小話集1
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(真島/真島建設/恋人)
*組長真島①と若干繋がってます
ななしは今スーパーの袋を三つ抱えながら神室町の西公園に来ていた。
袋の中には市販の箱アイスやかき氷が沢山入っている。
この沢山のアイスは猛暑日でも休むことなく働いている真島組に、そして恋人である真島に渡す差し入れだ。
ななしは真島に教えて貰っていた"ななし専用入口"のフェンスの扉を開き、躊躇うことなく現場に向かった。因みにこの"ななし専用入口"は元々公園に入る際に男子トイレを通過しなくてはならなかったが、『そんな場所通りたくない』と渋ったななしのために作られた入口である。フェンスの扉には"関係者以外立ち入り禁止"と書かれており、文字通りななししか通ることを許されていない。
フェンスの扉のすぐ側で見張りをしていたであろう組員に一礼しながら、ななしは足早に真島がいるプレハブの事務所に向かった。
『吾朗さーん!…あれ?居ないのかな?』
中に入って真島を呼んでみるが返事はない。他の誰の返事もない所をみるに事務所はもぬけの殻状態なのだろう。
今も作業中で全員現場に赴いているのかもしれないと一人納得したななしは、誰もいない事務所の奥にある冷蔵庫に向かった。
大きな黒い冷蔵庫に袋のままアイスを押し入れた後、働いている真島達を探すべく再び入ってきた扉から外へと飛び出す。
『あ!吾朗さん〜』
「お、来とったんか!」
ムワッと暑い空気を顔面に受け、顔を歪ませていると丁度向こう側からトレードマークの黄色いヘルメットを被った真島が此方にやってくるのが見えた。
真島もすぐにななしに気がついたようで、革手袋をした手を持ち上げてユラユラと揺らして見せた。
『お疲れ様です吾朗さん』
「おう、お疲れさん。今来たんか?」
『はい、丁度今です。きっと働きっぱなしだろうと思ってアイス買ってきたんで休憩がてらにどうですか?』
「ヒヒッ、まるで俺が休ませとらんみたいな言い方やないか」
『ふふふ、みたいじゃなくてそうでしょう?それに吾朗さんも少しは休まなくちゃ、ただでさえ暑い格好してるんですから』
「ほな、ななしの買うてきたアイスで休憩でもするかのぉ」
『はい、そうしましょう』
随分と外で働いていたためか真島はこめかみから汗を流している。
炎天下の中、しかも厚手のジャケットと革手袋もして働いているのだから汗もかくだろう。
買ってきたアイスで少しでも体が休めればいいとななしは暑そうにしている真島の手を引き、事務所へと歩いた。
中に入る際たまたま戻ってきた組員の一人に「休憩すんで、アイツら呼んでこい」と顎で作業場を指した真島。
「押っ忍!」と元気に返事を一礼した後、颯爽と駆けていく組員。そんな組員の顔があまりにも嬉しそうに輝いていて、余程休憩が嬉しいのかとななしは苦笑いを零してしまった。
やはり真島組は西田の言う様にブラック企業かもしれない。
熱中症などで倒れてしまわないといいけれど…と駆けていく組員の背中を苦笑いのまま見送っていると、今度は真島に手を引かれてしまいよろめくようにして事務所の中に連れ込まれた。
幸い転ぶ前に真島にちゃんと抱きとめてもらったお陰で怪我などは無かったが、急にひかれて動転した心臓はバクバクと激しく動いていた。
『びっくりしました〜』
「転ばんだんやしええやろ」
『まぁそうですけど』
「ほんでどれ買うて来てくれたんや」
『アイスですか?沢山あるんで選んでくださいね!シャリシャリ系、かき氷系多めですよ〜』
「暑い日は断然そっち系やな」
『ふふ、そうですよね〜。アタシもチョコとかよりソーダーとか柑橘系のアイス選んじゃいます』
「ほんで食いすぎて頭いたなるまでがセットやな」
『ば、バレてる!』
「毎度のことやしバレとるわ」
『えへへ〜ですよねぇ』
「お!これやな。ようさんあるやんけ」
『一度に食べきらなくてもいいですからね。沢山買ってきましたから!』
「こんだけあるんや、お前も食うてけや」
『アタシはいいですよ?働いた人が食べてください』
「ほなこれどうや。ななし」
