小話集1
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(支配人/恋人)
『ふぅ〜これでOKかな!』
ななしはバインダーに挟まれているシートの全ての記入欄にチェックマークが書かれているかを確認したあと、ホールの電気を消し退出しながらおおきく伸びをした。
グランドも終業し残った後片付けや清掃を終わらせたななしはたった今ホール内の最終チェックを行っていた。
特に気になる箇所や汚れた箇所などもなく、今日の全ての業務が完了したのだ。
これで明日も滞りなくグランドの営業が出来ると満足気なななしはホールの大きな扉を閉めて未だに事務仕事と格闘しているであろう真島の元の向かおうと、スタッフルームを目指した。
『それにしても…暑い…』
今日はもう使用しない通路の電気を消して回りながらスタッフルームに向かっていたななしはじんわりと汗ばんでいる額に向けてバインダーで風を送る。
6月、季節は梅雨。
しかし今季の梅雨は空はどんよりとしているが雨は中々降らず、気温や湿度が高い日々が続いている。
更にじめじめとしているため蒸し暑く、体感温度はいつもより増し増しに感じられるものだった。
グランドで働いているななしもそんな暑さにいつもよりもクタクタだ。
営業時間にはクーラーの効いたホールとクーラー自体着いていない蒸し暑いキッチンの行き来ばかりしているので、気温の変化などで頭が痛んだり体がだるくなったりする。
梅雨であるためこの蒸し暑い日々や特有の疲労は回避不能なのだが、それでも快適に過ごせたらいいのになぁと思わずにはいられないななし。
今梅雨が訪れたばかりだが早く過ごしやすい秋がくればいいのにと、非現実的だが切実にそう思っている。
ななしはなおも顔をバインダーで仰ぎながら真島がいるであろうスタッフルームに着くと、仕事をしている彼を驚かさないようにゆっくりと扉を開いた。
『…お疲れ様です〜』
真剣に仕事をしている中で話しかけて集中力を途切れさせてしまっては良くないとななしはそっと扉を開き顔だけを覗かせた。
『…え!?』
普段通り邪魔にならないように来客用のソファに座って待っていようと体を滑り込ませ、机に向かっている真島を見ていると"ある事"に気が付きななしは驚き声を発してしまったのだ。
同時に持っていたバインダーが手の中からずり落ち、バタンッ!と鈍い音が響き渡る。
声と音に「ん?」と反応した真島は机から顔を起こすと、ななしを見つめながらゆっくりと立ち上がった。
真島が「落としたで?ななし?」と未だ固まったままのななしに落ちたバインダーを拾い渡してくる。
しかしそんな姿さえも普段とは違っていて、ななしは優しげに笑っている真島を見つめながら心臓を高鳴らせていた。
「ん?ななし?」
『……』
「どこ見とんのや?」
『…あ、あの…それ…』
「あー、腕まくりか?今日は暑かったし我慢出来んでん」
そう、ななしがみた普段とは違う姿とは腕まくりをした真島のこと。
タキシードを着崩すことはあってもグランド内でワイシャツ一枚になることはほとんどなく。
加えて腕まくりまでしている姿は初めて見るものだった。
絶対にはみ出ることの無い肌色の部分が今日はグランド内で惜しげも無く晒されており、普段びっしり着込んでいる真島とのギャップを感じてしまったななしは食い入るように腕を見つめていた。
捲られたワイシャツから見える腕は逞しく、浮き出た血管や筋肉はとても男らしい。
見れば見るほどドキドキが止まらず、心臓が口から飛び出してきそうだ。
「ななし?」
『え!?は、はい!何でしょう?』
「そないにじっとみられたら穴空いてまうで」
『す、すみません…腕まくりする真島さんがレアすぎて…』
「まぁ、あんますることないわな。せやけど腕なんて見慣れとるやろ?」
『み、見慣れているかもしれませんが…ワイシャツから少しだけ見えるのと全身が見えるのとでは全然違うんです』
「違うもんなんか?」
こう言っては変態だと思われかねないが、腕全体が見えるよりも腕まくりをしていて少しだけちらりと見える方がドキリとする。
勿論真島とは恋人であるため、彼の腕を見たことがあるのは事実だ。
しかし捲られた袖からスラリと伸びている腕の方が少しセクシーで、かっこいい。
流石にセクシーなんです、魅力的なんです。ドキドキするんです!とは声に出して伝えることは出来なかったななし。腕のかっこよさにあてられ顔を赤くしながら『まぁ、違うんです…』とゴニョゴニョと濁しながら返事をするしかなかった。
真島はあまり理解することが出来なかったのか、「よぉ、分からんな」と首を傾げている。
「ま、ななしが顔赤くなるまで喜んどんならええか。ほな俺はもう少し仕事あるさかいゆっくり休んどってな」
『は、はい!分かりました!』
真島はその色気と男らしさに戸惑っているななしの頭をポンポンと撫でると、拾ったバインダーを持ちながら先程まで座っていた机に戻っていく。
ななしはドキドキと高鳴る胸を抑えながら真島の後を追い、ソファに向かった。
顔が赤くなっていることも、かっこいいいと密かに喜んでいることも真島にはモロにバレていたことが恥ずかしくて、ななしはソファに腰を下ろすと一人小さく悶えた。
先程心の中で考えていたことまで筒抜けかもしれないと思うと気が気でない。
───…これじゃ変態ですって言っているようなもんじゃん!
