小話集1
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(真島/真島建設/恋人)
『もうこんな所通るなんて聞いてないですよ!西田さん!』
「す、すんません」
恋人である真島に言われて西公園にやってきたななしは今、少し古びた公衆トイレの中にいた。しかも普段決して入ることのない男子トイレにいる。
『誰も居ませんよね…??』
「いないっす。今のうちにささっと通りましょう!」
『もうなんでこんな所…』
真島組の一人である西田に案内されながら、渋々男子トイレに入り一番奥の個室にある扉をくぐってようやく公衆トイレを抜ける。
なんともいえぬ体験をしてしまい愚痴りながらも西田に促されるまま進むとプレハブでできた建物が見えてきて、掲げられている"真島組"の文字にここが真島組の事務所であることを理解する。
こんな所に事務所を構えたのかと思いながら西田に続きプレハブ小屋に足を踏み入れた。
簡素な造りで性急に建てられたであろう事務所の真ん中、外装とは裏腹に豪華な机に頬杖をつき椅子に座っている真島が目に入った。普段と同じ格好をしているのだがそれに加えてとても目につくのは黄色いヘルメット。ヘルメットには緑の文字で真島建設と書かれている。
ななしが来たことに気づいた真島は「来よったか!」と嬉しそうに立ち上がると、入口で立ち止まっている彼女の方へとやって来る。
『吾朗さんが言うから来たけど…男子トイレ通るなんて聞いてないです!』
「ヒヒッ、ええ体験したのぉななし」
『なにがいい体験ですか!もう事務所こないからね!』
「まぁそう言うなや。今日はお前にええもんプレゼントしようと思て呼んだんや!」
『プレゼント?』
嬉しそうに抱きしめてくる真島にななしは首を傾げながらもヘビ柄のジャケットごと抱きしめ返した。
するとニコニコ笑っている真島は「西田!はよ持って来んかい!」と未だに入口付近で立ち止まっていた西田にそう言いつけた。
「はいっ!」と返事をした西田は直ぐに事務所の奥へとかけていき見えなくなる。
「ヒヒッ、似合うとええのぉ」
『似合う?なんだろう』
「それは西田が来てからのお楽しみや」
『ふふふ、こんな所に呼びつけたから怒ってやろうと思ったのに、プレゼントなんて…怒れないじゃないですか』
「安心せぇ。ななし用に別で入口作ったるわ」
『え?そんなこと出来るんですか?』
「俺に出来んことなんかないわ。それにななしが会いに来んくなるんは不本意やしな」
『ふふ、自信満々だね。でも作ってくれるなら嬉しいです!』
「ヒヒッ!せやろ!」
「親父!!持ってきましたー!」
「おう、来たか。ほなななし、俺からのプレゼントや」
『わぁ、ありがとうございますっ、て…え?これって…』
真島と抱き合いながら笑いあっていると西田が帰ってきた。
真島が言うプレゼントを西田から受け取ったななし。
ビニールに包まれた何かを手に乗せてみると案外と軽い。そして思っていたより固く、触ったことがないような形をしている。
確かめるように全体を触った後真島の頭上のヘルメットを見ると…なるほど、合点が着いてしまう。
そうか、これは真島が被るものと同じヘルメットか。
『ふふっ、これヘルメットですかぁ?ふふふ、なにこれぇ!』
「真島建設特製のヘルメットや!!」
ビニールから取り出すのと同時に真島が声高らかにそう言った。
彼の言う通り現れたのは黄色いヘルメット。
正面には代紋でもある真の文字。そしてもちろん緑の文字で真島建設と書かれており、真島が被っているものと全く同じである。
「現場に入る時はこれ被らなアカンねん。せやからななしも一個持っとれ」
『ふふ、ありがとうございます。なんだか真島組の一員になれたみたいで嬉しいです。大事にしますね!』
「おう!ほな今被ってみぃ!ついでに現場もみしたるわ」
『はぁい』
いつの間に建設業を始めたのか、よく分からないことが多々あったもののヘルメットを貰えたことは純粋に嬉しかったななしは言われた通り頭に被せてみた。
なかなかヘルメットを身につける機会はないため、少し違和感を感じるがすんなりと被ることが出来た。
