小話集1
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(支配人/恋人)
「その目ん玉はなんの為に付いとんねん!!人様が歩いとる所に飛び出して来よって!あーあ、この服どないすんねん、なあ!!」
『す、すみません』
あぁ、どうしてこうなったのだろう。
唾が飛びそうな勢いで…否もう飛び出しているかもしれないが…。
怒鳴ってくる男に頭を下げながらななしは人知れずため息を着いた。
深深と頭を下げ謝罪しても目の前にいる男は顔を赤くしたままで怒鳴ることを全く辞めようとはしない。
そんな男の両隣には綺麗な女の人もいて、頭を下げ謝罪しているななしに少し同情的な眼差しを向けていたが、助けてくれる気配はなかった。
どうやら男は相当酔っ払っているようで。隣に携えている女性たちにいい格好をしたいらしい。
「そう思うやろ?な?な?」と両隣にいる女性たちに猫なで声で話しかけるている。自分の時とは別人のようだなぁ、とななしはどこか他人事のようにそう思った。
『あの…泥汚れが少し付いていますがその程度であれば洗濯すれば直ぐに落ちるかと思います』
「はぁ!?ぶつかっといてなんやねん!?それにこんなのもう二度と着ぃひんわ!弁償せぇや!弁償!!」
『は、はぁ……』
男がひっきりなしに「ぶつかっといて!」「服が汚れた!」と怒鳴っているが、実際ななしがこの男にぶつかった事実は一切ない。
ななしは立ち止まり一緒に帰る約束をしていた真島が来るのを待つためにグランド前で待機していたのだ。
壁に背を預けて待機しているその時にたまたま目の前で何かに躓き転んだのがこの男。
大きく転倒した男は近くにいたななしと目が合うと血相を変えて怒鳴ってき、今に至る。
服は転んだ時に付着したであろう泥で汚れているが、その汚れにななしは一ミリたりとも関与していない。
それなのに何故かイチャモンを付けられている状況なのだ。
無実なのにどうしろと言うんだ。
特に悪いことはしていないし謝るのもお門違いなはずだったがさっさとこの場が収まればいいと思いすかさず謝罪したものの男の興奮を逆撫でしてしまったらしく、怒鳴る勢いは増すばかりだ。
女性たちもどうしていいのか分からないのかオロオロとしているが、飛び火が怖いのか男を制止する様子は見て取れない。
「弁償せぇ!!弁償や!!はよ、金出せや!!」
『…はぁ、』
「あぁ!?!?ため息つきたいのは俺の方や!このガキ!!おどれはさっさと金だせばええんや」
『え、あ、ちょ、ちょっと待ってください!』
「うっさいわ!」
男はとうとう痺れを切らしたかななしが持っていたシンプルなカバンを引っつかむと勢いよく奪い取ろうとしたのだ。
取られないよう咄嗟にカバンの持ち手を握り、抵抗するななしだったが。男の、しかも怒りで興奮した状態の力に適うはずもなく。
あっさりとカバンは酔っ払いに奪われてしまったのだった。
『か、返してください!!』
「うるさいねん!!弁償せえ言うたやろ」
『あのですね、面倒で謝りましたけど。貴方自分でなにかに躓いて転んだんですよ!私は何もしていません。服が汚れたのも貴方の不注意ですよね。それを全て人のせいにするなんて少しおかしいんじゃないですか!?』
「はぁ!?俺が勝手にコケたっちゅうんか!?」
『そうですよ!!』
「何をふざけたこと言うとんねん!!!」
『っ!?』
興奮気味の男はカバンをそこら辺に投げつけると、拳を握りまるで威嚇するように振り上げたのだ。
その動作をみていたななしは瞬間的に殴られる!と体を強ばらせ、尻もちを付いてしまった。
男は後退するななしの後をゆっくりと追い、拳を振り上げたまま「一発ぶん殴ったるわ!」と楽しそうに笑っている。
こんなことになるならグランドの中で、真島の傍にいれば良かった。
恐怖に体が震えどうすることもできない状況に、グスンと鼻が鳴る。
振り下ろされる拳が差し迫って来て、ななしは訪れるであろう痛みに備え腕で顔を隠しながらも目を強く瞑った。
「いででででで!!」
『え…?』
