚いたように目を見開いたあと、「なかなか鋭いのぉ」と茶化してきた。
理由は分からないが自分は、鋭いらしい。
『じゃぁ、明日聞いてみる』
「やめんしゃい」
『えー?なんで?』
「ななしはしらんでいいことぜよ」
『ん?どういうこと?』
「いつか笑い話になる頃に教えてやるナリ。それまではブンちゃんに聞くのはやめんしゃい」
『うん?ん、うーん』
納得のいく答えかと聞かれれば否だが、考えようにも雅治が鎖骨を舐め上げたせいで思考停止だ。
雅治のいいように遊ばれながら自分はそんな彼にしがみつくしかなかった。
「丸井先輩ー」
「なに?」
「ドンマイケルっす」
「はぁ…」
初恋だったのだけどな。丸井はため息とともに肩を縮めた。
うざったい切原をむししつつ空を見上げればたくさんの星。
「女も男も星の数程ですよ丸井先輩」
「赤也…そんなロマンチックだったんだな、お前」
赤也になぐさめられるとは、と自嘲気味に笑いながら丸井は空に向かって小さく「幸せにしなきゃマジつぶすぜぃ、仁王ー!」と呟いた。
広大な星たちがその呟きを吸い込んだのだった。
隣接する愛たち
(そこら中に落ちてる)
親友である丸井ブン太から「仁王はペテンだからお前も気をつけろよなぁ。言動全ー部嘘だぜ?」と聞いたのは昨日の休み時間。思わず『はぁ?』と声が漏れた。
その言葉は恋愛的な意味で雅治と付き合い出した自分には程々に似合わず、『なんでそういうことを言うんだよ』と思わずブン太の柔らかい頬をつねってしまった。
その言葉は自分は雅治との関係を崩壊させかねない。
恋愛で浮かれた(言い方は悪いが)自分達に何故、そうも無神経な言い方ができるのか。
とても空気の読めない発言に腹立たしくも感じたが、何か言いたげだったブン太に自分は深く言い返せずに『気にしないし』と素っ気なく返してしまった。
あれ以降特にブン太の態度が変わるわけでもなく問題なく授業や部活を終わらせ帰宅したのだが、どうにも落ち着かない。
"言動全ー部嘘だぜ?"
その言葉が頭から離れない。
それは自分と付き合ったことも含めているのだろうか。
大好きな雅治と付き合える喜びと幸福感で満たされていた心が、急に冷たく冷えきっていったのを感じた。無性に悲しくて、今すぐにでも雅治に会いたくなる。
スマホを手に取りLI〇Eを開けば一番上には雅治の文字。可愛らしいスタンプで会話は途切れている。
なにか会話をしようと開くのだが、指が動くことはなく。心に穴が開くような感覚に苛まれながらスマホをベッドに投げ捨てた。
「ななし」
優しくも低く、癖になるような声が耳にこだました。ゆっくりと瞳を開けば目の前には美しい銀色。鼻にかすめる銀色の髪にくすぐったくて仕方が無い。
見下ろしている雅治の少し長い前髪を耳にかけてやれば彼は少しはにかんだ。
そのまま雅治の頬に手を添え温もりを感じていれば、急にものすごい力でその手を払われた。
『えっ、ま、雅治?』
「やめるぜよ」
『っ、』
もう一度自分を見た雅治の口は笑っておらず、それどころか眉は怪訝そうに顰められている。
嫌そうな舌打ちが耳に届く。すると雅治はゆっくりと手を動かし自分の首に添えた。
苦しくない程度にキュッと力が入れられ、焦る焦る。
『な、なにするんだよ!雅治!』
「よぉ、見てみんしゃい」
『え?』
「俺の顔」
『…ま、雅治…っ』
「騙されるおまんの顔…なかなか面白かったぜよ?」
ヒュッと喉から空気が漏れる。
声も出せないくらいの衝撃だ。
雅治が自分から離れていく時、彼は小さく「全部嘘じゃ」と言うのだ。
上から退いた雅治の後ろ姿が見えてから、堰を切ったように涙が頬を伝っていく。
『や、やだぁ、雅治っ!雅治!!』
手を伸ばしてもどれだけ叫んでも彼が振り向くことはなく。
ただ1人残された自分はそこでひたすら涙を流していた。
『……ぁ、』
暗闇に紛れ自分の輪郭さえ見えなくなった。
なんとなく妙な感覚だ。そう思いゆっくり瞳を開ければ見慣れた天井。あぁ、夢だと理解し半身を起こせば頬が濡れていた。
泣いていたのかと頬をこすれば目に入ったのはスマホだ。
『あ、雅治から…L〇NE…』
"ななし"
"ななしー?"
"暇ナリ"
"寝とるんか?"
"プピーナ"
思わず笑ってしまうような変な言葉が数件並んでいた。
どう返信をするか考えあぐねていた時、LIN〇の画面がきりかわり雅治の文字が表示された。
電話だ。
少しためらったが、無視をするわけにも行かずにその電話に出る。
『はい?』
[はいとは酷いナリ。ななしの恋人なのにのぉ]
『うん、雅治。ごめんな』
[寝とったんか?]
『そう。いつの間にか寝てた。L〇NE気づかなくてごめん』
[ななし、おまん…泣いたんか?]
