ミニ小話
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(シリーズ主)
『お腹空いたぁ〜』
「ヒヒッ、何回言うねん」
昼時、休憩と昼食を取るために洛内に降りてきていた沖田は隣で腹の虫が鳴きやまないななしを見下ろしケタケタと笑っていた。
机にどべーんと突っ伏しているななしは、ケタケタと腹を抱え笑う沖田を見上げ『笑わないで下さい』と小さく愚痴った。
「しゃぁないやろ。お前の腹おもろい音しとるんやさかい」
『ひ、酷い…稽古を頑張った証ですよ』
「まぁ、お前が稽古頑張っとったのはよう知っとる。一緒におったしな」
『じゃぁ、鳴っても笑わないでくださいよ…』
「ヒヒッ、拗ねんなや。美味い飯食うんやろ?顔起こしとき」
『拗ねてないですもん』
ななしの腹が鳴るのは井上に稽古でみっちり扱かれたからだ。
しかも稽古時は師である井上と一緒に永倉等も居た為か、彼等に合わせた稽古内容であった。
故にななしにとても過酷な稽古であったらしい。
ななしの傍で共に稽古をしていた沖田は彼女が必死に刀を振り井上に挑戦する姿を間近で見ていた。
だからななしが腹を空かせる理由もよく分かる。
しかしほっそりした見た目からは想像出来ないほどに豪快に腹の音が鳴り響くものだから、笑わずにはいられなかったのだ。
沖田は未だに机に突っ伏し唇を突き出しながら拗ねているななしの頭をわしゃわしゃと撫で回した。
「まぁ、あんだけ動けば腹も鳴るわな。お前はようやっとるで」
『そうでしょうか?』
「足腰立たんくなるくらい体動かしとったやろ。人間、なかなかそこまで自分を追い込めんもんや」
『でもその割にはちっとも体力つかないです。刀は扱えても上手く戦えないし…』
「……」
ななしは深く溜息をつき、シュンと肩を落とした。
屈強な男達で出来ている新撰組。
仕事内容は不逞浪士の取り締まり、町の治安維持等でありそれらを実行するためには常に強く勇ましくなくてはならない。
だからこそ稽古や鍛錬は欠かせないものである。
そんな組織の一員であるななしも事務仕事ばかりをこなしているが、戦うために強くなくてはならない。
それが"男"として"無名ななし"として生きる彼女の運命だ。
しかし"男として生きてはいる"が体や心は女性のまま。故にどれだけななしが一生懸命に稽古をし刀を奮ったとしても、新撰組にいる隊士達のように強くなる事は出来ない。男と女では全てがあまりにも違いすぎる。
「ななし、お前はホンマにようやっとる」
『総司さん…』
ななしは世の女性と比べれば遥かに強いし、全く戦えない訳ではない。
だが新撰組にいる以上彼女の強さの比較対象はどうしても屈強な隊士達になってしまう。
決してななしが弱い訳では無いが埋めることのできない男女の差で、彼女は自分がまだまだ未熟なのだとやきもきしてしまっているのだ。
しかしななしの強さとはそんな屈強な男達とは別にあると沖田は思っている。
彼女の強さとは何度も果敢に挑戦したり真っ直ぐ努力するその前向きで一生懸命な心根。打たれ強い心を持っているななしは誰よりも向上心があり、その姿勢は沖田からすると、京の町にいる誰よりも強く輝かしと思えた。
だから伸び悩む体を疎ましく思うのではなく、新撰組として生きようと藻掻く自身を労り愛してやって欲しい。
沖田は口をギュッと結ぶと、しなだれるななしの頭をこれでもかと優しく撫でつけた。
急に手つきが変わったことで驚いたのかななしはゆっくりとこちらを見上げた。
「新撰組にはお前しかやれん事がようさんある。それを文句のひとつも言わんとやっとるななしの我慢強さ。強くなる為に一生懸命稽古する忍耐力。どれもこれも京一の美徳やとワシは思うで」
『そ、総司さん。なんですか急に小っ恥ずかしい…』
「失礼なやっちゃなぁ!まぁ、掻い摘んで言うとななしはよう頑張っとるっちゅうことや。せやからあんま無理せんと気ぃ抜いて生きや」
『フフフッ、気を抜いて良いんですか?私死んじゃいますよ?』
「なんのためにワシがおると思っとんねん。この先ワシの目が黒いうちはななしを死なせへんで」
『……なにそれ、めっちゃかっこいい』
「ヒヒッ!せやろ?」
『うん、ありがとう総司さん。なんだか元気出ました!今日もこれから頑張れそうです!!』
先程とは打って変わって明るく微笑んだななし。
そんなキラキラ輝かしい笑顔を見せたななしに釣られ沖田もまた口角を持ち上げた。
沖田はななしを言葉で支えてやる事しか出来ないが、それで少しでも憂いが晴れるなら何度でも傍で励まし続けたいと思っている。
『総司さん!!来ましたーー!美味しそう』
「ヒヒッ。慌てんとゆっくり食えよ」
『はぁい。いただきます!』
「その切り替えの速さもお前の美徳、かもしれんのぉ」
一生懸命にそして真っ直ぐに生きるななしを愛おしく思いながら、沖田もまた彼女のようにやってきた料理を見つめ「いただきます」と手を合わせたのだった。
