小話集1
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(支配人/恋人)
グランドの煌びやかなホールの中、真島は連日訪れる常連客や太客に挨拶をして回っていた。
機嫌を良くした太客は財布の紐を緩めやすい。
沢山搾取するためにはまず、太客の機嫌をとり過ごしやすく心地よい空間を作る必要がある。
その為に必要なのは終始慎ましく振る舞うこと。
どれだけ内心で愚痴をこぼそうが舌打ちをしようが、ニコニコと笑って相手の話に相槌を打ってさえいれば何とかなる。
真島の内心はそれはもう荒んでいたが金のため、己の為にとペコペコと頭を下げて回っている。
一通り挨拶を済ませ、ホール内で問題が起きていないかを確認したあと真島はようやく肩の荷がおり人知れずため息をついていた。
しかし挨拶が終わったからといって真島の仕事が終わる訳では無い。
いつ問題が起きても迅速に対処できるようにこのままホール内で待機する必要があった。
真島はなるべく客の目につかないようにして柱の裏で姿勢正しく立ち、ホール内の様子を伺った。
───…お、
そうしてしばしばホール内を観察していると、己の視線が当たり前のように"1人のボーイ"に吸い寄せられていき、最終的にはそこから目が離せなくなってしまう。
真島が隻眼で見つめるずっとずっと先には、恋人でありボーイとして働いているななしの姿があった。
彼女は大きなトレイを使ってフルーツの盛り合わせを運んでいる最中だ。
小さな体で自分の顔が埋もれるほど大きなフルーツの盛り合わせを運ぶ姿はとても危うく見える。
誰かとぶつかり転んでしまわないだろうか、重たくはないだろうか。前は見えているか、テーブルまで辿り着けるか。
真っ直ぐななしを見つめる真島は心配で仕方がなかった。
しかし今まで…もう何年単位になるが、ななしがぶつかったり転んだりしてトレイをひっくり返す姿などただの一度も見たことが無い。
なので今も危なげないがきっと完璧にテーブルに届けるのだろう。
結局全ては真島の杞憂でしかない。
それでもまだまだ幼いななしが男に混じって力仕事をこなしている姿を見ているとどうしてもハラハラとしてしまって、真島は気が気でなかった。
そんな真島をよそにななしはすんなりと指定されたテーブルにフルーツの盛り合わせを届けると、何事も無かったかのように他のテーブルの清掃にへと向かった。
───…ようさん働くのぉ…
てきぱきと掃除をして、呼び止められればとても穏やかに対応し、常にニコニとしているななしの仕事っぷりは真島から見てもとても気持ちが良かった。
きっとこのホールにいる客やキャスト達もそう思っていることだろう。
現にボーイであるななしを呼びとめ、席に座らせる客も一定数存在している。
その都度物腰柔らかに対応するななしをキャスト同様に気に入っているのかもしれない。
掃除などの細かな作業に加えそれなりに対人スキルを身につけているななしはボーイだけでなく、キャストにも向いているかもしれない。
───…まぁ、向いとってもやらせんけどな…
綺麗なドレスを着てこのホールで働くななしの姿を想像してしまい真島は眉をしかめた。
例えななしがどれだけキャバ嬢にむいていてそれなりに金を稼げたとしても絶対にさせることはない。
自分以外の男と親密そうに話して、酒を飲むなんて考えるだけでも嫉妬で頭が狂いそうになる。
真島はホール内で待機しながらああでもないこうでもないと一人ななしの事を考えていた。
勿論支配人としての表情を貼り付けたまま考えに耽っているため、誰が見ても恋人のことで悶々としている事には気づかないだろう。
───…ななしのドレスか…めちゃくちゃかわええんやろうな…
色々考えすぎて最終的には邪な考えに至り、真島はひっそりと恋人の妄想を巡らせた。
───…黒もええな、ななしやったら赤もええか
どんな色が似合うだろう。
いや、彼女ならどれもこれも着こなしてしまうか。
真島がななしのドレス姿を妄想していると、不意に右腕の袖を軽く引かれる感覚がした。
