小話集1
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(支配人+西谷/恋人/R15)
*0の時間枠ですがガラケーあります
*皆仲良しです
*ちょっと注意(モロ語有)
「ななしちゃん!」
『ひぇ!?』
グランドの営業が終わり一人ホール内の最終チェックに勤しんでいたななしは、自分一人しかいないであろうはずの空間でいきなり名を呼ばれ驚きのあまり大きく飛び跳ねた。
慌てて声の出処を探るように振り返るとそこには特徴的な臙脂色のジャケットを着ている男、近江連合の幹部でもある西谷誉の姿があったのだ。
「久々やの〜ななしちゃん!こないに遅くまで働いてホンマええ子やな〜」
『あ、えっと…な、なにかご要件が?真島さん呼んできましょうか?』
「真島くんに会いに来たのもあるんやけど、今日はないつも頑張っとるななしちゃんにお土産持ってきてん!」
『お、お土産??』
西谷はそう言うと右手に持っていた紙袋を少し持ち上げてななしに見せつけるように軽く揺らした。
ガサガサと紙袋の擦れる音が響くがそれだけでは何が入っているか分からず、ななしは首を傾げるばかり。
西谷の事は真島の知り合いであるし、たまにグランドにも訪れているため認知はしているものの、特に友人でもなければ親しい間柄でもない。
そんなほとんど他人の位置付けである西谷が何を思ったかわざわざお土産を持ってきたらしい。
ななしは彼の行動の意味が全く理解出来ずに神妙な面持ちで唸るしかない。
しかしなにをしているんだろうと訝しげなななしのことなどお構い無しに西谷は「ななしちゃんが喜びそうなもんや!」と紙袋をゴソゴソ漁り出した。
変なものだったらどうしようかと若干警戒しながらも、ななしは紙袋の中から何が出てくるのかを見つめた。
「リンゴジュースや!」
『り、リンゴジュース?』
西谷が中から取り出したのは瓶のリンゴジュースだった。
赤いラベルにみずみずしいリンゴが印刷されており、ロゴも手書き風でとても可愛らしい。
「ななしちゃんリンゴ好きやろ?せやからわざわざこれ買うてきてん!」
『アタシ…リンゴが好きって西谷さんに言ったことありましたっけ?』
「ま、細かいことはええやん!」
『……』
目の前にいる西谷は変なおじさんであると同時に鬼仁会の会長でもある。所謂極道だ。
そんな極道の西谷にかかればこの程度の個人情報など簡単に調べが着くのかもしれない。
教えたことがない情報を知られているというのはとても気持ちのいいものでは無いし、なんなら怖い。
ちょっと不気味だなぁとヘラヘラ笑っている西谷に不信感を抱きながらキッと見つめるも、当の本人はケロッとしている。
不審な人だと人知れずに深いため息をついていると西谷は「たっとらんと座ったらええやん!」と隣に座れとばかりにソファをバンバンと叩いてくる。
にこにことしているが西谷の感情が一切読めず。
何かされたら怖いので大人しく言うことを聞いて速やかにこの場を退散しようとななしは言われた通りに彼の隣に腰を下ろした。
腰を下ろすと直ぐに瓶の蓋を開き、そのまま差し出してきた西谷。
瓶は細身でひとりでも十分飲み切れるサイズではあったが本当に飲んでみても大丈夫なのか?と疑ってしまいなかなか受け取れない。
「これな甘いって有名なんやで〜。仕事終わりで疲れた体に染みるんやないか?ほれ、飲んでみぃ」
『…』
「お?警戒しとるんか?安心してや真島くんの恋人に手ぇなんか出さへんて!」
『本当ですか?へんなもの入ってません?』
「ズケズケ言うてくる素直なななしちゃんも嫌いやないで!もちろんただのジュースや」
『…そうですか…ジュースに罪は無いのでちょっとだけ頂きますね』
「ちょっとと言わんと全部飲んでええんやで!」
西谷が差し出す瓶を受け取ったななしはゆっくりと飲み口に唇を引っつけた。
そのまま瓶をかたむけて少しだけリンゴジュースを流し込む。
『…ん〜。確かに甘いですね、美味しいです』
「せやろ〜?飲みやすいって女の子の間で流行っとんねん」
『へぇ、流行ってるんですか。聞いたことないですけど』
「キャバレーで働いとるのに聞いたことないん?ななしちゃんはこういうのあんまり興味無いねんな」
『キャバレーって言ってもボーイですからね』
