小話集2
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(真島/恋人)
*生理のお話注意!
『お腹痛い…』
ソファに深々と座り腹を抑えているななしは重苦しいため息をついている。
そんな彼女の顔色はあまり良くない。
現在ななしは女性特有の日が来ており、今日で丁度三日目であった。
ななしの場合1週間のうちのほとんどは普段通りの体調で過ごせるのだが、どうにも三日目だけは腹痛や腰痛、倦怠感などの症状が出てしまう。
そんな時は薬を飲み家で大人しく過ごすのだが、稀に薬を飲んでも症状が治まらない日がある。
今回の三日目はまさその通りで。朝一番に薬を飲んだが、腹痛も腰痛も治まらなかったのだ。
結局丸一日体調不良のまま仕事を行ったななしは恋人である真島がいる事務所には赴かず、自宅に直帰し腹を温めながらソファで脱力していた。
今のななしは化粧も落としておらず、そもそもまだ着替えすらも出来ていない。
帰宅後直ぐに着替えて楽な格好で過ごす方がリラックス出来るとななしも良く分かってはいるのだが、体は思うようには動いてはくれず。
ソファに座ってからはまるでそこに根付いてしまったかのように動けず、なにもかもが億劫で仕方がなかった。
こんな時は直ぐにでも眠りについてしまいたい…そんな事を思うがズキンズキンと痛む下腹部のせいで、眠りに着けそうにない。
結局ソファから動くことも出来ず、ななしは大きなため息を着くしかなかった。
自身の腹を手のひらで優しく撫でて虚無の時間を過ごしていると、不意にリビングの扉がガチャリと開いた。
無音の空間だったためドアが開く音がそれはもう大きく響く。ぼんやりとしていたななしの耳にもその音がはっきりと聞こえたため、ゆっくりと顔を起こせばそこにはビニール袋を手に持った真島が立っていたのだ。
「ななし、大丈夫か?」
『吾朗さん!お疲れ様です』
「おう、ななしもお疲れさん」
『今日早く終わったんですか?まだ7時前ですよ?』
「まぁ、そんなとこや。それよりななしこそ体調はどうなんや。少しは楽になったんか?」
『んーー、朝と変わりありません…。まだ結構だるいです…』
「ほうか。ほなまだ休んどき」
『うん、ありがとう吾朗さん』
真島が袋を持つ手は素手であり、彼が先に手洗いやうがいを済ませたことが伺える。
真島は素手で持っていた袋を机に置くと、ななしが座るソファの隣に深深と腰を下ろした。
「お前なんか食えそうなんか?」と、覗き込んでくる真島の隻眼がいつもよりも鋭く、眉間にもくっきりと皺が刻まれている。
ただ厳つい面持ちでも立派な眉尻は普段よりも下がり気味で、真島の表情からはななしにもはっきりと伝わる程"心配"の二文字が浮かんでいるようであった。
仕事が早く終わったと言うのも口実で、きっと朝から体調が優れないと嘆いていた事を気にかけて早々に帰宅してくれたのだろう。
はっきりと心配だと言われた訳では無かったが、真島なりの気遣う気持ちがひしひしと感じ取れた様な気がしたななしは未だに体調は悪いものの、彼の優しさにキュウと胸が締め付けられるようであった。
『ん、ありがとう吾朗さん。でも今は食欲はないかも…』
「適当に胃に優しそうなもん買うてきたさかい、腹空いたら食えよ」
『ありがとうございます。吾朗さんが優しすぎてちょっと泣いちゃいそう』
「なんでやねん!」
『だって素敵すぎるんだもん』
「ヒヒッ!どや、惚れ直したか?」
『ふふ、うん。毎日好きを更新してる』
「ななし、こっち来い」
真島の優しさにななしの心がホクホクと満たされていると、こちらに向かって大きな手が伸びてくる。
その手に抗うことなく身を委ねれば、素早く引き寄せられ彼の足の間に座らせられた。
背中に密着している真島の腹にもたれ掛かると、服越しでも彼の温かな体温がななしに伝わってくる。
その温もりを感じるだけで沈んだ気持ちも倦怠感や痛みも随分と軽くなるようだからとても不思議だ。
