小話集1
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(沖田+永倉/恋人)
『はぁ…しんどい…』
四条通りを歩くななしはヘトヘトだった。
思うように足が進まず、出てくるのはため息ばかり。
どうして今日はこんなにも疲れているのか。
ななしは今日一日の出来事をぼんやりと思い起こした。
朝は普段通り出勤し、土方の事務仕事を手伝った。
文机に向かい仕事をするのは得意なので事務仕事自体は早々に片付いたのだが、その後すぐに七番隊隊長の谷と、九番隊隊長の鈴木が自室にやって来たのだ。
また小言を言いに来たのかと適当にあしらい無視をしていたのだが、彼らは「道場が汚いから今すぐ掃除しろ」とそれはもう泣く子も黙る勢いで凄むので結局道場へ向かう羽目になった。
どうせ事務仕事は終わっているのだから掃除くらいなんて事ないと、何故か後を着いてくる谷と鈴木と共に向かったのだが……道場はななしが想像していたよりも遥かに汚れていたのだ。
出しっぱなしの竹刀が数十本程地面に転がっており、汗を拭った手ぬぐいもあちらこちらに放置されている。そのせいか道場内はなんともいえぬ臭いで充満していた。
「お前一人で片付けろ、俺たちは忙しいからな!」と腕組みをする谷と鈴木に腹が立ったものの、雑用も仕事のひとつであるななしは躊躇うことなく早々に掃除を行った。
「忙しい」と言った癖に終始道場の入口で監視するようにニヤニヤと居座り続けていた谷と鈴木。
姑が嫁いびりをするように「あっちが汚い」「こっちが汚い」と文句を百ほど並べて来るおかげで、ななしの精神は朝から随分とすり減ってしまった。
それから半刻ほど有し道場を掃除した後、自室に戻ると片付けたはずの書状が山のように文机に置かれているのが目に入った。
土方が再び仕事を持ってきたのだろう。
副長であるため彼もそれなりに忙しい身。
事務仕事の一つや二つ手伝うくらいどうということは無い。
掃除で体は疲れていたものの仕事の一環だと再び文机に向かおうとしたところ、書状の上には土方が置いていったであろう書置きがあり手に取りまじまじと見つめると「今日中に提出。夕刻、祇園の旭亭にて近藤局長が待っている」とやたらときれいな字で啜られていた。
文机に置かれた山のような書状。
これを後半日で片付けろと土方は言っているらしい。
加えて夕刻、新撰組の局長である近藤が"定期報告"をしに祇園まで来いと言っているらしい。
『ははは…ははっ…はぁ……』
ここでななしの精神は一旦壊れた。
どう考えても今日中に全てを片付けるのは無理な量だ。
それに"定期報告"に行かなければならないということは、普段よりも働ける時間が少なくなるということ。
そんな中で全てを片付けろという土方の無慈悲さに心が折れ、乾いた笑いしか出てこなかったのは記憶に新しい。
ほとんど生気のないまま昼休憩を返上し仕事をしたのだが、結局近藤の元へ行かなくてはならない時間になり全てを片付けることは出来なかった。
やつれたまま旭亭に向かい"定期報告"という名の食事会(近藤の気まぐれで開催される)を行った。
いつも通り元気そうな近藤になんとなく腹が立ってお金のことなど全く気にかけず、ありとあらゆるものを食べ今日の憂さ晴らしをしてやった。
最後は残ったものをお土産として包んでもらい、片付かなかった事務仕事をしに屯所を目指し冒頭へと戻る。
提灯とお土産を片手にようやく壬生へ到着したななしは屯所へ続く長い階段を見上げ大きなため息を放った。
ここを登らないと仕事に取り掛かることは出来ない。体が悲鳴を上げていたが副長の命令は絶対であるし、自室に置きっぱなしの仕事を放置するわけにもいかないとななしは重たい足で階段を一歩一歩、それはもう亀のようにゆっくりと登った。
『はぁ…つ、ついたぁ…』
体が鉛のように重たい、これは正に今のような状態を示す言葉なのだろう。
普段は背筋を伸ばし歩くことが出来るのに、疲労で普段通りの姿勢になることが出来ない。
門番にかなり怪訝な顔をされてしまったが、気にかける余裕もなくななしはトボトボと自室を目指し屯所内を歩いた。
