ミニ小話
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珍しく雪がチラつく昼前。
真島は何をするでもなく長い足をゆっくりと動かしながら招福町南辺りをぶらついていた。
真島が自身の家がある蒼天堀通りではなくわざわざ招福町を歩く理由は、"偶然"恋人であるななしに出会えるかもしれないから。
ななしの買い出しが上手く重なっていると道行く彼女に出会える時があり、もし出会えた場合仕事までの時間を2人で過ごす事が出来たりする。
今日もそうなればいいと、ななしを切望している真島は顔は動かすことなく視線だけを動かし辺りを見渡した。
「(…まぁ、そんな簡単におらんわな)」
ただふらつく度に必ずななしに出会える…というわけではなく。
一人歩くだけのたんなる散歩になる事の方が圧倒的に多い。
それに今日は積もることは無いが白く冷たい雪がチラチラ降っている。
よくよく考えるとこんな寒空の中でななしがわざわざ買い出しするとは思えないし、出かけたとしても早々に切り上げ帰宅しているだろう。
彼女と過ごしたいあまりに考え無しに家を飛び出したが、今日の天気ではどうにも"偶然"ばったりと出会う事は無さそうだと真島は落胆し肩を落とした。
「……」
ななしに会えないなら無理にこの町で寒い思いをする必要も無い。
真島は気落ちしたまま自宅がある蒼天堀通りに向け踵を返すと今度は大股で素早く歩き始めた。
冬の寒空だと言うのにいつもと変わらない人混みにうんざりしながらも気温のせいで冷たくなった手をスラックスのポケットに押し入れる。
そのままぶっきらぼうに素早く歩みを進めるとどうしても顔に冷たい風が直撃し、鼻先が若干痛むようであった。
こんな寒い時はななしとぴったり引っ付き、他愛もない話をすればすぐに心も体も温かくなることだろう。
そんな風に二人で一緒に過ごせたら一体どれほど幸せだろうか。
今日は叶いそうに無い願いを胸の中でひっそりと思い浮かべながら真島は人混みの中で盛大なため息を着いた。
「はぁ…」
ななしと共に生きる…とてもままならないものであると、物思いに耽る真島はやるせない心持ちのまま雪が降るグレーの空を見上げた。
着の身着のまま降る雪がなんとも羨ましいと隻眼を細めていると、不意に「真島さん!」と自身の名を呼ぶ声が聞こえ、真島は咄嗟に視線を空から地上へ戻した。
声の出処を探すように辺りを見渡せばすぐ側に自分よりも幾分も小さい恋人のななしの姿があり、彼女は嬉しそうにこちらを見ながら微笑んでいたのだ。
まさか本当にななしにばったり出会えるとは思っていなかった真島は、いきなり現れた彼女に驚いたように目を瞬かせた。
「……あぁ、なんや。会いたすぎて幻覚見えとるんか」
『ふふふ、アタシは本物ですよ!丁度歩いてる真島さんが見えたから店から飛び出してきたんです』
「ホンマに本物なんか」
『ホンマですよー!』
「確かめてもええか?」
『ふふ、勿論。ギュってしてみて下さい』
そう言い買い物袋を持ったまま両手を広げたななしを真島は素早く力いっぱい抱きしめた。
「…おう、ほんまもんのななしや…」
『はい、本物のななしですよ!』
小さなななしを余すことなく腕に抱けば彼女もまた同じように腕を背中にまわしギュッと抱きついてくる。
店にいたせいかななしはポカポカと温かく、寒空の中を歩いていた真島にはとても心地よい。
真島は温もりや柔らかさを堪能するようにななしの後頭部と腰に腕を回し無我夢中で抱きしめた。
『んふふ、真島さん冷たい。体冷えてますよ』
「それなりに歩いとったしな」
『用事があったんです?』
「ん?まぁ、たんなる散歩や」
『散歩…じゃぁ、この後は特に用事はないんですか?』
「おう、特にないで」
『じゃぁ、アタシの家で少し温まりませんか?真島さんの体すごく冷たいから』
「……ななしが温めてくれるんか?」
『ふふ、はい。アタシが温めてあげる』
「そら、楽しみやのぉ」
腕の中のななしを見下ろせば嬉しそうに頬を赤らめてニコニコと笑っている。
そんな可愛らしい笑顔を見ているだけで先程まで感じていた仄暗い気持ちも薄れ、次は溢れんばかりの愛情が胸を埋め尽くすようであった。
ななしが傍にいるだけでこんなにも心情が違うものかと自分でも驚いてしまう。
真島はななしの小さな手をぎゅっと握りしめ、彼女が提案してくれたようにアパートへ向かうためにゆっくりと歩幅を合わせながら足を動かした。
「そういえば今日はえらい可愛らしい服装やなななし」
『そうですか?ふふ、そう言って貰えると恥ずかしいけど嬉しいです』
「せやけど足は少し寒そうやな」
『うーん、少しだけ寒いかも?』
「ふっ、何で疑問形なんや…まぁ、安心せぇ。ななしの事は俺がちゃんと温めたるさかい」
『アタシが真島さんを温めるのに?』
「おう、ななしがくれた温もりで俺がななしを温めんねん」
『ややこしー!ふふ、でもありがとう真島さん』
眩しい笑顔と心地よい温もり。
傍らに彼女がいるだけで自然とこちらまで口角があがるようであった。
