小話集1
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(真島/ゴロ美/恋人)
今日は外で待ち合わせして、飲みにでも行こう。
そう真島からメッセージが来ていたのは昼頃。休憩中にそのメッセージに気づいたななしは『勿論です』と返信し、逸る思いで午後の仕事を乗り切った。
それからいつも通り定時で仕事を終え記載されていた待ち合わせ場所付近で立ち止まり、ななしは真島が来るのを今か今かと待っている。
少し寒い空の下でぼんやりとしながら今日はどこに行くんだろう、この辺りならバッカスだろうか?と、これかのデートを思いにやけていた。
しばしば真島の事を待っていたが、待ち合わせ時間より少し早くついてしまったせいもあってなかなか現れる気配はない。
真島に限って遅刻ということは無いだろうし後数分もしないうちに必ず来るはずだ。
少し寒い夜ではあったが、後数分。真島が来るまでなら全然待てると冷たくなった手先を擦り合わせて、ななしはぼんやりと街を歩く人々を眺めた。
『(学生さん多いなぁ。今から皆で遊びに行くのかな)』
行き交う人々の中で一際目立つのはやはり学生の集団だろうか。
楽しそうに笑ったり話したりする声がななしのいる場所まで響いてき、子供たちの元気さが伺えた。
寒空でも短いスカートを履き足を出して、友達とカラオケやゲームセンターに行く。お腹がすいたらスマイルバーガーに寄って夜遅くに家に帰る。
今も昔も学生は変わらないのだなぁと楽しそうにはしゃぐ姿を眺めながらななしは懐かしさに目を細めた。
『(青春だなぁ、羨ましいなぁ)』
微笑ましい光景に心が和やかになっていると、立ち止まり真島を待っているななしのすぐ側にも別の制服を着た学生たちがやって来て。
買ってきたドリンクを飲みながら楽しそうな声で喋りだしたのだ。
「ここのドリンク美味しいね〜」
「ね!イチゴの奴美味しいよね!」
「あ、そういえばさぁ…」
「ん??」
別に気になるという訳では無かったが、大きな声でしかも真横で。楽しげに話し出す声を聞いてしまうと、自然と彼女たちの話が耳に入ってきしまって。
別に盗み聞きでは無いのだが、ななしは彼女たちとは反対の方を向きながらも耳だけは話声に集中させていた。
「さっきの人、やばかったよね〜」
「あ!うんうん。喧嘩?してたっぽい?人ね」
「刺青もだし髭もあるのになんであんなに肌出すのって感じ!女装なのかわかんないし」
「確かに。ピンク色のドレス着てたけどちょっと怖かったよね」
「趣味なのかな?」
「趣味なんじゃない?」
「でもスタイル超良かったよね〜。筋肉もあったし。女装してなかったらめちゃくちゃイケメンだったりして〜」
「それは有り得る。でも女装してるんだし女装趣味でしょ。イケメンでも女装好きなのはちょっとね」
「あははは!確かに!もっと綺麗だったらね」
「でもさワンチャン面白い人かもよ?」
「ええ?アンタああ言うのが趣味なの?」
「そういう訳じゃないけど〜」
喧嘩、刺青、髭、極めつけにピンク色のドレス。
耳を澄ませていたななしだが、あまりにも不穏な言葉ばかりが聞こえてきてしまい顔を顰めた。
彼女たちの言っている人物。
スタイルがよくて筋肉もあるのに髭を生やしてピンクのドレスを着ている男。
『(もしかして…またゴロ美ちゃんのかっこうしてるんじゃ…)』
考えなくても直ぐに分かる、その女装の男…この間人だかりを作っていた真島に違いない。
ピンクのドレスを着た刺青の男なんてこの世の何処を探しても絶対に真島しかいない。
彼は桐生と喧嘩をする為なら手段を選ばない。
今回のドレスも桐生と喧嘩をする為だけに作らせたくらいだ。
そんな特注のドレスで女装したお陰で桐生ととてもたのしい喧嘩が出来たと喜んでいたし、彼ならまたやりかねないと思っていたのだが。二回目がこんなにも早く訪れるとはななしさえ予想外。
今日も桐生を巻き込んで喧嘩をしたに違いない。
デート(という名の飲み)に誘ってくれたは良いが、もしかして真島はゴロ美の姿でここに来ようとしていたのか。