腕全身をみるより捲られた袖から見える腕に興奮しときめいている。
とてもニッチな思考にななしは自分自身でも戸惑ってしまった。
───…普段はこうじゃないのに…きっと梅雨のジメジメのせいなんだ。
真島さんに引かれないといいなぁ…。
恋人であり自分には似合わないほど素敵な男性である真島。そんな彼に幻滅されるのだけはとても悲しい。
しかし今日をもってななしのマニアックな思考回路は彼にしっかりと伝わってしまった訳で。
真島がどのように思うかは分からなかったが、この変態思考を嫌悪してしまう可能性も否めない。
彼の前では慎ましくいたいいものだが、いざ本人を前にすると色々なことに魅了され頭の中がいっぱいいっぱいになってしまう。
今だって腕まくりのドキドキは継続中で、胸はこれでもかと早鐘を打っている。
もっと真島のかっこよさにあてられず仕事を手伝えるくらい心も体も大人になりたいと、ななしは人知れずため息をついた。
一方仕事が一区切りついた真島は、赤くなったり青ざめたりと忙しなさそうなななしを見つめていた。
自身の頬に手を当てながらああでもないこうでもないと感情豊かに何かを考えているななしがとても可愛らしい。
そんな恋人を眺めていると自然と顔が緩み口角が上がっていく。
真島はにやけた顔を隠すことなくゆっくりと立ち上ると、そのまま一喜一憂しているななしの隣に座った。
「どないしたんや?」と声をかけてやると、彼女は驚いたように肩を跳ねさせ大きな瞳で見上げてくる。
少し挙動不審な姿も小動物のようで可愛いと見つめ返していると、ななしはゆっくりと口を開いた。
『ま、真島さん…すみません』
「ん?何がや?謝るような事してへんやろ」
『い、いえ…本当に。アタシ変態ですみません…』
「変態…?」
『この腕まくりで喜んでしまって…すみません…』
ななしは真島の腕を指しそう言うとシュンとしなだれてしまった。
「なんでそないな事で謝んねん。別にええやんけ」
『い、いいんですか?腕まくりに喜んでも』
「逆に何がアカンのや?俺かてななしの細っこい可愛らしい腕が見えとったら嬉しいで?」
『ま、真島さんも嬉しいんですか?』
「嬉しいで」
『そ、そうなんですか…!良かったぁ』
シュンとしていたななしは安堵の表情を浮かべたあと、ふぅと息を付き胸を撫で下ろしていた。
彼女のことだ、腕まくりで喜んでいることが気恥しく感じられたのだろう。
真島とてななしのいつも見えない肌がちらりと見えたり晒されていたらそれはもう嬉しいし、興奮する。
そういった感情はなにも特別では無い、恋人同士なのだから当たり前に感じるものだと真島は思う。
ただ律儀なななしは変態だマニアックだと思いなやなんでしまったようだ。
「そういう不意に見えるもんにドキッとすんのはありがちや。なにも変態やなんて言わんでもええ」
『でも着ている時の方がドキッとしちゃうのってなんだかマニアックじゃなですか?』
「チラリズムにドキッとすんのは結構共通意識やと思うで」
『そういうものなんですか』
「多分な」
『なるほど…』
「ななし」
『はい!何でしょう?』
「ななしはこの腕にドキッとしてもうたんか?」
『ぅ、は、はい。この筋とかかっこいいですし…』
「ホンマ可愛ええやっちゃなぁ。これからも腕まくりしたるわ」
『……あ、でも…やっぱりいいです…』
「ん?なんでや?」
可愛らしい恋人を腕まくりした腕でしっかり抱きしめ密着しながら話していと、ななしは不意に首を横に振る。
恋人が喜んでくれるなら何度だって腕まくりしてやると意気込む真島だが、それはダメですと否定するななし。
ここまで嬉しいと顔を赤くし喜んでくれるのにどうしてダメなのか。真島はななしが否定する理由がわからず眉を顰める。
『だ、だって…』
「うん?」
『普段タキシードを着てる真島さんが急に腕まくりしてその姿をキャストさん達が見たら…絶対ときめいて好きになっちゃうもん』
真っ赤な顔を更に赤くさせモジモジとそう言うななし。
言葉の節々に隠れている独占欲と嫉妬。
まるで他の誰かに取られないように必死になっているようでとてもいじらしい。
ななしの真っ直ぐでひたすら純粋な好意を向けられるととても嬉しく。
