小話集2
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(支配人/恋人)
「ほな帰ろかななし」
『はい、帰りましょう』
今日も毎日の仕事を終え深夜を回った頃。
真島とななしは店の施錠を終わらせ、帰路に着いた。
夏もそろそろ終わり秋を迎えようといしている今。残暑はまだまだ厳しいが夜になると爽やかで心地よい風が吹く。
そんな涼しい風を顔や体に受けているななしは『気持ちいいですねぇ』と、伸びをしながら横を歩いている真島を見上げた。
真島も風が心地よいのか「せやなぁ」と隻眼を閉じ、秋の夜 の空気を胸いっぱいに吸い込んでいるようであった。
夜になると(常にそうだが)酔っ払っいやガラの悪い輩等がそれなりに多い蒼天堀だが、真島と歩く嬉しさと秋の心地良さにななしの心は満たされていた。
ななしは穏やかな気持ちのまま隣を歩く真島の袖を遠慮気味に掴むと、彼はクスクスと低く笑った後その大きく逞しい手で包み込むように手を握ってくる。
温もりを感じた途端に真島への愛おしさや愛情が込み上げ、ななしの顔はだんだんと緩んだ。
きっとアタシはとても情けない顔をしているに違いないと思うものの、好きという気持ちが溢れている今顔を取り繕う余裕は全くなかった。
『に、ニヤけちゃう…』
「安心せぇ、とんでもなく可愛ええ顔しとるさかい」
『してないです…恥ずかしいので見ないでください』
「そんなこと言わんと俺によぉ見せてや」
『だ、ダメです!変な顔しますよ!』
「ヒヒッ!それもそれで可愛ええんやけどなぁ。まぁ、ええわ。また後でななしの可愛ええ顔じっくり拝めるさかいそれまで我慢しとったる」
『ど、どういう意味ですかぁ』
「どういう意味やろなぁ?」
『い、意地悪です!』
イタズラな笑みを浮かべている真島にななしはタジタジだ。
真島が言った言葉の意味を脳内で反芻していると羞恥で顔が熱くなってくる。
しかし"今夜のこと"を暗に伝えられてドギマギしない方がおかしいというもの。
顔色一つ変えない真島の方が絶対に普通ではない。
これが大人の余裕というものなのだろうか。
幼稚な思考を絶対に真島に悟られてはなるまいと、彼に見られないように顔を背けたものの、その行動で全て察知されたか隣から低い笑い声が聞こえて来た。
やはり真島には大人の余裕があるらしい。
心も体も早く大人になれたらいいのになぁ、と脳内で一人ごちる。
「お、せやった。ななし」
『うん?なんですか?』
「買わなかんもんあんねん、コンビニ寄ってもええか?」
『あ、はい。勿論です』
「すまん、直ぐ終わるさかい」
『アタシここで待ってますよ〜。お買い物してきてくださいね』
「ん?一緒に入らんのか?こないな所で待っとったらナンパされんで」
『ふふふっ、されませんよ。アタシ今制服姿ですし傍から見たら男なんですよ?』
「こんな可愛ええ男やったら変な気ぃ起こす奴も絶対おる」
『大袈裟だなぁ。待ってるんで行ってきてください』
「なんかあったら絶対入ってくるんやで」
『ふふっ、了解です』
耽っていると丁度見えてきたコンビニ。
招福町のMストアでななしの行きつけのコンビニでもある。
そんなMストアに何かを買い忘れたから寄りたいという真島に快く頷いたななし。
「なにかあるかもしれん」と、とても心配性な真島の背中を押してななしは彼を送り出した。
こんな場所で、しかも男に(見える)声を掛ける輩も早々いないであろう。
こんな男装した女っ気のない女を好きだと、可愛いいと言ってくれるのはきっと後にも先にも底なしに優しい真島だけだ。
『ふふふ…本当に素敵な人』
今の自分が幸せで充実した日々を送ることが出来るのも真島のお陰だ。
素敵な人と恋人になることが出来たと、ななしは一人外で待ちながらもニコニコと笑っていた。
