短編 男主
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ベタなナンパではじめまして
(幻動物/ニュート/情報屋主)
※ネタバレ有り
「ニフラー、ニフラー、どこいったニフラー…」
中腰のまま右を見、左を見。首をしきりに動かし何かを必死に探すのは先日ニューヨークに来たばかりのニュート・スキャマンダー。
彼の持つトランクは一見に普通のものと何ら変わりない。しかしこの普通のものと何ら変わりないトランクは魔法トランクという代物。中は広い空間と繋がっており、そこで沢山の魔法動物を飼っている。いつしかこの子達の理解を得る為にニュートは頑張っているのだが。しかしそんな彼を嘲笑うように逃げ回る小さな生き物ニフラー。この生き物ももちろん魔法動物だ。
ニフラーの見た目はカモノハシのようだ。鼻先が長く穴を掘るのが得意。極めつけはキラキラ光るものに目がないことだ。
今回もそのせいで二フラーはトランクから出たがり、街のものを盗み逃げている。
被害を被るのはニュートや、ニュートの後に続くジェイコブ。ジェイコブは普通の一般市民なのだが、この珍妙な事件に巻き込まれたため仕方なく一緒にニフラーを探した。
「おい、スキャマンダーさん。あれを見てくれ」
「どれ…あ、ニフラー!」
ジェイコブが指さす先には逃げ回っていたニフラーがちょこんと立っていた。ニフラーの気を引くようなキラキラしたものがあるのだろうか。
急いでニフラーのいる場所へ向かい走る。
しかしニュート達が到着する前に、ニフラーの見ていた店の扉が開いたのだ。
中から出てきたのは紺のジャケットを身にまとった金髪の美しい青年だ。手にはヴィンテージの陶器。花を入れているため多分花瓶かなにかか。
どうやら今この店が開店したらしい。
「きぃ!」
『お?え?』
足元にいたニフラーがその青年を見るや否や勢いよく飛びついた。これにはニュートやジェイコブは焦る焦る。
「ちょ、スキャマンダーさん!どうする?」
「どうするって言ったって…ニフラーが肩にいると魔法だって…」
青年の頬にぺちぺち触れながら髪に顔を埋め感触を楽しむニフラー。どうやら美しい金髪に魅了されたらしい。
擽ったそうにしている青年だが彼の肩に居るのは魔法動物なのだ。また何かをしでかす前につかまえトランクにしまわなくては。
青年の肩にいるうちなら手で捕まえられるとニュートは再び前に進んだ。
「あのー…」
『あ、はい!』
「きぃ!?」
「ニフラーおいで」
『あ、この子…ニフラーっていうんですか。フフ、良かった飼い主が見つかって』
「ぁ……」
ゆっくり柔らかく笑った青年。笑みを浮かべた青年を見、ニュートはぴしりと固まった。
その顔はまるで女神がはにかんだような美しさであったから。くすくす笑う薄く赤い唇や、太陽に照らされた柔らかそうな少し長い髪、綺麗な肌や、華奢な体つき。一瞬にして ニュートも、その場にいたジェイコブでさえ見とれてしまった。
咄嗟に目をそらし、自分のつま先を見る。かわいた泥が跳ねている靴を見、なんとか早まる動悸を抑えたニュートは一度ため息を付いた。もう一度青年の肩にいるニフラーに向き直る。
『さぁ、おいき。ニフラー』
「おいで」
「いぎぃ!!」
「こら、ニフラー。彼を困らせるな」
『いたたたた』
「ニフラー!」
引き剥がそうと肩に乗るニフラーを掴んだニュート。しかしニフラーも嫌だとばかりに青年の髪を掴んだのだ。痛みを訴えられとっさに手を離してしまったニュートを見て、ニフラーは嫌味そうに笑った。
どうすれば良いだろうか、ニフラーを睨みながらニュートはあれこれ考えた。しかし魔法をつかうには些か人通りが激しいし、目の前の青年にも見られてしまう。しかしこのままではニフラーがトランクには戻らない。
ジェイコブと顔を見合わせ2人は悩んだ。
『ニフラー?困らせては駄目だよ。俺はお店があるから戻らないと』
「ぎぃ!」
『そんな顔で見つめられても…』
魔法動物と言えどニフラーは凶悪な容姿をしていない。その愛くるしさを自覚しているような仕草で金髪に絡みつき大きな瞳を瞬かせた。
ニフラーの悪いくせである。気に入ったものは何が何でもかき集め、例え飼い主のニュートが目の前に現れても実行する。