擽ったいような、焦れったいような…ようは彼女を愛おしいと思う気持ちが湧き水のように溢れてきて、真島は堪らず傍にあった小さな顎を掬うと、己の唇をふっくらとした唇にそっと押し付けていた。
穏やかな気持ちもななしに対する愛おしさも全部、このキスで伝わればいいと真島は角度を変え何度も触れるだけの優しいキスを送り続けた。
『ん…ふぁ…ま、真島さんっ…』
「誰がドキッとしようが好きになろうが関係あらへん。俺が愛しとるのはこの先も永遠にななしだけや」
『…本当に?』
「俺が嘘ついたことあるか?」
『ん…ふふふ、ありません』
「せやろ?ななしは他人なんか気にしとらんと俺だけ気にしとったらええねん」
『なんですかそれ』
「ま、ななしが嫌っちゅうんやったら腕まくりはななしの前だけでしたるわ」
『ふふ、いいんですか?暑いですよ?』
「ななしが喜ぶんならなんでもええわ」
本質を知ろうともせず、見てくれだけに好意を寄せるキャストや他人になど塵ほども興味が無い。
むしろ好意を寄せられるのはいい迷惑である。
そんな有象無象を気にするよりも、今目の前で嬉しそうに笑っている恋人のななしを愛でている方がいい。
全てを受け入れてくれて、可愛くて、健気で、優しい。
そんなななしだけが腕まくりにドキッとしてくれればそれだけで十分だ。
そしてななしが嫌だと言うのならば、これから先誰の目にも腕まくりをした姿を晒すことは無いだろう。
『真島さんは優しすぎます。ふふ、でもそう言ってくれて嬉しい…』
「ななしは可愛ええな」
『あ、でも真島さんが暑くて仕方ない時とかは遠慮なく腕まくりしてくださいね?約束ですよ?』
「どうやろうな?」
『意味深ですね〜!』
今日をもって未来永劫ななしの前でしか腕まくりをしないと決意した真島。
ななしは真島がそんな決意を胸に刻みつけたなど露ほども知らず。
ニコニコと笑いながら逞しい腕の筋を触りながら楽しそうにしている。
この先もずっと一緒に生きるのだ。ななしはどこかできっと"他人の前で腕まくりをしない"というこの決意に気づき驚くのだろう。
『あの時の約束まだ守っているんですか?』とクスクス笑う恋人の姿が容易に想像出来て、真島もまた喉の奥で低くクスクスと笑っていた。
『そろそろ帰りましょうか』
「せやな」
真島はなにも知らないであろうななしの腰を抱き寄せる。
二人は蒸し暑くジメジメとした中体を密着させながらゆっくりとグランドを後にしたのだった。
真島さんの腕まくり…?あれ、あまり見たことないかも…ってなわけで思いついたネタ。
この頃はなかなか認められないけど、組長真島さん×ななしちゃんの頃になると着衣の方がエロいと認めているななしちゃん。
幹部会の時のワイシャツ腕まくりに萌えていたら可愛い。
『吾朗さん…直視できないんでワイシャツ脱いでください。腕まくりの殺傷能力えぐいです』
「ヒヒ!お前はこれが好きなんやろがい」
『…!す、好きですよ!?本当にエッチです!!』
「…ん?エッチ?したいんか?」
『ちーがーうー!良いから写真撮らせてください!』
「…昔はもう少し淑やかやったんやけどなぁ」
『撮りますよー!?』
「またんかい!決めポーズとってからにせぇ!」
こんな会話してそう笑
多分組長真島②に続くんでしょう!笑
『ふぅ〜これでOKかな!』
ななしはバインダーに挟まれているシートの全ての記入欄にチェックマークが書かれているかを確認したあと、ホールの電気を消し退出しながらおおきく伸びをした。
グランドも終業し残った後片付けや清掃を終わらせたななしはたった今ホール内の最終チェックを行っていた。
特に気になる箇所や汚れた箇所などもなく、今日の全ての業務が完了したのだ。
これで明日も滞りなくグランドの営業が出来ると満足気なななしはホールの大きな扉を閉めて未だに事務仕事と格闘しているであろう真島の元の向かおうと、スタッフルームを目指した。
『それにしても…暑い…』
今日はもう使用しない通路の電気を消して回りながらスタッフルームに向かっていたななしはじんわりと汗ばんでいる額に向けてバインダーで風を送る。
6月、季節は梅雨。
しかし今季の梅雨は空はどんよりとしているが雨は中々降らず、気温や湿度が高い日々が続いている。