ヘルメットを被った自分が今どんな状態か、似合っているか、気になったななしは『ど、どうですか!』
と目の前にいる真島に体を近づけながら問うてみた。
しかし体を動かすと同時に被っていたヘルメットがズルっと下がり明るかった視界に被さってくる。
鍔を持ち上げヘルメットを上に戻すのだが、何度も何度も繰り返し落ちてくる。
『あれぇ、少し大きいですかねぇ』
「喋るだけで落ちてきとるな、俺らと一緒やとデカいか」
『この顎紐短くできないですか?』
「限界まで短してありますね」
「これやったら前も見えんやろ?逆に危ないかもしれんな」
『すみません。せっかく用意してくれたのに』
「気にせんでええ。一回り小さいの作らせるさかい。せやけど出来上がるまでそれ被っといてな」
『ふふ、大丈夫ですよ!…あらっ、また降りてきた』
「ヒヒッ、ほんま頭小さいのぉ」
喋る度にヘルメットが降りてきてななしの視界を遮断するらしい。
何度も持ち上げる動作をしている彼女は忙しなさそうだ。
『今日はこれで現場みせて下さい』
「ヒヒッ、転ばんように手ぇつないだるわ」
『ありがとうです、わわっ、すぐ降りてくるっ』
「ほんま可愛ええのぉ」
ズレて、持ち上げて、またズレて。
笑ったり小さく動くだけでブカブカのヘルメットがズレ、可笑しそうに笑うななしはとても可愛らしい。
そばでみていた真島はその一連の行動を目の当たりにし、ついつい愛嬌に顔が緩むのが分かった。
『じゃ、行きましょう!』と歩き出したななしだが、やはりヘルメットはズルリと落ちてきている。
「ヒヒッ、ほんまおもろいなぁ」
『ちゃんと手繋いでてくださいね!視界がっ、わわっ!て言うか、吾朗さんいつの間に建設業始めたんですか??おっと。歩きながら教えてくださいね』
「また下がっとんでぇ」
『へへへ、もうどうしようもないですっ!あらっ』
現場を見に行くために歩き出したがやはりヘルメットはズレる。そしてななしが直して、ふたり顔を見合わせ笑う。
工事現場で同じやりとりが永遠と繰り返されているが、彼らはとても幸せそうだった。
勿論後日、ちゃんと頭に合うヘルメットが届くのだが今日貰ったヘルメットもななしの宝物になるのは言うまでもない。
『もうこんな所通るなんて聞いてないですよ!西田さん!』
「す、すんません」
恋人である真島に言われて西公園にやってきたななしは今、少し古びた公衆トイレの中にいた。しかも普段決して入ることのない男子トイレにいる。
『誰も居ませんよね…??』
「いないっす。今のうちにささっと通りましょう!」
『もうなんでこんな所…』
真島組の一人である西田に案内されながら、渋々男子トイレに入り一番奥の個室にある扉をくぐってようやく公衆トイレを抜ける。
なんともいえぬ体験をしてしまい愚痴りながらも西田に促されるまま進むとプレハブでできた建物が見えてきて、掲げられている"真島組"の文字にここが真島組の事務所であることを理解する。
こんな所に事務所を構えたのかと思いながら西田に続きプレハブ小屋に足を踏み入れた。
簡素な造りで性急に建てられたであろう事務所の真ん中、外装とは裏腹に豪華な机に頬杖をつき椅子に座っている真島が目に入った。普段と同じ格好をしているのだがそれに加えてとても目につくのは黄色いヘルメット。ヘルメットには緑の文字で真島建設と書かれている。
ななしが来たことに気づいた真島は「来よったか!」と嬉しそうに立ち上がると、入口で立ち止まっている彼女の方へとやって来る。
『吾朗さんが言うから来たけど…男子トイレ通るなんて聞いてないです!』
「ヒヒッ、ええ体験したのぉななし」
『なにがいい体験ですか!もう事務所こないからね!』
「まぁそう言うなや。今日はお前にええもんプレゼントしようと思て呼んだんや!」
『プレゼント?』
嬉しそうに抱きしめてくる真島にななしは首を傾げながらもヘビ柄のジャケットごと抱きしめ返した。
するとニコニコ笑っている真島は「西田!はよ持って来んかい!」と未だに入口付近で立ち止まっていた西田にそう言いつけた。
「はいっ!」と返事をした西田は直ぐに事務所の奥へとかけていき見えなくなる。
「ヒヒッ、似合うとええのぉ」
『似合う?なんだろう』