ななしにとって真島とはどんな薬よりも効果のある精神安定剤のようなも。
傍に居てくれるだけでその効果を発揮するとんでもない恋人 だ。
今ではもう絶対に手放すことが出来ないほど真島に惹かれ、依存している。
『んー、吾朗さん優しい…あったかい…眠い…』
「眠れそうならこのまま寝てもええで」
『んー、お風呂入らなくちゃ眠れないです…でも動きたくないぃ』
「ほな気の済むまでこうしとればええやんけ。せやけど座っとるより横になっとる方が楽なんやないんか?」
『生々しいですけど…横になると色々漏れそうで嫌なんですよ。この姿勢の方が安心できるんです』
「なるほど…女っちゅうのはほんま大変やのぉ」
『本当ですよねぇ。アタシもたまに嫌になっちゃいますもん』
「ほうか…嫌になるんか」
『そうなんです!でもまぁアタシが酷いのは三日目だけなので、まだマシな方なんです。世の中にはもっと酷くて苦しい人も居てそういう人は本当に大変だと思いますし、めちゃくちゃ尊敬です』
「言うてななしも酷いやろ。三日目だけでも毎回苦しそうやんけ」
『ふふっ、アタシは吾朗さんも居てくれるから苦しくても全然平気なの』
「ヒヒッ!俺で体が楽になるんか?」
『はい!吾朗さんはアタシにとって恋人兼特効薬なんですからね!』
「おもろい事言うやんけ!」
ヒヒヒと楽しそうに笑った真島にななしは釣られるようにして笑みを浮かべた。
言葉の節々に彼の気遣いや優しさを感じるようでどうもこそばゆい。
女性特有の日の事も理解しようと寄り添ってくれる姿勢がななしには嬉しくてたまらなかった。
感謝の意味も込めて腹に回された腕をサワサワと撫でていると、頭上から「ななし」と真島の声が降りてくる。
その声が今まで楽しそうに話していた声音とは違いあまりにも真剣であったため、思わず顔を起こしたななし。
するとこちらを見下ろしている隻眼と視線が合う。物言いたげな隻眼にななしは『どうしました?』と首を傾げた。
「子供でも作るか」
『……へ?』
真島の口から飛び出てきた言葉があまりにも衝撃的で、ななしは口を開けたまま固まってしまった。
驚きのあまり思考を停止していた脳内で必死に真島の言葉を反芻し「子供を作る」の意味を考える。
『子供…』
「おう」
『アタシと吾朗さんの?』
「他に誰がおんねん」
『アタシと吾朗さんの…子供………子供!?』
必死に考えた結果真島が自分との子供を作るかと提案したのだと理解したななしは、先程とは比べ物にならないほど目を見開き驚きの声を上げた。
真島は「大袈裟やのぉ」と呑気に笑っているが、それどころではない。
『きゅ、急にどうしたんですか!?』
「生理で苦しそうにしとるさかい子供こさえんのもアリやおもてな」
『で、でも吾朗さん子供欲しくないんじゃ…』
「あ?なんでやねん」
『だってそんな話一度も聞いたこと無かったから』
「阿呆、好きな女との子供が欲しくない男がこの世のどこにおんねん」
『ご、吾朗さん…っ』
「きっかけはどうあれ、俺はお前との子供が欲しいと思っとる。まぁ、慌てる必要もないんやけどな」
ななしも子供の事を考えていない訳ではなく、ゆくゆくは真島との子供を授かりたいと思っていた。
ただ彼の仕事柄、簡単に子供を望む事が出来ないのも事実であった。
故に"将来的にはいつか子供が出来たらいいなぁ"と今後について漠然と考えることしかできておらず、ななしにとって"真島の急な提案"はあまりにも非現実的なものだった。
しかし真島が自分との人生の在り方を彼なりにしっかりと考えていてくれた事はななしにとって、とても嬉しいことである。
『そっかぁ…吾朗さんもそんな風に思っていてくれてたんですね…ふふ、少し意外だけどとっても嬉しいです』
「意外ぃ?なんや俺が不甲斐ないみたいやんけ」
『そんな事ないですよ!吾朗さんだからこそ安心して傍に居られるんですから!』
「ヒヒッ!調子のええ事いいよって」
『ふふっ、じゃぁまずは同棲からですね』
「今も殆どそうやけどなぁ」
