短編 男主
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(仁王雅治/同級生/恋人)
好きなことは本を読むことだった。誰かと話したりするよりよっぽど楽しい。
気を使うことも、人目を気にすることもないから。
本は知識や教養を与えてくれるし、新しいことへの興味や好奇心をも引き出してくれる。
その点、人とは自分何をしてくれるというのか。
なにか興味を持てるようなことを本以上に教えてくれるだろうか?
答えは否だ。むしろ自分にとって人とか関わることはマイナスでしかない。
なぜ見知らぬ人に気を使わなくてはならないのか、そう感じるとどうしても他人とは関わりたいとは思えなかった。
だから今でも帰宅部だし、自分の居場所は図書室だし、友人らしい友人はほとんどいない。
しかし、とても不思議なことに"恋人"はいるのだ。
恋人の名は仁王雅治、性別は男で立海大附属中のテニス部に所属している。少々性格に難があり「コート上のペ天使」を二つ名に持つ変わり種。
テニスの実力も確かでありイケメンと来た。そうなれば周りの女子が黙っているはずもなく…彼はとても人気だ。
何が言いたいかと言うと、彼と自分は極端に違うということ。性格も、思考も、興味も。
そう全てが。
両極端にも関わらず付き合うことになったのは今でも不思議なことではあるが、自分にとってきっと一生で一度の経験なことは確か。
だからこそこの関係を崩さないようにしている。
もちろん、仁王の事は大好きだ。
パコーン、あっちからこっちへ。
コート上を右から左へ行く黄色いボールを目で追っていた。
本当なら授業が終われば足早に帰っている頃だが、今は大きな木下に本を片手に座っている。
仁王と付き合いだしもう二年程になる(中学一年、下半期に告白された)。
彼のおかげか自分は些細だが変化しているような気がする。それもいい方面にだ。
『……』
テニスの事はほとんど分からないが仁王が好きなことは自分も好きになりたい。
だからせめてテニスをする彼だけでも眺め、彼のこともテニスのことももっともっと詳しくなりたかった。
紛れもなく自分も仁王を大好きだということだ。
戸惑う感情ではあったが今となっては大切なものになっている。
テニスをする彼を見ながらにやけそうになる口元を手で隠していると、ふと汗を拭う彼と目が合った。
瞬間ドキリと胸が高鳴るのは、こちらを見た仁王がニヤリと笑ったからだ。
とっさに目をそらしてしまうのは、仕方が無い。これ以上見ていては心臓が持ちそうにないから。
顔が熱くなるのを、木から漏れた太陽の光のせいだと無理やりこじ付け持っていた本を使い自身を扇ぐ。
『…ぁ』
必死に熱を覚ましていた時、コツンと足に何かがあったのだ。なんだと足元みれば黄色いテニスボール。
どこからか転がってきたのだろうか。
ボールをなくし困っている人はいないかと辺りを見回すとひとりこちらにゆっくり歩み寄る男が。
その男の口元はやはりニヤリと釣り上げられている。
『あ、ま、雅治君。ボール』
「見に来とったんか」
『た、たまたま…時間があったからっ』
「そぉか…ななし」
『雅治君?』
服で汗を拭う度にちらりと見える腹筋に覚ましたばかりなのにまた熱が体を纏う。せめてきっと赤くなっているであろう顔を隠すように俯くと、仁王が動くのがわかった。
彼はゆっくり隣に座ったのだ。
ぎょっとして仁王を素早く見ると「なんじゃ?」と不思議そうに首をかしげる彼。
『大丈夫なの?』
「真田の怒号は暑苦しいからのぉ、休憩じゃ休憩」
『そか、…っ、ま、雅治君?』
「ななしはいつも冷たいぜよ。気持ちいいナリ」
『ま、雅治君は温かいね』
「温かい?暑いの間違いじゃろ?」
頬に触れるタコの出来た左手。
逞しいこの手が自分に触れる時、決まってとても優しいのだ。撫でるよう、どこか躊躇ったように。
お互いの体温が混ざり合うように、その優しい擽ったさはいつも心を満たしてくれる。
恥ずかしいけれど、仁王から与えられる優しい愛は自分をどこまでも自惚れさせた。
その大きな手に擦り寄り、自分も仁王の頬に手を置く。
「汗かいとるぜよ」
『うん、そだね。部活してるの見てたから分かる』
「ずっと?」
『うん?ずっとだけど…』