時々真島の考えていることが分からなくなるななしは盛大なため息をついた後、学生たちが歩いてきた方向へと走った。
きっとこの先に喧嘩を終えたか、はたまた最中のゴロ美が居るに違いない。
恋人の自由さにほとほと呆れつつ、小走りでゴロ美姿の真島を探していればそれは存外あっさりと見つかった。
「お!ななしやん!」
『はぁ、やっぱり…』
ななしが歩いていた道の先から、やはりピンクの格好をした真島ことゴロ美が軽やかな足取りで向かってくるのが見えた。
嬉しそうに手を振りながら「待たせてもうてごめんな〜」と、普段より高い声で言う真島。
どこからどうみてもノリノリだ。
「なんや、ウチに会いたくて待っとれんだん?可愛ええなぁほんまに」
『ちょっと、今日は最初からゴロ美ちゃんの格好で飲みに行く予定だったんですか?』
「せやでぇ。この前えろう気に入ってくれたさかい、今日もゴロ美とななしでデートしよかな思てん」
『気に入ったなんていいましたっけ?』
「もう忘れてしもたん?ベッドの上ではあんなに甘えてくれたんに」
『あ、あれは別に気に入ったからとかじゃなくて…!』
この間、初めてゴロ美と邂逅した際に問答無用で押し倒され良いようにされたことを思い出してななしは顔を真っ赤にさせた。
桐生との"筋の通った喧嘩"の後で興奮していたであろう真島は容赦がなく、ゴロ美の姿で散々鳴かされたのは記憶に新しい。
ただそれはこの異様な女装姿が気に入ったという訳ではない。
言うなれば不可抗力だ。
『…もう、ゴロ美ちゃんで来るなら先に言っておいてください!ビックリするんで』
「ヒヒヒッ!それは悪いことしたなぁ。今日はウチが奢るさかい許してや」
『…てか、喧嘩までしてたんですか?女子高生に噂されてましたよ?』
「たまたま桐生チャンと会うてもうてな〜。たまらず手ぇ出してもたんや」
『はぁ、もう少し落ち着いてくださいよ。また怪我もしてるし』
「飲んだ後またななしが優しーく介抱してや。ウチななしに手当されんの好きやねん」
『…手当されるのが好きってなんですか。ゴロ美ちゃんもう少しお淑やかにした方がいいですよ』
「知っとるかななし、お転婆な方がモテんねんでぇ」
『貴方のそれはお転婆とは違うような気がしますけどねぇ』
「どっからどう見てもお転婆娘やん〜」
『自分で言うあたり違う気がしますけど…』
「ま、なんでもええわ。はよ飲みい行くで〜」
『本当に自由人なんだから!』
この前と同様少し口の端が切れており少し痛々しい。
なにが楽しくて喧嘩をするのか、しかもゴロ美の姿で。ななしには到底理解できなかったが、本人は痛がるでもなくいつも通りヒヒヒッと笑っているのでなにも言えない。
百歩譲って喧嘩は良いとして、ゴロ美ちゃんの格好なのは辞めてもらいたいものだ。
隣を歩くのに抵抗がある、終始オネェ口調なのもとても気になる。
それに恋人の自分だけが見れるはずの手袋に隠された手や背中の般若が、街を行き交う全ての人々に目撃されるというのは本当に面白くない。
それらすべては恋人の特権だ。他の誰にも見せないでほしい。
心の奥底ではそう思うものの、声に出して伝えるのはなんだか面白くなくて。
「ななし?なにをそんなにプリプリ怒っとるん?」
『怒ってません!』
「あんま早歩きしとったら転んでまうで。ほら、そこ段差」
『平気ですぅ!』
「どっちがお転婆か分からんなぁ」
『アタシはお転婆じゃないです!』
「少し怪しいわ」
『…ほら、早くバッカス行きますよ!いっぱい飲んでやる!!』
「あんま飲んだら寝てまうで」
『ふーん、その時はゴロ美ちゃんが介抱してください』
「お易い御用や、せやけど飲みすぎたらアカンで」
見ず知らずの人に嫉妬してしまう浅はかな自分に嫌気がさすが、半分はゴロ美のせいでもある。
この心を知って貰いたいような、知られたくないような。悶々とした気持ちを晴らすために今日は沢山飲んでやる。
後のことはお気楽オネェのゴロ美に全部任せて。
「ななし、何飲むん?」
『この店でいちばん強いやつお願いします!!』
「マスター、この子にカシオレひとつ」
『強いやつ!!』
「はいはい、これ飲めたら頼んだる」
『一気します!一気!!』
「阿呆やなぁ〜」
続きます!