訪れるであろう痛みに体を強ばらせていたななしの耳に届いてきたのは、唸る男の声。
この男は今自分を殴ろうとしていたはずなのに、どうして痛みに呻いているのか。
状況が把握出来ずに恐る恐る目を開けてみると、視界いっぱいに見えたのは黒くて大きくて逞しい背中。
駆けつけてくれた余韻で揺れ動く綺麗な長髪。
見覚えのある大好きな背中。
間違えることなど決してない。
これは恋人である真島のものだ。
『ま、真島さん…っ!』
「いってぇ!!はなせや!!ボケ!!!」
「ぁあ…?」
「っ!?」
「誰がボケや、もっぺん言うてみい」
「うっ!な、なんやねん!!このガキがぶつかってきたさかい怒っとんるんや!!こっちは正当な理由があんねん」
「そら人間や、ぶつかることもあるやろ。それにこの子もちゃんと謝罪したんとちゃうんか?」
『ま、真島さん。わ、私ぶつかってないです…』
「ぶつかっとらんのか?」
『…ぅん、言いがかりです』
「嘘言うなや!!」
「あ?ななしが嘘言うわけないやろ」
「このくそガっ…ウ"ッ!?」
腕を捻り押さえ込んでいる真島はななしの言葉を聞いた瞬間、怒り怒鳴っていた男の頬めがけて拳を叩きつけたのだ。
鈍い音と短い悲鳴が響くと、そのまま口から血をながし男は静かに地面に蹲った。
「はよ立てや、おっさん」
「う、う…、っ…」
「酔っ払ってもええけど、人様に迷惑かけんのはアカンのやないか?なぁ?」
「ひ、ひぃ!」
蹲った男に合わせてしゃがんだ真島は威圧感満載の声音でそう言う。
鋭い隻眼で射抜くように睨まれた男は情けない声を出しながら脱兎のごとく走り去っていき、残された女性たちも「置いていかないで!」とこちらを振り返ることも無く彼を追いかけていった。
あれほど煩かったのが嘘のように静かになり残されたななしはあっけからん様子で真島の背中をみつめていた。
「ななし!!怪我は!?」
『わっ、ま、真島さん』
男が見えなくなると真島は先程とは打って変わって眉尻を下げ、未だに尻もちを着いたままの格好で座っていたななしの元に駆け寄ってくる。
逞しい腕に抱きしめられビックリするも、真島が心配するほどの怪我はないと伝えれば彼は安心したように「ほんまやな?」と微笑んでくれた。
そのまま真島は手を引き腰を支えてくれたので、ななしは身を任せゆっくりと立ち上がる。
『あ、ありがとうございました…、アタシではどうにも出来なくて』
「そんなんかまへんわ。で、ホンマに怪我しとらんのやな?」
『はい。尻もちついただけですので平気です!』
「ほうか。ほんなら他の酔っ払いに絡まれんようにはよ帰ろか」
『ふふ、そうですね!』
服の砂埃をはらいつつ、落ちたカバンを拾ったななし。
差し出された大きな手に手を重ねて、ようやく帰宅するために足を動かした。
『真島さん…』
「ん?」
『アタシ、嬉しかったです』
「ん?嬉しかった?」
歩き出してから暫くして、ななしはおもむろにそう切り出した。
歩みを止めることは無かったが真島はなんの事か?と首を傾げている。
『ふふっ』
「?」
あの時颯爽と現れて助けてくれたことも勿論嬉しかった。
だがもうひとつ嬉しかった事がある。
それは自分の言葉を疑うことなく、信じてくれ事だ。
「ななしが嘘言うわけないやろ」と直ぐに信じてくれて、味方になってくれた事がどれほど頼もしく嬉しかったか。
『本当にありがとうございます』
「ヒヒッ、何回言うねん」
真島の優しさと(自惚れ甚だしいが)自分を想ってくれている気持ちが目に見えて分かってしまったから。
あんな状況だったのに心がとても満たされてしまったのだ。
─── 世界中が敵に回ってもこの人さえアタシを信じて傍にいてくれたら…きっとそれだけで幸せなんだろうなぁ。
ななしは隣を歩く真島の横顔を見つめて、愛おしそうに微笑んだ。
『真島さん!大好きです』
「ななしから言うてくれるのは珍しいのぉ」
『いつもそう思ってます』
「ほうか。俺も好きやでななし」
『ふふ、はい!』
お互い握っていた手に力を込めた。
まるで言葉と共に心の奥の優しい気持ちを伝えるように。
お粗末!