「ボーイならなおのこと知っとりそうなもんやけどな〜」
『そうなんですかね?アタシは全然知りませんけど』
「ほな今日ひとつ賢くなったっちゅう事やな」
『なんですかそれ』
西谷からもらったリンゴジュースは彼の言うようにとても甘く少し酸味があった。
癖もなくさっぱりとした味わいであり、仕事終わりの疲れた体を爽やかに癒してくれるようだ。
思っていたよりも普通で美味しいリンゴジュース。
本当に何かを混入させたわけではなさそうであったため、ななしは乾いた喉を潤すようにもう一度瓶を傾けて一口リンゴジュースを飲み込んだ。
『美味しい…ん…ん?』
再び口の中に広がった旨味を堪能しゆっくり飲み込むと、先程はなんとも思わなかったが喉の奥がじんわりと熱く感じられたのだ。
『ん…あれ…これって…』
「どないしたんや?」
『西谷さんこれ…お酒?』
「なんやななしちゃん気づいとらんだんか?」
『え?だってジュースって言ってたから』
「ジュースみたいに甘いお酒っちゅう事やん〜」
『そ、それならそう言ってくださいよ…あれ…』
「ななしちゃん?」
喉の奥にじんわりとした熱さを感じていると急に猛烈な睡魔が訪れ、瞼が自然と降りてくる。
『ふわぁ』と大きな欠伸を零してしまい、アルコールから来るであろう強烈な睡魔に抗うことが出来ずゆっくりと体をソファに沈めてしまった。
「ななしちゃん、まさかめちゃくちゃ下戸なんか?」
『げ、げこ?』
「酒に極端に弱いっちゅう事や」
『そーかもです…』
「あ、この子もうアカンな」
『……んー…』
「ななしちゃーん!おーい!」
先程までハッキリとしていた意識は段々と遠のいていき、心地よい微睡みの中西谷の少し慌てたような声だけが脳に木霊した。
*******
これは想定外だ。
西谷はソファに横たわり眠ってしまったななしを見つめながらどうしたものかと頭を悩ませていた。
このままではなかなか帰ってこないななしに痺れを切らし真島がホールにやってくるのは時間の問題。
故意ではなくてもななしを眠らせてしまったことに真島が腹を立てる未来が易々と想像できた。
真島はななしにこと関しての沸点がそれはもう低い。
きっと本当にいたわるつもりで晩酌をしに来ただけだと伝えても、眠ってしまったななしを見た際には般若の如く激高するのだろう。
「ま、えぇか!」
西谷にとって真島と喧嘩できるというのはなによりも嬉しいことである。
彼と一度拳を交えた際今までにない昂りを感じ、生きていた中でそれはもう一番気持ちがいい喧嘩が出来た。
もう一度そんな夢のような喧嘩がしたいと常々思っていた西谷だがまさに今ななしが眠ってしまったこの瞬間。
もう一度あの滾るような喧嘩をする千載一遇の大チャンスでは無いだろうか。
「ななしちゃんには悪いことしてもうたけど…この機会使わない手はないで」
西谷は酒でダウンしすやすやと眠ってしまったななしに「おおきにな〜」と呟きながら、ふわふわとした髪の毛を撫で回した。
髪が乱れるくらいに撫で回されているななしだが、眠ったまま起きることはなく。
たったアルコール5パーセントのリンゴリキュールを二口飲んで酷く酔っ払っているらしい。
「ホンマに弱いんやな〜」
ここまで酒に弱い子も中々いないのではないか、と西谷は眠っているななしの事をじっくりと眺めた。
西谷が周りに置いている女性の殆どは所謂水商売の子がほとんどで。酒に触れ合う機会が多い女性ばかりであるため、ななしのように酒を二口飲んで撃沈という子は滅多に見ることが無い。
「…真島くんが夢中になんのも分からんでもないわ」
キャバレーで働いてはいるものの明るく無垢であるななしは、西谷が出会ったきたどの女性たちとも違って唯一無二の存在感がある。
酒に弱いことも含めてとても庇護欲を刺激する女性だ。
今も無防備にすやすやと眠る姿は西谷の色々な欲をを掻き立ててくる。
真島の恋人でなければすぐに唾をつけ自分の物にしたのだろうなと、眠っているななしのことをにやにや見つめながら西谷はそんなことを思う。
『…んっ…真島さん…』
「……」
酒に酔い赤く染ったふかふかの頬にそっと触れた西谷。思っていたより遥かに柔らかくよく伸びる頬を西谷はモニモニと堪能しているとななしはその手が真島のものだと勘違いしたのか、眠りながら擦り寄ってくる。
───…可愛ええやんけっ!!