『アタシのお家にします?吾朗さんのお家にします?』
「お前と一緒ならどこでもかまへんわ」
『なにそのイケメンな答え』
「ななしも俺も住む場所に拘りなんて無いやろが。昔かてそうやったやろ」
『まぁ、確かにそうですねぇ』
遠い昔、真島の住むかなりオンボロなアパートに二人で寄り添い眠っていたあの頃を思い出す。
二人で寛ぐにはあまりにも狭い部屋であったが、同じ空間で一緒に過ごせると言うだけでとても幸せだった。
ななしや真島の幸福は何処にいるかよりも、誰といるかで決まる。
それはきっと大人になった今でも変わらない筈だ。
『でも…どうしよう』
「あ?なにがや?」
『同棲しちゃったらもっともっと吾朗さんを独り占めしたくなっちゃう』
「別にええやんけ」
『そうなったら子供の事考えられなくなっちゃうじゃないですか〜』
「ヒヒッ、可愛ええやっちゃのぉ」
『もっと吾朗さんを堪能してから…それから貴方との子供作りたいです…』
「ほな俺ももっとななしを独占するかのぉ…」
真島はそう言うと腹に回していた腕をゆっくりと持ち上げ、嬉しそうににこにことはにかんでいるななしの顎を持ち上げた。
自ずとななしの顔が上を向き自然と二人の視線が重なる。
見つめ合えばどちらからともなく近づき、真島の唇とななしの唇が優しく触れ合った。
何度も可愛らしいリップ音を鳴らしながら、まるでお互いの唇の柔らかさを堪能するようにキスに没頭する。
「ヒヒッ!まだまだ足りひん。もっと独り占めせな俺は満足出来ひんで」
『ん、ふふ。まだなにも出来ないですって』
「分かっとる。せやけどキスならええやろ?そうせな堪能できひん」
『軽いキスなら…いいですよ?』
「ヒヒッ!こうやって今のうちにキスしとかんとな。子供できたらななしを取り合う毎日になるやろしな」
『ええ〜?なんですかそれ』
「俺似の男が生まれてみぃ。ななし好きすぎて離れんくなるの目に見えとるやんけ」
『ふふっ!でも貴方似の子供ならきっと優しくてかっこよくて、気遣いのできるいい子になるでしょうね』
「とんでもなくななし好きのな」
『ふふっ、それは絶対なんですか?』
「絶対や。言い切れる」
『アタシは嬉しいけどなぁ』
「生まれるならななし似の可愛ええ女の子がええ…」
『それこそ"大きくなったらパパと結婚するー"って言い出しちゃうじゃないですかぁ。こんなかっこいいパパはどこにも居ないんですから!アタシ全然普通に嫉妬しますよ?』
「子供相手に嫉妬すな」
『あ、それ吾朗さんに言われたくない!』
真島との間にできる子供ならきっと男の子でも女の子でも、将来パパと結婚すると言い出してもきっと愛くるしいのだろう。
ただお互いがお互いを好きすぎるあまり嫉妬してしまう可能性は否めないが、そんな風に想い合える日常はとても素敵な事だろうとななしは思う。
真島との子供がいて、真島組の皆がいて、神室町で出来た親友たちがいて。
昔とは比べ物にならないほど賑やかな人生を歩むことになるのだろう。
これ程幸せなことはきっとない。
一人でソファに座っていた時は特有の痛みや倦怠感で酷く荒んでいたななし。
だが真島と明るい未来の話をする今では痛みや倦怠感は全て消え、代わりにこの先訪れるであろう幸福な毎日に期待と興奮で胸がいっぱいであった。
『吾朗さん、ふふ、じゃもう少しお互いが堪能できるまでキスしましょう?』
「ヒヒッ、ななしの頼みとあらばしゃあないのぉ」
(ななしどうするんや?)
(え?)
(子供の名前や)
(え!?気が早いですよ吾朗さん〜)
(早いも遅いもあらへん。半端な名前やとなめられてまう。今からようさん考えとかんと)
(ふふふ、気合い入ってる)
意外と真島さんの方が子供を楽しみにしてそう。ななしちゃんはそんな真島さんを見て微笑ましく思っているはず。
子供は勝手に双子の男の子が産まれたら面白いなぁと思ってます。高校生くらいになったら若真島になり、ななしLoveの子供ちゃんと真島さんで真島×3な状況になってたら面白い。
*生理のお話注意!