秋の涼しい風を浴びながらホクホクとした気持ちに浸っていると 、不意に背にしていたコンビニの窓をコンコンとノックするような音がななしの耳の響いた。
なんの音だろうと背後を振り返るとコンビニの中には真島がおり、気づいたななしに対して口パクで「おいで」と言っている様であった。
小さく手招きする真島に首を傾げつつ、言われたようにコンビニの中に入ったななし。
『真島さん?』
「ななし。こっちおいで」
『?』
促されるまま入店して真島の元に行けば彼は更に「こっちにおいで」歩き出した。
そんな真島の右手には見慣れた小さな箱 が握られている。
コンビニ立ち寄った理由が分かってしまったななし。心の中はパニックだ。
なんとなく見て見ぬふりをしつつ平常心を保っていると、真島が「コレ見てみななし」と、なにかの商品を手に取りプチパニック中のななしに差し出した。
それはひんやり冷たい"アップルパイ"。
いわゆるコンビニスイーツだ。
『わぁ、アップルパイですね!美味しそう〜』
「ななしりんご好きやろ?」
『ふふ、よく知ってますね!はい、大好物です』
「最後の1個やし一緒に買うて行こか」
『え、そんなそんな、真島さんに買ってもらうなんて…自分で買いますよ?』
「かまへん。一緒に払った方が楽やし、俺も一口食べたいねん」
『い、いいんですか?』
「おう、それに日頃から頑張って仕事してくれとんのや。こんくらいさしてや」
『日頃お世話になってるのアタシなのに…でもありがとうございます。一緒に食べましょうね』
「ななし、助けられとんのは俺の方なんやで」
『ふふ、じゃぁ、お互い様ってやつですね』
「せやな。お互い様やな」
日頃仕事で体を動かし忙しなく働いているのは真島とて同じだ。
支配人であるため自分よりきっと大変なはずなのに、なにかあればすぐにフォローを入れてくれたり、仕事を手伝ってくれたり…真島に助けられていると実感する毎日だ。
それでも「助けられているのは俺だ」と言う真島の気遣いや真面目さに、またひとつななしの胸が高鳴る。
ななしは再び赤くなってくる頬を抑えながらレジに向かう真島の大きな背中を追いかけた。
*****
レジの会計を終わらせた後、二人は他愛ない会話をしながらも普段ななしが住んでいるアパートにへと到着した。
今夜は真島のアパートにななしが泊まるのではなく、ななしのアパートで真島が泊まるのだ。
何度も真島と一夜を過ごすことはあっても自宅で過ごすことは珍しいため、なんとなく緊張しているななし。
ソワソワとしながらも一緒に来ている真島をアパートへと招き入れた。
「相変わらず綺麗やなななしの部屋は」
『物が少ないだけですよ〜。それに真島さんが来るから掃除したんです』
「俺に気ぃ使わんでええんやで」
『ふふ、流石に掃除はします』
「でも日頃から綺麗なんやろな」
『そ、それはどうでしょう…』
「フッ、自信なさげやな」
『いつもはもっともっとハチャメチャですもん〜』
「ほな今度こっそり来てみようかのぉ」
『絶対ダメですからね!掃除終わるまで扉の前で待たせますからね!』
「ヒヒッ!俺は全然気にせぇへんのやけどなぁ」
『アタシは気にしちゃうんですもん』
「変な所で気にしいやなななしは」
『へ、変じゃないです…ん、真島さん』
部屋に着くや否や二人の距離はグンと縮まり、真島のあぐらの上にななしが座り後ろから抱きしめられている状態だ。
そんな状態で真島は優しくスキンシップをとってくるためななしは擽ったくて仕方がない。
首筋に触れる真島の唇や鼻がソワソワと動き、ななしは小さく声を上げて笑った。
「お、せや!アップルパイ食べんでええんか?」
『んふふ、んっ、今から食べたら太っちゃいますもん。明日起きたら一緒に食べましょう?』
「一個食べたくらいで太らんやろ。それにななしは全然細いやないか」
