小話集2
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(支配人/恋人)
「ほな帰ろかななし」そう言って真島はいつもの様に大きな手をななしにへと差し出した。
普段からこうして差し出しされた真島の手を取り二人で帰宅するのだが、今日のななしはその手をなかなか取れずにいた。
目の前でどうしたんだ?と首を傾げる真島に申し訳ない気持ちになるが、ななしにはどうしても手を繋げない理由があった。
『(…今のアタシの手…すごく荒れてるんだよなぁ)』
今のななしは冬から来る乾燥と、グランドで食器洗いに使う洗剤などで酷い手荒れを起こしていた。こまめにハンドクリームを使用し保湿をしてはいるものの、一度ガサガサとささくれてしまった場所はなかなか治ってくれない。
ななしの手は特に指先が荒れておりこのまま真島と手を繋いでしまえば、彼の手にささくれた部分やガサガサとした部分が触れてしまうだろう。
女であるにも関わらず手先も十分にケア出来ていないと知られるのは恥ずかしいし、彼の手に触れて嫌な思いをさせてしまうのもとても気が引ける。
結局ななしは『今日はこのまま帰りましょう!』と変な提案をしてグランドの前の小さな階段を足早に降りた。
『ま、真島さんのおうちですか?』
「ななしがええなら俺んとこでもええで」
『そ、そっか。それじゃぁ真島さんのおうち行きましょう!』
「ええで」
差し出された手は見て見ぬ振りをするしか無く、ななしはそそくさと真島の隣を通り過ぎた。
真島は何を言うでも無く上げていた手を下ろし、歩き出したななしの隣へと駆け寄る。
嫌な顔一つせず居てくれる真島の優しさに感謝しつつも、手を差し出してくれたのに応えられなかった事への罪悪感が凄まじい。
しかしこんな手で真島に触れると言う選択肢はほとんど無い。
ななしは歩幅を合わせて歩いてくれている真島に小さく『ありがとう』と呟くことしか出来なかった。
それから直ぐに真島の住むアパートに到着した二人は部屋の中へと入った。
真島はタキシードを脱ぎハンガーにかけると寛ぐようにワイシャツのボタンを外している。
ななしも人目つかないここならと真島に習い首元のボタンを外した。
そのまま部屋の中で座り仕事での疲れを取るように寛いでいると、徐にワイシャツ姿の真島が目の前であぐらをかき「ななし」とこちらを鋭く見つめてくる。
思わず『はい!』と背筋を伸ばしてしまったななしに対し真島は先程と同じように大きな手を差し出したのだ。
どうしたのかと戸惑っていると「ななし、手ぇ出してや」と真島がそう言う。
しかし荒れ放題の手を差し出すのはかなり憚られなた。
こんなにも女らしくない手を見られるのは恥ずかしいとななしは『う、うーん』と曖昧な返事をしつつ、気まずそうに笑顔を零した。
「ななしが手ぇ気にしとんのは知っとる」
『えっ??』
「仕事中も見とったしな。手に怪我でもしとるんか?」
『そ、そっかアタシそんなにみてたんだ…い、いえ…怪我ではないんです』
「ほな、いったいどないしたんやななし」
『え、えっと…』
どうやら仕事中とても熱心に自分の手を見つめてしまっていたらしい。
これでは手になにかあるのだと言っている様なものだ。
現に真島は手に怪我をしているんじゃないかと心配そうに眉を顰めている。
隻眼があまりにも真剣に、真っ直ぐに心配だと見つめて来るためななしの胸は抉られるほどの自責に苛まれる。
───怪我ではないんです。ただの手荒れなんですっ!