『お腹痛い…』
ソファに深々と座り腹を抑えているななしは重苦しいため息をついている。
そんな彼女の顔色はあまり良くない。
現在ななしは女性特有の日が来ており、今日で丁度三日目であった。
ななしの場合1週間のうちのほとんどは普段通りの体調で過ごせるのだが、どうにも三日目だけは腹痛や腰痛、倦怠感などの症状が出てしまう。
そんな時は薬を飲み家で大人しく過ごすのだが、稀に薬を飲んでも症状が治まらない日がある。
今回の三日目はまさその通りで。朝一番に薬を飲んだが、腹痛も腰痛も治まらなかったのだ。
結局丸一日体調不良のまま仕事を行ったななしは恋人である真島がいる事務所には赴かず、自宅に直帰し腹を温めながらソファで脱力していた。
今のななしは化粧も落としておらず、そもそもまだ着替えすらも出来ていない。
帰宅後直ぐに着替えて楽な格好で過ごす方がリラックス出来るとななしも良く分かってはいるのだが、体は思うようには動いてはくれず。
ソファに座ってからはまるでそこに根付いてしまったかのように動けず、なにもかもが億劫で仕方がなかった。
こんな時は直ぐにでも眠りについてしまいたい…そんな事を思うがズキンズキンと痛む下腹部のせいで、眠りに着けそうにない。
結局ソファから動くことも出来ず、ななしは大きなため息を着くしかなかった。
自身の腹を手のひらで優しく撫でて虚無の時間を過ごしていると、不意にリビングの扉がガチャリと開いた。
無音の空間だったためドアが開く音がそれはもう大きく響く。ぼんやりとしていたななしの耳にもその音がはっきりと聞こえたため、ゆっくりと顔を起こせばそこにはビニール袋を手に持った真島が立っていたのだ。
「ななし、大丈夫か?」
『吾朗さん!お疲れ様です』
「おう、ななしもお疲れさん」
『今日早く終わったんですか?まだ7時前ですよ?』
「まぁ、そんなとこや。それよりななしこそ体調はどうなんや。少しは楽になったんか?」
『んーー、朝と変わりありません…。まだ結構だるいです…』
「ほうか。ほなまだ休んどき」
『うん、ありがとう吾朗さん』
真島が袋を持つ手は素手であり、彼が先に手洗いやうがいを済ませたことが伺える。
真島は素手で持っていた袋を机に置くと、ななしが座るソファの隣に深深と腰を下ろした。
「お前なんか食えそうなんか?」と、覗き込んでくる真島の隻眼がいつもよりも鋭く、眉間にもくっきりと皺が刻まれている。
ただ厳つい面持ちでも立派な眉尻は普段よりも下がり気味で、真島の表情からはななしにもはっきりと伝わる程"心配"の二文字が浮かんでいるようであった。
仕事が早く終わったと言うのも口実で、きっと朝から体調が優れないと嘆いていた事を気にかけて早々に帰宅してくれたのだろう。
はっきりと心配だと言われた訳では無かったが、真島なりの気遣う気持ちがひしひしと感じ取れた様な気がしたななしは未だに体調は悪いものの、彼の優しさにキュウと胸が締め付けられるようであった。
『ん、ありがとう吾朗さん。でも今は食欲はないかも…』
「適当に胃に優しそうなもん買うてきたさかい、腹空いたら食えよ」
『ありがとうございます。吾朗さんが優しすぎてちょっと泣いちゃいそう』
「なんでやねん!」
『だって素敵すぎるんだもん』
「ヒヒッ!どや、惚れ直したか?」
『ふふ、うん。毎日好きを更新してる』
「ななし、こっち来い」
真島の優しさにななしの心がホクホクと満たされていると、こちらに向かって大きな手が伸びてくる。
その手に抗うことなく身を委ねれば、素早く引き寄せられ彼の足の間に座らせられた。
背中に密着している真島の腹にもたれ掛かると、服越しでも彼の温かな体温がななしに伝わってくる。
その温もりを感じるだけで沈んだ気持ちも倦怠感や痛みも随分と軽くなるようだからとても不思議だ。
ななしにとって真島とはどんな薬よりも効果のある精神安定剤のようなも。
傍に居てくれるだけでその効果を発揮するとんでもない