『深夜のスイーツは罪深いです…絶対太る。全然細くないですし…』
「腰なんか両手で掴めそうやないか」
『つ、掴めませんよ〜!』
「ん?ほんまか?」
『た、試さないでくださいよっ!』
本当に腰周りに大きな手がピッタリ張り付いてくるのでななしは慌てて両手首をつかみ剥ぎ取る。
真島は「絶対掴めるわ」と呟いているが絶対掴めないので試さないでくれと、ななしは急いで彼の足の上から離れた。
警戒態勢のまま買ってきたアップルパイを急いで冷蔵庫にしまう。
「なんや、ななしの頬張る姿見よう思たんに」
『明日見られるじゃないですか』
「今すぐ見たかったんや」
『なんで食べる姿が見たいんですかぁ』
「ん?美味いもん頬張るななしが可愛ええからや」
『か、可愛くないですよ』
「幸せそうに目ぇ細めて頬いっぱいにしとるななしはほんまに可愛ええんや。俺まで腹いっぱいになるくらいにな」
『ま、真島さん?』
真島は優しい視線をこちらに寄越すと、その場で立ち上がりゆっくりと歩いてくる。
冷蔵庫前で立っていたななしの元にやってきた真島は、ゆっくりと彼女の肩に腕を回すと力強く抱き寄せた。
心地よい温もりと安心感にななしも真島の逞しい背中にしがみつく。
すると嬉しそうに真島が笑い、言うのだ。
「ななしが色々な事を気にすんのは俺の為やって分かっとんやけどな。俺は別にななしの部屋とかスタイルとか…ななしが思っとるより気にしてへんで。俺が惚れたんはななしっちゅう女の子や。ありのままがなんもかも愛おしいねんで」
耳心地良い低く落ち着くような声音で、真島はそう言う。
大きな手で背中を擦りながら。
ななしは素敵な恋人である真島の為に出来ることはなんだってやりたいと思っているし、スタイルだってよくありたいと思う。
こんな風に思うのは彼が愛おしいからだ。
そんな自分なりの努力をきちんと理解してくれている真島。加えて"ありのままが愛おしい"と嬉しくて胸が張り裂けてしまいそうな言葉も、まるで愛の告白のように伝えてくれる。
その言葉だけでどれだけ心が満たされるか。
彼の優しく甘やかな感情に何故か涙腺が刺激され、ななしは鼻の奥がツーンと痛むようだった。
だが脳や体はこれでもかと幸せで満たされて、嬉しいのに切ないような…焦れったい気持ちになってしまいいても立っても居られなくなる。
抱きしめられているのにもっと真島に近づきたくて、すがるように必死に腕の力を強めた。
『ま、真島さん…そんなに甘やかさないで…貴方なしじゃいられなくなっちゃうじゃないですか』
「アカンのか?」
『ア、アカンです…』
「ええやん、この先も一緒におるんやさかい。はよぉ俺なしじゃ生きられんようになってや」
『…もうとっくの昔になってるもん』
「ほななんも問題ないやんけ」
『…真島さん…』
「ん?」
『ありがとうございます。それから…愛してます』
「おう、俺もななしが好きやで。愛しとる」
そっと胸に預けていた顔を起こせばこちらを見下ろす優しい隻眼とばっちり視線が重なった。
そんな鋭くも綺麗な瞳はななしにも伝わるほどの愛情が込められている気がして。
真島の頬に手を置いたななしは愛を紡ぐ真島に応えるように、そっと彼の唇にキスを送った。
(ななし、可愛ええな、ん。もう我慢できひんで…)
(いいですよ。アタシも真島さんとえっちしたいです…)
(…なぁななし。なんでそないに可愛ええん?俺のこと殺す気か?)
(か、可愛いですか?アタシにはよく分からないけど…ふふ。凄く嬉しい)
(はぁぁ、可愛ええぇ)
(ま、真島さん?)
(とりあえず匂い嗅がせてや)
(え!?ど、どうしたんですか!?)
(ななし。俺はななしが思とる以上に変態やしななしを欲しとる。引かんでや)
(……っあ、当たり前です!)キュン
祝☆支配人真島さん20話!