今日は外で待ち合わせして、飲みにでも行こう。
そう真島からメッセージが来ていたのは昼頃。休憩中にそのメッセージに気づいたななしは『勿論です』と返信し、逸る思いで午後の仕事を乗り切った。
それからいつも通り定時で仕事を終え記載されていた待ち合わせ場所付近で立ち止まり、ななしは真島が来るのを今か今かと待っている。
少し寒い空の下でぼんやりとしながら今日はどこに行くんだろう、この辺りならバッカスだろうか?と、これかのデートを思いにやけていた。
しばしば真島の事を待っていたが、待ち合わせ時間より少し早くついてしまったせいもあってなかなか現れる気配はない。
真島に限って遅刻ということは無いだろうし後数分もしないうちに必ず来るはずだ。
少し寒い夜ではあったが、後数分。真島が来るまでなら全然待てると冷たくなった手先を擦り合わせて、ななしはぼんやりと街を歩く人々を眺めた。
『(学生さん多いなぁ。今から皆で遊びに行くのかな)』
行き交う人々の中で一際目立つのはやはり学生の集団だろうか。
楽しそうに笑ったり話したりする声がななしのいる場所まで響いてき、子供たちの元気さが伺えた。
寒空でも短いスカートを履き足を出して、友達とカラオケやゲームセンターに行く。お腹がすいたらスマイルバーガーに寄って夜遅くに家に帰る。
今も昔も学生は変わらないのだなぁと楽しそうにはしゃぐ姿を眺めながらななしは懐かしさに目を細めた。
『(青春だなぁ、羨ましいなぁ)』
微笑ましい光景に心が和やかになっていると、立ち止まり真島を待っているななしのすぐ側にも別の制服を着た学生たちがやって来て。
買ってきたドリンクを飲みながら楽しそうな声で喋りだしたのだ。
「ここのドリンク美味しいね〜」
「ね!イチゴの奴美味しいよね!」
「あ、そういえばさぁ…」
「ん??」
別に気になるという訳では無かったが、大きな声でしかも真横で。楽しげに話し出す声を聞いてしまうと、自然と彼女たちの話が耳に入ってきしまって。
別に盗み聞きでは無いのだが、ななしは彼女たちとは反対の方を向きながらも耳だけは話声に集中させていた。
「さっきの人、やばかったよね〜」
「あ!うんうん。喧嘩?してたっぽい?人ね」
「刺青もだし髭もあるのになんであんなに肌出すのって感じ!女装なのかわかんないし」
「確かに。ピンク色のドレス着てたけどちょっと怖かったよね」
「趣味なのかな?」
「趣味なんじゃない?」
「でもスタイル超良かったよね〜。筋肉もあったし。女装してなかったらめちゃくちゃイケメンだったりして〜」
「それは有り得る。でも女装してるんだし女装趣味でしょ。イケメンでも女装好きなのはちょっとね」
「あははは!確かに!もっと綺麗だったらね」
「でもさワンチャン面白い人かもよ?」
「ええ?アンタああ言うのが趣味なの?」
「そういう訳じゃないけど〜」
喧嘩、刺青、髭、極めつけにピンク色のドレス。
耳を澄ませていたななしだが、あまりにも不穏な言葉ばかりが聞こえてきてしまい顔を顰めた。
彼女たちの言っている人物。
スタイルがよくて筋肉もあるのに髭を生やしてピンクのドレスを着ている男。
『(もしかして…またゴロ美ちゃんのかっこうしてるんじゃ…)』
考えなくても直ぐに分かる、その女装の男…この間人だかりを作っていた真島に違いない。
ピンクのドレスを着た刺青の男なんてこの世の何処を探しても絶対に真島しかいない。
彼は桐生と喧嘩をする為なら手段を選ばない。
今回のドレスも桐生と喧嘩をする為だけに作らせたくらいだ。
そんな特注のドレスで女装したお陰で桐生ととてもたのしい喧嘩が出来たと喜んでいたし、彼ならまたやりかねないと思っていたのだが。二回目がこんなにも早く訪れるとはななしさえ予想外。
今日も桐生を巻き込んで喧嘩をしたに違いない。
デート(という名の飲み)に誘ってくれたは良いが、もしかして真島はゴロ美の姿でここに来ようとしていたのか。
時々真島の考えていることが分からなくなるななしは盛大なため息をついた後、学生たちが歩いてきた方向へと走った。
