ミニ小話
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ななしはあまり泣かない。
欠伸をして涙ぐんだり、行為中に生理的な涙を流すことはあっても"悲しくて泣く"という事は滅多にない。
我慢ばかりを強いられるような環境にいるにも関わらずいつもニコニコと笑って、他人を気遣えるななしは真島にとってかけがえの無い大切な存在だ。
そんな愛おしいななしだが、恋人である真島でさえも彼女がシトシト涙を流す姿を殆ど見たことが無い。
元から泣くことが少ないのかもしれないが、それでも真島にはななしが日頃から何かを我慢しているのではないかと思えて仕方がなかった。
"もし彼女が行き場のない悲しみに打ちひしがれた時は傍に居て、涙ごと抱きしめてやろう。"
真島はななしが何かを堪えきれず泣いてしまった時は絶対に傍に居ると決め、その時がいつ来てもいいように心構えをしていた……のだが。
グランドの営業が終了しななしのアパートに行った後。
彼女の風呂を借りて身を清め終わり茶の間に行った時、そこで大粒の涙をこぼすななしを目の当たりにしてしまいあれほど心構えをしていたにも関わらず、驚きのあまり直ぐに行動することが出来ずに石のように固まってしまったのだ。
戸を開いて茶の間に入ったため此方存在に気がついたななしは涙を流す大きな瞳で『あ、真島さん』と振り返り、見上げてくる。
「…ななしっ?」
───なんで泣いとるんや?誰に泣かされたんや?何をされたんや?痛いんか?苦しいんか?
聞きたいことや言いたいことは頭の中で巡って来るのだがあまりにも見慣れない光景に咄嗟に言葉が出せなかった真島は、ななしの顔を凝視し目を見開き固まったまま。名前を呼ぶのが精一杯であった。
『あ、すみません。ビックリしちゃいましたよね』
ななしはそう言うと近場にあったティッシュを使い丁寧に涙を拭った。
未だに目尻は赤いものの涙は止まったらしく拭ってからは溢れてくることはなかった。
『真島さん?どうかしたんですか?』
あまりにも固まったまま動かずにいたせいかななしはキョトンと首を傾げてこちらの顔を覗き込んできた。
どうかしたのか…そう聞きたいのはこちらである。
一体誰に心乱されて泣いていたのか。
ほとんど泣かないななしが泣いていた衝撃から段々と次は彼女を泣かせた誰かへの怒りがふつふつと湧き上がって来た真島。
怒りで震え、全身の毛が逆立つような感覚に苛まれながらも真島は未だにキョトンとしているななしへ歩み寄った。
そのままぎゅうっと小さな体を余すことなく抱きしめ「お前を泣かせたのは一体誰や」と呟く。
聞こえてきた自分の声はあまりにも低く抑揚がない。
『あ、あの…どうしたんですか?お、怒ってますか?』
「…ななしに怒っとる訳やない。ななしを泣かした奴に腹立てとんのや」
『な、泣かした奴…あ!アタシが泣いていたから?あ、あのこれは…誰かに何かされたとかでは無いんです』
「グランドの奴か?庇わんくてええんやでななし」
『ほ、本当に違うんです!』
「何がちゃうねん。現に涙流しとったやないか」
『これは、悲しいから流していた涙ではなく感動して流していた涙ですっ』
「…感動やと?」
『は、はい』
ななしは体を小さくしながらもゆっくりとテレビを指さし『今見てた番組で感動してたんです』とボソボソと自信なさげにそう言う。
「番組…」
『はい…野生動物のドキュメンタリー番組です…』
「……」
『シマウマの壮絶な人生を…馬生?を見てたらとても感動して…気づいたら泣いていました。勘違いさせちゃいましたね』
「シマウマ…」
『シマウマです』
「ほな誰かに何かされた訳でも体のどっかが痛いわけでもないんやな?」
『はい!至って元気ですし職場での皆さんとの関係も良好です!』
ななしが涙を流し泣いていた理由は嫌がらせや人間関係、積もりに積もった物が爆発した…という訳ではなく。テレビ番組を見て感動し泣いていた様であった。
ななしからそう聞いた後。真島の中に込み上げていた怒りはだんだんと落ち着いていき最終的にしぼんで消えていく。
次に心の中に溢れたのは彼女に何事も無くて良かったという安心感。
真島は目の前でえへへと照れて小さくなっているななしを再度抱きしめると、安堵の息を吐いた。
「はぁ、ホンマに良かった…」
『ご心配をおかけしてすみません』
「かまへん。なんもなかったんやさかいそれでええねん」
『ありがとうございます真島さん。いつも気にかけてくれるのが分かるからとても嬉しいです』
「恋人気にかけんのは当たり前やろが。それから、もし我慢ならんくて泣きそうな時はちゃんと俺にいうんやで?」
『ふふふ、はぁい。わかりました!』
腕の中でモソモソと動いたななしは嬉しそうにニコニコと微笑みながら、こちらの背中へと細い腕を回し同じようにぎゅうっと抱きしめてくる。
そのまま胸に顔を引っつけながら『真島さんが側に居てくれるだけで毎日が幸せだから、涙なんて出ないんですけどね』とそう言ったななし。
甘やかな言葉にはななしの優しさと愛情が込められている気がして、真島は堪らず彼女の顎を引っつかむと己の唇を強引に押し当てていた。
───この子が一生泣かないですむような人生を送れるといい
淡い希望を胸に抱きながら真島は必死に答えてくれるななしの後頭部を引き寄せ激しい口付けに酔いしれた。
欠伸をして涙ぐんだり、行為中に生理的な涙を流すことはあっても"悲しくて泣く"という事は滅多にない。
我慢ばかりを強いられるような環境にいるにも関わらずいつもニコニコと笑って、他人を気遣えるななしは真島にとってかけがえの無い大切な存在だ。
そんな愛おしいななしだが、恋人である真島でさえも彼女がシトシト涙を流す姿を殆ど見たことが無い。
元から泣くことが少ないのかもしれないが、それでも真島にはななしが日頃から何かを我慢しているのではないかと思えて仕方がなかった。
"もし彼女が行き場のない悲しみに打ちひしがれた時は傍に居て、涙ごと抱きしめてやろう。"
真島はななしが何かを堪えきれず泣いてしまった時は絶対に傍に居ると決め、その時がいつ来てもいいように心構えをしていた……のだが。
グランドの営業が終了しななしのアパートに行った後。
彼女の風呂を借りて身を清め終わり茶の間に行った時、そこで大粒の涙をこぼすななしを目の当たりにしてしまいあれほど心構えをしていたにも関わらず、驚きのあまり直ぐに行動することが出来ずに石のように固まってしまったのだ。
戸を開いて茶の間に入ったため此方存在に気がついたななしは涙を流す大きな瞳で『あ、真島さん』と振り返り、見上げてくる。
「…ななしっ?」
───なんで泣いとるんや?誰に泣かされたんや?何をされたんや?痛いんか?苦しいんか?