「…そういうのは迂闊に言わんほうがいいぜよ」
肌が白い仁王。頬がほんのり赤みを帯びたのをななしは見逃さなかった。
いつも飄々としている彼にすればほどほどに珍しくもある。写真におさめたいなどとおもいつつ、クスリと笑えば気に食わなかったのか、頬に触れていた手は頬をつねるように動かされた。
「よくのびるのぉ」
『いひゃい!』
「面白い顔ナリ」
『ちょっと』
頬が痛いと訴えるように胸を軽く押せば仁王はすぐにやめてくれたが、意地悪くニヤニヤ笑っている。なんとも解せない。
『部活大丈夫なの?』
「ん、まぁ」
『雅治君』
「ん?」
『汗臭い』
「…ムードもないのぉ、」
『だって本当だもん』
「仕方ないぜよ。猛暑日にテニス、汗もかくぜよ」
『夏だからね…』
「ななしも部活したらどうナリ?テニス部大歓迎ぜよ」
『やだ。汗かくのは嫌だし』
「じゃぁ、マネは?」
『汗かくよ絶対』
「ななしと部活できればなかなか楽しそうなのにのぉ」
『……でもしない』
「プリッ」
『雅治君を見てるから、ここで……それで我慢してね』
「毎日?」
『毎日』
「プリッ」
『うわ!?』
急に視点がぐるりと変わる。目の前いっぱいに広がるのは木漏れ日に照らされた銀髪。
美しく揺らめく髪の隙間からはなにかを噛み締めるような仁王が見えた。
自分の頬や首に落ちる汗に体がぴくりと反応するのが分かる。
余裕そうな笑がなくなり真剣に見つめてくる仁王にななしは唾をゴクリと飲み込んだ。
『ま、雅治君!ここ学校っ』
「なんじゃ、構わんぜよ」
『ぼ、僕は構うんだよ!』
「何が構うんじゃ?」
『え、み、見られるよ!?』
「この大きな木の幹は学校側から見えんぜよ。まぁ、テニスコートからは丸見えじゃが」
『!?だ、だめだって』
「見せつけるのも一興ナリ」
『雅治君!』
こいつはまずい。
この仁王の顔はもうどうにも止まらない時の表情だ。力強く押し倒され、どうにも押し返せる気配はない。
何かを渇望するような瞳と視線が合えば離せなくなる。本当にやばいとななしは視線を遮断するようにきつく目を閉じた。
『ぁ、雅治君』
「ななし、好いとうよ…ななし」
『っ』
「レーザービーム」
「危ないぜよ!?」
『あ、柳生君…』
「何をやっているんですか、仁王君」
「流石ジェントルマン、目ざといナリ」
銀髪が鼻に触れ、唇に触れ、次は何が触れるのか。吐息のかかる距離で緊張と、不安に震えていれば聞きなれた「レーザービーム」。
どうやら柳生がこちらに気づきやってきたらしい。
しかしジェントルマンといわれているが、まさか人間相手にレーザービームを出すとは。
仁王は呆れたようにため息を吐き出した。
『あ、あの、柳生君ありがとう』
「えぇ、問題ありませんよ。むめい君、仁王君を連れていっても?」
『大丈夫です!早く連れていって』
「ひどいナリ」
『雅治君、終わるまで待ってるから』
「早く行くぜよ柳生」
「はぁ」
ささやかな逢瀬はここで終わりだ。
落ち着けるように胸をなでおろしたななしは、さって行く仁王の背を見つめた。
大きくて、優しい背中だ。
『あ』
うっとり眺めていれば足元に転がるテニスボールがあるのを思い出す。
仁王はテニスボールを取りに来たはずがもたずに帰っていってしまったのか。
なかなか間抜けだ。
『何しに来たのさ』
ななしはテニスボールを仁王に向けて転がしてやった。真っ直ぐに仁王に引き込まれるよう転がるテニスボールはうまい具合に彼の足首にぶつかる。
思い出したようにテニスボールを拾った仁王。
にっこり笑いながら指で狐を作りななしに見せるようたからかにかがげた。ニヤニヤとは違う満面の笑みはとても眩しく、またなによりもかっこよく見えななしも自然と顔が緩む。
彼に気持ちが伝わるようななしもまた、指で狐を作るとゆっくり仁王に見せるように揺らしたのだった。
近寄れば、はじける法則
(青春の時間)
好きなことは本を読むことだった。誰かと話したりするよりよっぽど楽しい。
気を使うことも、人目を気にすることもないから。
本は知識や教養を与えてくれるし、新しいことへの興味や好奇心をも引き出してくれる。
その点、人とは自分何をしてくれるというのか。
なにか興味を持てるようなことを本以上に教えてくれるだろうか?