『え?』
[鼻啜っとるぜよ]
『き、気のせいだろ!』
[怪しいナリ…]
『な、泣いてないって!ま、また明日な!!』
そのまま通話をきる。
泣いているのがバレるのが嫌なんじゃない、泣いていた理由がバレるのが嫌なんだ。
雅治を信じていない訳では無いのに、なぜだか余裕が無くなりつつある。
あれもこれもブン太のせいだ。変なことを言うから。
もやもや。もやもや。
燻った気持ちは晴れることなどなく、むしろ広がっていく気さえする。
何も考えたくないとまた目を閉じる。眠った方が楽なような気がするから。
今度は夢を見ませんように。
祈るように手を合わせてから布団を被る。
しかしそれを遮るように再びスマホが身を震わせた。
『なに…』
手に取ればまた雅治から着信である。
出るのはためらわれた。先程無理やり切ってしまったから。しかし、雅治に嫌われるのは嫌だ。既に少なからず嫌われているような気がするが、この脆くも愛おしい関係を崩さぬようにスマホを手に取った。
『ま、雅治?』
[はぁっ、窓、開けんしゃい]
『え?』
雅治の声は嫌に途切れ途切れ。息が上がっているのだと気づく。そして窓を開けろの言葉にハッとした。
自分は急いで部屋から飛び出し階段を駆け下りる。母がうるさい!と叫ぶのを無視し、玄関を飛び出した。
『ま、雅治!』
「おぉ、ななし。でてきたんか?」
『な、なにしてんだよ…』
「こっちのセリフぜよ」
『んっ』
急いで走ってきたのか姿はスウェットだ。
髪も結われておらずいつもと少しだけ違う雅治に胸がどきりと脈打つ。
そんな雅治が白くも逞しい腕で自分を抱きしめた。
よろめいた自分を抱きとめ首筋に顔をうずめる雅治は「俺以外に惑わされるんはやめんしゃい」と小さく呟いた。
言っている意味がイマイチ分からず『うん?』と答えておく。
「ブンちゃんから聞いたぜよ」
『なにを?』
「ななしをからかったそうじゃのぉ」
「お、おい!仁王!!」
「仁王先輩!速すぎっしょ!!」
『あ、ブン太と赤也君だ』
抱きしめられたまま会話していると肩口から走るふたりの人物が見えた。
ブン太と赤也君。よく雅治の家にいるらしいが今日もそうだったらしい。
慌てた様子のブン太と走り疲れた赤也君がやって来ると雅治は「スタミナ不足じゃのぉ」と言ってのける。さっき息を切らしていたじゃんとはあえて言わないで雅治の腕のぬくもりを堪能した。
「とりあえずななしに謝るぜよ」
「はぁ!?やだね!」
「丸井先輩、早くあやまってくださいよー」
「うっ、なんだよー。赤也までぇ」
『…とりあえず謝ってブン太』
「便乗するなよ!」
「元はと言えばブンちゃんがななしをからかったのが発端ナリ。俺のななしを泣かせた罪は重いぜよ」
「わぁーたよぃ!ななしきにすんな、あれ嘘だし」
『あれ?』
「ペテンがどうとかだよ」
『あぁ、昨日の?』
「そうそれ」
『嘘?』
恐ろしい夢を見、泣くほど翻弄された言葉。
胸が苦しくて今後雅治と上手くやっていけるかそんな不安が胸を充満した言葉。
その言葉がブン太曰く。嘘だ、とのこと。
『ブン太ぁあ!』
「な、なんだよぃ!」
『明日弦一郎の刑に処す』
「はぁ!?」
「はは!名案すね!」
「赤也は黙ってろよ!」
「賛成ナリ」
「仁王!てめぇ!」
「言ったろ?俺のななしを泣かせた罪は重いって」
「とりあえずよくわかんねぇっすけどもういいんすか?」
『まぁ、俺は平気』
もやもやが少し晴れたから。
確かにコート場ではかなりの詐欺師らしい。
けれどいつの日か「好いとうよ」と言ってくれた雅治を疑うことだけはしたくなくて。
ブン太がそう言った本心はよくは分からないが、その言葉が嘘であるとわかった今心底安心した。
これで疑うことをせずにすむ。
よかった、よかったよ…そうひっきりなしに呟く自分の頭を撫でながら優しく抱きしめてくれる雅治とスキンシップをはかっていればブン太と赤也君は2人ともゆったり踵を返した。
横目で見つつ手を降れば赤也君がぶんぶんふりかえしてくれた。ブン太はまたなにか言いたげな顔だ。
『ブン太…何か言いたげだなぁ』
去っていくブン太の背中を見つめつつそう言えば雅治は驚いたように目を見開いたあと、「なかなか鋭いのぉ」と茶化してきた。
理由は分からないが自分は、鋭いらしい。
『じゃぁ、明日聞いてみる』
「やめんしゃい」
『えー?なんで?』
「ななしはしらんでいいことぜよ」
『ん?どういうこと?』
「いつか笑い話になる頃に教えてやるナリ。それまではブンちゃんに聞くのはやめんしゃい」
『うん?ん、うーん』
納得のいく答えかと聞かれれば否だが、考えようにも雅治が鎖骨を舐め上げたせいで思考停止だ。
雅治のいいように遊ばれながら自分はそんな彼にしがみつくしかなかった。
「丸井先輩ー」
「なに?」
「ドンマイケルっす」
「はぁ…」
初恋だったのだけどな。丸井はため息とともに肩を縮めた。
うざったい切原をむししつつ空を見上げればたくさんの星。
「女も男も星の数程ですよ丸井先輩」
「赤也…そんなロマンチックだったんだな、お前」
赤也になぐさめられるとは、と自嘲気味に笑いながら丸井は空に向かって小さく「幸せにしなきゃマジつぶすぜぃ、仁王ー!」と呟いた。
広大な星たちがその呟きを吸い込んだのだった。
隣接する愛たち
(そこら中に落ちてる)