とことん泥棒根性がある厄介なやつだ。
青年も困ったように眉を下げる。
『この子どうして俺にそんなにくっついていたいの?』
「君の…多分だけど、髪の毛が好きみたいだ。綺麗な色をしているから」
『あぁ、この髪ね』
「ブロンドの綺麗な髪だね」
『ありがとう!俺もね、この髪はすごく気に入っているんだ。だからニフラーが気に入ってくれて実はすこし嬉しいんだ。でも君困ってるようだし…』
「こちらこそ…君を、困らせてる。お店を開かなきゃ」
『はは、そんな繁盛する店でもないよ。だから少しだけ中に入っても大丈夫だよ?どうする?』
「あ、そ、そうしよう。コワルスキーさん」
「え、あ?スキャマンダーさんが言うなら」
ニフラーを捕まえるはずが何故か青年の店に招かれる結果になった。促されるまま店の中に入ればとても良い雰囲気の店内だ。緩やかな音楽が流れ、小さな小物や陶器が並んでいる。
先程持っていた花瓶も、店のものらしく同じものが棚に並べられていた。
『そこの椅子に座っていいよ。ニフラーの気が済むまで髪をいじっていいから』
「本当に大丈夫なのかい?」
『勿論』
「お言葉に甘えよう。スキャマンダーさん。ここで休憩だ。ニフラーもいるんだし」
夜通し歩きっぱなしであったと愚痴るジェイコブに青年は相槌を打ちながらティーカップを持ってきた。そのティーカップも店内にならべられた陶器の一つだろうか。よく似た色をしている。
紅茶を注ぎながらどうぞという青年にニュートも椅子に腰を下ろした。
『この、ニフラーって一体なんの動物?犬ではないよね?』
「ニフラーはニフラーだよ」
『ニフラーはニフラー…ニフラー…そっかニフラーか。君はニフラーなんだね』
「ぎぃ!」
『そっか!』
青年の髪に悪戯しながら楽しそうに鳴くニフラー。厄介な魔法動物だがやはり可愛がっていたため、楽しそうなのはニュートにとっては嬉しいことだ。
このまま少しだけニフラーのいうことを聞いてやろう。青年と出会えたのもニフラーがこの店を見つけたから。
ニュートは一口紅茶を飲む。不思議そうにニュートのジャケットから顔を出したボウトラックのピケット。ピケットが出てくるくらいだからこの店は魔法動物にとって居心地のよい空間なのかもしれない。
青年がニフラーに気を取られているうちにピケットに少し紅茶を飲ませてやる。
熱かったらしく「チチッ」とジャケットの中へ戻ってしまった。
『あの、君は?俺ナナシって言うんだ。ジェイコブさんとは自己紹介したからぜひ君とも』
「あ、そうだね。僕はニュート・スキャマンダー。好きに呼んでいいよ」
『ニュートさんだね!』
ニフラーを手で遊ばせる彼はナナシと言うらしい。ニコニコ先程のように微笑まれるとニュートの心臓もまた早鐘を打つようだった。
気恥ずかしくなり視線を逸らすと、ジェイコブがニヤニヤ笑っている。
『それにしても不思議な人だね。ニュートさん』
「え、あ?僕?」
『そう。本当は魔法使いなんじゃない?』
「……」
「そ、そんなわけないよ。スキャマンダーさんはニューヨークに来たばかりの若者さ!」
『フフ、どうかな?』
別の動悸がニュートに訪れた。
ナナシはニュートを魔法使いではないかと言うのだ。勿論ニュートは魔法使いだが、他人に極力バレないようにしなければならない。このニューヨークで魔法を使えてしまえば魔法反対運動のセーレム救世軍に捕まってしまう。
バレないようにゆっくり首を振ってみせるが、ナナシはくすくす笑っている。
どうやら答えはわかっているらしい。
『俺…だれにもいわないよ。この店よく魔法使いの人が来るんだ。だから君をどうこうしたりしないよ。俺ニフラーや君のジャケットの下にいる小さな妖精を傷つけたくはないから。それにしても不思議な動物達』
「あ、そっか…ピケットももうバレてるんだね。でも、ありがとう。僕もこの子達を理解してくれると嬉しい」
『不思議な魔法の動物かな?』
「魔法動物、このトランクにも沢山いるよ」
『フフ、そっか。じゃあ、ニフラーも戻らなきゃね?皆が心配しているかも』
「ぎぃ!ぎぃ!」
「君は一体何ものなんだ?」
魔法使いや魔法動物を見ても動じず、通報さえしないナナシとは一体何ものなのか。
ニュートはまっすぐ問うた。