支配人に甘やかされてるななしちゃんと甘やかし放題の支配人。
そして最後は組長の片鱗を見せる支配人と、そんな支配人にキュンとしてるななしちゃん。
「ほな帰ろかななし」
『はい、帰りましょう』
今日も毎日の仕事を終え深夜を回った頃。
真島とななしは店の施錠を終わらせ、帰路に着いた。
夏もそろそろ終わり秋を迎えようといしている今。残暑はまだまだ厳しいが夜になると爽やかで心地よい風が吹く。
そんな涼しい風を顔や体に受けているななしは『気持ちいいですねぇ』と、伸びをしながら横を歩いている真島を見上げた。
真島も風が心地よいのか「せやなぁ」と隻眼を閉じ、秋の
夜になると(常にそうだが)酔っ払っいやガラの悪い輩等がそれなりに多い蒼天堀だが、真島と歩く嬉しさと秋の心地良さにななしの心は満たされていた。
ななしは穏やかな気持ちのまま隣を歩く真島の袖を遠慮気味に掴むと、彼はクスクスと低く笑った後その大きく逞しい手で包み込むように手を握ってくる。
温もりを感じた途端に真島への愛おしさや愛情が込み上げ、ななしの顔はだんだんと緩んだ。
きっとアタシはとても情けない顔をしているに違いないと思うものの、好きという気持ちが溢れている今顔を取り繕う余裕は全くなかった。
『に、ニヤけちゃう…』
「安心せぇ、とんでもなく可愛ええ顔しとるさかい」
『してないです…恥ずかしいので見ないでください』
「そんなこと言わんと俺によぉ見せてや」
『だ、ダメです!変な顔しますよ!』
「ヒヒッ!それもそれで可愛ええんやけどなぁ。まぁ、ええわ。また後でななしの可愛ええ顔じっくり拝めるさかいそれまで我慢しとったる」
『ど、どういう意味ですかぁ』
「どういう意味やろなぁ?」
『い、意地悪です!』
イタズラな笑みを浮かべている真島にななしはタジタジだ。
真島が言った言葉の意味を脳内で反芻していると羞恥で顔が熱くなってくる。
しかし"今夜のこと"を暗に伝えられてドギマギしない方がおかしいというもの。
顔色一つ変えない真島の方が絶対に普通ではない。
これが大人の余裕というものなのだろうか。
幼稚な思考を絶対に真島に悟られてはなるまいと、彼に見られないように顔を背けたものの、その行動で全て察知されたか隣から低い笑い声が聞こえて来た。
やはり真島には大人の余裕があるらしい。
心も体も早く大人になれたらいいのになぁ、と脳内で一人ごちる。
「お、せやった。ななし」
『うん?なんですか?』
「買わなかんもんあんねん、コンビニ寄ってもええか?」
『あ、はい。勿論です』
「すまん、直ぐ終わるさかい」
『アタシここで待ってますよ〜。お買い物してきてくださいね』
「ん?一緒に入らんのか?こないな所で待っとったらナンパされんで」
『ふふふっ、されませんよ。アタシ今制服姿ですし傍から見たら男なんですよ?』
「こんな可愛ええ男やったら変な気ぃ起こす奴も絶対おる」
『大袈裟だなぁ。待ってるんで行ってきてください』
「なんかあったら絶対入ってくるんやで」
『ふふっ、了解です』
耽っていると丁度見えてきたコンビニ。
招福町のMストアでななしの行きつけのコンビニでもある。
そんなMストアに何かを買い忘れたから寄りたいという真島に快く頷いたななし。
「なにかあるかもしれん」と、とても心配性な真島の背中を押してななしは彼を送り出した。
こんな場所で、しかも男に(見える)声を掛ける輩も早々いないであろう。
こんな男装した女っ気のない女を好きだと、可愛いいと言ってくれるのはきっと後にも先にも底なしに優しい真島だけだ。
『ふふふ…本当に素敵な人』
今の自分が幸せで充実した日々を送ることが出来るのも真島のお陰だ。
素敵な人と恋人になることが出来たと、ななしは一人外で待ちながらもニコニコと笑っていた。
