小話集1
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(真島/恋人)
『吾朗さんが羨ましいです…』
「なんやねん藪から棒に」
仕事が終わり真島組の事務所に来ていたななし唐突に真島に向かいそんな事を呟いた。
組の仕事をぼんやり進めていた真島は急にそう言ったななしに向き直るように机から顔を起こす。
ソファに座ったままのななしにキラキラと羨望の眼差しを向けられ、一体何がそんなに羨ましいのかと少し考えてしまう。
…仕事が羨ましい?いや、そんなことはありえない。では何がそこまで羨ましいのか。
真島は未だにこちらに視線を寄越すななしに「何がやねん」と、そう問うた。
『ん〜、それはですね…』
「おう、なんや。言うてみ」
ななしは問いかけに頷きながら立ち上がると、ゆっくりと真島の座っている机の方へ歩いてくる。
『吾朗さんに出会った頃からずっと思ってたんですよ』
すぐ側までやってきたななしはそのまま立ち止まり、座っている真島の真っ黒な髪に優しく触れ『この真っ直ぐな髪の毛羨ましいって』とそう言ったのだ。
彼女の羨望の視線の先にはどうやら自分の髪の毛が写っていたらしい。
しかし、ようやくななしが羨ましいと思っている部分が分かったはいいが、何故自分の髪の毛が?と真島には彼女が羨ましがる理由がまるで分からない。
「髪ぃ?そないなもんが羨ましいんか?別にハゲとる訳でもないのに」
『ふふっハゲって…そういう事じゃないんです。吾朗さんの髪って結構柔らかいんだけど真っ直ぐなんですよ〜!』
「確かに真っ直ぐかもしれへんな」
『アタシはくせっ毛だし、吾郎さんのストレートな髪が本当に羨ましいんです』
「なるほどのぉ」
『普通って髪が柔らかいと結構くせっ毛になりがちなのに…こんなにストレートなんだもん。本当に理想の髪質です』
なおも髪を弄りながら羨ましい、羨ましいと言うななし。
そんなななしの髪を見てみるとくせっ毛と言うだけあり、朝長時間セットしていた髪の端が少しだけくるりと輪をかいていた。
真島は朝にセットしてから夜まで髪が崩れるということはあまりない。ガチガチに固めている訳ではなく、やはりななしの言う通り髪がストレートである為だろう。
一方ななしは朝どれだけ時間をかけ念入りに髪を整えても、夕方事務所に来る頃には若干跳ね出している。
最近は梅雨入りし雨ばかりのジトジトとした気候のため余計にだ。
『ずるいです〜。アタシの髪と交換してください〜』とななしは未だに真島の直毛を触りながらぶつぶつと独り言のように小さく呟いている。
「ヒヒッ、こんなええもん持っとんや。俺の羨ましがらんでもええやんけ」
『ええもんですか?この湿気に激弱な髪』
「おう、俺からしてみればとんでもなくええもんやで。こっち来いやななし」
『わわっ、えっと吾朗さん?』
立ちっぱなしで髪に触れていたななしの細い手首を引き、己の膝の上に座らせた。
いきなり腕を引かれ驚いたように目を開いたななしだったが、その後はどこか嬉しそうに『びっくりしました』と小さく笑っている。
ななしの小さく笑う振動に愛おしさを感じながら、真島は膝の上に座っている彼女の髪をひと房掴んだ。そのまま革手袋をした手のひらに髪を載せ、親指の腹で優しく撫でつけた。
革手袋をしていてもななしの髪がどれだけ柔らかいかよく分かる。
くせっ毛だからとななし自身嫌がってはいるが、真島からすると細くしなやかで、光沢ある美しい髪に思えた。柔らかく揺れ動く跳ねた毛先まで光を反射するようにキラキラと輝いていて、まるでななしのように愛らしいと常々そう感じている。
今も手に乗る彼女の髪は事務所の照明に照らされてツヤツヤとまるで宝石のように綺麗に輝いて見えた。
「ほんまやわかいわ。ななしが嫌がる意味が分からん」
『髪跳ねるのは皆嫌ですよぅ』
「あ?飛び出しとんのがかわええんやろがい」
『え〜??一箇所だけ飛び出してるとかっこ悪いですよ。吾朗さんみたいにぴしっ!ってますぐな方がいいと思います』
「俺はこれがええんや、俺みたいやと気持ちよぉないねん」
『んっ』
真島は両手の革手袋を外し机に投げ捨てると、膝に乗るななしの柔らかい髪を指先で解かすように動かした。
肌に触れる髪の滑らかさに、やはりこの髪が一番ななしらしいとそう思う。
跳ねる髪を手櫛で治すように何度も何度も撫で付けていると、甘やかな心地よい香りが真島の鼻を擽る。
シャンプーやリンスの香りか、はたまたななし自身の香りか。
きっとどちらも正しいのだろう。