真島はななしと会えた喜びを伝えるように握った小さな手の甲を親指で優しく撫でつけた。
真島は何をするでもなく長い足をゆっくりと動かしながら招福町南辺りをぶらついていた。
真島が自身の家がある蒼天堀通りではなくわざわざ招福町を歩く理由は、"偶然"恋人であるななしに出会えるかもしれないから。
ななしの買い出しが上手く重なっていると道行く彼女に出会える時があり、もし出会えた場合仕事までの時間を2人で過ごす事が出来たりする。
今日もそうなればいいと、ななしを切望している真島は顔は動かすことなく視線だけを動かし辺りを見渡した。
「(…まぁ、そんな簡単におらんわな)」
ただふらつく度に必ずななしに出会える…というわけではなく。
一人歩くだけのたんなる散歩になる事の方が圧倒的に多い。
それに今日は積もることは無いが白く冷たい雪がチラチラ降っている。
よくよく考えるとこんな寒空の中でななしがわざわざ買い出しするとは思えないし、出かけたとしても早々に切り上げ帰宅しているだろう。
彼女と過ごしたいあまりに考え無しに家を飛び出したが、今日の天気ではどうにも"偶然"ばったりと出会う事は無さそうだと真島は落胆し肩を落とした。
「……」
ななしに会えないなら無理にこの町で寒い思いをする必要も無い。
真島は気落ちしたまま自宅がある蒼天堀通りに向け踵を返すと今度は大股で素早く歩き始めた。
冬の寒空だと言うのにいつもと変わらない人混みにうんざりしながらも気温のせいで冷たくなった手をスラックスのポケットに押し入れる。
そのままぶっきらぼうに素早く歩みを進めるとどうしても顔に冷たい風が直撃し、鼻先が若干痛むようであった。
こんな寒い時はななしとぴったり引っ付き、他愛もない話をすればすぐに心も体も温かくなることだろう。
そんな風に二人で一緒に過ごせたら一体どれほど幸せだろうか。
今日は叶いそうに無い願いを胸の中でひっそりと思い浮かべながら真島は人混みの中で盛大なため息を着いた。
「はぁ…」
ななしと共に生きる…とてもままならないものであると、物思いに耽る真島はやるせない心持ちのまま雪が降るグレーの空を見上げた。
着の身着のまま降る雪がなんとも羨ましいと隻眼を細めていると、不意に「真島さん!」と自身の名を呼ぶ声が聞こえ、真島は咄嗟に視線を空から地上へ戻した。
声の出処を探すように辺りを見渡せばすぐ側に自分よりも幾分も小さい恋人のななしの姿があり、彼女は嬉しそうにこちらを見ながら微笑んでいたのだ。
まさか本当にななしにばったり出会えるとは思っていなかった真島は、いきなり現れた彼女に驚いたように目を瞬かせた。
「……あぁ、なんや。会いたすぎて幻覚見えとるんか」
『ふふふ、アタシは本物ですよ!丁度歩いてる真島さんが見えたから店から飛び出してきたんです』
「ホンマに本物なんか」
『ホンマですよー!』
「確かめてもええか?」
『ふふ、勿論。ギュってしてみて下さい』
そう言い買い物袋を持ったまま両手を広げたななしを真島は素早く力いっぱい抱きしめた。
「…おう、ほんまもんのななしや…」
『はい、本物のななしですよ!』
小さなななしを余すことなく腕に抱けば彼女もまた同じように腕を背中にまわしギュッと抱きついてくる。
店にいたせいかななしはポカポカと温かく、寒空の中を歩いていた真島にはとても心地よい。
真島は温もりや柔らかさを堪能するようにななしの後頭部と腰に腕を回し無我夢中で抱きしめた。
『んふふ、真島さん冷たい。体冷えてますよ』
「それなりに歩いとったしな」
『用事があったんです?』
「ん?まぁ、たんなる散歩や」
『散歩…じゃぁ、この後は特に用事はないんですか?』
「おう、特にないで」
『じゃぁ、アタシの家で少し温まりませんか?真島さんの体すごく冷たいから』
「……ななしが温めてくれるんか?」
『ふふ、はい。アタシが温めてあげる』
「そら、楽しみやのぉ」
腕の中のななしを見下ろせば嬉しそうに頬を赤らめてニコニコと笑っている。
そんな可愛らしい笑顔を見ているだけで先程まで感じていた仄暗い気持ちも薄れ、次は溢れんばかりの愛情が胸を埋め尽くすようであった。
ななしが傍にいるだけでこんなにも心情が違うものかと自分でも驚いてしまう。
真島はななしの小さな手をぎゅっと握りしめ、彼女が提案してくれたようにアパートへ向かうためにゆっくりと歩幅を合わせながら足を動かした。
「そういえば今日はえらい可愛らしい服装やなななし」
『そうですか?ふふ、そう言って貰えると恥ずかしいけど嬉しいです』
「せやけど足は少し寒そうやな」
『うーん、少しだけ寒いかも?』
「ふっ、何で疑問形なんや…まぁ、安心せぇ。ななしの事は俺がちゃんと温めたるさかい」
『アタシが真島さんを温めるのに?』
「おう、ななしがくれた温もりで俺がななしを温めんねん」
『ややこしー!ふふ、でもありがとう真島さん』
眩しい笑顔と心地よい温もり。
傍らに彼女がいるだけで自然とこちらまで口角があがるようであった。
真島はななしと会えた喜びを伝えるように握った小さな手の甲を親指で優しく撫でつけた。