『あ、これ美味しいですよね。レモンのかき氷』
冷蔵庫から取り出した袋をソファに座りながら漁る真島。
その中から真島は一つアイスを取り出すと隣に座るななしに見えるように掲げた。
レモンの輪切りがかき氷の一番上におかれているもので味も見た目も爽やかなアイスだ。
そんなアイスを掲げながら「ななし一緒に食うで」と言う真島。
これは働いた人のために買ったものでなにもしていない自分が食べるものでは無いと、首を振ったななしだったが真島はそれを良しとせず。
アイスを持った手とは逆の手で隣にいるななしの腰を強引に抱き寄せたのだ。
今から休憩をしに組員の人達が帰ってくる事務所でお互い密着するように座り、腰を抱き寄せられている現状があまりに恥ずかしくてななしは真島の回った腕をなんとかはなそうと試みる。
しかし男である真島の腕力にかなうはずもなく。
結局なにをしても真島の腕が腰から離れることはなかった。
『もう、皆来ちゃいますって!』
「あ?そんもんどうでもええやろがい。それより両手埋まってもうたさかいスプーン取ってくれやななし」
『取りたいならアタシを離せば良いでしょう?』
「なんや俺に抱き寄せられんのが嫌なんか?」
『そ、そうじゃないですけど…TPOをですね!』
「あ?TPOー?知らんわそんなもん。嫌やないならこのままでええやないか。はよスプーンとらな溶けてまうで」
あぁ、これは何を言っても腕を離してくれないやつだ…。真島の悪戯な笑みを見てしまったななしは瞬時に理解してしまった。
こうなっててはテコでも動かず、自分のやりたいことを突き通す真島。彼の芯が通った性格はとても好いているがこういう時はなかなかに厄介でもある。
しかし彼の好意も伝わってくる行動であるし強く否定できないのも確かである。
ななしははぁ…と呆れた様にため息を着きつつも、言われた通り机に置いてあった袋の中から付属のスプーンを取り出してやった。
『…って、両手埋まったままどうやって食べるんです?』
「そらお前あれしかないやろ」
『え?あれ?』
片手でアイスを、片手でななしの腰を。
両手が埋まっている真島ではスプーンを取ったところで食べることが出来ないのでは、と疑問に思ったのもつかの間。
真島至極楽しそうに笑ったあと小さく口を開いた。
『え!?』
口を開いた彼の言いたいことが分かってしまってななしは驚きのあまり大きな声を出してしまった。
そんなななしなどお構い無しに口を開き、まるで早くしろとばかりに腰を掴む腕に力を入れてくる真島。
そう、真島は今。ななしに食べさせろ…所謂"あーん"をしろとそう言っているらしい。
『な、なななにやってるんですか!ここ事務所ですよ!?』
「……」
『ほ、本気ですか!?』
「……」
『ご、吾朗さんて本当に頑固ですよね!!』
「……」
『わ、分かりました!一回、一回だけですからね!』
ななしの抗議も何のその、口を開いたまま待機している真島は姿勢を崩すことはなかった。
このままでは埒が明かないとななしは再三のため息をついた後動かない真島が持っていたアイスの蓋を取り外して、少し柔らかくなったかき氷を掬う。
それから真島の開いた口の中にゆっくりとかき氷の乗ったスプーンを差し込んだ。
「ん」
『美味しいですか?』
「おう、冷こいわ」
『それは良かったです。満足していただけたら離してくださいいね』
「ほな、もう一回してくれや。ええやろ?」
『じゃ、これがラストですからね?』
「ヒヒッ。おう約束や」
もう一度あーんをしてくれという真島に、これがラストならとななしは再びかき氷を掬う。今度は先程よりも少し多めに乗せて、真島の口の中に押し入れた。
ゆっくりとスプーンを取り出して真島がかき氷を食べている様子を眺めていると、腰に回っていた腕が不意に後頭部を押さえてくる。
何事かと理解するよりも前に後頭部を押さえた手が動きななしの顔は目の前にいる真島の顔に引き寄せられた。
鼻と鼻が触れあうと、至近距離にいる真島の口角がそれはもう楽しそうに釣り上がる。
次の瞬間にはかき氷で冷たくなった薄い唇がななしの唇に押し付けられていた。
『んぅっ!』
───…今アタシ、キスされてる?
