小話集2
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(真島/恋人)
*スマホあります
ななしは物欲が少ない。
ある程度化粧やお洒落はするもののブランドや高級なもので着飾ったりはせず、気に入ったものを長く丁寧に使うタイプだ。
なのでななしが恋人である真島に何かを買ってくれと強請る事は全くと言っていい程ない。
真島がななしに対して使う金と言ったら専ら外食などの食費ばかりだ。
それらで使用する金はブランド品などから比べると微々たるものである。
それにななしは欲しいと思ったものは誰かから買ってもらうより、自分で働いた金で買う方がよいという考えを持っている。
金額が高いものでも節約して捻出した金で購入する方が達成感があるらしい。
ななしと長い付き合いである真島は昔と比べると自由に使える金が増えており、いつだってなんでも彼女に買ってやれるし、買ってやりたいと思っているのだが。
如何せんななしの物欲が少ないのと、欲しいものは自分で買ってしまう性格上、金を使ってやる機会がほとんど無いのだ。
色気より食い気…彼女らしいと言えば彼女らしいのだが、昔とは違い全てに余裕が出来た今、気兼ねなく沢山甘えてもらいたいと言うのも真島の本音だった。
常々そう感じている真島は隙あらば何かを買ってやろうとカードを懐に忍ばせているのだが、なかなか使う機会に恵まれない。
しかし、そんな真島にチャンスが訪れる。
それは現在。
昼時に真島とななしで出歩いていた最中。
仲良く腕を組んで歩いていたところ、ななしが急に立ち止まったことから始まる。
腕を組んでいたためななしが立ち止まれば気付かず歩き続けていた真島の腕が引っ張られる形になる。
必然的に立ち止まってしまった真島は「あ?どないしたんや」と、ななしの事を振り返り見下ろした。
『……』
「?」
しかし真島の問にななしは返事を返すことはなく、彼女は首だけを横に向け何かを熱心に見つめているようであった。
声も聞こえなくなるほどの何かがあったのだろうか。
真島は疑問に思いながらもななしが見つめている方向へと隻眼を向けた。
視線の先にはブランド店のショーウィンドウがあり、中には高級そうなバッグやポーチが並べられていたのだ。
───…なるほどのぉ、一目惚れっちゅうやつか
真島は彼女が立ち止まった理由を悟った。
きっと足を止めるほど、声も聞こえなくなるほどブランドのバッグやポーチに惹かれたに違いない。
普段物欲がないななしが瞬きもせず見つめるくらいなのだから、欲しくて堪らないのだろう。
普段ななしに物を買い甘やかすことが出来ない真島は好機だとばかりに未だに立ち止まっている彼女の肩に手を置くと、「中、入ろか?」と耳元で低く囁いた。
『うひゃ!?び、びっくりしたぁ〜!急にやめてくださいよ』
「ヒヒッ!そないに集中するくらいあのバッグとポーチ欲しかったんやろ?買うたるさかい中入ろか」
『え、え?バッグ?ポーチ?』
「とぼけんでもええ。穴あくほど見とったやろ」
『あー!なるほど、飾られてるブランド品のこと言ってるんですか。ふふふ、違いますよ』
「あ?どういう事や?それ以外になにを見んねん」
『アタシが見てたのはですね…』
てっきり飾られているブランド品に一目惚れをして見つめ続けているのだと思っていた真島だが、どうやら違うものを見ていたらしい。
しかしブランド品以外ななしの興味を引くものがあるようには思えず真島ははてなを浮かべるばかりだ。
一人脳内で考えていると、傍らでななしが少し背伸びをし右腕をあげる。
その右腕は考えに耽っている真島の頭に乗せられ、ななしは『こんなに身長差があるんだなぁって思って』と楽しそうにそう言った。
「身長差…お前もしかしてガラスに映った俺らを見とったんか?」
『はい!たまたまた目に入ったんで気になっちゃって…こんな風に客観的に見ること少ないじゃないですか?』
「……まぁ、せやな」
『あれ?なんだか落ち込んでます?』
「いや、えろうお前らしいなと思ってん…」
『アタシらしい?』
「おう、ななしらしい」
『えへへ。それ褒めてくれてるんですよね』
「ホンマ憎めんやっちゃなぁ」
結局ななしが見ていたものの正体はブランド品などではなく、ショーウィンドウに映った自分たちの姿だったらしい。
「(何が一目惚れや…)」脳内でごちる。
勘違い甚だしい己に酷く落胆し肩を落とした真島。
しかしニコニコと楽しそうにこちらを見上げてくるななしがあまりにも無垢で可愛らしく、何かを買い与える機会はなくなったもののこの笑顔が見れたなら結果オーライだと彼女の頭をぐしゃぐしゃに撫で回した。