頬ずりする様はきままに擦り寄る猫のようで、小さくふわふわとしたウサギのようで。
まるで小動物を擬人化したようなななしの可愛らしい寝顔や仕草に堪らず下半身を大きくさせてしまった西谷。
「こんなに可愛ええとつい手ぇ出したなるな〜」
恋人がいると分かっていても可愛い女の子に反応してしまうのは悲しきかな男の性というもので。
西谷もななしが真島の恋人だと理解してはいたが、その幼気な姿に中心部をしっかりと反応させてしまった。
どれもこれも小さくて可愛いななしのせいだ、と責任転嫁をしながら西谷は膝立ちになると大きくテントを作っている下半身を眠っている彼女の頬へと押し付けた。
「た、たまらん!!」
手で触れた時にも感じたがななしの頬はとても柔らかい。
下着やズボン越しでもその柔らかさはしっかりと西谷に伝わり、思わず意地の悪い笑が零れてしまう。
「喧嘩もええけど…まずはこの子から味見したろか…」
『んぅ…』
グニグニと勃起した逸物でななしのふっくらとした頬を押し潰す西谷。
眠る彼女は寝苦しいのか小さく呻いているがそんな苦しそうな声すらも今の西谷には興奮材料にしかならない。
このまま取り出して直に擦り付けたらどれだけ気持ちがいいか、西谷は恍惚の表情を浮かべながらゆっくりとスラックスのチャックに手を掛けた。
「ほれほれ、起きんとおじさんのチンコ顔についてまうで〜」と、腰を揺する西谷。
淡い快感とななしの寝顔に興奮しきっていた西谷は周りの事などお構い無しに変態行為に耽っていたため、ホールの両開きの扉が鈍く軋む音を立てながら開いたことには気が付かなかった。
その扉から早歩きでやって来る真島の存在にも勿論気が付かない。
「あぁっ、もう我慢できひん!」
「おどれは…なにをしとんねん」
「あ?あ、真島くんや!久々やっふごっ!!」
今まさに下着から逸物を取り出そうとしていた最中、まるで地を這うような低く威圧感のある声がホールに響いた。
紛れもなく真島のものであり、西谷は意気揚々と顔を起こしそこに立っているであろう彼を見あげたのだが。
隻眼と目が合う前に煌びやかな革靴の銀の先端が西谷の顎にクリーンヒットし遥後方にへと吹き飛ばされてしまったのだ。
微かな痛みに顎をおさえながらも本来の目的であった真島の登場に口角は持ち上がり、にやける顔を抑えることが出来なかった西谷。
真島は眠るななしを軽々と横抱きにした後、転がる西谷を蔑むように見下ろし「いてこますぞ」と、抑揚のない声で言い放った。
「ええで!ワシと死合おうや!!」
「うっさいわ。なんでななしが寝とんのか説明せぇや」
「ななしちゃんな〜。酒飲んで潰れてもうたんや。ホンマ弱いんやな〜」
「なんでそんなもん飲ませとんねん!」
「そらななしちゃんと晩酌しようと思ったからや」
「意味不明すぎるわ。気色悪い」
「ま、なんでもええやん。はよ喧嘩せな朝になってまうで真島くん」
「あ?おどれに構っとる暇なんか無いねん。さっさと消えろや」
「ええんか?真島くん。ワシなななしちゃんの顔にチンコくっつけた男やで?ここで喧嘩せないつ喧嘩すんねん」
「…………」
真島はななしを器用に抱えたまま右手で胸ポケットを漁ると、おもむろに携帯を取り出した。
「お?なにしとん真島くん」
「………」
片手で携帯を操作しそのまま耳元に密着させた真島。どうやらどこかに電話をかけているらしい。
この状況で一体何処に電話をかけているのかと西谷は真島の行動を眺めていると、すぐに繋がったのか「もしもし」と彼が口を動かした。
「おう、グランドっちゅうキャバレーや。臙脂色のジャケット着たおっさんが不法侵入しとんねん。しかも従業員に猥褻行為もしとる、はよ来てしょっぴいてくれんか?」
「真島くん、サツはずるいで〜!」
真島が電話をかけたのは警察だったようだ。
ななしが関わっているため怒りに任せて喧嘩をしてくるとばかり思っていたがここまで冷静に対処してくるとは想像すらしていなかった。