『ん、ま、まっへぇ…んっ!』
無理やり唇を開かれ口内に侵入してくる冷たい舌。
そしてかき氷の爽やかな味と香りが広がり、ななしは思わず喉を鳴らした。
口の中は熱いのか冷たいのか、訳が分からなくなるほどの快感にななしはキュッと瞳を閉じ真島にしがみつくので必死であった。
『んっ…っふ!、はぁ…』
「どやななし。かき氷美味かった?」
『ん、あ、甘いです…』
「ヒヒッ!せやなぁ」
かき氷が甘いのか、お互いの唇が甘いのか。そのどちらもなのか。
なにもかも曖昧になるほど心地よいキスにななしの目は蕩けきっていた。
そんなななしに満足気に笑った真島はさらに彼女のふっくらとした唇に優しく唇を押し当て、感触を楽しむように小さなキスを沢山送った。
『んっ、も、ダメっ。皆休憩に、来るからぁ』
「ん、もう遅いんやないか?」
『えっ?』
「もう事務所の外におるで」
『…え!?』
心地よいキスの雨に微睡んでいると真島の衝撃発言が聞こえてくる。
どういうことだと、真島のキスを振り切り入口の方へと視線を映せばガラス扉の向こうに見える従業員の姿があった。
こちらを見つめる従業員の一人である西田と目が合えば彼は気まずそうに己の頭をかいている。
『っ!!ご、吾朗さん!アタシ帰るっ!』
「あ?アカン、まだここにおれや」
『だってっ、み、見られて…』
「安心せぇ。いつもの事や」
『いつも見られてないじゃないですか』
「お前は案外鈍いんやな」
『え…え?なにそのもう沢山見られてるって感じの言い方は』
「事実やしのぉ」
『やっぱり帰る〜!』
「アカン言うとるやろがい」
『も〜!』
「ほな、かき氷食おか!」
『いらないです!』
真っ赤になるななしだが真島の腕の中からは逃げられず。
この後続々と入ってくる従業員になんともいえぬ表情で見られながらななしは真島と共にかき氷を食べることとなる。
(…もう暫く来ません)
(ヒヒッ!他なんぞ気にせんでええやんけ)
(気になりますよ!皆のあの生暖かい目は本当に辛いんです!!)
(別に何も言うてこんわ。カボチャやおもとけ)
(そういう問題じゃないです)
(そういう問題やろが)
(吾朗さんは羞恥心が欠落してます)
(失礼なやっちゃなぁ)
真島さんななしちゃんは仲良しバカップル。
そしてアイスはサ〇レ。
*組長真島①と若干繋がってます
ななしは今スーパーの袋を三つ抱えながら神室町の西公園に来ていた。
袋の中には市販の箱アイスやかき氷が沢山入っている。
この沢山のアイスは猛暑日でも休むことなく働いている真島組に、そして恋人である真島に渡す差し入れだ。
ななしは真島に教えて貰っていた"ななし専用入口"のフェンスの扉を開き、躊躇うことなく現場に向かった。因みにこの"ななし専用入口"は元々公園に入る際に男子トイレを通過しなくてはならなかったが、『そんな場所通りたくない』と渋ったななしのために作られた入口である。フェンスの扉には"関係者以外立ち入り禁止"と書かれており、文字通りななししか通ることを許されていない。
フェンスの扉のすぐ側で見張りをしていたであろう組員に一礼しながら、ななしは足早に真島がいるプレハブの事務所に向かった。
『吾朗さーん!…あれ?居ないのかな?』
中に入って真島を呼んでみるが返事はない。他の誰の返事もない所をみるに事務所はもぬけの殻状態なのだろう。
今も作業中で全員現場に赴いているのかもしれないと一人納得したななしは、誰もいない事務所の奥にある冷蔵庫に向かった。
大きな黒い冷蔵庫に袋のままアイスを押し入れた後、働いている真島達を探すべく再び入ってきた扉から外へと飛び出す。
『あ!吾朗さん〜』
「お、来とったんか!」
ムワッと暑い空気を顔面に受け、顔を歪ませていると丁度向こう側からトレードマークの黄色いヘルメットを被った真島が此方にやってくるのが見えた。
真島もすぐにななしに気がついたようで、革手袋をした手を持ち上げてユラユラと揺らして見せた。
『お疲れ様です吾朗さん』
「おう、お疲れさん。今来たんか?」
『はい、丁度今です。きっと働きっぱなしだろうと思ってアイス買ってきたんで休憩がてらにどうですか?』
「ヒヒッ、まるで俺が休ませとらんみたいな言い方やないか」