『やめてくださいっ』と言いつつもはしゃぐように笑っているななしに真島も釣られるようにして口角を上げた。
『ふふふ、ほらこうして見るとこんなにも違うんですよ?面白くないですか?』
「ヒヒッ!お前こないにチビやったんやな」
『あ!酷いっ!こう見えて160cmはあるんですよ?吾朗さんがのっぽなだけですよーだ』
「誰がのっぽやねん!」
『ふふふ、吾朗さんです!何cmくらいあるんですか?』
「測っとらんしよぉわからん。だいたい180くらいやないか?」
『そっかぁ…アタシと20cmも差があるんですねぇ』
「大分やな」
『ねぇ。いつも見上げるだけで実際の身長差なんて分からないですけど20cmってこんなにも違うんですね!』
「確かにこうやってまじまじと見ることないわな」
『真島さんだけに?』
「おもんな」
『ひ、酷いっ……!でも、なんだかエモいので写真撮っておきます!』
「あ?エモい?」
『あ、おじさんっぽい反応ですね』
「正真正銘おじさんやからなぁ」
『ふふっ、否定してくださいよ』
ケタケタと笑いながらもカバンからスマホを取り出したななしはショーウィンドウの写真を撮っている。
二、三度カシャカシャと聞こえ、うまく撮れたのか『いい感じ!』と嬉しそうにしているななし。そんな彼女をみていると自分まで嬉しくなってくるようであった。
そんな可愛いらしいななしを見ているとやはり何かを買ってやりたいと思うのは、恋人であるが故だろう。
もっともっと甘やかして、常に尋常ではないくらい愛されていると実感できるほどまでにしてやりたい。
物を贈って愛を伝える、支配人だった頃は出来なかったことだ。
思い立ったが吉日。
真島は『しばらく待ち受けにしようかなぁ』と嬉しそうにスマホを操作しているななしの腰を引き寄せ、ゆっくりと歩き出した。
そして驚くななしを他所に二人で見ていたショーウィンドウの店へと歩みを進めた。
『え?吾朗さん?』
「これもなんかの縁や、せっかく立ち止まったんやし中入ろか」
『え!?い、いいですよ。アタシお金あんまり持ってきてないですもん。それに欲しいものはありませんよ』
「安心せぇ。金ならいくらでもあるさかい。それにあのバッグもポーチもななしにようさん似合うと思うで」
『ご、吾朗さん!ゼロの数見てくださいよ!見たことないくらいくっついてますから!』
「ヒヒッ、関係あらへんなぁ」
『ちょっ、入っちゃダメですってば!』
「ななし」
『は、はい?』
「たまには俺にかっこつかせぇ、アホ」
『っ!』
片手でななしの腰を抱きながら彼女の大きな瞳を覗き込んだ真島。
至近距離で囁くようにそう言えば、長いまつ毛に覆われた大きな瞳は驚いたように見開かれる。
次いでだんだんと白く柔らかな頬が赤みを帯びてきて、気恥ずかしくなったのかななしはシュンと小さくなりながら顔を逸らした。
そんな仕草があまりにも愛らしく思えた真島はクツクツと喉の奥で笑うと、未だに縮こまっているななしを強引に歩かせ、有無を言わさずに店の扉を開いた。
「ななし、これも俺の愛情やで。ちゃんと受け取りや」
『も、もうっ。強引すぎますっ!』
「ヒヒッ、ななしが可愛ええのが悪い。観念して俺に甘やかされとき」
『…あ、ありがとうございますっ!!』
「ヒヒッ!!」
半ばやけくそに礼を言うななしの荒々しい声と、店員達の「いっらっしゃいませ」と言うまるで対照的な程淑やかな声が店内で響く。
真島はななしの腰をしっかりと抱きながら、念願だった贈り物を買うことに成功したのだった。
(か、可愛い…)
(ヒヒッ、ようけ似合っとんで)
(あの、本当にありがとうございます。凄く嬉しいです。大事に使いますね!)
(おう、俺の愛少しは伝わったか?)
(ふふふっ、少し強引ですけどね。はい、ちゃんと伝わりました!)
(ほなええわ、お、あそこにある服お前に似合いそうやんけ!買うてくで!!)
(え!?あ、あのアタシ充分ですから!ちょっと、吾朗さん!?)
(これも俺の愛や、ちゃんと受け取り!)
(もう、それ禁止です!!)
組長になれて自由に使えるお金ができた真島さんは常に何かをななしちゃんにあげたい。
でも物欲が少ないのでアレコレ強請ったりはしないななしちゃん。
結局一度買ったらもう吹っ切れて勝手になんでも買ってくるようになる真島さんだったエモい。
実は前サイトで書いたものを思い出しながら書いた作品です。
思い入れがあったので少し内容を変えてリメイクしました!