きっとこの先に喧嘩を終えたか、はたまた最中のゴロ美が居るに違いない。
恋人の自由さにほとほと呆れつつ、小走りでゴロ美姿の真島を探していればそれは存外あっさりと見つかった。
「お!ななしやん!」
『はぁ、やっぱり…』
ななしが歩いていた道の先から、やはりピンクの格好をした真島ことゴロ美が軽やかな足取りで向かってくるのが見えた。
嬉しそうに手を振りながら「待たせてもうてごめんな〜」と、普段より高い声で言う真島。
どこからどうみてもノリノリだ。
「なんや、ウチに会いたくて待っとれんだん?可愛ええなぁほんまに」
『ちょっと、今日は最初からゴロ美ちゃんの格好で飲みに行く予定だったんですか?』
「せやでぇ。この前えろう気に入ってくれたさかい、今日もゴロ美とななしでデートしよかな思てん」
『気に入ったなんていいましたっけ?』
「もう忘れてしもたん?ベッドの上ではあんなに甘えてくれたんに」
『あ、あれは別に気に入ったからとかじゃなくて…!』
この間、初めてゴロ美と邂逅した際に問答無用で押し倒され良いようにされたことを思い出してななしは顔を真っ赤にさせた。
桐生との"筋の通った喧嘩"の後で興奮していたであろう真島は容赦がなく、ゴロ美の姿で散々鳴かされたのは記憶に新しい。
ただそれはこの異様な女装姿が気に入ったという訳ではない。
言うなれば不可抗力だ。
『…もう、ゴロ美ちゃんで来るなら先に言っておいてください!ビックリするんで』
「ヒヒヒッ!それは悪いことしたなぁ。今日はウチが奢るさかい許してや」
『…てか、喧嘩までしてたんですか?女子高生に噂されてましたよ?』
「たまたま桐生チャンと会うてもうてな〜。たまらず手ぇ出してもたんや」
『はぁ、もう少し落ち着いてくださいよ。また怪我もしてるし』
「飲んだ後またななしが優しーく介抱してや。ウチななしに手当されんの好きやねん」
『…手当されるのが好きってなんですか。ゴロ美ちゃんもう少しお淑やかにした方がいいですよ』
「知っとるかななし、お転婆な方がモテんねんでぇ」
『貴方のそれはお転婆とは違うような気がしますけどねぇ』
「どっからどう見てもお転婆娘やん〜」
『自分で言うあたり違う気がしますけど…』
「ま、なんでもええわ。はよ飲みい行くで〜」
『本当に自由人なんだから!』
この前と同様少し口の端が切れており少し痛々しい。
なにが楽しくて喧嘩をするのか、しかもゴロ美の姿で。ななしには到底理解できなかったが、本人は痛がるでもなくいつも通りヒヒヒッと笑っているのでなにも言えない。
百歩譲って喧嘩は良いとして、ゴロ美ちゃんの格好なのは辞めてもらいたいものだ。
隣を歩くのに抵抗がある、終始オネェ口調なのもとても気になる。
それに恋人の自分だけが見れるはずの手袋に隠された手や背中の般若が、街を行き交う全ての人々に目撃されるというのは本当に面白くない。
それらすべては恋人の特権だ。他の誰にも見せないでほしい。
心の奥底ではそう思うものの、声に出して伝えるのはなんだか面白くなくて。
「ななし?なにをそんなにプリプリ怒っとるん?」
『怒ってません!』
「あんま早歩きしとったら転んでまうで。ほら、そこ段差」
『平気ですぅ!』
「どっちがお転婆か分からんなぁ」
『アタシはお転婆じゃないです!』
「少し怪しいわ」
『…ほら、早くバッカス行きますよ!いっぱい飲んでやる!!』
「あんま飲んだら寝てまうで」
『ふーん、その時はゴロ美ちゃんが介抱してください』
「お易い御用や、せやけど飲みすぎたらアカンで」
見ず知らずの人に嫉妬してしまう浅はかな自分に嫌気がさすが、半分はゴロ美のせいでもある。
この心を知って貰いたいような、知られたくないような。悶々とした気持ちを晴らすために今日は沢山飲んでやる。
後のことはお気楽オネェのゴロ美に全部任せて。
「ななし、何飲むん?」
『この店でいちばん強いやつお願いします!!』
「マスター、この子にカシオレひとつ」
『強いやつ!!』
「はいはい、これ飲めたら頼んだる」
『一気します!一気!!』
「阿呆やなぁ〜」
続きます!