答えは否だ。むしろ自分にとって人とか関わることはマイナスでしかない。
なぜ見知らぬ人に気を使わなくてはならないのか、そう感じるとどうしても他人とは関わりたいとは思えなかった。
だから今でも帰宅部だし、自分の居場所は図書室だし、友人らしい友人はほとんどいない。
しかし、とても不思議なことに"恋人"はいるのだ。
恋人の名は仁王雅治、性別は男で立海大附属中のテニス部に所属している。少々性格に難があり「コート上のペ天使」を二つ名に持つ変わり種。
テニスの実力も確かでありイケメンと来た。そうなれば周りの女子が黙っているはずもなく…彼はとても人気だ。
何が言いたいかと言うと、彼と自分は極端に違うということ。性格も、思考も、興味も。
そう全てが。
両極端にも関わらず付き合うことになったのは今でも不思議なことではあるが、自分にとってきっと一生で一度の経験なことは確か。
だからこそこの関係を崩さないようにしている。
もちろん、仁王の事は大好きだ。
パコーン、あっちからこっちへ。
コート上を右から左へ行く黄色いボールを目で追っていた。
本当なら授業が終われば足早に帰っている頃だが、今は大きな木下に本を片手に座っている。
仁王と付き合いだしもう二年程になる(中学一年、下半期に告白された)。
彼のおかげか自分は些細だが変化しているような気がする。それもいい方面にだ。
『……』
テニスの事はほとんど分からないが仁王が好きなことは自分も好きになりたい。
だからせめてテニスをする彼だけでも眺め、彼のこともテニスのことももっともっと詳しくなりたかった。
紛れもなく自分も仁王を大好きだということだ。
戸惑う感情ではあったが今となっては大切なものになっている。
テニスをする彼を見ながらにやけそうになる口元を手で隠していると、ふと汗を拭う彼と目が合った。
瞬間ドキリと胸が高鳴るのは、こちらを見た仁王がニヤリと笑ったからだ。
とっさに目をそらしてしまうのは、仕方が無い。これ以上見ていては心臓が持ちそうにないから。
顔が熱くなるのを、木から漏れた太陽の光のせいだと無理やりこじ付け持っていた本を使い自身を扇ぐ。
『…ぁ』
必死に熱を覚ましていた時、コツンと足に何かがあったのだ。なんだと足元みれば黄色いテニスボール。
どこからか転がってきたのだろうか。
ボールをなくし困っている人はいないかと辺りを見回すとひとりこちらにゆっくり歩み寄る男が。
その男の口元はやはりニヤリと釣り上げられている。
『あ、ま、雅治君。ボール』
「見に来とったんか」
『た、たまたま…時間があったからっ』
「そぉか…ななし」
『雅治君?』
服で汗を拭う度にちらりと見える腹筋に覚ましたばかりなのにまた熱が体を纏う。せめてきっと赤くなっているであろう顔を隠すように俯くと、仁王が動くのがわかった。
彼はゆっくり隣に座ったのだ。
ぎょっとして仁王を素早く見ると「なんじゃ?」と不思議そうに首をかしげる彼。
『大丈夫なの?』
「真田の怒号は暑苦しいからのぉ、休憩じゃ休憩」
『そか、…っ、ま、雅治君?』
「ななしはいつも冷たいぜよ。気持ちいいナリ」
『ま、雅治君は温かいね』
「温かい?暑いの間違いじゃろ?」
頬に触れるタコの出来た左手。
逞しいこの手が自分に触れる時、決まってとても優しいのだ。撫でるよう、どこか躊躇ったように。
お互いの体温が混ざり合うように、その優しい擽ったさはいつも心を満たしてくれる。
恥ずかしいけれど、仁王から与えられる優しい愛は自分をどこまでも自惚れさせた。
その大きな手に擦り寄り、自分も仁王の頬に手を置く。
「汗かいとるぜよ」
『うん、そだね。部活してるの見てたから分かる』
「ずっと?」
『うん?ずっとだけど…』
「…そういうのは迂闊に言わんほうがいいぜよ」