更にじめじめとしているため蒸し暑く、体感温度はいつもより増し増しに感じられるものだった。
グランドで働いているななしもそんな暑さにいつもよりもクタクタだ。
営業時間にはクーラーの効いたホールとクーラー自体着いていない蒸し暑いキッチンの行き来ばかりしているので、気温の変化などで頭が痛んだり体がだるくなったりする。
梅雨であるためこの蒸し暑い日々や特有の疲労は回避不能なのだが、それでも快適に過ごせたらいいのになぁと思わずにはいられないななし。
今梅雨が訪れたばかりだが早く過ごしやすい秋がくればいいのにと、非現実的だが切実にそう思っている。
ななしはなおも顔をバインダーで仰ぎながら真島がいるであろうスタッフルームに着くと、仕事をしている彼を驚かさないようにゆっくりと扉を開いた。
『…お疲れ様です〜』
真剣に仕事をしている中で話しかけて集中力を途切れさせてしまっては良くないとななしはそっと扉を開き顔だけを覗かせた。
『…え!?』
普段通り邪魔にならないように来客用のソファに座って待っていようと体を滑り込ませ、机に向かっている真島を見ていると"ある事"に気が付きななしは驚き声を発してしまったのだ。
同時に持っていたバインダーが手の中からずり落ち、バタンッ!と鈍い音が響き渡る。
声と音に「ん?」と反応した真島は机から顔を起こすと、ななしを見つめながらゆっくりと立ち上がった。
真島が「落としたで?ななし?」と未だ固まったままのななしに落ちたバインダーを拾い渡してくる。
しかしそんな姿さえも普段とは違っていて、ななしは優しげに笑っている真島を見つめながら心臓を高鳴らせていた。
「ん?ななし?」
『……』
「どこ見とんのや?」
『…あ、あの…それ…』
「あー、腕まくりか?今日は暑かったし我慢出来んでん」
そう、ななしがみた普段とは違う姿とは腕まくりをした真島のこと。
タキシードを着崩すことはあってもグランド内でワイシャツ一枚になることはほとんどなく。
加えて腕まくりまでしている姿は初めて見るものだった。
絶対にはみ出ることの無い肌色の部分が今日はグランド内で惜しげも無く晒されており、普段びっしり着込んでいる真島とのギャップを感じてしまったななしは食い入るように腕を見つめていた。
捲られたワイシャツから見える腕は逞しく、浮き出た血管や筋肉はとても男らしい。
見れば見るほどドキドキが止まらず、心臓が口から飛び出してきそうだ。
「ななし?」
『え!?は、はい!何でしょう?』
「そないにじっとみられたら穴空いてまうで」
『す、すみません…腕まくりする真島さんがレアすぎて…』
「まぁ、あんますることないわな。せやけど腕なんて見慣れとるやろ?」
『み、見慣れているかもしれませんが…ワイシャツから少しだけ見えるのと全身が見えるのとでは全然違うんです』
「違うもんなんか?」
こう言っては変態だと思われかねないが、腕全体が見えるよりも腕まくりをしていて少しだけちらりと見える方がドキリとする。
勿論真島とは恋人であるため、彼の腕を見たことがあるのは事実だ。
しかし捲られた袖からスラリと伸びている腕の方が少しセクシーで、かっこいい。
流石にセクシーなんです、魅力的なんです。ドキドキするんです!とは声に出して伝えることは出来なかったななし。腕のかっこよさにあてられ顔を赤くしながら『まぁ、違うんです…』とゴニョゴニョと濁しながら返事をするしかなかった。
真島はあまり理解することが出来なかったのか、「よぉ、分からんな」と首を傾げている。
「ま、ななしが顔赤くなるまで喜んどんならええか。ほな俺はもう少し仕事あるさかいゆっくり休んどってな」
『は、はい!分かりました!』
真島はその色気と男らしさに戸惑っているななしの頭をポンポンと撫でると、拾ったバインダーを持ちながら先程まで座っていた机に戻っていく。
ななしはドキドキと高鳴る胸を抑えながら真島の後を追い、ソファに向かった。
顔が赤くなっていることも、かっこいいいと密かに喜んでいることも真島にはモロにバレていたことが恥ずかしくて、ななしはソファに腰を下ろすと一人小さく悶えた。
先程心の中で考えていたことまで筒抜けかもしれないと思うと気が気でない。
───…これじゃ変態ですって言っているようなもんじゃん!