何事かと慌てて振り返るとそこにはどこか困ったような顔をしたななしがおり、遠慮がちに袖を引いてい姿が目に映った。
『支配人、ちょっとこっちに来てください』
「お、おう」
なおも袖を引っ張りにこっちに来てと促された真島は、コソコソと忍んで動くななしに続きバックルームの扉を潜る。
その後人目を気にしながら機敏に動くななしに袖を引かれやってきたのは、グランドの勝手口。
ななしは直ぐに勝手口から路地裏に飛び出すと『真島さん!早く!』とそう言う。
真島は頷きながらもななしの居る裏路地に素早く飛び出した。
『ふぅ〜、気づかれなかったですかね?』
「多分な。で?どないしたんや?」
『どないしたんやって…こっちの台詞ですよぅ!』
「ん?どういうことや?」
『もう気づいてないんですか?』
ななしはまるでゆでダコのように顔を真っ赤にし頬に手を添えながら『見すぎですよぉ』と、恥ずかしそうにそう言った。
なるほど、ななしが躊躇いながらもここに連れてきたのはそれを伝える為だったか。
真島は目の前で恥じらいながらモジモジとしている小動物のようなななしを見下ろしながら一人納得した。
「見すぎとったか?」
『あんなに見られたら緊張しちゃいます』
「せやけどななしが可愛ええさかい目ぇ離せんのや」
『か、可愛くないです!』
「可愛ええで?一生懸命働いとる姿は殊更可愛ええねん」
『ま、真島さんっ!だ、ダメです。ここ外ですよっ』
「安心せぇ。こんな路地裏誰も来んわ」
『緊張する』と照れているななしの可愛らしさに堪らず真島は両腕を広げて、目の前にいる彼女を抱き寄せてしまった。
路地裏と言えどここは外だと、抱きしめられて狼狽えているななしを逃げられないよう壁に追いやり更に強く抱き締める。
人が通ったり、好奇心で路地裏を覗かれたとしてもきっとこの大きな体に誰かが抱きしめられていることはわかっても、その誰かまでは見えないだろう。
それに室外機や電柱、ゴミ箱など影になるものは沢山ある。
だから簡単にバレたりはしないだろうと、安心させるようにななしの背を優しく撫でていると彼女の方も諦めが着いたかおずおずとこちらに腕を回してくる。
「ななし見とると俺も仕事頑張れんねん」
『そんなこと言われちゃったら見ないでなんて言えないじゃないですか〜』
「ヒヒッ。これからも働く姿俺に見せてやななし」
『…じゃぁ、見てもいいです…でもあんな顔して見ないでくださいね?』
「あんな顔ってどんな顔やねん」
『えっと…その…なんていうか…』
「はっきり言わな分からんで」
『その…つ、つまり!…とっても優しくて…まるで二人きりで過ごす時みたいに穏やかな表情です…アタシ仕事中なの忘れちゃいそうでしたよ…?』
「せやけど、多分ななしがそうさせとんやで」
『ア、アタシなにもしてないですぅ…』
「ななしがとんでもなく一生懸命で可愛ええのがそうさせとんのや。多めに見てくれや」
『うぅ…』
困った様にでもどこか嬉しそうに下がった眉尻を親指の腹で優しく撫でてやりながら、ななしの顔をもっとよく見るために顔を近づける。
大きな瞳は恥じらいと戸惑いで揺れており、どこか扇情的だ。
そんな大きな瞳の中に映るのは恋人を前に穏やかな表情を浮かべる眼帯のイカつい男。
普段彼女の前ではこんなにも締まりのない顔をしているのか思うと、自分自身に若干呆れてしまう。
しかし同時にあまりにも満たされている表情をしている様に思えてしまって。
真島は更に緩く口角を上げると腕の中で縮こまっているななしの唇に己の唇を押し当てた。
───…甘い、甘いのぉ。
仕事中なのにどうしてこんなにも甘くて、昂ってしまうのだろうか。
それはきっと愛しい恋人がななしであるからなのだろう。
(ま、真島さんっ、戻らないと…)
(ん?もう少しええやろ?ここまで連れてきたのはななしやんけ)
(ちょっとお話したかっただけなんです)
(ほな、もう少し休憩がてらにお話しよか)
(も、もう…あと少しですからね)
(ヒヒッ、おう!)
この後15分は休憩した。
多分お互い知らず知らずのうちに目で追ってるんだろうなぁ。という思いつき話です。
祝☆支配人真島⑩話目!