『ふふふ、みたいじゃなくてそうでしょう?それに吾朗さんも少しは休まなくちゃ、ただでさえ暑い格好してるんですから』
「ほな、ななしの買うてきたアイスで休憩でもするかのぉ」
『はい、そうしましょう』
随分と外で働いていたためか真島はこめかみから汗を流している。
炎天下の中、しかも厚手のジャケットと革手袋もして働いているのだから汗もかくだろう。
買ってきたアイスで少しでも体が休めればいいとななしは暑そうにしている真島の手を引き、事務所へと歩いた。
中に入る際たまたま戻ってきた組員の一人に「休憩すんで、アイツら呼んでこい」と顎で作業場を指した真島。
「押っ忍!」と元気に返事を一礼した後、颯爽と駆けていく組員。そんな組員の顔があまりにも嬉しそうに輝いていて、余程休憩が嬉しいのかとななしは苦笑いを零してしまった。
やはり真島組は西田の言う様にブラック企業かもしれない。
熱中症などで倒れてしまわないといいけれど…と駆けていく組員の背中を苦笑いのまま見送っていると、今度は真島に手を引かれてしまいよろめくようにして事務所の中に連れ込まれた。
幸い転ぶ前に真島にちゃんと抱きとめてもらったお陰で怪我などは無かったが、急にひかれて動転した心臓はバクバクと激しく動いていた。
『びっくりしました〜』
「転ばんだんやしええやろ」
『まぁそうですけど』
「ほんでどれ買うて来てくれたんや」
『アイスですか?沢山あるんで選んでくださいね!シャリシャリ系、かき氷系多めですよ〜』
「暑い日は断然そっち系やな」
『ふふ、そうですよね〜。アタシもチョコとかよりソーダーとか柑橘系のアイス選んじゃいます』
「ほんで食いすぎて頭いたなるまでがセットやな」
『ば、バレてる!』
「毎度のことやしバレとるわ」
『えへへ〜ですよねぇ』
「お!これやな。ようさんあるやんけ」
『一度に食べきらなくてもいいですからね。沢山買ってきましたから!』
「こんだけあるんや、お前も食うてけや」
『アタシはいいですよ?働いた人が食べてください』
「ほなこれどうや。ななし」
『あ、これ美味しいですよね。レモンのかき氷』
冷蔵庫から取り出した袋をソファに座りながら漁る真島。
その中から真島は一つアイスを取り出すと隣に座るななしに見えるように掲げた。
レモンの輪切りがかき氷の一番上におかれているもので味も見た目も爽やかなアイスだ。
そんなアイスを掲げながら「ななし一緒に食うで」と言う真島。
これは働いた人のために買ったものでなにもしていない自分が食べるものでは無いと、首を振ったななしだったが真島はそれを良しとせず。
アイスを持った手とは逆の手で隣にいるななしの腰を強引に抱き寄せたのだ。
今から休憩をしに組員の人達が帰ってくる事務所でお互い密着するように座り、腰を抱き寄せられている現状があまりに恥ずかしくてななしは真島の回った腕をなんとかはなそうと試みる。
しかし男である真島の腕力にかなうはずもなく。
結局なにをしても真島の腕が腰から離れることはなかった。
『もう、皆来ちゃいますって!』
「あ?そんもんどうでもええやろがい。それより両手埋まってもうたさかいスプーン取ってくれやななし」
『取りたいならアタシを離せば良いでしょう?』
「なんや俺に抱き寄せられんのが嫌なんか?」
『そ、そうじゃないですけど…TPOをですね!』
「あ?TPOー?知らんわそんなもん。嫌やないならこのままでええやないか。はよスプーンとらな溶けてまうで」
あぁ、これは何を言っても腕を離してくれないやつだ…。真島の悪戯な笑みを見てしまったななしは瞬時に理解してしまった。
こうなっててはテコでも動かず、自分のやりたいことを突き通す真島。彼の芯が通った性格はとても好いているがこういう時はなかなかに厄介でもある。
しかし彼の好意も伝わってくる行動であるし強く否定できないのも確かである。
ななしははぁ…と呆れた様にため息を着きつつも、言われた通り机に置いてあった袋の中から付属のスプーンを取り出してやった。
『…って、両手埋まったままどうやって食べるんです?』
「そらお前あれしかないやろ」
『え?あれ?』
片手でアイスを、片手でななしの腰を。
両手が埋まっている真島ではスプーンを取ったところで食べることが出来ないのでは、と疑問に思ったのもつかの間。