肌が白い仁王。頬がほんのり赤みを帯びたのをななしは見逃さなかった。
いつも飄々としている彼にすればほどほどに珍しくもある。写真におさめたいなどとおもいつつ、クスリと笑えば気に食わなかったのか、頬に触れていた手は頬をつねるように動かされた。
「よくのびるのぉ」
『いひゃい!』
「面白い顔ナリ」
『ちょっと』
頬が痛いと訴えるように胸を軽く押せば仁王はすぐにやめてくれたが、意地悪くニヤニヤ笑っている。なんとも解せない。
『部活大丈夫なの?』
「ん、まぁ」
『雅治君』
「ん?」
『汗臭い』
「…ムードもないのぉ、」
『だって本当だもん』
「仕方ないぜよ。猛暑日にテニス、汗もかくぜよ」
『夏だからね…』
「ななしも部活したらどうナリ?テニス部大歓迎ぜよ」
『やだ。汗かくのは嫌だし』
「じゃぁ、マネは?」
『汗かくよ絶対』
「ななしと部活できればなかなか楽しそうなのにのぉ」
『……でもしない』
「プリッ」
『雅治君を見てるから、ここで……それで我慢してね』
「毎日?」
『毎日』
「プリッ」
『うわ!?』
急に視点がぐるりと変わる。目の前いっぱいに広がるのは木漏れ日に照らされた銀髪。
美しく揺らめく髪の隙間からはなにかを噛み締めるような仁王が見えた。
自分の頬や首に落ちる汗に体がぴくりと反応するのが分かる。
余裕そうな笑がなくなり真剣に見つめてくる仁王にななしは唾をゴクリと飲み込んだ。
『ま、雅治君!ここ学校っ』
「なんじゃ、構わんぜよ」
『ぼ、僕は構うんだよ!』
「何が構うんじゃ?」
『え、み、見られるよ!?』
「この大きな木の幹は学校側から見えんぜよ。まぁ、テニスコートからは丸見えじゃが」
『!?だ、だめだって』
「見せつけるのも一興ナリ」
『雅治君!』
こいつはまずい。
この仁王の顔はもうどうにも止まらない時の表情だ。力強く押し倒され、どうにも押し返せる気配はない。
何かを渇望するような瞳と視線が合えば離せなくなる。本当にやばいとななしは視線を遮断するようにきつく目を閉じた。
『ぁ、雅治君』
「ななし、好いとうよ…ななし」
『っ』
「レーザービーム」
「危ないぜよ!?」
『あ、柳生君…』
「何をやっているんですか、仁王君」
「流石ジェントルマン、目ざといナリ」
銀髪が鼻に触れ、唇に触れ、次は何が触れるのか。吐息のかかる距離で緊張と、不安に震えていれば聞きなれた「レーザービーム」。
どうやら柳生がこちらに気づきやってきたらしい。
しかしジェントルマンといわれているが、まさか人間相手にレーザービームを出すとは。
仁王は呆れたようにため息を吐き出した。
『あ、あの、柳生君ありがとう』
「えぇ、問題ありませんよ。むめい君、仁王君を連れていっても?」
『大丈夫です!早く連れていって』
「ひどいナリ」
『雅治君、終わるまで待ってるから』
「早く行くぜよ柳生」
「はぁ」
ささやかな逢瀬はここで終わりだ。
落ち着けるように胸をなでおろしたななしは、さって行く仁王の背を見つめた。
大きくて、優しい背中だ。
『あ』
うっとり眺めていれば足元に転がるテニスボールがあるのを思い出す。
仁王はテニスボールを取りに来たはずがもたずに帰っていってしまったのか。
なかなか間抜けだ。
『何しに来たのさ』
ななしはテニスボールを仁王に向けて転がしてやった。真っ直ぐに仁王に引き込まれるよう転がるテニスボールはうまい具合に彼の足首にぶつかる。
思い出したようにテニスボールを拾った仁王。
にっこり笑いながら指で狐を作りななしに見せるようたからかにかがげた。ニヤニヤとは違う満面の笑みはとても眩しく、またなによりもかっこよく見えななしも自然と顔が緩む。
彼に気持ちが伝わるようななしもまた、指で狐を作るとゆっくり仁王に見せるように揺らしたのだった。
近寄れば、はじける法則
(青春の時間)