『あれ…そ、総司さんと新八さん?』
「お!帰ってきたんかななし」
「随分やつれとんで。ななし」
自室へ向かって歩いていると丁度縁側に座っている一番隊隊長であり想い人 でもある沖田と、二番隊隊長の永倉がいたのだ。
こちらに気がついた彼らは同時に片手を上げ、労わるように「お疲れさん」とななしを出迎えてくれた。
勤務時間はとっくの昔に終わっているはずだが何故彼らが未だに屯所内に居るのだろうか。
疑問に思ったななしは『どうしてお二人が?』と首を傾げ問うと、「今日は明け番の日やで」と沖田はそう答えた。
明け番とは次の日の朝までの勤務を指している。明け番の次の日は大体休みであるが、今日はこのまま屯所で夜を明かす必要があるという事だ。
『え?今日って明け番でしたっけ?』
「なんや、ななし。忘れとったんか?今日は一番隊と二番隊が明け番の日やで」
「お前が忘れるなんて珍しいのぉ。体調でも悪いんか?」
『すっかり忘れてましたぁ…体調は悪くは無いんですが如何せん今日は色々ありまして…めちゃくちゃ疲れてます…』
「なるほど、せやからそんな顔つきなんやな」
「はよこっち来て座り」
『は、はいぃ…』
その日の予定を忘れることなど滅多にないのだが、今日の疲れきったななしは明け番である事をすっかり忘れてしまっていた。
どれもこれも今日関わった全ての人達のせいだっ、と内心で近藤や谷等に悪態をつきながら、差し出された沖田の手をとりゆっくりと縁側に座る。
『…明け番の事忘れててすみません…なにか変わったことはありませんでしたか?』
「阿呆。そんなことくらいで謝んなや。それにワシも新ぱっちゃんもここでこうやって座っとっただけや」
「せや。寧ろななしに任せっきりになっとる。このままなんも起きんやろさかい、今日はもう休んどってもええで」
『いえ、今日はまだ事務仕事が残っているんですよ』
「そうなんか?」
「別に今日やななくてもええんちゃうんか?」
『土方さん曰く、今日中に確認しろって。だからできる所までやろうと思います』
「歳ちゃんも人使い荒いやっちゃな」
面白くなさそうにしゃくれた沖田。
「こんな時間まで事務仕事をさせるなんてなに考えとんや」と小さくボヤいている。
沖田の言う事は最もだが、実際誰かが手伝わなければ事務仕事は溜まっていく一方だろう。
今までのように隊士達が滞りなく新撰組を運営していくにはやはりどこかでななしや土方が無理をして事務仕事をする必要があるのだ。
『んーー!はぁ…それじゃ私残りの仕事やっちゃいますね!』
「ななし、あんま根詰めたらアカンで。休息も大事や」
『ありがとうございます新八さん。近藤さんのところで少し休憩できたので大丈夫ですよ』
「お前の大丈夫〜は当てにならんのや。今すぐ休憩せぇ。これは隊長命令や」
『うわ、それ職権濫用ですよ』
「つべこべ言わんとこっち来んかい!」
『ちょっ、ちょっと総司さん!?』
不機嫌そうな沖田は座っていたななしの手を乱暴にとると足早に自室に駆け込んだ。
縁側に座っていた永倉は沖田の強引な行動にやれやれと首を振りながら、ゆっくり立ち上がると彼らが入っていった部屋へと続いた。
手を引かれて自室に連れ込まれたななしは『いきなりどうしたんですか?』と、背を向けている沖田に問う。
すると直ぐにななしに向き直った沖田は何を言うでもなく、その大きな腕で目の前にいる彼女の事を抱きしめたのだ。
『そ、総司さん?』
「お前はよぉやっとる。ワシらが想像しとる以上にな。せやけど働きすぎや。もっと自分を労わってやらなかん」
『総司さん…でも、』
「でもやない。総司の言う通り働すぎやななし」
『ん、新八さんまで…』
強く抱き締めてくる沖田に続いて部屋に入ってきた永倉はななしの頭をその大きな手で優しく撫でた。
『ふふ、少し過保護なんじゃないですか?私は大人なんですよ?』
「大人なら聞き入れんかい阿呆」
『うーん…でも土方さん困っちゃうかもですし…』
「そこまで大事な仕事ならななしだけに任せんのやないか?それに今屯所に副長はおらんし確認も出来んやろ、少しくらい遅れてもええんやないか?」
『あ、そっか…明け番は私達が担当ですもんね』
「そういうことやさかいお前は休憩や」
