小話集1
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(支配人真島/恋人)
『今日はこれに挑戦してみたいと思います!』
そうななしに告げられやってきたのは中華料理屋。そして彼女が指さすのは店頭に貼ってあるポスター。
真っ赤な背景に真っ赤な麻婆豆腐が写っている。
事の発端は『グランドに近い場所に中華料理屋があるんですけど、今日のお昼はそこで取ってそのまま出勤しませんか?』とななしが提案してきたことから始まる。
恋人であるななしからの提案だったため、「ええで!」と快く頷いて、二人でグランドのすぐ側に隠れるように建っている中華料理屋へと向かった。
他愛ない話で盛り上がっていると、冒頭の通りななしは店の扉に貼ってあるポスターを指さして、中に入るや否や意気揚々とその商品を注文したのだ。
こんなにもか弱い女の子があれほど禍々し真っ赤な麻婆豆腐を食べられるのか。
もし食べられたとして本当に無事でいられるのだろうか。
あまりにも嬉しそうに注文し、出てきた麻婆豆腐を見て『美味しそ〜』と顔を緩ませるななしに水を差す様なことをするのも憚られて、結局真島はなにも言うことが出来なかった。
「…ななし、麻婆豆腐好きなんか?」
『特別好きという訳では無いんですよ。ボーイの一人に凄く勧められて…辛いけど美味しいから食べてみて!って。だから少し気になっちゃって…えへへ。美味しいといいですけど』
「ちなみになんやけど、辛いのは平気なんか?」
『うーん、あまり食べた事はないですけど…ま、大丈夫だと思います!』
「ほ、ほうか」
『真島さんはここのイチオシの麻婆豆腐じゃなくて良かったんですか?』
「ななしの一口貰おおもてな」
『ふふふ。いいですよ!じゃぁ、アタシも真島さんの炒飯一口貰お〜』
「おう、分けたるわ」
ななしは運ばれてきた麻婆豆腐の禍々しさにはあまり気がついていないようでとても上機嫌だ。
『真島さんの炒飯が来るまで待ってますね。一緒に食べましょう』と、可愛らしい事を言いながらニコニコし体を揺らしている。
小さな恋人の仕草全てがいちいち可愛く、本来の真島ならそれらを眺めて堪能するのだが。如何せん、ななしの目の前にある地獄の釜のような麻婆豆腐が気になってそれどころでは無い。
───…絶対辛い。
見るだけでそう思うのだから、口に入れたらひとたまりも無いのだろう。
声に出して伝えてやれば良いのだろうがそれでも嬉々として麻婆豆腐を見ているななしの好奇心を無下にもできず。
辛くて食べられないという結果になった時、代わりに食べてやろう。
それまでは何も言うまい。
真島はモヤモヤとしたままななしと真っ赤な麻婆豆腐を見て、ぎこちなく笑った。
しばらくして、真島が注文していた炒飯と中華スープがやってきた。
ほかほか湯気をたて美味しそうな香りが届いてくる。明らかにこっちの方が美味しそうだ。
『じゃぁ、食べましょう真島さん!』
「せやな」
『いただきます』
「いただきます」
二人して手を合わせ、それから蓮華で料理を掬い口の中に運んだ。
真島が食す炒飯はそれはもう絶品で。よくある炒飯であるが結局変わった料理等ではなく、普段から食している料理がいちばん美味い。
───…ななしはどやろか…
美味さにじんわりと感動しつつ、隣で麻婆豆腐を食べるななしをちらりと盗み見する真島。
『ひー、辛ぁ』
そこには案の定真っ赤な麻婆豆腐の辛さに悶えているななしが居た。
口元に手を当てながらあまりの辛さに涙目になっている。
傍にあった水を飲んでなんとか絡みを和らげようとしているらしいが、なかなか収まらないのだろう。
終始『ひぇー』と情けない声を出している。
咄嗟に真島は悶絶しているななしの背中を摩ってやる。
あまり悶えているのでだんだんと心配になってくる程だ。
「だ、大丈夫かいな」
『か、辛いですけどっ!おいしです!!』
「ほ、ほうか」
『でも、舌っ痛いっ』
「……」
しばらくして辛すぎて痛みを伴ったらしいななしは、舌を少し出して肩で息をしていた。
小さな口からチラリと覗く真っ赤な舌。
潤んだ瞳を細めて、苦しいのか肩で大きく息をしている姿。