こちらを心配そうに見つめてくる優しい真島にこれ以上手荒れというだけで何も言わずにお茶を濁し続ける事など出来ない。
ただ全てを話してしまうのはかなり気が進まない。もしかしたら彼に手荒れで不快感を与えてしまうかも知れないからだ。
しかしこのまま黙って真島を心配させ続けるよりも本当の事をスパッと言ってしまった方が例え不快感を与えてしまうようなことになったとしても彼も、自分自身もスッキリ出来るのではないか。
ななしはそう思い込むことにして半ばやけくそに手を突き出し真島の手に重ねた。
『あ、あの…怪我じゃないの!…アタシ今凄く手が荒れてて…』
「手荒れ…」
『はい…だからこんなに汚い手で真島さんの手に触れたくなくて繋げなかったんです』
「ななし」
『は、はい』
「汚いなんて言うなや。例えななしでも俺の恋人にそないな事言うたら怒るで」
『あ、ご、ごめんなさい…』
真島の眉間に深い皺ができ隻眼がキリッと釣り上がる。
本当に怒っている時の表情であるとすぐに理解したななしは己の失言に体を縮めると小さく謝罪をした。
勿論自分自身を卑下するような事は言いたくないが、ガサガサしていて見るからに痛々しい手はお世辞にも綺麗とは言い難い。
ただ汚いというのは言いすぎたかもしれないと猛烈に反省していると、重ねていた手が真島の大きな手に包まれた。
ここまでしっかりと握られてしまえば、ささくれた部分などはしっかりと真島の手に触れているだろう。
それがやはり気恥ずかしくて、申し訳なくてななしはギュッと唇を噛み締めた。
しかしななしの気持ちとは裏腹に真島は手を持ち上げるとチュッチュッとリップ音を響かせながらキスを落とすのだ。
驚きの行動に目を剥いていると先程とは打って変わって優しげな眼差しの真島が「汚いわけあるか」とこちらを見つめ眦を下げた。
「いつも沢山働いてくれとるんや。少しくらい手が荒れて当然やろ。頑張ってくれた証、働き者の証やんけ」
『ま、真島さん…』
「その証が汚いなんて絶対に有り得へん。せやからもう二度と汚いなんて言わんでや。次は本気で怒るで」
『わ、分かりました…』
「ななし…ホンマにおおきに、ななしに、ななしの手にいつも助けられとる」
手を労わるように撫でられる。真島の大きな手も少しだけカサついていて、彼の言うように働き者の手なのだろうなとそう思う。
優しく優しく、まるで壊れ物を扱うように丁寧に触れてくる真島の手からは温もりと確かな愛情を感じる。
言葉とその温もりや気持ちが今のななしにはとても心地よく、何故か鼻の奥がツンと痛むようであった。
涙が出そうになるが何とか堪えてななしは『ありがとうございます』とそう呟いく。
絞り出した声もとても震えていた。
「ななし、なんも気にすることあらへんで。せやから明日は手ぇ繋いでな」
『真島さん…ふふ、はい。手を繋いで一緒に帰りましょうね』
「おう、約束やで」
『はい』
フッと口角を上げて笑う真島についつい見惚れてしまう。
いつだって真島は想像以上の愛情を注いで甘やかしてくれる。
それがなんだか自分には勿体ないような気がしてならない。
しかしその優しさにずっとずっと触れていたくて、ななしは傍にある逞しい体にギュッと抱きついた。
『真島さん、ありがとうございます。それから大好きです』
「俺も、愛しとるでななし」
『ふふふ、嬉しい。アタシも愛してます』
抱き締め返してくれる大きな手に心満たされながら、ななしはそっと瞳を閉じたのだった。
(ほなななし。俺ん家来たんやさかい一緒に愛を確かめ合うか)
(た、確かめ合う…つ、つまり…?)
(ん?言わせるんか?ななしの口は悪い口やな)
(悪い口なら塞いだ方がいいかもしれませんね…そう思いませんか?)
(……ほな俺の口で塞いだるわ。ええ案やろ?)