真島至極楽しそうに笑ったあと小さく口を開いた。
『え!?』
口を開いた彼の言いたいことが分かってしまってななしは驚きのあまり大きな声を出してしまった。
そんなななしなどお構い無しに口を開き、まるで早くしろとばかりに腰を掴む腕に力を入れてくる真島。
そう、真島は今。ななしに食べさせろ…所謂"あーん"をしろとそう言っているらしい。
『な、なななにやってるんですか!ここ事務所ですよ!?』
「……」
『ほ、本気ですか!?』
「……」
『ご、吾朗さんて本当に頑固ですよね!!』
「……」
『わ、分かりました!一回、一回だけですからね!』
ななしの抗議も何のその、口を開いたまま待機している真島は姿勢を崩すことはなかった。
このままでは埒が明かないとななしは再三のため息をついた後動かない真島が持っていたアイスの蓋を取り外して、少し柔らかくなったかき氷を掬う。
それから真島の開いた口の中にゆっくりとかき氷の乗ったスプーンを差し込んだ。
「ん」
『美味しいですか?』
「おう、冷こいわ」
『それは良かったです。満足していただけたら離してくださいいね』
「ほな、もう一回してくれや。ええやろ?」
『じゃ、これがラストですからね?』
「ヒヒッ。おう約束や」
もう一度あーんをしてくれという真島に、これがラストならとななしは再びかき氷を掬う。今度は先程よりも少し多めに乗せて、真島の口の中に押し入れた。
ゆっくりとスプーンを取り出して真島がかき氷を食べている様子を眺めていると、腰に回っていた腕が不意に後頭部を押さえてくる。
何事かと理解するよりも前に後頭部を押さえた手が動きななしの顔は目の前にいる真島の顔に引き寄せられた。
鼻と鼻が触れあうと、至近距離にいる真島の口角がそれはもう楽しそうに釣り上がる。
次の瞬間にはかき氷で冷たくなった薄い唇がななしの唇に押し付けられていた。
『んぅっ!』
───…今アタシ、キスされてる?
『ん、ま、まっへぇ…んっ!』
無理やり唇を開かれ口内に侵入してくる冷たい舌。
そしてかき氷の爽やかな味と香りが広がり、ななしは思わず喉を鳴らした。
口の中は熱いのか冷たいのか、訳が分からなくなるほどの快感にななしはキュッと瞳を閉じ真島にしがみつくので必死であった。
『んっ…っふ!、はぁ…』
「どやななし。かき氷美味かった?」
『ん、あ、甘いです…』
「ヒヒッ!せやなぁ」
かき氷が甘いのか、お互いの唇が甘いのか。そのどちらもなのか。
なにもかも曖昧になるほど心地よいキスにななしの目は蕩けきっていた。
そんなななしに満足気に笑った真島はさらに彼女のふっくらとした唇に優しく唇を押し当て、感触を楽しむように小さなキスを沢山送った。
『んっ、も、ダメっ。皆休憩に、来るからぁ』
「ん、もう遅いんやないか?」
『えっ?』
「もう事務所の外におるで」
『…え!?』
心地よいキスの雨に微睡んでいると真島の衝撃発言が聞こえてくる。
どういうことだと、真島のキスを振り切り入口の方へと視線を映せばガラス扉の向こうに見える従業員の姿があった。
こちらを見つめる従業員の一人である西田と目が合えば彼は気まずそうに己の頭をかいている。
『っ!!ご、吾朗さん!アタシ帰るっ!』
「あ?アカン、まだここにおれや」
『だってっ、み、見られて…』
「安心せぇ。いつもの事や」
『いつも見られてないじゃないですか』
「お前は案外鈍いんやな」
『え…え?なにそのもう沢山見られてるって感じの言い方は』
「事実やしのぉ」
『やっぱり帰る〜!』
「アカン言うとるやろがい」
『も〜!』
「ほな、かき氷食おか!」
『いらないです!』
真っ赤になるななしだが真島の腕の中からは逃げられず。
この後続々と入ってくる従業員になんともいえぬ表情で見られながらななしは真島と共にかき氷を食べることとなる。
(…もう暫く来ません)
(ヒヒッ!他なんぞ気にせんでええやんけ)
(気になりますよ!皆のあの生暖かい目は本当に辛いんです!!)
(別に何も言うてこんわ。カボチャやおもとけ)
(そういう問題じゃないです)
(そういう問題やろが)
(吾朗さんは羞恥心が欠落してます)
(失礼なやっちゃなぁ)
真島さんななしちゃんは仲良しバカップル。
そしてアイスはサ〇レ。