携帯をしまい「はよ消えんとしょっぴかれんで」と、隻眼を細めてそう言う真島い警察では少し分が悪いと西谷は渋々立ち上がる。
「真島くんがそないに理性的に対処するとは思わんだわ」
「おっさんに構っとる暇は無いねん。それに起こしてもうたら可哀想やろ。今日もようさん働いてくれとんのや」
「…喧嘩よりななしちゃんか〜」
腕の中ですやすや眠るななしを慈しむように見つめる真島。
自分に向ける蔑む視線とはあまりにも違う。
本当に同一人物かと疑いたくなるほどだ。
ななしをダシにして喧嘩をしようと試みた西谷の作戦は失敗に終わってしまった。
もう少し粘れば喧嘩に発展した可能性もあるが警察がここに来てしまっては色々と面倒くさいため、今回はこのまま引きさがろうと西谷はゆっくりと歩き正面玄関の方へと向かった。
「あ、せや。このリンゴジュースななしちゃんへのプレゼントや。二人で飲んでな 〜」
「うっさい、はよ消えろ」
「ほな、また来んで」
「もう来んなや。おどれは出禁や」
「次は三人で飲もうや」
「飲む分けないやろ!一人で飲んどけ!」
中指を立てる真島ににっこり手を振りながら西谷は警察が来る前にそそくさとグランドを後にした。
「次は寿司でも買うてこうかの〜」
(ん…)
(ななし)
(あれ、アタシ…西谷さんと話してて)
(もうあのおっさんと喋んの禁止や)
(えっーと…?あたたた、真島さん?頬っぺたそんなにゴシゴシしないでくださいよぅ)
(……今から一緒に風呂入んで)
(ぇぇえ!?)
西谷さんと絡ませたかった。
ただ西谷さん視点で書くのむずくて泣いた( ˇωˇ )
ななしちゃんはこの頃からお酒に弱い。そして今後もずっと弱い。
*0の時間枠ですがガラケーあります
*皆仲良しです
*ちょっと注意(モロ語有)
「ななしちゃん!」
『ひぇ!?』
グランドの営業が終わり一人ホール内の最終チェックに勤しんでいたななしは、自分一人しかいないであろうはずの空間でいきなり名を呼ばれ驚きのあまり大きく飛び跳ねた。
慌てて声の出処を探るように振り返るとそこには特徴的な臙脂色のジャケットを着ている男、近江連合の幹部でもある西谷誉の姿があったのだ。
「久々やの〜ななしちゃん!こないに遅くまで働いてホンマええ子やな〜」
『あ、えっと…な、なにかご要件が?真島さん呼んできましょうか?』
「真島くんに会いに来たのもあるんやけど、今日はないつも頑張っとるななしちゃんにお土産持ってきてん!」
『お、お土産??』
西谷はそう言うと右手に持っていた紙袋を少し持ち上げてななしに見せつけるように軽く揺らした。
ガサガサと紙袋の擦れる音が響くがそれだけでは何が入っているか分からず、ななしは首を傾げるばかり。
西谷の事は真島の知り合いであるし、たまにグランドにも訪れているため認知はしているものの、特に友人でもなければ親しい間柄でもない。
そんなほとんど他人の位置付けである西谷が何を思ったかわざわざお土産を持ってきたらしい。
ななしは彼の行動の意味が全く理解出来ずに神妙な面持ちで唸るしかない。
しかしなにをしているんだろうと訝しげなななしのことなどお構い無しに西谷は「ななしちゃんが喜びそうなもんや!」と紙袋をゴソゴソ漁り出した。
変なものだったらどうしようかと若干警戒しながらも、ななしは紙袋の中から何が出てくるのかを見つめた。
「リンゴジュースや!」
『り、リンゴジュース?』
西谷が中から取り出したのは瓶のリンゴジュースだった。
赤いラベルにみずみずしいリンゴが印刷されており、ロゴも手書き風でとても可愛らしい。
「ななしちゃんリンゴ好きやろ?せやからわざわざこれ買うてきてん!」
『アタシ…リンゴが好きって西谷さんに言ったことありましたっけ?』
「ま、細かいことはええやん!」
『……』
目の前にいる西谷は変なおじさんであると同時に鬼仁会の会長でもある。所謂極道だ。
そんな極道の西谷にかかればこの程度の個人情報など簡単に調べが着くのかもしれない。