(ふふっ、そうかもしれませんね)
(…あんまり煽らんとって…)
(ふふふ、煽ってないです)
乾燥天敵、冬嫌…。
グランドで食器洗いなどをしているななしちゃんは手荒れが酷いです。
でも支配人が色々労わってくれるし、なんなら甲斐甲斐しく世話してくれます。過保護だね、支配人。
「ほな帰ろかななし」そう言って真島はいつもの様に大きな手をななしにへと差し出した。
普段からこうして差し出しされた真島の手を取り二人で帰宅するのだが、今日のななしはその手をなかなか取れずにいた。
目の前でどうしたんだ?と首を傾げる真島に申し訳ない気持ちになるが、ななしにはどうしても手を繋げない理由があった。
『(…今のアタシの手…すごく荒れてるんだよなぁ)』
今のななしは冬から来る乾燥と、グランドで食器洗いに使う洗剤などで酷い手荒れを起こしていた。こまめにハンドクリームを使用し保湿をしてはいるものの、一度ガサガサとささくれてしまった場所はなかなか治ってくれない。
ななしの手は特に指先が荒れておりこのまま真島と手を繋いでしまえば、彼の手にささくれた部分やガサガサとした部分が触れてしまうだろう。
女であるにも関わらず手先も十分にケア出来ていないと知られるのは恥ずかしいし、彼の手に触れて嫌な思いをさせてしまうのもとても気が引ける。
結局ななしは『今日はこのまま帰りましょう!』と変な提案をしてグランドの前の小さな階段を足早に降りた。
『ま、真島さんのおうちですか?』
「ななしがええなら俺んとこでもええで」
『そ、そっか。それじゃぁ真島さんのおうち行きましょう!』
「ええで」
差し出された手は見て見ぬ振りをするしか無く、ななしはそそくさと真島の隣を通り過ぎた。
真島は何を言うでも無く上げていた手を下ろし、歩き出したななしの隣へと駆け寄る。
嫌な顔一つせず居てくれる真島の優しさに感謝しつつも、手を差し出してくれたのに応えられなかった事への罪悪感が凄まじい。
しかしこんな手で真島に触れると言う選択肢はほとんど無い。
ななしは歩幅を合わせて歩いてくれている真島に小さく『ありがとう』と呟くことしか出来なかった。
それから直ぐに真島の住むアパートに到着した二人は部屋の中へと入った。
真島はタキシードを脱ぎハンガーにかけると寛ぐようにワイシャツのボタンを外している。
ななしも人目つかないここならと真島に習い首元のボタンを外した。
そのまま部屋の中で座り仕事での疲れを取るように寛いでいると、徐にワイシャツ姿の真島が目の前であぐらをかき「ななし」とこちらを鋭く見つめてくる。
思わず『はい!』と背筋を伸ばしてしまったななしに対し真島は先程と同じように大きな手を差し出したのだ。
どうしたのかと戸惑っていると「ななし、手ぇ出してや」と真島がそう言う。
しかし荒れ放題の手を差し出すのはかなり憚られなた。
こんなにも女らしくない手を見られるのは恥ずかしいとななしは『う、うーん』と曖昧な返事をしつつ、気まずそうに笑顔を零した。
「ななしが手ぇ気にしとんのは知っとる」
『えっ??』
「仕事中も見とったしな。手に怪我でもしとるんか?」
『そ、そっかアタシそんなにみてたんだ…い、いえ…怪我ではないんです』
「ほな、いったいどないしたんやななし」
『え、えっと…』
どうやら仕事中とても熱心に自分の手を見つめてしまっていたらしい。
これでは手になにかあるのだと言っている様なものだ。
現に真島は手に怪我をしているんじゃないかと心配そうに眉を顰めている。
隻眼があまりにも真剣に、真っ直ぐに心配だと見つめて来るためななしの胸は抉られるほどの自責に苛まれる。
───怪我ではないんです。ただの手荒れなんですっ!