今ではもう絶対に手放すことが出来ないほど真島に惹かれ、依存している。
『んー、吾朗さん優しい…あったかい…眠い…』
「眠れそうならこのまま寝てもええで」
『んー、お風呂入らなくちゃ眠れないです…でも動きたくないぃ』
「ほな気の済むまでこうしとればええやんけ。せやけど座っとるより横になっとる方が楽なんやないんか?」
『生々しいですけど…横になると色々漏れそうで嫌なんですよ。この姿勢の方が安心できるんです』
「なるほど…女っちゅうのはほんま大変やのぉ」
『本当ですよねぇ。アタシもたまに嫌になっちゃいますもん』
「ほうか…嫌になるんか」
『そうなんです!でもまぁアタシが酷いのは三日目だけなので、まだマシな方なんです。世の中にはもっと酷くて苦しい人も居てそういう人は本当に大変だと思いますし、めちゃくちゃ尊敬です』
「言うてななしも酷いやろ。三日目だけでも毎回苦しそうやんけ」
『ふふっ、アタシは吾朗さんも居てくれるから苦しくても全然平気なの』
「ヒヒッ!俺で体が楽になるんか?」
『はい!吾朗さんはアタシにとって恋人兼特効薬なんですからね!』
「おもろい事言うやんけ!」
ヒヒヒと楽しそうに笑った真島にななしは釣られるようにして笑みを浮かべた。
言葉の節々に彼の気遣いや優しさを感じるようでどうもこそばゆい。
女性特有の日の事も理解しようと寄り添ってくれる姿勢がななしには嬉しくてたまらなかった。
感謝の意味も込めて腹に回された腕をサワサワと撫でていると、頭上から「ななし」と真島の声が降りてくる。
その声が今まで楽しそうに話していた声音とは違いあまりにも真剣であったため、思わず顔を起こしたななし。
するとこちらを見下ろしている隻眼と視線が合う。物言いたげな隻眼にななしは『どうしました?』と首を傾げた。
「子供でも作るか」
『……へ?』
真島の口から飛び出てきた言葉があまりにも衝撃的で、ななしは口を開けたまま固まってしまった。
驚きのあまり思考を停止していた脳内で必死に真島の言葉を反芻し「子供を作る」の意味を考える。
『子供…』
「おう」
『アタシと吾朗さんの?』
「他に誰がおんねん」
『アタシと吾朗さんの…子供………子供!?』
必死に考えた結果真島が自分との子供を作るかと提案したのだと理解したななしは、先程とは比べ物にならないほど目を見開き驚きの声を上げた。
真島は「大袈裟やのぉ」と呑気に笑っているが、それどころではない。
『きゅ、急にどうしたんですか!?』
「生理で苦しそうにしとるさかい子供こさえんのもアリやおもてな」
『で、でも吾朗さん子供欲しくないんじゃ…』
「あ?なんでやねん」
『だってそんな話一度も聞いたこと無かったから』
「阿呆、好きな女との子供が欲しくない男がこの世のどこにおんねん」
『ご、吾朗さん…っ』
「きっかけはどうあれ、俺はお前との子供が欲しいと思っとる。まぁ、慌てる必要もないんやけどな」
ななしも子供の事を考えていない訳ではなく、ゆくゆくは真島との子供を授かりたいと思っていた。
ただ彼の仕事柄、簡単に子供を望む事が出来ないのも事実であった。
故に"将来的にはいつか子供が出来たらいいなぁ"と今後について漠然と考えることしかできておらず、ななしにとって"真島の急な提案"はあまりにも非現実的なものだった。
しかし真島が自分との人生の在り方を彼なりにしっかりと考えていてくれた事はななしにとって、とても嬉しいことである。
『そっかぁ…吾朗さんもそんな風に思っていてくれてたんですね…ふふ、少し意外だけどとっても嬉しいです』
「意外ぃ?なんや俺が不甲斐ないみたいやんけ」
『そんな事ないですよ!吾朗さんだからこそ安心して傍に居られるんですから!』
「ヒヒッ!調子のええ事いいよって」
『ふふっ、じゃぁまずは同棲からですね』
「今も殆どそうやけどなぁ」
『アタシのお家にします?吾朗さんのお家にします?』