「それは西田が来てからのお楽しみや」
『ふふふ、こんな所に呼びつけたから怒ってやろうと思ったのに、プレゼントなんて…怒れないじゃないですか』
「安心せぇ。ななし用に別で入口作ったるわ」
『え?そんなこと出来るんですか?』
「俺に出来んことなんかないわ。それにななしが会いに来んくなるんは不本意やしな」
『ふふ、自信満々だね。でも作ってくれるなら嬉しいです!』
「ヒヒッ!せやろ!」
「親父!!持ってきましたー!」
「おう、来たか。ほなななし、俺からのプレゼントや」
『わぁ、ありがとうございますっ、て…え?これって…』
真島と抱き合いながら笑いあっていると西田が帰ってきた。
真島が言うプレゼントを西田から受け取ったななし。
ビニールに包まれた何かを手に乗せてみると案外と軽い。そして思っていたより固く、触ったことがないような形をしている。
確かめるように全体を触った後真島の頭上のヘルメットを見ると…なるほど、合点が着いてしまう。
そうか、これは真島が被るものと同じヘルメットか。
『ふふっ、これヘルメットですかぁ?ふふふ、なにこれぇ!』
「真島建設特製のヘルメットや!!」
ビニールから取り出すのと同時に真島が声高らかにそう言った。
彼の言う通り現れたのは黄色いヘルメット。
正面には代紋でもある真の文字。そしてもちろん緑の文字で真島建設と書かれており、真島が被っているものと全く同じである。
「現場に入る時はこれ被らなアカンねん。せやからななしも一個持っとれ」
『ふふ、ありがとうございます。なんだか真島組の一員になれたみたいで嬉しいです。大事にしますね!』
「おう!ほな今被ってみぃ!ついでに現場もみしたるわ」
『はぁい』
いつの間に建設業を始めたのか、よく分からないことが多々あったもののヘルメットを貰えたことは純粋に嬉しかったななしは言われた通り頭に被せてみた。
なかなかヘルメットを身につける機会はないため、少し違和感を感じるがすんなりと被ることが出来た。
ヘルメットを被った自分が今どんな状態か、似合っているか、気になったななしは『ど、どうですか!』
と目の前にいる真島に体を近づけながら問うてみた。
しかし体を動かすと同時に被っていたヘルメットがズルっと下がり明るかった視界に被さってくる。
鍔を持ち上げヘルメットを上に戻すのだが、何度も何度も繰り返し落ちてくる。
『あれぇ、少し大きいですかねぇ』
「喋るだけで落ちてきとるな、俺らと一緒やとデカいか」
『この顎紐短くできないですか?』
「限界まで短してありますね」
「これやったら前も見えんやろ?逆に危ないかもしれんな」
『すみません。せっかく用意してくれたのに』
「気にせんでええ。一回り小さいの作らせるさかい。せやけど出来上がるまでそれ被っといてな」
『ふふ、大丈夫ですよ!…あらっ、また降りてきた』
「ヒヒッ、ほんま頭小さいのぉ」
喋る度にヘルメットが降りてきてななしの視界を遮断するらしい。
何度も持ち上げる動作をしている彼女は忙しなさそうだ。
『今日はこれで現場みせて下さい』
「ヒヒッ、転ばんように手ぇつないだるわ」
『ありがとうです、わわっ、すぐ降りてくるっ』
「ほんま可愛ええのぉ」
ズレて、持ち上げて、またズレて。
笑ったり小さく動くだけでブカブカのヘルメットがズレ、可笑しそうに笑うななしはとても可愛らしい。
そばでみていた真島はその一連の行動を目の当たりにし、ついつい愛嬌に顔が緩むのが分かった。
『じゃ、行きましょう!』と歩き出したななしだが、やはりヘルメットはズルリと落ちてきている。
「ヒヒッ、ほんまおもろいなぁ」
『ちゃんと手繋いでてくださいね!視界がっ、わわっ!て言うか、吾朗さんいつの間に建設業始めたんですか??おっと。歩きながら教えてくださいね』
「また下がっとんでぇ」
『へへへ、もうどうしようもないですっ!あらっ』
現場を見に行くために歩き出したがやはりヘルメットはズレる。そしてななしが直して、ふたり顔を見合わせ笑う。
工事現場で同じやりとりが永遠と繰り返されているが、彼らはとても幸せそうだった。
勿論後日、ちゃんと頭に合うヘルメットが届くのだが今日貰ったヘルメットもななしの宝物になるのは言うまでもない。