秋の涼しい風を浴びながらホクホクとした気持ちに浸っていると 、不意に背にしていたコンビニの窓をコンコンとノックするような音がななしの耳の響いた。
なんの音だろうと背後を振り返るとコンビニの中には真島がおり、気づいたななしに対して口パクで「おいで」と言っている様であった。
小さく手招きする真島に首を傾げつつ、言われたようにコンビニの中に入ったななし。
『真島さん?』
「ななし。こっちおいで」
『?』
促されるまま入店して真島の元に行けば彼は更に「こっちにおいで」歩き出した。
そんな真島の右手には見慣れた
コンビニ立ち寄った理由が分かってしまったななし。心の中はパニックだ。
なんとなく見て見ぬふりをしつつ平常心を保っていると、真島が「コレ見てみななし」と、なにかの商品を手に取りプチパニック中のななしに差し出した。
それはひんやり冷たい"アップルパイ"。
いわゆるコンビニスイーツだ。
『わぁ、アップルパイですね!美味しそう〜』
「ななしりんご好きやろ?」
『ふふ、よく知ってますね!はい、大好物です』
「最後の1個やし一緒に買うて行こか」
『え、そんなそんな、真島さんに買ってもらうなんて…自分で買いますよ?』
「かまへん。一緒に払った方が楽やし、俺も一口食べたいねん」
『い、いいんですか?』
「おう、それに日頃から頑張って仕事してくれとんのや。こんくらいさしてや」
『日頃お世話になってるのアタシなのに…でもありがとうございます。一緒に食べましょうね』
「ななし、助けられとんのは俺の方なんやで」
『ふふ、じゃぁ、お互い様ってやつですね』
「せやな。お互い様やな」
日頃仕事で体を動かし忙しなく働いているのは真島とて同じだ。
支配人であるため自分よりきっと大変なはずなのに、なにかあればすぐにフォローを入れてくれたり、仕事を手伝ってくれたり…真島に助けられていると実感する毎日だ。
それでも「助けられているのは俺だ」と言う真島の気遣いや真面目さに、またひとつななしの胸が高鳴る。
ななしは再び赤くなってくる頬を抑えながらレジに向かう真島の大きな背中を追いかけた。
*****
レジの会計を終わらせた後、二人は他愛ない会話をしながらも普段ななしが住んでいるアパートにへと到着した。
今夜は真島のアパートにななしが泊まるのではなく、ななしのアパートで真島が泊まるのだ。
何度も真島と一夜を過ごすことはあっても自宅で過ごすことは珍しいため、なんとなく緊張しているななし。
ソワソワとしながらも一緒に来ている真島をアパートへと招き入れた。
「相変わらず綺麗やなななしの部屋は」
『物が少ないだけですよ〜。それに真島さんが来るから掃除したんです』
「俺に気ぃ使わんでええんやで」
『ふふ、流石に掃除はします』
「でも日頃から綺麗なんやろな」
『そ、それはどうでしょう…』
「フッ、自信なさげやな」
『いつもはもっともっとハチャメチャですもん〜』
「ほな今度こっそり来てみようかのぉ」
『絶対ダメですからね!掃除終わるまで扉の前で待たせますからね!』
「ヒヒッ!俺は全然気にせぇへんのやけどなぁ」
『アタシは気にしちゃうんですもん』
「変な所で気にしいやなななしは」
『へ、変じゃないです…ん、真島さん』
部屋に着くや否や二人の距離はグンと縮まり、真島のあぐらの上にななしが座り後ろから抱きしめられている状態だ。
そんな状態で真島は優しくスキンシップをとってくるためななしは擽ったくて仕方がない。
首筋に触れる真島の唇や鼻がソワソワと動き、ななしは小さく声を上げて笑った。
「お、せや!アップルパイ食べんでええんか?」
『んふふ、んっ、今から食べたら太っちゃいますもん。明日起きたら一緒に食べましょう?』
「一個食べたくらいで太らんやろ。それにななしは全然細いやないか」
『深夜のスイーツは罪深いです…絶対太る。全然細くないですし…』
「腰なんか両手で掴めそうやないか」