辛いもの食べ悶えているだけなのだが、真横で見ていた真島にはその姿がどうにも扇情的に映ってしまって。
二人で昼食を食べに来ただけだと言うのに、意図せずムラムラとしてしまいななしから目が離せなくなってしまったのだ。
「(エロ過ぎるやろっ!なんちゅう顔しとんねん。あー、飯なんか食っとる場合とちゃうんやないか…)」
『辛いっ、でも美味しいっ。真島さんも一口どうですかっ??』
「(そんな潤んだ目ぇしよって。他の男が見たらその気なってまうやろ)」
『真島さん?』
「…」
『真島さんどうかしました?』
真島が一人ムラムラと格闘している間も地道に麻婆豆腐を食べていたななし。
こちらを見つめたまま固まってしまった真島が不思議でならないようで、辛さで少し汗をかき真っ赤になった顔を傾げ不思議そうにしていた。
そんな仕草も行動も今の真島にとってはあまりにも刺激的すぎて。
目の前の恋人を直視出来ず、堪らずカウンターに向き直ってしまった。
これ以上ななしにこの麻婆豆腐を食べさせては、彼女の舌もだが己の理性もぶっ壊れてしいまう。
回避する方法はひとつしかない。
「ななし。俺がそれ食べるさかい、こっちの炒飯食べ!」
己の舌はぶっ壊れてもいい。だから代わりにこの地獄の釜のような麻婆豆腐を俺が食べる。
それがこの窮地から抜け出す最善策だ。
これ以上エロい顔(ななしにそのつもりは一切ない)をされ続けて、真島の真島が爆発しては大変だ。そうならない為に出来ることをしようと、ななしに炒飯と麻婆豆腐を交換しようと伝えれば、彼女は少しキョトンとした後申し訳なさそうに眉を下げた。
『…も、もしかして…アタシがもう限界なの分かってたんですか?』
「そ、そうやな」
『ご、ごめんなさい!本気で食べられると思ったんですっ。でもあまりにも辛くて』
「かまへんっ。ほな、こっち食べや」
『ま、真島さん〜。ありがとうございます』
どうやらとっくに彼女にも限界が来ていたらしい。
辛すぎて食べるのが困難だったようだ。
かなり勘違いをしているが今は好都合。
辛いものに一生懸命なななしに欲情したなどと知られるより、気遣って交換したと思って貰えた方が万倍もマシだ。
真島はわざわざ訂正することはなく、己の炒飯と中華スープをななしにわたしてやる。
代わりにおずおずと差し出された麻婆豆腐を受け取り完食するため気合いを入れ、浅ましい欲を振り払うように沢山の麻婆豆腐を口に押し入れた。
『ま、真島さん!?か、辛くないですかっ?』
「…辛い」
『そ、そうですよね…はい、お水』
「……」
───辛っ……。
ななしはこんなものを食べていたのか。
こんなことなら最初から声に出して注意してやれば良かった。
『ん!炒飯美味しいですね』
「おう、ここの炒飯美味いな」
『真島さん大丈夫ですか?麻婆豆腐食べれます?』
「おう、辛いけど食えん事は無いわ」
『す、凄いです』
「ななし、次からはあんま辛いもん頼まんようにせぇよ」
『本当ですね。いくら美味しくても辛すぎると食べられないですし…いい勉強になりました』
「ほんなら良かった」
きっとななしは今日のこの出来事を経験し、辛いものを無闇矢鱈に頼むことは無くなるだろう。
これで人前で生々しい表情をすることも無いということだ。
『ま、真島さん。無理しないでくださいね!?』
「おう、こんなもん余裕や」
食べられない辛さではないが辛いものは辛い。
ななしに心配されながら水をがぶ飲みし真島はなんとか麻婆豆腐を平らげた。
『す、凄いです…へへへ。真島さんありがとうございますっ』
「……おう」
悪魔の麻婆豆腐を完食したはいいが、一度ななしのいやらしい顔(本人にそのつもりは一切ない)を目の当たりにしてしまった以上、その欲が簡単に無くなるはずもなく。
分かった事といえば、いくら辛いものを死ぬ気で食べてもななしに対しての興奮もムラムラも収まらないという事。それだけ彼女にご執心らしい。
結局グランドで働いている最中も悶々とした時間を過ごす羽目になり、あくせく働くななしを目で置いながら生殺し状態が数時間続くこととなる。
「(二度と、辛いもんは食わさん!!)」
『ま、真島さーん!?』