『……ふふっ!』
休憩をしろと説得してくる沖田と永倉にいよいよ根負けしたななしは、ふふと小さく笑うと目の前の逞しい胸筋に顔を埋めた。
そうして羽織の下、地肌に触れるように腕を回し沖田にぎゅぅと抱きつく。
彼らの優しさはいつだって強引ではあるが、ななしの心を豊かにしてくれるものであった。
今日一日の疲労も今この一瞬で、瞬く間に消えていくような気がするのは二人がななしをとても大事にしてくれるからだろうか。
ななしはやろうとしていた事務仕事の事は少しだけ忘れることにして、目の前にいる彼らに身を委ねようとゆっくりと瞳を閉じた。
『…じゃ、ちょっとだけ休憩します…総司さんと新八さんも休憩しましょう、ね?』
「ヒヒッ!ええで、ほなワシと一緒に休憩しよか」
「総司、お前は今まで休憩しとったやろ。俺と一緒にこの書状片付けんの手伝えや」
「あぁ?ワシはななしが休憩サボらんか見張らなかんねん。そんなもんは全部歳ちゃんに残しとけばええ!」
「そういうわけにもいかんやろ」
『や、やっぱり仕事しますよ?』
「アカン!ななしは休憩や」
『えぇ…でも新八さんが仕事するなら私もしますよ』
「面倒やな!新ぱっちゃんも休憩せぇ!ややこしなるやろ」
「…はぁ、しゃあない」
「これでななしも心置き無く休めるのぉ」
『ふふ、強引なんだから』
こうして言い合いをしながらも最終的には書状整理はせずに、その後をゆっくりと過ごしたななし達。
定期報告から戻る際に持ってきたお土産を食しながらも、三人は久々に穏やかな時間を過ごし十分な休息をとることができたのだった。
(で、結局書状どうすんねん)
(明け方までに少しやりますよ?)
(せやから歳ちゃんに残しとけばええ。こんなもん一人でできる量やないやろ)
(まぁ、確かにそうなんですけど…)
(これから先無理難題押し付けられんように、この量は捌ききれんて知らしめてやらんとかん。朝歳ちゃん来たら言うたるわ)
(……私が怒られる未来が見えます)
疲れていたらストッパー役の沖田さんと永倉さんが止めに来てくれてたら素敵だなと思ってかきましたが…何だかめちゃくちゃになっちゃいました( ˇωˇ )
すんませぇん。
『はぁ…しんどい…』
四条通りを歩くななしはヘトヘトだった。
思うように足が進まず、出てくるのはため息ばかり。
どうして今日はこんなにも疲れているのか。
ななしは今日一日の出来事をぼんやりと思い起こした。
朝は普段通り出勤し、土方の事務仕事を手伝った。
文机に向かい仕事をするのは得意なので事務仕事自体は早々に片付いたのだが、その後すぐに七番隊隊長の谷と、九番隊隊長の鈴木が自室にやって来たのだ。
また小言を言いに来たのかと適当にあしらい無視をしていたのだが、彼らは「道場が汚いから今すぐ掃除しろ」とそれはもう泣く子も黙る勢いで凄むので結局道場へ向かう羽目になった。
どうせ事務仕事は終わっているのだから掃除くらいなんて事ないと、何故か後を着いてくる谷と鈴木と共に向かったのだが……道場はななしが想像していたよりも遥かに汚れていたのだ。
出しっぱなしの竹刀が数十本程地面に転がっており、汗を拭った手ぬぐいもあちらこちらに放置されている。そのせいか道場内はなんともいえぬ臭いで充満していた。
「お前一人で片付けろ、俺たちは忙しいからな!」と腕組みをする谷と鈴木に腹が立ったものの、雑用も仕事のひとつであるななしは躊躇うことなく早々に掃除を行った。
「忙しい」と言った癖に終始道場の入口で監視するようにニヤニヤと居座り続けていた谷と鈴木。
姑が嫁いびりをするように「あっちが汚い」「こっちが汚い」と文句を百ほど並べて来るおかげで、ななしの精神は朝から随分とすり減ってしまった。
それから半刻ほど有し道場を掃除した後、自室に戻ると片付けたはずの書状が山のように文机に置かれているのが目に入った。
土方が再び仕事を持ってきたのだろう。
副長であるため彼もそれなりに忙しい身。
事務仕事の一つや二つ手伝うくらいどうということは無い。