教えたことがない情報を知られているというのはとても気持ちのいいものでは無いし、なんなら怖い。
ちょっと不気味だなぁとヘラヘラ笑っている西谷に不信感を抱きながらキッと見つめるも、当の本人はケロッとしている。
不審な人だと人知れずに深いため息をついていると西谷は「たっとらんと座ったらええやん!」と隣に座れとばかりにソファをバンバンと叩いてくる。
にこにことしているが西谷の感情が一切読めず。
何かされたら怖いので大人しく言うことを聞いて速やかにこの場を退散しようとななしは言われた通りに彼の隣に腰を下ろした。
腰を下ろすと直ぐに瓶の蓋を開き、そのまま差し出してきた西谷。
瓶は細身でひとりでも十分飲み切れるサイズではあったが本当に飲んでみても大丈夫なのか?と疑ってしまいなかなか受け取れない。
「これな甘いって有名なんやで〜。仕事終わりで疲れた体に染みるんやないか?ほれ、飲んでみぃ」
『…』
「お?警戒しとるんか?安心してや真島くんの恋人に手ぇなんか出さへんて!」
『本当ですか?へんなもの入ってません?』
「ズケズケ言うてくる素直なななしちゃんも嫌いやないで!もちろんただのジュースや」
『…そうですか…ジュースに罪は無いのでちょっとだけ頂きますね』
「ちょっとと言わんと全部飲んでええんやで!」
西谷が差し出す瓶を受け取ったななしはゆっくりと飲み口に唇を引っつけた。
そのまま瓶をかたむけて少しだけリンゴジュースを流し込む。
『…ん〜。確かに甘いですね、美味しいです』
「せやろ〜?飲みやすいって女の子の間で流行っとんねん」
『へぇ、流行ってるんですか。聞いたことないですけど』
「キャバレーで働いとるのに聞いたことないん?ななしちゃんはこういうのあんまり興味無いねんな」
『キャバレーって言ってもボーイですからね』
「ボーイならなおのこと知っとりそうなもんやけどな〜」
『そうなんですかね?アタシは全然知りませんけど』
「ほな今日ひとつ賢くなったっちゅう事やな」
『なんですかそれ』
西谷からもらったリンゴジュースは彼の言うようにとても甘く少し酸味があった。
癖もなくさっぱりとした味わいであり、仕事終わりの疲れた体を爽やかに癒してくれるようだ。
思っていたよりも普通で美味しいリンゴジュース。
本当に何かを混入させたわけではなさそうであったため、ななしは乾いた喉を潤すようにもう一度瓶を傾けて一口リンゴジュースを飲み込んだ。
『美味しい…ん…ん?』
再び口の中に広がった旨味を堪能しゆっくり飲み込むと、先程はなんとも思わなかったが喉の奥がじんわりと熱く感じられたのだ。
『ん…あれ…これって…』
「どないしたんや?」
『西谷さんこれ…お酒?』
「なんやななしちゃん気づいとらんだんか?」
『え?だってジュースって言ってたから』
「ジュースみたいに甘いお酒っちゅう事やん〜」
『そ、それならそう言ってくださいよ…あれ…』
「ななしちゃん?」
喉の奥にじんわりとした熱さを感じていると急に猛烈な睡魔が訪れ、瞼が自然と降りてくる。
『ふわぁ』と大きな欠伸を零してしまい、アルコールから来るであろう強烈な睡魔に抗うことが出来ずゆっくりと体をソファに沈めてしまった。
「ななしちゃん、まさかめちゃくちゃ下戸なんか?」
『げ、げこ?』
「酒に極端に弱いっちゅう事や」
『そーかもです…』
「あ、この子もうアカンな」
『……んー…』
「ななしちゃーん!おーい!」
先程までハッキリとしていた意識は段々と遠のいていき、心地よい微睡みの中西谷の少し慌てたような声だけが脳に木霊した。
*******
これは想定外だ。
西谷はソファに横たわり眠ってしまったななしを見つめながらどうしたものかと頭を悩ませていた。
このままではなかなか帰ってこないななしに痺れを切らし真島がホールにやってくるのは時間の問題。
故意ではなくてもななしを眠らせてしまったことに真島が腹を立てる未来が易々と想像できた。