*スマホあります
ななしは物欲が少ない。
ある程度化粧やお洒落はするもののブランドや高級なもので着飾ったりはせず、気に入ったものを長く丁寧に使うタイプだ。
なのでななしが恋人である真島に何かを買ってくれと強請る事は全くと言っていい程ない。
真島がななしに対して使う金と言ったら専ら外食などの食費ばかりだ。
それらで使用する金はブランド品などから比べると微々たるものである。
それにななしは欲しいと思ったものは誰かから買ってもらうより、自分で働いた金で買う方がよいという考えを持っている。
金額が高いものでも節約して捻出した金で購入する方が達成感があるらしい。
ななしと長い付き合いである真島は昔と比べると自由に使える金が増えており、いつだってなんでも彼女に買ってやれるし、買ってやりたいと思っているのだが。
如何せんななしの物欲が少ないのと、欲しいものは自分で買ってしまう性格上、金を使ってやる機会がほとんど無いのだ。
色気より食い気…彼女らしいと言えば彼女らしいのだが、昔とは違い全てに余裕が出来た今、気兼ねなく沢山甘えてもらいたいと言うのも真島の本音だった。
常々そう感じている真島は隙あらば何かを買ってやろうとカードを懐に忍ばせているのだが、なかなか使う機会に恵まれない。
しかし、そんな真島にチャンスが訪れる。
それは現在。
昼時に真島とななしで出歩いていた最中。
仲良く腕を組んで歩いていたところ、ななしが急に立ち止まったことから始まる。
腕を組んでいたためななしが立ち止まれば気付かず歩き続けていた真島の腕が引っ張られる形になる。
必然的に立ち止まってしまった真島は「あ?どないしたんや」と、ななしの事を振り返り見下ろした。
『……』
「?」
しかし真島の問にななしは返事を返すことはなく、彼女は首だけを横に向け何かを熱心に見つめているようであった。
声も聞こえなくなるほどの何かがあったのだろうか。
真島は疑問に思いながらもななしが見つめている方向へと隻眼を向けた。
視線の先にはブランド店のショーウィンドウがあり、中には高級そうなバッグやポーチが並べられていたのだ。
───…なるほどのぉ、一目惚れっちゅうやつか
真島は彼女が立ち止まった理由を悟った。
きっと足を止めるほど、声も聞こえなくなるほどブランドのバッグやポーチに惹かれたに違いない。
普段物欲がないななしが瞬きもせず見つめるくらいなのだから、欲しくて堪らないのだろう。
普段ななしに物を買い甘やかすことが出来ない真島は好機だとばかりに未だに立ち止まっている彼女の肩に手を置くと、「中、入ろか?」と耳元で低く囁いた。
『うひゃ!?び、びっくりしたぁ〜!急にやめてくださいよ』
「ヒヒッ!そないに集中するくらいあのバッグとポーチ欲しかったんやろ?買うたるさかい中入ろか」
『え、え?バッグ?ポーチ?』
「とぼけんでもええ。穴あくほど見とったやろ」
『あー!なるほど、飾られてるブランド品のこと言ってるんですか。ふふふ、違いますよ』
「あ?どういう事や?それ以外になにを見んねん」
『アタシが見てたのはですね…』
てっきり飾られているブランド品に一目惚れをして見つめ続けているのだと思っていた真島だが、どうやら違うものを見ていたらしい。
しかしブランド品以外ななしの興味を引くものがあるようには思えず真島ははてなを浮かべるばかりだ。
一人脳内で考えていると、傍らでななしが少し背伸びをし右腕をあげる。
その右腕は考えに耽っている真島の頭に乗せられ、ななしは『こんなに身長差があるんだなぁって思って』と楽しそうにそう言った。
「身長差…お前もしかしてガラスに映った俺らを見とったんか?」
『はい!たまたまた目に入ったんで気になっちゃって…こんな風に客観的に見ること少ないじゃないですか?』
「……まぁ、せやな」
『あれ?なんだか落ち込んでます?』
「いや、えろうお前らしいなと思ってん…」
『アタシらしい?』
「おう、ななしらしい」
『えへへ。それ褒めてくれてるんですよね』
「ホンマ憎めんやっちゃなぁ」
結局ななしが見ていたものの正体はブランド品などではなく、ショーウィンドウに映った自分たちの姿だったらしい。
「(何が一目惚れや…)」脳内でごちる。
勘違い甚だしい己に酷く落胆し肩を落とした真島。
しかしニコニコと楽しそうにこちらを見上げてくるななしがあまりにも無垢で可愛らしく、何かを買い与える機会はなくなったもののこの笑顔が見れたなら結果オーライだと彼女の頭をぐしゃぐしゃに撫で回した。