真島は固く決意して、己の住む寂れたアパートに直行したのだった。
『今日はこれに挑戦してみたいと思います!』
そうななしに告げられやってきたのは中華料理屋。そして彼女が指さすのは店頭に貼ってあるポスター。
真っ赤な背景に真っ赤な麻婆豆腐が写っている。
事の発端は『グランドに近い場所に中華料理屋があるんですけど、今日のお昼はそこで取ってそのまま出勤しませんか?』とななしが提案してきたことから始まる。
恋人であるななしからの提案だったため、「ええで!」と快く頷いて、二人でグランドのすぐ側に隠れるように建っている中華料理屋へと向かった。
他愛ない話で盛り上がっていると、冒頭の通りななしは店の扉に貼ってあるポスターを指さして、中に入るや否や意気揚々とその商品を注文したのだ。
こんなにもか弱い女の子があれほど禍々し真っ赤な麻婆豆腐を食べられるのか。
もし食べられたとして本当に無事でいられるのだろうか。
あまりにも嬉しそうに注文し、出てきた麻婆豆腐を見て『美味しそ〜』と顔を緩ませるななしに水を差す様なことをするのも憚られて、結局真島はなにも言うことが出来なかった。
「…ななし、麻婆豆腐好きなんか?」
『特別好きという訳では無いんですよ。ボーイの一人に凄く勧められて…辛いけど美味しいから食べてみて!って。だから少し気になっちゃって…えへへ。美味しいといいですけど』
「ちなみになんやけど、辛いのは平気なんか?」
『うーん、あまり食べた事はないですけど…ま、大丈夫だと思います!』
「ほ、ほうか」
『真島さんはここのイチオシの麻婆豆腐じゃなくて良かったんですか?』
「ななしの一口貰おおもてな」
『ふふふ。いいですよ!じゃぁ、アタシも真島さんの炒飯一口貰お〜』
「おう、分けたるわ」
ななしは運ばれてきた麻婆豆腐の禍々しさにはあまり気がついていないようでとても上機嫌だ。
『真島さんの炒飯が来るまで待ってますね。一緒に食べましょう』と、可愛らしい事を言いながらニコニコし体を揺らしている。
小さな恋人の仕草全てがいちいち可愛く、本来の真島ならそれらを眺めて堪能するのだが。如何せん、ななしの目の前にある地獄の釜のような麻婆豆腐が気になってそれどころでは無い。
───…絶対辛い。
見るだけでそう思うのだから、口に入れたらひとたまりも無いのだろう。
声に出して伝えてやれば良いのだろうがそれでも嬉々として麻婆豆腐を見ているななしの好奇心を無下にもできず。
辛くて食べられないという結果になった時、代わりに食べてやろう。
それまでは何も言うまい。
真島はモヤモヤとしたままななしと真っ赤な麻婆豆腐を見て、ぎこちなく笑った。
しばらくして、真島が注文していた炒飯と中華スープがやってきた。
ほかほか湯気をたて美味しそうな香りが届いてくる。明らかにこっちの方が美味しそうだ。
『じゃぁ、食べましょう真島さん!』
「せやな」
『いただきます』
「いただきます」
二人して手を合わせ、それから蓮華で料理を掬い口の中に運んだ。
真島が食す炒飯はそれはもう絶品で。よくある炒飯であるが結局変わった料理等ではなく、普段から食している料理がいちばん美味い。
───…ななしはどやろか…
美味さにじんわりと感動しつつ、隣で麻婆豆腐を食べるななしをちらりと盗み見する真島。
『ひー、辛ぁ』
そこには案の定真っ赤な麻婆豆腐の辛さに悶えているななしが居た。
口元に手を当てながらあまりの辛さに涙目になっている。
傍にあった水を飲んでなんとか絡みを和らげようとしているらしいが、なかなか収まらないのだろう。
終始『ひぇー』と情けない声を出している。
咄嗟に真島は悶絶しているななしの背中を摩ってやる。
あまり悶えているのでだんだんと心配になってくる程だ。
「だ、大丈夫かいな」
『か、辛いですけどっ!おいしです!!』
「ほ、ほうか」
『でも、舌っ痛いっ』
「……」
しばらくして辛すぎて痛みを伴ったらしいななしは、舌を少し出して肩で息をしていた。
小さな口からチラリと覗く真っ赤な舌。
潤んだ瞳を細めて、苦しいのか肩で大きく息をしている姿。
辛いもの食べ悶えているだけなのだが、真横で見ていた真島にはその姿がどうにも扇情的に映ってしまって。