聞きたいことや言いたいことは頭の中で巡って来るのだがあまりにも見慣れない光景に咄嗟に言葉が出せなかった真島は、ななしの顔を凝視し目を見開き固まったまま。名前を呼ぶのが精一杯であった。
『あ、すみません。ビックリしちゃいましたよね』
ななしはそう言うと近場にあったティッシュを使い丁寧に涙を拭った。
未だに目尻は赤いものの涙は止まったらしく拭ってからは溢れてくることはなかった。
『真島さん?どうかしたんですか?』
あまりにも固まったまま動かずにいたせいかななしはキョトンと首を傾げてこちらの顔を覗き込んできた。
どうかしたのか…そう聞きたいのはこちらである。
一体誰に心乱されて泣いていたのか。
ほとんど泣かないななしが泣いていた衝撃から段々と次は彼女を泣かせた誰かへの怒りがふつふつと湧き上がって来た真島。
怒りで震え、全身の毛が逆立つような感覚に苛まれながらも真島は未だにキョトンとしているななしへ歩み寄った。
そのままぎゅうっと小さな体を余すことなく抱きしめ「お前を泣かせたのは一体誰や」と呟く。
聞こえてきた自分の声はあまりにも低く抑揚がない。
『あ、あの…どうしたんですか?お、怒ってますか?』
「…ななしに怒っとる訳やない。ななしを泣かした奴に腹立てとんのや」
『な、泣かした奴…あ!アタシが泣いていたから?あ、あのこれは…誰かに何かされたとかでは無いんです』
「グランドの奴か?庇わんくてええんやでななし」
『ほ、本当に違うんです!』
「何がちゃうねん。現に涙流しとったやないか」
『これは、悲しいから流していた涙ではなく感動して流していた涙ですっ』
「…感動やと?」
『は、はい』
ななしは体を小さくしながらもゆっくりとテレビを指さし『今見てた番組で感動してたんです』とボソボソと自信なさげにそう言う。
「番組…」
『はい…野生動物のドキュメンタリー番組です…』
「……」
『シマウマの壮絶な人生を…馬生?を見てたらとても感動して…気づいたら泣いていました。勘違いさせちゃいましたね』
「シマウマ…」
『シマウマです』
「ほな誰かに何かされた訳でも体のどっかが痛いわけでもないんやな?」
『はい!至って元気ですし職場での皆さんとの関係も良好です!』
ななしが涙を流し泣いていた理由は嫌がらせや人間関係、積もりに積もった物が爆発した…という訳ではなく。テレビ番組を見て感動し泣いていた様であった。
ななしからそう聞いた後。真島の中に込み上げていた怒りはだんだんと落ち着いていき最終的にしぼんで消えていく。
次に心の中に溢れたのは彼女に何事も無くて良かったという安心感。
真島は目の前でえへへと照れて小さくなっているななしを再度抱きしめると、安堵の息を吐いた。
「はぁ、ホンマに良かった…」
『ご心配をおかけしてすみません』
「かまへん。なんもなかったんやさかいそれでええねん」
『ありがとうございます真島さん。いつも気にかけてくれるのが分かるからとても嬉しいです』
「恋人気にかけんのは当たり前やろが。それから、もし我慢ならんくて泣きそうな時はちゃんと俺にいうんやで?」
『ふふふ、はぁい。わかりました!』
腕の中でモソモソと動いたななしは嬉しそうにニコニコと微笑みながら、こちらの背中へと細い腕を回し同じようにぎゅうっと抱きしめてくる。
そのまま胸に顔を引っつけながら『真島さんが側に居てくれるだけで毎日が幸せだから、涙なんて出ないんですけどね』とそう言ったななし。
甘やかな言葉にはななしの優しさと愛情が込められている気がして、真島は堪らず彼女の顎を引っつかむと己の唇を強引に押し当てていた。
───この子が一生泣かないですむような人生を送れるといい
淡い希望を胸に抱きながら真島は必死に答えてくれるななしの後頭部を引き寄せ激しい口付けに酔いしれた。