真島さんはななしちゃんのことは無条件に信じています。「そんなことするわけないやろアホ」的な感じで。
まぁ、でもななしちゃんは悪いことするような子ではないです笑
「その目ん玉はなんの為に付いとんねん!!人様が歩いとる所に飛び出して来よって!あーあ、この服どないすんねん、なあ!!」
『す、すみません』
あぁ、どうしてこうなったのだろう。
唾が飛びそうな勢いで…否もう飛び出しているかもしれないが…。
怒鳴ってくる男に頭を下げながらななしは人知れずため息を着いた。
深深と頭を下げ謝罪しても目の前にいる男は顔を赤くしたままで怒鳴ることを全く辞めようとはしない。
そんな男の両隣には綺麗な女の人もいて、頭を下げ謝罪しているななしに少し同情的な眼差しを向けていたが、助けてくれる気配はなかった。
どうやら男は相当酔っ払っているようで。隣に携えている女性たちにいい格好をしたいらしい。
「そう思うやろ?な?な?」と両隣にいる女性たちに猫なで声で話しかけるている。自分の時とは別人のようだなぁ、とななしはどこか他人事のようにそう思った。
『あの…泥汚れが少し付いていますがその程度であれば洗濯すれば直ぐに落ちるかと思います』
「はぁ!?ぶつかっといてなんやねん!?それにこんなのもう二度と着ぃひんわ!弁償せぇや!弁償!!」
『は、はぁ……』
男がひっきりなしに「ぶつかっといて!」「服が汚れた!」と怒鳴っているが、実際ななしがこの男にぶつかった事実は一切ない。
ななしは立ち止まり一緒に帰る約束をしていた真島が来るのを待つためにグランド前で待機していたのだ。
壁に背を預けて待機しているその時にたまたま目の前で何かに躓き転んだのがこの男。
大きく転倒した男は近くにいたななしと目が合うと血相を変えて怒鳴ってき、今に至る。
服は転んだ時に付着したであろう泥で汚れているが、その汚れにななしは一ミリたりとも関与していない。
それなのに何故かイチャモンを付けられている状況なのだ。
無実なのにどうしろと言うんだ。
特に悪いことはしていないし謝るのもお門違いなはずだったがさっさとこの場が収まればいいと思いすかさず謝罪したものの男の興奮を逆撫でしてしまったらしく、怒鳴る勢いは増すばかりだ。
女性たちもどうしていいのか分からないのかオロオロとしているが、飛び火が怖いのか男を制止する様子は見て取れない。
「弁償せぇ!!弁償や!!はよ、金出せや!!」
『…はぁ、』
「あぁ!?!?ため息つきたいのは俺の方や!このガキ!!おどれはさっさと金だせばええんや」
『え、あ、ちょ、ちょっと待ってください!』
「うっさいわ!」
男はとうとう痺れを切らしたかななしが持っていたシンプルなカバンを引っつかむと勢いよく奪い取ろうとしたのだ。
取られないよう咄嗟にカバンの持ち手を握り、抵抗するななしだったが。男の、しかも怒りで興奮した状態の力に適うはずもなく。
あっさりとカバンは酔っ払いに奪われてしまったのだった。
『か、返してください!!』
「うるさいねん!!弁償せえ言うたやろ」
『あのですね、面倒で謝りましたけど。貴方自分でなにかに躓いて転んだんですよ!私は何もしていません。服が汚れたのも貴方の不注意ですよね。それを全て人のせいにするなんて少しおかしいんじゃないですか!?』
「はぁ!?俺が勝手にコケたっちゅうんか!?」
『そうですよ!!』
「何をふざけたこと言うとんねん!!!」
『っ!?』
興奮気味の男はカバンをそこら辺に投げつけると、拳を握りまるで威嚇するように振り上げたのだ。
その動作をみていたななしは瞬間的に殴られる!と体を強ばらせ、尻もちを付いてしまった。
男は後退するななしの後をゆっくりと追い、拳を振り上げたまま「一発ぶん殴ったるわ!」と楽しそうに笑っている。
こんなことになるならグランドの中で、真島の傍にいれば良かった。
恐怖に体が震えどうすることもできない状況に、グスンと鼻が鳴る。
振り下ろされる拳が差し迫って来て、ななしは訪れるであろう痛みに備え腕で顔を隠しながらも目を強く瞑った。
「いででででで!!」
『え…?』
訪れるであろう痛みに体を強ばらせていたななしの耳に届いてきたのは、唸る男の声。