二人で昼食を食べに来ただけだと言うのに、意図せずムラムラとしてしまいななしから目が離せなくなってしまったのだ。
「(エロ過ぎるやろっ!なんちゅう顔しとんねん。あー、飯なんか食っとる場合とちゃうんやないか…)」
『辛いっ、でも美味しいっ。真島さんも一口どうですかっ??』
「(そんな潤んだ目ぇしよって。他の男が見たらその気なってまうやろ)」
『真島さん?』
「…」
『真島さんどうかしました?』
真島が一人ムラムラと格闘している間も地道に麻婆豆腐を食べていたななし。
こちらを見つめたまま固まってしまった真島が不思議でならないようで、辛さで少し汗をかき真っ赤になった顔を傾げ不思議そうにしていた。
そんな仕草も行動も今の真島にとってはあまりにも刺激的すぎて。
目の前の恋人を直視出来ず、堪らずカウンターに向き直ってしまった。
これ以上ななしにこの麻婆豆腐を食べさせては、彼女の舌もだが己の理性もぶっ壊れてしいまう。
回避する方法はひとつしかない。
「ななし。俺がそれ食べるさかい、こっちの炒飯食べ!」
己の舌はぶっ壊れてもいい。だから代わりにこの地獄の釜のような麻婆豆腐を俺が食べる。
それがこの窮地から抜け出す最善策だ。
これ以上エロい顔(ななしにそのつもりは一切ない)をされ続けて、真島の真島が爆発しては大変だ。そうならない為に出来ることをしようと、ななしに炒飯と麻婆豆腐を交換しようと伝えれば、彼女は少しキョトンとした後申し訳なさそうに眉を下げた。
『…も、もしかして…アタシがもう限界なの分かってたんですか?』
「そ、そうやな」
『ご、ごめんなさい!本気で食べられると思ったんですっ。でもあまりにも辛くて』
「かまへんっ。ほな、こっち食べや」
『ま、真島さん〜。ありがとうございます』
どうやらとっくに彼女にも限界が来ていたらしい。
辛すぎて食べるのが困難だったようだ。
かなり勘違いをしているが今は好都合。
辛いものに一生懸命なななしに欲情したなどと知られるより、気遣って交換したと思って貰えた方が万倍もマシだ。
真島はわざわざ訂正することはなく、己の炒飯と中華スープをななしにわたしてやる。
代わりにおずおずと差し出された麻婆豆腐を受け取り完食するため気合いを入れ、浅ましい欲を振り払うように沢山の麻婆豆腐を口に押し入れた。
『ま、真島さん!?か、辛くないですかっ?』
「…辛い」
『そ、そうですよね…はい、お水』
「……」
───辛っ……。
ななしはこんなものを食べていたのか。
こんなことなら最初から声に出して注意してやれば良かった。
『ん!炒飯美味しいですね』
「おう、ここの炒飯美味いな」
『真島さん大丈夫ですか?麻婆豆腐食べれます?』
「おう、辛いけど食えん事は無いわ」
『す、凄いです』
「ななし、次からはあんま辛いもん頼まんようにせぇよ」
『本当ですね。いくら美味しくても辛すぎると食べられないですし…いい勉強になりました』
「ほんなら良かった」
きっとななしは今日のこの出来事を経験し、辛いものを無闇矢鱈に頼むことは無くなるだろう。
これで人前で生々しい表情をすることも無いということだ。
『ま、真島さん。無理しないでくださいね!?』
「おう、こんなもん余裕や」
食べられない辛さではないが辛いものは辛い。
ななしに心配されながら水をがぶ飲みし真島はなんとか麻婆豆腐を平らげた。
『す、凄いです…へへへ。真島さんありがとうございますっ』
「……おう」
悪魔の麻婆豆腐を完食したはいいが、一度ななしのいやらしい顔(本人にそのつもりは一切ない)を目の当たりにしてしまった以上、その欲が簡単に無くなるはずもなく。
分かった事といえば、いくら辛いものを死ぬ気で食べてもななしに対しての興奮もムラムラも収まらないという事。それだけ彼女にご執心らしい。
結局グランドで働いている最中も悶々とした時間を過ごす羽目になり、あくせく働くななしを目で置いながら生殺し状態が数時間続くこととなる。
「(二度と、辛いもんは食わさん!!)」
『ま、真島さーん!?』
真島は固く決意して、己の住む寂れたアパートに直行したのだった。