『お腹空いたぁ〜』
「ヒヒッ、何回言うねん」
昼時、休憩と昼食を取るために洛内に降りてきていた沖田は隣で腹の虫が鳴きやまないななしを見下ろしケタケタと笑っていた。
机にどべーんと突っ伏しているななしは、ケタケタと腹を抱え笑う沖田を見上げ『笑わないで下さい』と小さく愚痴った。
「しゃぁないやろ。お前の腹おもろい音しとるんやさかい」
『ひ、酷い…稽古を頑張った証ですよ』
「まぁ、お前が稽古頑張っとったのはよう知っとる。一緒におったしな」
『じゃぁ、鳴っても笑わないでくださいよ…』
「ヒヒッ、拗ねんなや。美味い飯食うんやろ?顔起こしとき」
『拗ねてないですもん』
ななしの腹が鳴るのは井上に稽古でみっちり扱かれたからだ。
しかも稽古時は師である井上と一緒に永倉等も居た為か、彼等に合わせた稽古内容であった。
故にななしにとても過酷な稽古であったらしい。
ななしの傍で共に稽古をしていた沖田は彼女が必死に刀を振り井上に挑戦する姿を間近で見ていた。
だからななしが腹を空かせる理由もよく分かる。
しかしほっそりした見た目からは想像出来ないほどに豪快に腹の音が鳴り響くものだから、笑わずにはいられなかったのだ。
沖田は未だに机に突っ伏し唇を突き出しながら拗ねているななしの頭をわしゃわしゃと撫で回した。
「まぁ、あんだけ動けば腹も鳴るわな。お前はようやっとるで」
『そうでしょうか?』
「足腰立たんくなるくらい体動かしとったやろ。人間、なかなかそこまで自分を追い込めんもんや」
『でもその割にはちっとも体力つかないです。刀は扱えても上手く戦えないし…』
「……」
ななしは深く溜息をつき、シュンと肩を落とした。
屈強な男達で出来ている新撰組。
仕事内容は不逞浪士の取り締まり、町の治安維持等でありそれらを実行するためには常に強く勇ましくなくてはならない。
だからこそ稽古や鍛錬は欠かせないものである。
そんな組織の一員であるななしも事務仕事ばかりをこなしているが、戦うために強くなくてはならない。
それが"男"として"無名ななし"として生きる彼女の運命だ。
しかし"男として生きてはいる"が体や心は女性のまま。故にどれだけななしが一生懸命に稽古をし刀を奮ったとしても、新撰組にいる隊士達のように強くなる事は出来ない。男と女では全てがあまりにも違いすぎる。
「ななし、お前はホンマにようやっとる」
『総司さん…』
ななしは世の女性と比べれば遥かに強いし、全く戦えない訳ではない。
だが新撰組にいる以上彼女の強さの比較対象はどうしても屈強な隊士達になってしまう。
決してななしが弱い訳では無いが埋めることのできない男女の差で、彼女は自分がまだまだ未熟なのだとやきもきしてしまっているのだ。
しかしななしの強さとはそんな屈強な男達とは別にあると沖田は思っている。
彼女の強さとは何度も果敢に挑戦したり真っ直ぐ努力するその前向きで一生懸命な心根。打たれ強い心を持っているななしは誰よりも向上心があり、その姿勢は沖田からすると、京の町にいる誰よりも強く輝かしと思えた。
だから伸び悩む体を疎ましく思うのではなく、新撰組として生きようと藻掻く自身を労り愛してやって欲しい。
沖田は口をギュッと結ぶと、しなだれるななしの頭をこれでもかと優しく撫でつけた。
急に手つきが変わったことで驚いたのかななしはゆっくりとこちらを見上げた。
「新撰組にはお前しかやれん事がようさんある。それを文句のひとつも言わんとやっとるななしの我慢強さ。強くなる為に一生懸命稽古する忍耐力。どれもこれも京一の美徳やとワシは思うで」
『そ、総司さん。なんですか急に小っ恥ずかしい…』
「失礼なやっちゃなぁ!まぁ、掻い摘んで言うとななしはよう頑張っとるっちゅうことや。せやからあんま無理せんと気ぃ抜いて生きや」
『フフフッ、気を抜いて良いんですか?私死んじゃいますよ?』
「なんのためにワシがおると思っとんねん。この先ワシの目が黒いうちはななしを死なせへんで」
『……なにそれ、めっちゃかっこいい』
「ヒヒッ!せやろ?」
『うん、ありがとう総司さん。なんだか元気出ました!今日もこれから頑張れそうです!!』
先程とは打って変わって明るく微笑んだななし。
そんなキラキラ輝かしい笑顔を見せたななしに釣られ沖田もまた口角を持ち上げた。
沖田はななしを言葉で支えてやる事しか出来ないが、それで少しでも憂いが晴れるなら何度でも傍で励まし続けたいと思っている。
『総司さん!!来ましたーー!美味しそう』
「ヒヒッ。慌てんとゆっくり食えよ」
『はぁい。いただきます!』
「その切り替えの速さもお前の美徳、かもしれんのぉ」
一生懸命にそして真っ直ぐに生きるななしを愛おしく思いながら、沖田もまた彼女のようにやってきた料理を見つめ「いただきます」と手を合わせたのだった。