グランドの煌びやかなホールの中、真島は連日訪れる常連客や太客に挨拶をして回っていた。
機嫌を良くした太客は財布の紐を緩めやすい。
沢山搾取するためにはまず、太客の機嫌をとり過ごしやすく心地よい空間を作る必要がある。
その為に必要なのは終始慎ましく振る舞うこと。
どれだけ内心で愚痴をこぼそうが舌打ちをしようが、ニコニコと笑って相手の話に相槌を打ってさえいれば何とかなる。
真島の内心はそれはもう荒んでいたが金のため、己の為にとペコペコと頭を下げて回っている。
一通り挨拶を済ませ、ホール内で問題が起きていないかを確認したあと真島はようやく肩の荷がおり人知れずため息をついていた。
しかし挨拶が終わったからといって真島の仕事が終わる訳では無い。
いつ問題が起きても迅速に対処できるようにこのままホール内で待機する必要があった。
真島はなるべく客の目につかないようにして柱の裏で姿勢正しく立ち、ホール内の様子を伺った。
───…お、
そうしてしばしばホール内を観察していると、己の視線が当たり前のように"1人のボーイ"に吸い寄せられていき、最終的にはそこから目が離せなくなってしまう。
真島が隻眼で見つめるずっとずっと先には、恋人でありボーイとして働いているななしの姿があった。
彼女は大きなトレイを使ってフルーツの盛り合わせを運んでいる最中だ。
小さな体で自分の顔が埋もれるほど大きなフルーツの盛り合わせを運ぶ姿はとても危うく見える。
誰かとぶつかり転んでしまわないだろうか、重たくはないだろうか。前は見えているか、テーブルまで辿り着けるか。
真っ直ぐななしを見つめる真島は心配で仕方がなかった。
しかし今まで…もう何年単位になるが、ななしがぶつかったり転んだりしてトレイをひっくり返す姿などただの一度も見たことが無い。
なので今も危なげないがきっと完璧にテーブルに届けるのだろう。
結局全ては真島の杞憂でしかない。
それでもまだまだ幼いななしが男に混じって力仕事をこなしている姿を見ているとどうしてもハラハラとしてしまって、真島は気が気でなかった。
そんな真島をよそにななしはすんなりと指定されたテーブルにフルーツの盛り合わせを届けると、何事も無かったかのように他のテーブルの清掃にへと向かった。
───…ようさん働くのぉ…
てきぱきと掃除をして、呼び止められればとても穏やかに対応し、常にニコニとしているななしの仕事っぷりは真島から見てもとても気持ちが良かった。
きっとこのホールにいる客やキャスト達もそう思っていることだろう。
現にボーイであるななしを呼びとめ、席に座らせる客も一定数存在している。
その都度物腰柔らかに対応するななしをキャスト同様に気に入っているのかもしれない。
掃除などの細かな作業に加えそれなりに対人スキルを身につけているななしはボーイだけでなく、キャストにも向いているかもしれない。
───…まぁ、向いとってもやらせんけどな…
綺麗なドレスを着てこのホールで働くななしの姿を想像してしまい真島は眉をしかめた。
例えななしがどれだけキャバ嬢にむいていてそれなりに金を稼げたとしても絶対にさせることはない。
自分以外の男と親密そうに話して、酒を飲むなんて考えるだけでも嫉妬で頭が狂いそうになる。
真島はホール内で待機しながらああでもないこうでもないと一人ななしの事を考えていた。
勿論支配人としての表情を貼り付けたまま考えに耽っているため、誰が見ても恋人のことで悶々としている事には気づかないだろう。
───…ななしのドレスか…めちゃくちゃかわええんやろうな…
色々考えすぎて最終的には邪な考えに至り、真島はひっそりと恋人の妄想を巡らせた。
───…黒もええな、ななしやったら赤もええか
どんな色が似合うだろう。
いや、彼女ならどれもこれも着こなしてしまうか。
真島がななしのドレス姿を妄想していると、不意に右腕の袖を軽く引かれる感覚がした。
何事かと慌てて振り返るとそこにはどこか困ったような顔をしたななしがおり、遠慮がちに袖を引いてい姿が目に映った。