腕全身をみるより捲られた袖から見える腕に興奮しときめいている。
とてもニッチな思考にななしは自分自身でも戸惑ってしまった。
───…普段はこうじゃないのに…きっと梅雨のジメジメのせいなんだ。
真島さんに引かれないといいなぁ…。
恋人であり自分には似合わないほど素敵な男性である真島。そんな彼に幻滅されるのだけはとても悲しい。
しかし今日をもってななしのマニアックな思考回路は彼にしっかりと伝わってしまった訳で。
真島がどのように思うかは分からなかったが、この変態思考を嫌悪してしまう可能性も否めない。
彼の前では慎ましくいたいいものだが、いざ本人を前にすると色々なことに魅了され頭の中がいっぱいいっぱいになってしまう。
今だって腕まくりのドキドキは継続中で、胸はこれでもかと早鐘を打っている。
もっと真島のかっこよさにあてられず仕事を手伝えるくらい心も体も大人になりたいと、ななしは人知れずため息をついた。
一方仕事が一区切りついた真島は、赤くなったり青ざめたりと忙しなさそうなななしを見つめていた。
自身の頬に手を当てながらああでもないこうでもないと感情豊かに何かを考えているななしがとても可愛らしい。
そんな恋人を眺めていると自然と顔が緩み口角が上がっていく。
真島はにやけた顔を隠すことなくゆっくりと立ち上ると、そのまま一喜一憂しているななしの隣に座った。
「どないしたんや?」と声をかけてやると、彼女は驚いたように肩を跳ねさせ大きな瞳で見上げてくる。
少し挙動不審な姿も小動物のようで可愛いと見つめ返していると、ななしはゆっくりと口を開いた。
『ま、真島さん…すみません』
「ん?何がや?謝るような事してへんやろ」
『い、いえ…本当に。アタシ変態ですみません…』
「変態…?」
『この腕まくりで喜んでしまって…すみません…』
ななしは真島の腕を指しそう言うとシュンとしなだれてしまった。
「なんでそないな事で謝んねん。別にええやんけ」
『い、いいんですか?腕まくりに喜んでも』
「逆に何がアカンのや?俺かてななしの細っこい可愛らしい腕が見えとったら嬉しいで?」
『ま、真島さんも嬉しいんですか?』
「嬉しいで」
『そ、そうなんですか…!良かったぁ』
シュンとしていたななしは安堵の表情を浮かべたあと、ふぅと息を付き胸を撫で下ろしていた。
彼女のことだ、腕まくりで喜んでいることが気恥しく感じられたのだろう。
真島とてななしのいつも見えない肌がちらりと見えたり晒されていたらそれはもう嬉しいし、興奮する。
そういった感情はなにも特別では無い、恋人同士なのだから当たり前に感じるものだと真島は思う。
ただ律儀なななしは変態だマニアックだと思いなやなんでしまったようだ。
「そういう不意に見えるもんにドキッとすんのはありがちや。なにも変態やなんて言わんでもええ」
『でも着ている時の方がドキッとしちゃうのってなんだかマニアックじゃなですか?』
「チラリズムにドキッとすんのは結構共通意識やと思うで」
『そういうものなんですか』
「多分な」
『なるほど…』
「ななし」
『はい!何でしょう?』
「ななしはこの腕にドキッとしてもうたんか?」
『ぅ、は、はい。この筋とかかっこいいですし…』
「ホンマ可愛ええやっちゃなぁ。これからも腕まくりしたるわ」
『……あ、でも…やっぱりいいです…』
「ん?なんでや?」
可愛らしい恋人を腕まくりした腕でしっかり抱きしめ密着しながら話していと、ななしは不意に首を横に振る。
恋人が喜んでくれるなら何度だって腕まくりしてやると意気込む真島だが、それはダメですと否定するななし。
ここまで嬉しいと顔を赤くし喜んでくれるのにどうしてダメなのか。真島はななしが否定する理由がわからず眉を顰める。