この花のように甘い香りは真島をうっとりさせるほど心地が良いものだった。
柔らかくて、ふわふわで、いい香りで、ツヤツヤで。非の打ち所なんて全く無いように思えるし、ずっとこのままでいて欲しいものだとも思う。
『ふふ、擽ったい』
「はぁ、お前は髪の毛からつま先まで全部甘いんやろなぁ」
『ふふっ、どういう意味ですか』
「言葉通りや。羨ましがらんと自分のもん大事にしたれ」
『……吾朗さんてアタシにとっても甘々ですよね』
「せや、アマアマや」
『自覚有りですか?』
「多分な」
『もう、アタシが吾朗さん無しじゃ生きて行けなくなるじゃないですか!』
「アカンのか?」
『あ、アカンくないですけど…』
「ほな何の問題もないやんけ」
『た、確かに…?』
「ヒヒッ!アホな所も好いとんで」
『褒められているきがしないですけど?』
「褒めとる。ななしも、ななしの髪もな」
『ふふ、そっかぁ』
髪を撫でている真島の手にななしの手が重ねられた。
自然と絡まる指先は気持ちが連動しているかのようにお互いにとても熱い。
『じゃ、アタシ少しだけこの髪の毛のこと好きになります。吾朗さんが優しいから』
「おう、そうしたれ。こないに可愛ええ髪を嫌いなんて可哀想やしな」
『ふふ、でももう少し跳ねなければいいんですけどね』
「跳ねとんのもいい意味でななしらしいで」
『そうだといいんですけど』
「ほな、そろそろ飯でも行くか?」
『そうですね!お腹すきました』
「何食いたいねん」
『んふふふ、お寿司食べたいです、蒸し暑い日はさっぱり系で』
「ほな決まりやなななし」
『っん』
膝に乗っているななしの後頭部をぐっと己に引き寄せ、ニコニコと笑っている唇に触れるだけのキスをした真島。
その後二人で椅子から立ち上がり、外食に行くために組長室の扉を開いた。
事務所を出ると外は少しだけ蒸し暑い。幸いなことに雨は降っておらず、そよそよと吹いている風は仄かにひんやりとしている。
真島は風に吹かれて揺蕩うななしの微かに跳ねた和毛 を愛おしそうに撫でた後、ゆっくりと彼女の腰を抱き寄せたのだった。
『今の季節は何が旬でしょう?』
「カンパチとかやな。他は鯵とかアナゴとかイワシもあんで」
『いいですね〜。お腹すいてきました〜』
「ヒヒッ!ようさん食べや」
『は〜い!』
Atgk
梅雨は天敵。
真島さんは支配人の頃からサラサラストレート。
『吾朗さんが羨ましいです…』
「なんやねん藪から棒に」
仕事が終わり真島組の事務所に来ていたななし唐突に真島に向かいそんな事を呟いた。
組の仕事をぼんやり進めていた真島は急にそう言ったななしに向き直るように机から顔を起こす。
ソファに座ったままのななしにキラキラと羨望の眼差しを向けられ、一体何がそんなに羨ましいのかと少し考えてしまう。
…仕事が羨ましい?いや、そんなことはありえない。では何がそこまで羨ましいのか。
真島は未だにこちらに視線を寄越すななしに「何がやねん」と、そう問うた。
『ん〜、それはですね…』
「おう、なんや。言うてみ」
ななしは問いかけに頷きながら立ち上がると、ゆっくりと真島の座っている机の方へ歩いてくる。
『吾朗さんに出会った頃からずっと思ってたんですよ』
すぐ側までやってきたななしはそのまま立ち止まり、座っている真島の真っ黒な髪に優しく触れ『この真っ直ぐな髪の毛羨ましいって』とそう言ったのだ。
彼女の羨望の視線の先にはどうやら自分の髪の毛が写っていたらしい。
しかし、ようやくななしが羨ましいと思っている部分が分かったはいいが、何故自分の髪の毛が?と真島には彼女が羨ましがる理由がまるで分からない。
「髪ぃ?そないなもんが羨ましいんか?別にハゲとる訳でもないのに」
『ふふっハゲって…そういう事じゃないんです。吾朗さんの髪って結構柔らかいんだけど真っ直ぐなんですよ〜!』
「確かに真っ直ぐかもしれへんな」
『アタシはくせっ毛だし、吾郎さんのストレートな髪が本当に羨ましいんです』
「なるほどのぉ」
『普通って髪が柔らかいと結構くせっ毛になりがちなのに…こんなにストレートなんだもん。本当に理想の髪質です』
なおも髪を弄りながら羨ましい、羨ましいと言うななし。
そんなななしの髪を見てみるとくせっ毛と言うだけあり、朝長時間セットしていた髪の端が少しだけくるりと輪をかいていた。
真島は朝にセットしてから夜まで髪が崩れるということはあまりない。ガチガチに固めている訳ではなく、やはりななしの言う通り髪がストレートである為だろう。