こちらを心配そうに見つめてくる優しい真島にこれ以上手荒れというだけで何も言わずにお茶を濁し続ける事など出来ない。
ただ全てを話してしまうのはかなり気が進まない。もしかしたら彼に手荒れで不快感を与えてしまうかも知れないからだ。
しかしこのまま黙って真島を心配させ続けるよりも本当の事をスパッと言ってしまった方が例え不快感を与えてしまうようなことになったとしても彼も、自分自身もスッキリ出来るのではないか。
ななしはそう思い込むことにして半ばやけくそに手を突き出し真島の手に重ねた。
『あ、あの…怪我じゃないの!…アタシ今凄く手が荒れてて…』
「手荒れ…」
『はい…だからこんなに汚い手で真島さんの手に触れたくなくて繋げなかったんです』
「ななし」
『は、はい』
「汚いなんて言うなや。例えななしでも俺の恋人にそないな事言うたら怒るで」
『あ、ご、ごめんなさい…』
真島の眉間に深い皺ができ隻眼がキリッと釣り上がる。
本当に怒っている時の表情であるとすぐに理解したななしは己の失言に体を縮めると小さく謝罪をした。
勿論自分自身を卑下するような事は言いたくないが、ガサガサしていて見るからに痛々しい手はお世辞にも綺麗とは言い難い。
ただ汚いというのは言いすぎたかもしれないと猛烈に反省していると、重ねていた手が真島の大きな手に包まれた。
ここまでしっかりと握られてしまえば、ささくれた部分などはしっかりと真島の手に触れているだろう。
それがやはり気恥ずかしくて、申し訳なくてななしはギュッと唇を噛み締めた。
しかしななしの気持ちとは裏腹に真島は手を持ち上げるとチュッチュッとリップ音を響かせながらキスを落とすのだ。
驚きの行動に目を剥いていると先程とは打って変わって優しげな眼差しの真島が「汚いわけあるか」とこちらを見つめ眦を下げた。
「いつも沢山働いてくれとるんや。少しくらい手が荒れて当然やろ。頑張ってくれた証、働き者の証やんけ」
『ま、真島さん…』
「その証が汚いなんて絶対に有り得へん。せやからもう二度と汚いなんて言わんでや。次は本気で怒るで」
『わ、分かりました…』
「ななし…ホンマにおおきに、ななしに、ななしの手にいつも助けられとる」
手を労わるように撫でられる。真島の大きな手も少しだけカサついていて、彼の言うように働き者の手なのだろうなとそう思う。
優しく優しく、まるで壊れ物を扱うように丁寧に触れてくる真島の手からは温もりと確かな愛情を感じる。
言葉とその温もりや気持ちが今のななしにはとても心地よく、何故か鼻の奥がツンと痛むようであった。
涙が出そうになるが何とか堪えてななしは『ありがとうございます』とそう呟いく。
絞り出した声もとても震えていた。
「ななし、なんも気にすることあらへんで。せやから明日は手ぇ繋いでな」
『真島さん…ふふ、はい。手を繋いで一緒に帰りましょうね』
「おう、約束やで」
『はい』
フッと口角を上げて笑う真島についつい見惚れてしまう。
いつだって真島は想像以上の愛情を注いで甘やかしてくれる。
それがなんだか自分には勿体ないような気がしてならない。
しかしその優しさにずっとずっと触れていたくて、ななしは傍にある逞しい体にギュッと抱きついた。
『真島さん、ありがとうございます。それから大好きです』
「俺も、愛しとるでななし」
『ふふふ、嬉しい。アタシも愛してます』
抱き締め返してくれる大きな手に心満たされながら、ななしはそっと瞳を閉じたのだった。
(ほなななし。俺ん家来たんやさかい一緒に愛を確かめ合うか)
(た、確かめ合う…つ、つまり…?)
(ん?言わせるんか?ななしの口は悪い口やな)
(悪い口なら塞いだ方がいいかもしれませんね…そう思いませんか?)
(……ほな俺の口で塞いだるわ。ええ案やろ?)
(ふふっ、そうかもしれませんね)
(…あんまり煽らんとって…)
(ふふふ、煽ってないです)
乾燥天敵、冬嫌…。
グランドで食器洗いなどをしているななしちゃんは手荒れが酷いです。
でも支配人が色々労わってくれるし、なんなら甲斐甲斐しく世話してくれます。過保護だね、支配人。