「お前と一緒ならどこでもかまへんわ」
『なにそのイケメンな答え』
「ななしも俺も住む場所に拘りなんて無いやろが。昔かてそうやったやろ」
『まぁ、確かにそうですねぇ』
遠い昔、真島の住むかなりオンボロなアパートに二人で寄り添い眠っていたあの頃を思い出す。
二人で寛ぐにはあまりにも狭い部屋であったが、同じ空間で一緒に過ごせると言うだけでとても幸せだった。
ななしや真島の幸福は何処にいるかよりも、誰といるかで決まる。
それはきっと大人になった今でも変わらない筈だ。
『でも…どうしよう』
「あ?なにがや?」
『同棲しちゃったらもっともっと吾朗さんを独り占めしたくなっちゃう』
「別にええやんけ」
『そうなったら子供の事考えられなくなっちゃうじゃないですか〜』
「ヒヒッ、可愛ええやっちゃのぉ」
『もっと吾朗さんを堪能してから…それから貴方との子供作りたいです…』
「ほな俺ももっとななしを独占するかのぉ…」
真島はそう言うと腹に回していた腕をゆっくりと持ち上げ、嬉しそうににこにことはにかんでいるななしの顎を持ち上げた。
自ずとななしの顔が上を向き自然と二人の視線が重なる。
見つめ合えばどちらからともなく近づき、真島の唇とななしの唇が優しく触れ合った。
何度も可愛らしいリップ音を鳴らしながら、まるでお互いの唇の柔らかさを堪能するようにキスに没頭する。
「ヒヒッ!まだまだ足りひん。もっと独り占めせな俺は満足出来ひんで」
『ん、ふふ。まだなにも出来ないですって』
「分かっとる。せやけどキスならええやろ?そうせな堪能できひん」
『軽いキスなら…いいですよ?』
「ヒヒッ!こうやって今のうちにキスしとかんとな。子供できたらななしを取り合う毎日になるやろしな」
『ええ〜?なんですかそれ』
「俺似の男が生まれてみぃ。ななし好きすぎて離れんくなるの目に見えとるやんけ」
『ふふっ!でも貴方似の子供ならきっと優しくてかっこよくて、気遣いのできるいい子になるでしょうね』
「とんでもなくななし好きのな」
『ふふっ、それは絶対なんですか?』
「絶対や。言い切れる」
『アタシは嬉しいけどなぁ』
「生まれるならななし似の可愛ええ女の子がええ…」
『それこそ"大きくなったらパパと結婚するー"って言い出しちゃうじゃないですかぁ。こんなかっこいいパパはどこにも居ないんですから!アタシ全然普通に嫉妬しますよ?』
「子供相手に嫉妬すな」
『あ、それ吾朗さんに言われたくない!』
真島との間にできる子供ならきっと男の子でも女の子でも、将来パパと結婚すると言い出してもきっと愛くるしいのだろう。
ただお互いがお互いを好きすぎるあまり嫉妬してしまう可能性は否めないが、そんな風に想い合える日常はとても素敵な事だろうとななしは思う。
真島との子供がいて、真島組の皆がいて、神室町で出来た親友たちがいて。
昔とは比べ物にならないほど賑やかな人生を歩むことになるのだろう。
これ程幸せなことはきっとない。
一人でソファに座っていた時は特有の痛みや倦怠感で酷く荒んでいたななし。
だが真島と明るい未来の話をする今では痛みや倦怠感は全て消え、代わりにこの先訪れるであろう幸福な毎日に期待と興奮で胸がいっぱいであった。
『吾朗さん、ふふ、じゃもう少しお互いが堪能できるまでキスしましょう?』
「ヒヒッ、ななしの頼みとあらばしゃあないのぉ」
(ななしどうするんや?)
(え?)
(子供の名前や)
(え!?気が早いですよ吾朗さん〜)
(早いも遅いもあらへん。半端な名前やとなめられてまう。今からようさん考えとかんと)
(ふふふ、気合い入ってる)
意外と真島さんの方が子供を楽しみにしてそう。ななしちゃんはそんな真島さんを見て微笑ましく思っているはず。
子供は勝手に双子の男の子が産まれたら面白いなぁと思ってます。高校生くらいになったら若真島になり、ななしLoveの子供ちゃんと真島さんで真島×3な状況になってたら面白い。