『だ、だって…』
「うん?」
『普段タキシードを着てる真島さんが急に腕まくりしてその姿をキャストさん達が見たら…絶対ときめいて好きになっちゃうもん』
真っ赤な顔を更に赤くさせモジモジとそう言うななし。
言葉の節々に隠れている独占欲と嫉妬。
まるで他の誰かに取られないように必死になっているようでとてもいじらしい。
ななしの真っ直ぐでひたすら純粋な好意を向けられるととても嬉しく。
擽ったいような、焦れったいような…ようは彼女を愛おしいと思う気持ちが湧き水のように溢れてきて、真島は堪らず傍にあった小さな顎を掬うと、己の唇をふっくらとした唇にそっと押し付けていた。
穏やかな気持ちもななしに対する愛おしさも全部、このキスで伝わればいいと真島は角度を変え何度も触れるだけの優しいキスを送り続けた。
『ん…ふぁ…ま、真島さんっ…』
「誰がドキッとしようが好きになろうが関係あらへん。俺が愛しとるのはこの先も永遠にななしだけや」
『…本当に?』
「俺が嘘ついたことあるか?」
『ん…ふふふ、ありません』
「せやろ?ななしは他人なんか気にしとらんと俺だけ気にしとったらええねん」
『なんですかそれ』
「ま、ななしが嫌っちゅうんやったら腕まくりはななしの前だけでしたるわ」
『ふふ、いいんですか?暑いですよ?』
「ななしが喜ぶんならなんでもええわ」
本質を知ろうともせず、見てくれだけに好意を寄せるキャストや他人になど塵ほども興味が無い。
むしろ好意を寄せられるのはいい迷惑である。
そんな有象無象を気にするよりも、今目の前で嬉しそうに笑っている恋人のななしを愛でている方がいい。
全てを受け入れてくれて、可愛くて、健気で、優しい。
そんなななしだけが腕まくりにドキッとしてくれればそれだけで十分だ。
そしてななしが嫌だと言うのならば、これから先誰の目にも腕まくりをした姿を晒すことは無いだろう。
『真島さんは優しすぎます。ふふ、でもそう言ってくれて嬉しい…』
「ななしは可愛ええな」
『あ、でも真島さんが暑くて仕方ない時とかは遠慮なく腕まくりしてくださいね?約束ですよ?』
「どうやろうな?」
『意味深ですね〜!』
今日をもって未来永劫ななしの前でしか腕まくりをしないと決意した真島。
ななしは真島がそんな決意を胸に刻みつけたなど露ほども知らず。
ニコニコと笑いながら逞しい腕の筋を触りながら楽しそうにしている。
この先もずっと一緒に生きるのだ。ななしはどこかできっと"他人の前で腕まくりをしない"というこの決意に気づき驚くのだろう。
『あの時の約束まだ守っているんですか?』とクスクス笑う恋人の姿が容易に想像出来て、真島もまた喉の奥で低くクスクスと笑っていた。
『そろそろ帰りましょうか』
「せやな」
真島はなにも知らないであろうななしの腰を抱き寄せる。
二人は蒸し暑くジメジメとした中体を密着させながらゆっくりとグランドを後にしたのだった。
真島さんの腕まくり…?あれ、あまり見たことないかも…ってなわけで思いついたネタ。
この頃はなかなか認められないけど、組長真島さん×ななしちゃんの頃になると着衣の方がエロいと認めているななしちゃん。
幹部会の時のワイシャツ腕まくりに萌えていたら可愛い。
『吾朗さん…直視できないんでワイシャツ脱いでください。腕まくりの殺傷能力えぐいです』
「ヒヒ!お前はこれが好きなんやろがい」
『…!す、好きですよ!?本当にエッチです!!』
「…ん?エッチ?したいんか?」
『ちーがーうー!良いから写真撮らせてください!』
「…昔はもう少し淑やかやったんやけどなぁ」
『撮りますよー!?』
「またんかい!決めポーズとってからにせぇ!」
こんな会話してそう笑
多分組長真島②に続くんでしょう!笑