『つ、掴めませんよ〜!』
「ん?ほんまか?」
『た、試さないでくださいよっ!』
本当に腰周りに大きな手がピッタリ張り付いてくるのでななしは慌てて両手首をつかみ剥ぎ取る。
真島は「絶対掴めるわ」と呟いているが絶対掴めないので試さないでくれと、ななしは急いで彼の足の上から離れた。
警戒態勢のまま買ってきたアップルパイを急いで冷蔵庫にしまう。
「なんや、ななしの頬張る姿見よう思たんに」
『明日見られるじゃないですか』
「今すぐ見たかったんや」
『なんで食べる姿が見たいんですかぁ』
「ん?美味いもん頬張るななしが可愛ええからや」
『か、可愛くないですよ』
「幸せそうに目ぇ細めて頬いっぱいにしとるななしはほんまに可愛ええんや。俺まで腹いっぱいになるくらいにな」
『ま、真島さん?』
真島は優しい視線をこちらに寄越すと、その場で立ち上がりゆっくりと歩いてくる。
冷蔵庫前で立っていたななしの元にやってきた真島は、ゆっくりと彼女の肩に腕を回すと力強く抱き寄せた。
心地よい温もりと安心感にななしも真島の逞しい背中にしがみつく。
すると嬉しそうに真島が笑い、言うのだ。
「ななしが色々な事を気にすんのは俺の為やって分かっとんやけどな。俺は別にななしの部屋とかスタイルとか…ななしが思っとるより気にしてへんで。俺が惚れたんはななしっちゅう女の子や。ありのままがなんもかも愛おしいねんで」
耳心地良い低く落ち着くような声音で、真島はそう言う。
大きな手で背中を擦りながら。
ななしは素敵な恋人である真島の為に出来ることはなんだってやりたいと思っているし、スタイルだってよくありたいと思う。
こんな風に思うのは彼が愛おしいからだ。
そんな自分なりの努力をきちんと理解してくれている真島。加えて"ありのままが愛おしい"と嬉しくて胸が張り裂けてしまいそうな言葉も、まるで愛の告白のように伝えてくれる。
その言葉だけでどれだけ心が満たされるか。
彼の優しく甘やかな感情に何故か涙腺が刺激され、ななしは鼻の奥がツーンと痛むようだった。
だが脳や体はこれでもかと幸せで満たされて、嬉しいのに切ないような…焦れったい気持ちになってしまいいても立っても居られなくなる。
抱きしめられているのにもっと真島に近づきたくて、すがるように必死に腕の力を強めた。
『ま、真島さん…そんなに甘やかさないで…貴方なしじゃいられなくなっちゃうじゃないですか』
「アカンのか?」
『ア、アカンです…』
「ええやん、この先も一緒におるんやさかい。はよぉ俺なしじゃ生きられんようになってや」
『…もうとっくの昔になってるもん』
「ほななんも問題ないやんけ」
『…真島さん…』
「ん?」
『ありがとうございます。それから…愛してます』
「おう、俺もななしが好きやで。愛しとる」
そっと胸に預けていた顔を起こせばこちらを見下ろす優しい隻眼とばっちり視線が重なった。
そんな鋭くも綺麗な瞳はななしにも伝わるほどの愛情が込められている気がして。
真島の頬に手を置いたななしは愛を紡ぐ真島に応えるように、そっと彼の唇にキスを送った。
(ななし、可愛ええな、ん。もう我慢できひんで…)
(いいですよ。アタシも真島さんとえっちしたいです…)
(…なぁななし。なんでそないに可愛ええん?俺のこと殺す気か?)
(か、可愛いですか?アタシにはよく分からないけど…ふふ。凄く嬉しい)
(はぁぁ、可愛ええぇ)
(ま、真島さん?)
(とりあえず匂い嗅がせてや)
(え!?ど、どうしたんですか!?)
(ななし。俺はななしが思とる以上に変態やしななしを欲しとる。引かんでや)
(……っあ、当たり前です!)キュン
祝☆支配人真島さん20話!
支配人に甘やかされてるななしちゃんと甘やかし放題の支配人。
そして最後は組長の片鱗を見せる支配人と、そんな支配人にキュンとしてるななしちゃん。