彼がどうにも悪い人には見えなかったからこそ質問をしたのだ。
『俺はこの店の店主。そして情報屋をやってるんだ。勿論魔法使いのね』
「じゃ、君も…」
『それは教えられないよ。ニュートさん。でも、いつでも力になるからまた来てね。ご贔屓に』
「え?ナナシさんも魔法使いなの?スキャマンダーさん?」
「僕には…よくわからないけど…ナナシさんは悪い人なんかじゃないと思う」
『ありがとうニュートさん』
謎に包まれたナナシだが、決して悪い人なんかではない。確信はなかったが自信だけは沢山あった。
離れたくないとジタバタするニフラーを掴む。少し可哀想だが致し方ない。次は髪の毛ちょうだい!とばかりにぎぃぎぃ鳴くニフラー。ナナシは確かに頷いた。
「さぁ、戻れ」とトランクに押し戻す。
「また、来てもいいかい?」
『うん。ニフラーと遊びたいから。不思議なトランクのなか見てみたいな』
「僕らが魔法動物を全部集めたらまた来るよ。その時はニフラーと遊んであげてほしい」
『勿論!』
「じゃ、行こうジェイコブさん。ありがとうナナシさん」
「ありがとう!紅茶美味しかったよ」
『フフ、どういたしまして!』
疲労も回復したニュート達はナナシにお礼を言い店を後にした。
二人が出ていた後ナナシはティーカップを店奥に運びながら備え付けられていた電話の受話器を取る。
プルルとなるコール音を聞きながら先程のニュートを思い出してみる。物静かな青年だったがとても優しそうな人であった。動物を心底愛している様子がよくわかった。
「もしもし?」
『あ、ティナ?さっきお店にね…』
ティーカップを揺らしながら楽しげに話すナナシ。電話の向こうの"ティナ"は呆れたようにため息をはいたのが聞こえた。
「分かった。近々そっちによるわね」
『やった!ありがとうティナ』
不思議な青年ニュート。魔法動物を保護する彼と再び相見えるのは存外近い未来のこと。
ナナシは楽しそうに笑い早くその日が来ないかと店のカウンターに肘をついたのだった。
end
Atgk
勢いでかきあげました(笑)
ニュートもナナシもお互い一目惚れした感じですかね。
ニュート→→←ナナシくらいになる予定。
- XRIE -
(幻動物/ニュート/情報屋主)
※ネタバレ有り
「ニフラー、ニフラー、どこいったニフラー…」
中腰のまま右を見、左を見。首をしきりに動かし何かを必死に探すのは先日ニューヨークに来たばかりのニュート・スキャマンダー。
彼の持つトランクは一見に普通のものと何ら変わりない。しかしこの普通のものと何ら変わりないトランクは魔法トランクという代物。中は広い空間と繋がっており、そこで沢山の魔法動物を飼っている。いつしかこの子達の理解を得る為にニュートは頑張っているのだが。しかしそんな彼を嘲笑うように逃げ回る小さな生き物ニフラー。この生き物ももちろん魔法動物だ。
ニフラーの見た目はカモノハシのようだ。鼻先が長く穴を掘るのが得意。極めつけはキラキラ光るものに目がないことだ。
今回もそのせいで二フラーはトランクから出たがり、街のものを盗み逃げている。
被害を被るのはニュートや、ニュートの後に続くジェイコブ。ジェイコブは普通の一般市民なのだが、この珍妙な事件に巻き込まれたため仕方なく一緒にニフラーを探した。
「おい、スキャマンダーさん。あれを見てくれ」
「どれ…あ、ニフラー!」
ジェイコブが指さす先には逃げ回っていたニフラーがちょこんと立っていた。ニフラーの気を引くようなキラキラしたものがあるのだろうか。
急いでニフラーのいる場所へ向かい走る。
しかしニュート達が到着する前に、ニフラーの見ていた店の扉が開いたのだ。
中から出てきたのは紺のジャケットを身にまとった金髪の美しい青年だ。手にはヴィンテージの陶器。花を入れているため多分花瓶かなにかか。
どうやら今この店が開店したらしい。
「きぃ!」
『お?え?』
足元にいたニフラーがその青年を見るや否や勢いよく飛びついた。これにはニュートやジェイコブは焦る焦る。
「ちょ、スキャマンダーさん!どうする?」
「どうするって言ったって…ニフラーが肩にいると魔法だって…」
青年の頬にぺちぺち触れながら髪に顔を埋め感触を楽しむニフラー。どうやら美しい金髪に魅了されたらしい。