真島はななしにこと関しての沸点がそれはもう低い。
きっと本当にいたわるつもりで晩酌をしに来ただけだと伝えても、眠ってしまったななしを見た際には般若の如く激高するのだろう。
「ま、えぇか!」
西谷にとって真島と喧嘩できるというのはなによりも嬉しいことである。
彼と一度拳を交えた際今までにない昂りを感じ、生きていた中でそれはもう一番気持ちがいい喧嘩が出来た。
もう一度そんな夢のような喧嘩がしたいと常々思っていた西谷だがまさに今ななしが眠ってしまったこの瞬間。
もう一度あの滾るような喧嘩をする千載一遇の大チャンスでは無いだろうか。
「ななしちゃんには悪いことしてもうたけど…この機会使わない手はないで」
西谷は酒でダウンしすやすやと眠ってしまったななしに「おおきにな〜」と呟きながら、ふわふわとした髪の毛を撫で回した。
髪が乱れるくらいに撫で回されているななしだが、眠ったまま起きることはなく。
たったアルコール5パーセントのリンゴリキュールを二口飲んで酷く酔っ払っているらしい。
「ホンマに弱いんやな〜」
ここまで酒に弱い子も中々いないのではないか、と西谷は眠っているななしの事をじっくりと眺めた。
西谷が周りに置いている女性の殆どは所謂水商売の子がほとんどで。酒に触れ合う機会が多い女性ばかりであるため、ななしのように酒を二口飲んで撃沈という子は滅多に見ることが無い。
「…真島くんが夢中になんのも分からんでもないわ」
キャバレーで働いてはいるものの明るく無垢であるななしは、西谷が出会ったきたどの女性たちとも違って唯一無二の存在感がある。
酒に弱いことも含めてとても庇護欲を刺激する女性だ。
今も無防備にすやすやと眠る姿は西谷の色々な欲をを掻き立ててくる。
真島の恋人でなければすぐに唾をつけ自分の物にしたのだろうなと、眠っているななしのことをにやにや見つめながら西谷はそんなことを思う。
『…んっ…真島さん…』
「……」
酒に酔い赤く染ったふかふかの頬にそっと触れた西谷。思っていたより遥かに柔らかくよく伸びる頬を西谷はモニモニと堪能しているとななしはその手が真島のものだと勘違いしたのか、眠りながら擦り寄ってくる。
───…可愛ええやんけっ!!
頬ずりする様はきままに擦り寄る猫のようで、小さくふわふわとしたウサギのようで。
まるで小動物を擬人化したようなななしの可愛らしい寝顔や仕草に堪らず下半身を大きくさせてしまった西谷。
「こんなに可愛ええとつい手ぇ出したなるな〜」
恋人がいると分かっていても可愛い女の子に反応してしまうのは悲しきかな男の性というもので。
西谷もななしが真島の恋人だと理解してはいたが、その幼気な姿に中心部をしっかりと反応させてしまった。
どれもこれも小さくて可愛いななしのせいだ、と責任転嫁をしながら西谷は膝立ちになると大きくテントを作っている下半身を眠っている彼女の頬へと押し付けた。
「た、たまらん!!」
手で触れた時にも感じたがななしの頬はとても柔らかい。
下着やズボン越しでもその柔らかさはしっかりと西谷に伝わり、思わず意地の悪い笑が零れてしまう。
「喧嘩もええけど…まずはこの子から味見したろか…」
『んぅ…』
グニグニと勃起した逸物でななしのふっくらとした頬を押し潰す西谷。
眠る彼女は寝苦しいのか小さく呻いているがそんな苦しそうな声すらも今の西谷には興奮材料にしかならない。
このまま取り出して直に擦り付けたらどれだけ気持ちがいいか、西谷は恍惚の表情を浮かべながらゆっくりとスラックスのチャックに手を掛けた。
「ほれほれ、起きんとおじさんのチンコ顔についてまうで〜」と、腰を揺する西谷。
淡い快感とななしの寝顔に興奮しきっていた西谷は周りの事などお構い無しに変態行為に耽っていたため、ホールの両開きの扉が鈍く軋む音を立てながら開いたことには気が付かなかった。
その扉から早歩きでやって来る真島の存在にも勿論気が付かない。