この男は今自分を殴ろうとしていたはずなのに、どうして痛みに呻いているのか。
状況が把握出来ずに恐る恐る目を開けてみると、視界いっぱいに見えたのは黒くて大きくて逞しい背中。
駆けつけてくれた余韻で揺れ動く綺麗な長髪。
見覚えのある大好きな背中。
間違えることなど決してない。
これは恋人である真島のものだ。
『ま、真島さん…っ!』
「いってぇ!!はなせや!!ボケ!!!」
「ぁあ…?」
「っ!?」
「誰がボケや、もっぺん言うてみい」
「うっ!な、なんやねん!!このガキがぶつかってきたさかい怒っとんるんや!!こっちは正当な理由があんねん」
「そら人間や、ぶつかることもあるやろ。それにこの子もちゃんと謝罪したんとちゃうんか?」
『ま、真島さん。わ、私ぶつかってないです…』
「ぶつかっとらんのか?」
『…ぅん、言いがかりです』
「嘘言うなや!!」
「あ?ななしが嘘言うわけないやろ」
「このくそガっ…ウ"ッ!?」
腕を捻り押さえ込んでいる真島はななしの言葉を聞いた瞬間、怒り怒鳴っていた男の頬めがけて拳を叩きつけたのだ。
鈍い音と短い悲鳴が響くと、そのまま口から血をながし男は静かに地面に蹲った。
「はよ立てや、おっさん」
「う、う…、っ…」
「酔っ払ってもええけど、人様に迷惑かけんのはアカンのやないか?なぁ?」
「ひ、ひぃ!」
蹲った男に合わせてしゃがんだ真島は威圧感満載の声音でそう言う。
鋭い隻眼で射抜くように睨まれた男は情けない声を出しながら脱兎のごとく走り去っていき、残された女性たちも「置いていかないで!」とこちらを振り返ることも無く彼を追いかけていった。
あれほど煩かったのが嘘のように静かになり残されたななしはあっけからん様子で真島の背中をみつめていた。
「ななし!!怪我は!?」
『わっ、ま、真島さん』
男が見えなくなると真島は先程とは打って変わって眉尻を下げ、未だに尻もちを着いたままの格好で座っていたななしの元に駆け寄ってくる。
逞しい腕に抱きしめられビックリするも、真島が心配するほどの怪我はないと伝えれば彼は安心したように「ほんまやな?」と微笑んでくれた。
そのまま真島は手を引き腰を支えてくれたので、ななしは身を任せゆっくりと立ち上がる。
『あ、ありがとうございました…、アタシではどうにも出来なくて』
「そんなんかまへんわ。で、ホンマに怪我しとらんのやな?」
『はい。尻もちついただけですので平気です!』
「ほうか。ほんなら他の酔っ払いに絡まれんようにはよ帰ろか」
『ふふ、そうですね!』
服の砂埃をはらいつつ、落ちたカバンを拾ったななし。
差し出された大きな手に手を重ねて、ようやく帰宅するために足を動かした。
『真島さん…』
「ん?」
『アタシ、嬉しかったです』
「ん?嬉しかった?」
歩き出してから暫くして、ななしはおもむろにそう切り出した。
歩みを止めることは無かったが真島はなんの事か?と首を傾げている。
『ふふっ』
「?」
あの時颯爽と現れて助けてくれたことも勿論嬉しかった。
だがもうひとつ嬉しかった事がある。
それは自分の言葉を疑うことなく、信じてくれ事だ。
「ななしが嘘言うわけないやろ」と直ぐに信じてくれて、味方になってくれた事がどれほど頼もしく嬉しかったか。
『本当にありがとうございます』
「ヒヒッ、何回言うねん」
真島の優しさと(自惚れ甚だしいが)自分を想ってくれている気持ちが目に見えて分かってしまったから。
あんな状況だったのに心がとても満たされてしまったのだ。
─── 世界中が敵に回ってもこの人さえアタシを信じて傍にいてくれたら…きっとそれだけで幸せなんだろうなぁ。
ななしは隣を歩く真島の横顔を見つめて、愛おしそうに微笑んだ。
『真島さん!大好きです』
「ななしから言うてくれるのは珍しいのぉ」
『いつもそう思ってます』
「ほうか。俺も好きやでななし」
『ふふ、はい!』
お互い握っていた手に力を込めた。
まるで言葉と共に心の奥の優しい気持ちを伝えるように。
お粗末!
真島さんはななしちゃんのことは無条件に信じています。「そんなことするわけないやろアホ」的な感じで。
まぁ、でもななしちゃんは悪いことするような子ではないです笑