掃除で体は疲れていたものの仕事の一環だと再び文机に向かおうとしたところ、書状の上には土方が置いていったであろう書置きがあり手に取りまじまじと見つめると「今日中に提出。夕刻、祇園の旭亭にて近藤局長が待っている」とやたらときれいな字で啜られていた。
文机に置かれた山のような書状。
これを後半日で片付けろと土方は言っているらしい。
加えて夕刻、新撰組の局長である近藤が"定期報告"をしに祇園まで来いと言っているらしい。
『ははは…ははっ…はぁ……』
ここでななしの精神は一旦壊れた。
どう考えても今日中に全てを片付けるのは無理な量だ。
それに"定期報告"に行かなければならないということは、普段よりも働ける時間が少なくなるということ。
そんな中で全てを片付けろという土方の無慈悲さに心が折れ、乾いた笑いしか出てこなかったのは記憶に新しい。
ほとんど生気のないまま昼休憩を返上し仕事をしたのだが、結局近藤の元へ行かなくてはならない時間になり全てを片付けることは出来なかった。
やつれたまま旭亭に向かい"定期報告"という名の食事会(近藤の気まぐれで開催される)を行った。
いつも通り元気そうな近藤になんとなく腹が立ってお金のことなど全く気にかけず、ありとあらゆるものを食べ今日の憂さ晴らしをしてやった。
最後は残ったものをお土産として包んでもらい、片付かなかった事務仕事をしに屯所を目指し冒頭へと戻る。
提灯とお土産を片手にようやく壬生へ到着したななしは屯所へ続く長い階段を見上げ大きなため息を放った。
ここを登らないと仕事に取り掛かることは出来ない。体が悲鳴を上げていたが副長の命令は絶対であるし、自室に置きっぱなしの仕事を放置するわけにもいかないとななしは重たい足で階段を一歩一歩、それはもう亀のようにゆっくりと登った。
『はぁ…つ、ついたぁ…』
体が鉛のように重たい、これは正に今のような状態を示す言葉なのだろう。
普段は背筋を伸ばし歩くことが出来るのに、疲労で普段通りの姿勢になることが出来ない。
門番にかなり怪訝な顔をされてしまったが、気にかける余裕もなくななしはトボトボと自室を目指し屯所内を歩いた。
『あれ…そ、総司さんと新八さん?』
「お!帰ってきたんかななし」
「随分やつれとんで。ななし」
自室へ向かって歩いていると丁度縁側に座っている一番隊隊長であり
こちらに気がついた彼らは同時に片手を上げ、労わるように「お疲れさん」とななしを出迎えてくれた。
勤務時間はとっくの昔に終わっているはずだが何故彼らが未だに屯所内に居るのだろうか。
疑問に思ったななしは『どうしてお二人が?』と首を傾げ問うと、「今日は明け番の日やで」と沖田はそう答えた。
明け番とは次の日の朝までの勤務を指している。明け番の次の日は大体休みであるが、今日はこのまま屯所で夜を明かす必要があるという事だ。
『え?今日って明け番でしたっけ?』
「なんや、ななし。忘れとったんか?今日は一番隊と二番隊が明け番の日やで」
「お前が忘れるなんて珍しいのぉ。体調でも悪いんか?」
『すっかり忘れてましたぁ…体調は悪くは無いんですが如何せん今日は色々ありまして…めちゃくちゃ疲れてます…』
「なるほど、せやからそんな顔つきなんやな」
「はよこっち来て座り」
『は、はいぃ…』
その日の予定を忘れることなど滅多にないのだが、今日の疲れきったななしは明け番である事をすっかり忘れてしまっていた。
どれもこれも今日関わった全ての人達のせいだっ、と内心で近藤や谷等に悪態をつきながら、差し出された沖田の手をとりゆっくりと縁側に座る。
『…明け番の事忘れててすみません…なにか変わったことはありませんでしたか?』
「阿呆。そんなことくらいで謝んなや。それにワシも新ぱっちゃんもここでこうやって座っとっただけや」
「せや。寧ろななしに任せっきりになっとる。このままなんも起きんやろさかい、今日はもう休んどってもええで」
『いえ、今日はまだ事務仕事が残っているんですよ』
「そうなんか?」
「別に今日やななくてもええんちゃうんか?」
『土方さん曰く、今日中に確認しろって。だからできる所までやろうと思います』
「歳ちゃんも人使い荒いやっちゃな」
面白くなさそうにしゃくれた沖田。
「こんな時間まで事務仕事をさせるなんてなに考えとんや」と小さくボヤいている。