『支配人、ちょっとこっちに来てください』
「お、おう」
なおも袖を引っ張りにこっちに来てと促された真島は、コソコソと忍んで動くななしに続きバックルームの扉を潜る。
その後人目を気にしながら機敏に動くななしに袖を引かれやってきたのは、グランドの勝手口。
ななしは直ぐに勝手口から路地裏に飛び出すと『真島さん!早く!』とそう言う。
真島は頷きながらもななしの居る裏路地に素早く飛び出した。
『ふぅ〜、気づかれなかったですかね?』
「多分な。で?どないしたんや?」
『どないしたんやって…こっちの台詞ですよぅ!』
「ん?どういうことや?」
『もう気づいてないんですか?』
ななしはまるでゆでダコのように顔を真っ赤にし頬に手を添えながら『見すぎですよぉ』と、恥ずかしそうにそう言った。
なるほど、ななしが躊躇いながらもここに連れてきたのはそれを伝える為だったか。
真島は目の前で恥じらいながらモジモジとしている小動物のようなななしを見下ろしながら一人納得した。
「見すぎとったか?」
『あんなに見られたら緊張しちゃいます』
「せやけどななしが可愛ええさかい目ぇ離せんのや」
『か、可愛くないです!』
「可愛ええで?一生懸命働いとる姿は殊更可愛ええねん」
『ま、真島さんっ!だ、ダメです。ここ外ですよっ』
「安心せぇ。こんな路地裏誰も来んわ」
『緊張する』と照れているななしの可愛らしさに堪らず真島は両腕を広げて、目の前にいる彼女を抱き寄せてしまった。
路地裏と言えどここは外だと、抱きしめられて狼狽えているななしを逃げられないよう壁に追いやり更に強く抱き締める。
人が通ったり、好奇心で路地裏を覗かれたとしてもきっとこの大きな体に誰かが抱きしめられていることはわかっても、その誰かまでは見えないだろう。
それに室外機や電柱、ゴミ箱など影になるものは沢山ある。
だから簡単にバレたりはしないだろうと、安心させるようにななしの背を優しく撫でていると彼女の方も諦めが着いたかおずおずとこちらに腕を回してくる。
「ななし見とると俺も仕事頑張れんねん」
『そんなこと言われちゃったら見ないでなんて言えないじゃないですか〜』
「ヒヒッ。これからも働く姿俺に見せてやななし」
『…じゃぁ、見てもいいです…でもあんな顔して見ないでくださいね?』
「あんな顔ってどんな顔やねん」
『えっと…その…なんていうか…』
「はっきり言わな分からんで」
『その…つ、つまり!…とっても優しくて…まるで二人きりで過ごす時みたいに穏やかな表情です…アタシ仕事中なの忘れちゃいそうでしたよ…?』
「せやけど、多分ななしがそうさせとんやで」
『ア、アタシなにもしてないですぅ…』
「ななしがとんでもなく一生懸命で可愛ええのがそうさせとんのや。多めに見てくれや」
『うぅ…』
困った様にでもどこか嬉しそうに下がった眉尻を親指の腹で優しく撫でてやりながら、ななしの顔をもっとよく見るために顔を近づける。
大きな瞳は恥じらいと戸惑いで揺れており、どこか扇情的だ。
そんな大きな瞳の中に映るのは恋人を前に穏やかな表情を浮かべる眼帯のイカつい男。
普段彼女の前ではこんなにも締まりのない顔をしているのか思うと、自分自身に若干呆れてしまう。
しかし同時にあまりにも満たされている表情をしている様に思えてしまって。
真島は更に緩く口角を上げると腕の中で縮こまっているななしの唇に己の唇を押し当てた。
───…甘い、甘いのぉ。
仕事中なのにどうしてこんなにも甘くて、昂ってしまうのだろうか。
それはきっと愛しい恋人がななしであるからなのだろう。
(ま、真島さんっ、戻らないと…)
(ん?もう少しええやろ?ここまで連れてきたのはななしやんけ)
(ちょっとお話したかっただけなんです)
(ほな、もう少し休憩がてらにお話しよか)
(も、もう…あと少しですからね)
(ヒヒッ、おう!)
この後15分は休憩した。
多分お互い知らず知らずのうちに目で追ってるんだろうなぁ。という思いつき話です。
祝☆支配人真島⑩話目!