一方ななしは朝どれだけ時間をかけ念入りに髪を整えても、夕方事務所に来る頃には若干跳ね出している。
最近は梅雨入りし雨ばかりのジトジトとした気候のため余計にだ。
『ずるいです〜。アタシの髪と交換してください〜』とななしは未だに真島の直毛を触りながらぶつぶつと独り言のように小さく呟いている。
「ヒヒッ、こんなええもん持っとんや。俺の羨ましがらんでもええやんけ」
『ええもんですか?この湿気に激弱な髪』
「おう、俺からしてみればとんでもなくええもんやで。こっち来いやななし」
『わわっ、えっと吾朗さん?』
立ちっぱなしで髪に触れていたななしの細い手首を引き、己の膝の上に座らせた。
いきなり腕を引かれ驚いたように目を開いたななしだったが、その後はどこか嬉しそうに『びっくりしました』と小さく笑っている。
ななしの小さく笑う振動に愛おしさを感じながら、真島は膝の上に座っている彼女の髪をひと房掴んだ。そのまま革手袋をした手のひらに髪を載せ、親指の腹で優しく撫でつけた。
革手袋をしていてもななしの髪がどれだけ柔らかいかよく分かる。
くせっ毛だからとななし自身嫌がってはいるが、真島からすると細くしなやかで、光沢ある美しい髪に思えた。柔らかく揺れ動く跳ねた毛先まで光を反射するようにキラキラと輝いていて、まるでななしのように愛らしいと常々そう感じている。
今も手に乗る彼女の髪は事務所の照明に照らされてツヤツヤとまるで宝石のように綺麗に輝いて見えた。
「ほんまやわかいわ。ななしが嫌がる意味が分からん」
『髪跳ねるのは皆嫌ですよぅ』
「あ?飛び出しとんのがかわええんやろがい」
『え〜??一箇所だけ飛び出してるとかっこ悪いですよ。吾朗さんみたいにぴしっ!ってますぐな方がいいと思います』
「俺はこれがええんや、俺みたいやと気持ちよぉないねん」
『んっ』
真島は両手の革手袋を外し机に投げ捨てると、膝に乗るななしの柔らかい髪を指先で解かすように動かした。
肌に触れる髪の滑らかさに、やはりこの髪が一番ななしらしいとそう思う。
跳ねる髪を手櫛で治すように何度も何度も撫で付けていると、甘やかな心地よい香りが真島の鼻を擽る。
シャンプーやリンスの香りか、はたまたななし自身の香りか。
きっとどちらも正しいのだろう。
この花のように甘い香りは真島をうっとりさせるほど心地が良いものだった。
柔らかくて、ふわふわで、いい香りで、ツヤツヤで。非の打ち所なんて全く無いように思えるし、ずっとこのままでいて欲しいものだとも思う。
『ふふ、擽ったい』
「はぁ、お前は髪の毛からつま先まで全部甘いんやろなぁ」
『ふふっ、どういう意味ですか』
「言葉通りや。羨ましがらんと自分のもん大事にしたれ」
『……吾朗さんてアタシにとっても甘々ですよね』
「せや、アマアマや」
『自覚有りですか?』
「多分な」
『もう、アタシが吾朗さん無しじゃ生きて行けなくなるじゃないですか!』
「アカンのか?」
『あ、アカンくないですけど…』
「ほな何の問題もないやんけ」
『た、確かに…?』
「ヒヒッ!アホな所も好いとんで」
『褒められているきがしないですけど?』
「褒めとる。ななしも、ななしの髪もな」
『ふふ、そっかぁ』
髪を撫でている真島の手にななしの手が重ねられた。
自然と絡まる指先は気持ちが連動しているかのようにお互いにとても熱い。
『じゃ、アタシ少しだけこの髪の毛のこと好きになります。吾朗さんが優しいから』
「おう、そうしたれ。こないに可愛ええ髪を嫌いなんて可哀想やしな」
『ふふ、でももう少し跳ねなければいいんですけどね』
「跳ねとんのもいい意味でななしらしいで」
『そうだといいんですけど』
「ほな、そろそろ飯でも行くか?」
『そうですね!お腹すきました』
「何食いたいねん」
『んふふふ、お寿司食べたいです、蒸し暑い日はさっぱり系で』
「ほな決まりやなななし」
『っん』
膝に乗っているななしの後頭部をぐっと己に引き寄せ、ニコニコと笑っている唇に触れるだけのキスをした真島。
その後二人で椅子から立ち上がり、外食に行くために組長室の扉を開いた。
事務所を出ると外は少しだけ蒸し暑い。幸いなことに雨は降っておらず、そよそよと吹いている風は仄かにひんやりとしている。
真島は風に吹かれて揺蕩うななしの微かに跳ねた
『今の季節は何が旬でしょう?』
「カンパチとかやな。他は鯵とかアナゴとかイワシもあんで」
『いいですね〜。お腹すいてきました〜』
「ヒヒッ!ようさん食べや」
『は〜い!』
Atgk
梅雨は天敵。
真島さんは支配人の頃からサラサラストレート。