沖田の言う事は最もだが、実際誰かが手伝わなければ事務仕事は溜まっていく一方だろう。
今までのように隊士達が滞りなく新撰組を運営していくにはやはりどこかでななしや土方が無理をして事務仕事をする必要があるのだ。
『んーー!はぁ…それじゃ私残りの仕事やっちゃいますね!』
「ななし、あんま根詰めたらアカンで。休息も大事や」
『ありがとうございます新八さん。近藤さんのところで少し休憩できたので大丈夫ですよ』
「お前の大丈夫〜は当てにならんのや。今すぐ休憩せぇ。これは隊長命令や」
『うわ、それ職権濫用ですよ』
「つべこべ言わんとこっち来んかい!」
『ちょっ、ちょっと総司さん!?』
不機嫌そうな沖田は座っていたななしの手を乱暴にとると足早に自室に駆け込んだ。
縁側に座っていた永倉は沖田の強引な行動にやれやれと首を振りながら、ゆっくり立ち上がると彼らが入っていった部屋へと続いた。
手を引かれて自室に連れ込まれたななしは『いきなりどうしたんですか?』と、背を向けている沖田に問う。
すると直ぐにななしに向き直った沖田は何を言うでもなく、その大きな腕で目の前にいる彼女の事を抱きしめたのだ。
『そ、総司さん?』
「お前はよぉやっとる。ワシらが想像しとる以上にな。せやけど働きすぎや。もっと自分を労わってやらなかん」
『総司さん…でも、』
「でもやない。総司の言う通り働すぎやななし」
『ん、新八さんまで…』
強く抱き締めてくる沖田に続いて部屋に入ってきた永倉はななしの頭をその大きな手で優しく撫でた。
『ふふ、少し過保護なんじゃないですか?私は大人なんですよ?』
「大人なら聞き入れんかい阿呆」
『うーん…でも土方さん困っちゃうかもですし…』
「そこまで大事な仕事ならななしだけに任せんのやないか?それに今屯所に副長はおらんし確認も出来んやろ、少しくらい遅れてもええんやないか?」
『あ、そっか…明け番は私達が担当ですもんね』
「そういうことやさかいお前は休憩や」
『……ふふっ!』
休憩をしろと説得してくる沖田と永倉にいよいよ根負けしたななしは、ふふと小さく笑うと目の前の逞しい胸筋に顔を埋めた。
そうして羽織の下、地肌に触れるように腕を回し沖田にぎゅぅと抱きつく。
彼らの優しさはいつだって強引ではあるが、ななしの心を豊かにしてくれるものであった。
今日一日の疲労も今この一瞬で、瞬く間に消えていくような気がするのは二人がななしをとても大事にしてくれるからだろうか。
ななしはやろうとしていた事務仕事の事は少しだけ忘れることにして、目の前にいる彼らに身を委ねようとゆっくりと瞳を閉じた。
『…じゃ、ちょっとだけ休憩します…総司さんと新八さんも休憩しましょう、ね?』
「ヒヒッ!ええで、ほなワシと一緒に休憩しよか」
「総司、お前は今まで休憩しとったやろ。俺と一緒にこの書状片付けんの手伝えや」
「あぁ?ワシはななしが休憩サボらんか見張らなかんねん。そんなもんは全部歳ちゃんに残しとけばええ!」
「そういうわけにもいかんやろ」
『や、やっぱり仕事しますよ?』
「アカン!ななしは休憩や」
『えぇ…でも新八さんが仕事するなら私もしますよ』
「面倒やな!新ぱっちゃんも休憩せぇ!ややこしなるやろ」
「…はぁ、しゃあない」
「これでななしも心置き無く休めるのぉ」
『ふふ、強引なんだから』
こうして言い合いをしながらも最終的には書状整理はせずに、その後をゆっくりと過ごしたななし達。
定期報告から戻る際に持ってきたお土産を食しながらも、三人は久々に穏やかな時間を過ごし十分な休息をとることができたのだった。
(で、結局書状どうすんねん)
(明け方までに少しやりますよ?)
(せやから歳ちゃんに残しとけばええ。こんなもん一人でできる量やないやろ)
(まぁ、確かにそうなんですけど…)
(これから先無理難題押し付けられんように、この量は捌ききれんて知らしめてやらんとかん。朝歳ちゃん来たら言うたるわ)
(……私が怒られる未来が見えます)
疲れていたらストッパー役の沖田さんと永倉さんが止めに来てくれてたら素敵だなと思ってかきましたが…何だかめちゃくちゃになっちゃいました( ˇωˇ )
すんませぇん。