擽ったそうにしている青年だが彼の肩に居るのは魔法動物なのだ。また何かをしでかす前につかまえトランクにしまわなくては。
青年の肩にいるうちなら手で捕まえられるとニュートは再び前に進んだ。
「あのー…」
『あ、はい!』
「きぃ!?」
「ニフラーおいで」
『あ、この子…ニフラーっていうんですか。フフ、良かった飼い主が見つかって』
「ぁ……」
ゆっくり柔らかく笑った青年。笑みを浮かべた青年を見、ニュートはぴしりと固まった。
その顔はまるで女神がはにかんだような美しさであったから。くすくす笑う薄く赤い唇や、太陽に照らされた柔らかそうな少し長い髪、綺麗な肌や、華奢な体つき。一瞬にして ニュートも、その場にいたジェイコブでさえ見とれてしまった。
咄嗟に目をそらし、自分のつま先を見る。かわいた泥が跳ねている靴を見、なんとか早まる動悸を抑えたニュートは一度ため息を付いた。もう一度青年の肩にいるニフラーに向き直る。
『さぁ、おいき。ニフラー』
「おいで」
「いぎぃ!!」
「こら、ニフラー。彼を困らせるな」
『いたたたた』
「ニフラー!」
引き剥がそうと肩に乗るニフラーを掴んだニュート。しかしニフラーも嫌だとばかりに青年の髪を掴んだのだ。痛みを訴えられとっさに手を離してしまったニュートを見て、ニフラーは嫌味そうに笑った。
どうすれば良いだろうか、ニフラーを睨みながらニュートはあれこれ考えた。しかし魔法をつかうには些か人通りが激しいし、目の前の青年にも見られてしまう。しかしこのままではニフラーがトランクには戻らない。
ジェイコブと顔を見合わせ2人は悩んだ。
『ニフラー?困らせては駄目だよ。俺はお店があるから戻らないと』
「ぎぃ!」
『そんな顔で見つめられても…』
魔法動物と言えどニフラーは凶悪な容姿をしていない。その愛くるしさを自覚しているような仕草で金髪に絡みつき大きな瞳を瞬かせた。
ニフラーの悪いくせである。気に入ったものは何が何でもかき集め、例え飼い主のニュートが目の前に現れても実行する。
とことん泥棒根性がある厄介なやつだ。
青年も困ったように眉を下げる。
『この子どうして俺にそんなにくっついていたいの?』
「君の…多分だけど、髪の毛が好きみたいだ。綺麗な色をしているから」
『あぁ、この髪ね』
「ブロンドの綺麗な髪だね」
『ありがとう!俺もね、この髪はすごく気に入っているんだ。だからニフラーが気に入ってくれて実はすこし嬉しいんだ。でも君困ってるようだし…』
「こちらこそ…君を、困らせてる。お店を開かなきゃ」
『はは、そんな繁盛する店でもないよ。だから少しだけ中に入っても大丈夫だよ?どうする?』
「あ、そ、そうしよう。コワルスキーさん」
「え、あ?スキャマンダーさんが言うなら」
ニフラーを捕まえるはずが何故か青年の店に招かれる結果になった。促されるまま店の中に入ればとても良い雰囲気の店内だ。緩やかな音楽が流れ、小さな小物や陶器が並んでいる。
先程持っていた花瓶も、店のものらしく同じものが棚に並べられていた。
『そこの椅子に座っていいよ。ニフラーの気が済むまで髪をいじっていいから』
「本当に大丈夫なのかい?」
『勿論』
「お言葉に甘えよう。スキャマンダーさん。ここで休憩だ。ニフラーもいるんだし」
夜通し歩きっぱなしであったと愚痴るジェイコブに青年は相槌を打ちながらティーカップを持ってきた。そのティーカップも店内にならべられた陶器の一つだろうか。よく似た色をしている。
紅茶を注ぎながらどうぞという青年にニュートも椅子に腰を下ろした。
『この、ニフラーって一体なんの動物?犬ではないよね?』
「ニフラーはニフラーだよ」
『ニフラーはニフラー…ニフラー…そっかニフラーか。君はニフラーなんだね』
「ぎぃ!」
『そっか!』
青年の髪に悪戯しながら楽しそうに鳴くニフラー。厄介な魔法動物だがやはり可愛がっていたため、楽しそうなのはニュートにとっては嬉しいことだ。
このまま少しだけニフラーのいうことを聞いてやろう。青年と出会えたのもニフラーがこの店を見つけたから。
ニュートは一口紅茶を飲む。不思議そうにニュートのジャケットから顔を出したボウトラックのピケット。ピケットが出てくるくらいだからこの店は魔法動物にとって居心地のよい空間なのかもしれない。