『やめてくださいっ』と言いつつもはしゃぐように笑っているななしに真島も釣られるようにして口角を上げた。
『ふふふ、ほらこうして見るとこんなにも違うんですよ?面白くないですか?』
「ヒヒッ!お前こないにチビやったんやな」
『あ!酷いっ!こう見えて160cmはあるんですよ?吾朗さんがのっぽなだけですよーだ』
「誰がのっぽやねん!」
『ふふふ、吾朗さんです!何cmくらいあるんですか?』
「測っとらんしよぉわからん。だいたい180くらいやないか?」
『そっかぁ…アタシと20cmも差があるんですねぇ』
「大分やな」
『ねぇ。いつも見上げるだけで実際の身長差なんて分からないですけど20cmってこんなにも違うんですね!』
「確かにこうやってまじまじと見ることないわな」
『真島さんだけに?』
「おもんな」
『ひ、酷いっ……!でも、なんだかエモいので写真撮っておきます!』
「あ?エモい?」
『あ、おじさんっぽい反応ですね』
「正真正銘おじさんやからなぁ」
『ふふっ、否定してくださいよ』
ケタケタと笑いながらもカバンからスマホを取り出したななしはショーウィンドウの写真を撮っている。
二、三度カシャカシャと聞こえ、うまく撮れたのか『いい感じ!』と嬉しそうにしているななし。そんな彼女をみていると自分まで嬉しくなってくるようであった。
そんな可愛いらしいななしを見ているとやはり何かを買ってやりたいと思うのは、恋人であるが故だろう。
もっともっと甘やかして、常に尋常ではないくらい愛されていると実感できるほどまでにしてやりたい。
物を贈って愛を伝える、支配人だった頃は出来なかったことだ。
思い立ったが吉日。
真島は『しばらく待ち受けにしようかなぁ』と嬉しそうにスマホを操作しているななしの腰を引き寄せ、ゆっくりと歩き出した。
そして驚くななしを他所に二人で見ていたショーウィンドウの店へと歩みを進めた。
『え?吾朗さん?』
「これもなんかの縁や、せっかく立ち止まったんやし中入ろか」
『え!?い、いいですよ。アタシお金あんまり持ってきてないですもん。それに欲しいものはありませんよ』
「安心せぇ。金ならいくらでもあるさかい。それにあのバッグもポーチもななしにようさん似合うと思うで」
『ご、吾朗さん!ゼロの数見てくださいよ!見たことないくらいくっついてますから!』
「ヒヒッ、関係あらへんなぁ」
『ちょっ、入っちゃダメですってば!』
「ななし」
『は、はい?』
「たまには俺にかっこつかせぇ、アホ」
『っ!』
片手でななしの腰を抱きながら彼女の大きな瞳を覗き込んだ真島。
至近距離で囁くようにそう言えば、長いまつ毛に覆われた大きな瞳は驚いたように見開かれる。
次いでだんだんと白く柔らかな頬が赤みを帯びてきて、気恥ずかしくなったのかななしはシュンと小さくなりながら顔を逸らした。
そんな仕草があまりにも愛らしく思えた真島はクツクツと喉の奥で笑うと、未だに縮こまっているななしを強引に歩かせ、有無を言わさずに店の扉を開いた。
「ななし、これも俺の愛情やで。ちゃんと受け取りや」
『も、もうっ。強引すぎますっ!』
「ヒヒッ、ななしが可愛ええのが悪い。観念して俺に甘やかされとき」
『…あ、ありがとうございますっ!!』
「ヒヒッ!!」
半ばやけくそに礼を言うななしの荒々しい声と、店員達の「いっらっしゃいませ」と言うまるで対照的な程淑やかな声が店内で響く。
真島はななしの腰をしっかりと抱きながら、念願だった贈り物を買うことに成功したのだった。
(か、可愛い…)
(ヒヒッ、ようけ似合っとんで)
(あの、本当にありがとうございます。凄く嬉しいです。大事に使いますね!)
(おう、俺の愛少しは伝わったか?)
(ふふふっ、少し強引ですけどね。はい、ちゃんと伝わりました!)
(ほなええわ、お、あそこにある服お前に似合いそうやんけ!買うてくで!!)
(え!?あ、あのアタシ充分ですから!ちょっと、吾朗さん!?)
(これも俺の愛や、ちゃんと受け取り!)
(もう、それ禁止です!!)
組長になれて自由に使えるお金ができた真島さんは常に何かをななしちゃんにあげたい。
でも物欲が少ないのでアレコレ強請ったりはしないななしちゃん。
結局一度買ったらもう吹っ切れて勝手になんでも買ってくるようになる真島さんだったエモい。
実は前サイトで書いたものを思い出しながら書いた作品です。
思い入れがあったので少し内容を変えてリメイクしました!