「あぁっ、もう我慢できひん!」
「おどれは…なにをしとんねん」
「あ?あ、真島くんや!久々やっふごっ!!」
今まさに下着から逸物を取り出そうとしていた最中、まるで地を這うような低く威圧感のある声がホールに響いた。
紛れもなく真島のものであり、西谷は意気揚々と顔を起こしそこに立っているであろう彼を見あげたのだが。
隻眼と目が合う前に煌びやかな革靴の銀の先端が西谷の顎にクリーンヒットし遥後方にへと吹き飛ばされてしまったのだ。
微かな痛みに顎をおさえながらも本来の目的であった真島の登場に口角は持ち上がり、にやける顔を抑えることが出来なかった西谷。
真島は眠るななしを軽々と横抱きにした後、転がる西谷を蔑むように見下ろし「いてこますぞ」と、抑揚のない声で言い放った。
「ええで!ワシと死合おうや!!」
「うっさいわ。なんでななしが寝とんのか説明せぇや」
「ななしちゃんな〜。酒飲んで潰れてもうたんや。ホンマ弱いんやな〜」
「なんでそんなもん飲ませとんねん!」
「そらななしちゃんと晩酌しようと思ったからや」
「意味不明すぎるわ。気色悪い」
「ま、なんでもええやん。はよ喧嘩せな朝になってまうで真島くん」
「あ?おどれに構っとる暇なんか無いねん。さっさと消えろや」
「ええんか?真島くん。ワシなななしちゃんの顔にチンコくっつけた男やで?ここで喧嘩せないつ喧嘩すんねん」
「…………」
真島はななしを器用に抱えたまま右手で胸ポケットを漁ると、おもむろに携帯を取り出した。
「お?なにしとん真島くん」
「………」
片手で携帯を操作しそのまま耳元に密着させた真島。どうやらどこかに電話をかけているらしい。
この状況で一体何処に電話をかけているのかと西谷は真島の行動を眺めていると、すぐに繋がったのか「もしもし」と彼が口を動かした。
「おう、グランドっちゅうキャバレーや。臙脂色のジャケット着たおっさんが不法侵入しとんねん。しかも従業員に猥褻行為もしとる、はよ来てしょっぴいてくれんか?」
「真島くん、サツはずるいで〜!」
真島が電話をかけたのは警察だったようだ。
ななしが関わっているため怒りに任せて喧嘩をしてくるとばかり思っていたがここまで冷静に対処してくるとは想像すらしていなかった。
携帯をしまい「はよ消えんとしょっぴかれんで」と、隻眼を細めてそう言う真島い警察では少し分が悪いと西谷は渋々立ち上がる。
「真島くんがそないに理性的に対処するとは思わんだわ」
「おっさんに構っとる暇は無いねん。それに起こしてもうたら可哀想やろ。今日もようさん働いてくれとんのや」
「…喧嘩よりななしちゃんか〜」
腕の中ですやすや眠るななしを慈しむように見つめる真島。
自分に向ける蔑む視線とはあまりにも違う。
本当に同一人物かと疑いたくなるほどだ。
ななしをダシにして喧嘩をしようと試みた西谷の作戦は失敗に終わってしまった。
もう少し粘れば喧嘩に発展した可能性もあるが警察がここに来てしまっては色々と面倒くさいため、今回はこのまま引きさがろうと西谷はゆっくりと歩き正面玄関の方へと向かった。
「あ、せや。このリンゴジュースななしちゃんへのプレゼントや。二人で飲んでな 〜」
「うっさい、はよ消えろ」
「ほな、また来んで」
「もう来んなや。おどれは出禁や」
「次は三人で飲もうや」
「飲む分けないやろ!一人で飲んどけ!」
中指を立てる真島ににっこり手を振りながら西谷は警察が来る前にそそくさとグランドを後にした。
「次は寿司でも買うてこうかの〜」
(ん…)
(ななし)
(あれ、アタシ…西谷さんと話してて)
(もうあのおっさんと喋んの禁止や)
(えっーと…?あたたた、真島さん?頬っぺたそんなにゴシゴシしないでくださいよぅ)
(……今から一緒に風呂入んで)
(ぇぇえ!?)
西谷さんと絡ませたかった。
ただ西谷さん視点で書くのむずくて泣いた( ˇωˇ )
ななしちゃんはこの頃からお酒に弱い。そして今後もずっと弱い。