青年がニフラーに気を取られているうちにピケットに少し紅茶を飲ませてやる。
熱かったらしく「チチッ」とジャケットの中へ戻ってしまった。
『あの、君は?俺ナナシって言うんだ。ジェイコブさんとは自己紹介したからぜひ君とも』
「あ、そうだね。僕はニュート・スキャマンダー。好きに呼んでいいよ」
『ニュートさんだね!』
ニフラーを手で遊ばせる彼はナナシと言うらしい。ニコニコ先程のように微笑まれるとニュートの心臓もまた早鐘を打つようだった。
気恥ずかしくなり視線を逸らすと、ジェイコブがニヤニヤ笑っている。
『それにしても不思議な人だね。ニュートさん』
「え、あ?僕?」
『そう。本当は魔法使いなんじゃない?』
「……」
「そ、そんなわけないよ。スキャマンダーさんはニューヨークに来たばかりの若者さ!」
『フフ、どうかな?』
別の動悸がニュートに訪れた。
ナナシはニュートを魔法使いではないかと言うのだ。勿論ニュートは魔法使いだが、他人に極力バレないようにしなければならない。このニューヨークで魔法を使えてしまえば魔法反対運動のセーレム救世軍に捕まってしまう。
バレないようにゆっくり首を振ってみせるが、ナナシはくすくす笑っている。
どうやら答えはわかっているらしい。
『俺…だれにもいわないよ。この店よく魔法使いの人が来るんだ。だから君をどうこうしたりしないよ。俺ニフラーや君のジャケットの下にいる小さな妖精を傷つけたくはないから。それにしても不思議な動物達』
「あ、そっか…ピケットももうバレてるんだね。でも、ありがとう。僕もこの子達を理解してくれると嬉しい」
『不思議な魔法の動物かな?』
「魔法動物、このトランクにも沢山いるよ」
『フフ、そっか。じゃあ、ニフラーも戻らなきゃね?皆が心配しているかも』
「ぎぃ!ぎぃ!」
「君は一体何ものなんだ?」
魔法使いや魔法動物を見ても動じず、通報さえしないナナシとは一体何ものなのか。
ニュートはまっすぐ問うた。
彼がどうにも悪い人には見えなかったからこそ質問をしたのだ。
『俺はこの店の店主。そして情報屋をやってるんだ。勿論魔法使いのね』
「じゃ、君も…」
『それは教えられないよ。ニュートさん。でも、いつでも力になるからまた来てね。ご贔屓に』
「え?ナナシさんも魔法使いなの?スキャマンダーさん?」
「僕には…よくわからないけど…ナナシさんは悪い人なんかじゃないと思う」
『ありがとうニュートさん』
謎に包まれたナナシだが、決して悪い人なんかではない。確信はなかったが自信だけは沢山あった。
離れたくないとジタバタするニフラーを掴む。少し可哀想だが致し方ない。次は髪の毛ちょうだい!とばかりにぎぃぎぃ鳴くニフラー。ナナシは確かに頷いた。
「さぁ、戻れ」とトランクに押し戻す。
「また、来てもいいかい?」
『うん。ニフラーと遊びたいから。不思議なトランクのなか見てみたいな』
「僕らが魔法動物を全部集めたらまた来るよ。その時はニフラーと遊んであげてほしい」
『勿論!』
「じゃ、行こうジェイコブさん。ありがとうナナシさん」
「ありがとう!紅茶美味しかったよ」
『フフ、どういたしまして!』
疲労も回復したニュート達はナナシにお礼を言い店を後にした。
二人が出ていた後ナナシはティーカップを店奥に運びながら備え付けられていた電話の受話器を取る。
プルルとなるコール音を聞きながら先程のニュートを思い出してみる。物静かな青年だったがとても優しそうな人であった。動物を心底愛している様子がよくわかった。
「もしもし?」
『あ、ティナ?さっきお店にね…』
ティーカップを揺らしながら楽しげに話すナナシ。電話の向こうの"ティナ"は呆れたようにため息をはいたのが聞こえた。
「分かった。近々そっちによるわね」
『やった!ありがとうティナ』
不思議な青年ニュート。魔法動物を保護する彼と再び相見えるのは存外近い未来のこと。
ナナシは楽しそうに笑い早くその日が来ないかと店のカウンターに肘をついたのだった。
end
Atgk
勢いでかきあげました(笑)
ニュートもナナシもお互い一目惚れした感じですかね。
ニュート→→←ナナシくらいになる予定。
- XRIE -