ミニ小話
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『いっ!!?……う、うぅ…』
真島と共に彼が住むアパートに帰ってきていたななしは訪れる痛みと衝撃にその場に蹲っていた。
打ち付けた箇所は足の小指。
歩く勢いそのままにぶつけた小指はジンジンと熱を持ち涙が零れそうな程痛む。
『痛い…』
ななしが小指をぶつけたのはこのアパートに置いてある数少ない家具で茶色のカラーボックス。
真島の吸うタバコとライター、グランドで使うであろう名刺入れや蝶ネクタイが適当に置かれている。
恋人のアパートの中で唯一生活感のあるカラーボックスだが、小指をぶつけた今だけは恨めしくて仕方ない。
小指を抑えなんとか耐えるが痛いものは痛い。
そのうち我慢ならず膝を抱えるようにしてその場に倒れななしは痛みを発散するようにゴロゴロと転げ回った。
『うー、痛いーっ』
「ななし、さっきからどないしたん…ななし!?」
トイレから戻ってきた真島は涙を浮かべ地面を転げ回るななしを見るやいなや血相を変えて彼女へと駆け寄った。
「何があったんや!ななし」
『うっ、真島さんっ、このカラーボックスに小指をぶつけちゃって』
その場にしゃがみこんだ真島に支えられ、ぶつけた方の足を緩く上げたななし。
脈打ちドクドクと痛むが爪も割れていないし、血も出ていない。
痛みはなかなか引かないが大きな怪我でなかった事は不幸中の幸いだと、ななしはホッと深く息をついた。
「可哀想に赤うなってもうとるやんけ…」
『で、でもだんだんマシになって来ました…はぁ、良かったぁ』
「良くないわ。ななしの綺麗な足に痕でも付いたらどないすんねん!」
『ふふっ、痕にはなりませんよ。傷はなさそうですし』
「せやけど少し腫れとるように見えるで」
『多分今だけでもう少ししたら腫れも引くかと思います』
「ほうか。それまで俺に出来ることがあればええんやけどな」
『大丈夫。そのお心遣いだけで充分ですよ』
「ななしはホンマに我慢強い子やで」
『ん〜、真島さんっ』
合わせてしゃがんだ真島は両腕で目の前にいるななしをぎゅっと抱きしめた。
力強く逞しい腕に抱きしめられたまま真島に後頭部をさすさすと撫でられるとそれだけでジンジンとしていた小指の痛みも薄れていく。
ななしは痛みを和らげる真島の魔法の様な手が心地よくて、うっとりと目を細めた。
『真島さん、ありがとう。随分痛み引きました』
「ホンマか?我慢してへんか?」
『本当です。もうパッシー君並に走れますよ!』
「ふっ、そないな事せんでもええ。せやから大人しいしとってな」
『ふふっ、確かにそうですね。大人しくしときます』
「ほな、ちょっとだけ待っとってやななし。"ゴミ"の処分だけしてくるさかい」
『あ、はい。ゴミ出しならアタシもなにかお手伝いしましょうか?』
「ん?かまへん。ここで待っといて。数秒で終わるさかい」
『分かりました』
真島の腕が離れていくのはとても寂しいが、ゴミ出しならば仕方がない。
直ぐに終わると言っているのだからこの場で待っていようとななしはその場で三角座りし待機する。
『…あれ…でも今日は確か…』
真島がガサゴソと準備をする姿を横目に見ながらそもそも今日が収集日出ないことを思い出したななし。
真島が言うゴミの処分がどういう事なのかを確かめるべく彼の行動を見ていると、カラーボックスの中にある小物を取り出し窓枠へ並べ始めた。
そのまま全ての小物を取り出し並べ終えたあと、置かれていたカラーボックスそのものを持ちあげた真島。
『えっ、あ、ゴミってまさかっ』
「おう、こんなもんもう要らんやろ。ここはななしが健やかに過ごせる場所でないと意味ないしな」
『え…えー!?い、いいんですか!?』
「人の女に傷つけたんやさかいケジメつけなアカンやろ?人も物も変わらへん」
『な…なるほど?』
どうやら真島が言っていたゴミとは、想像していた家庭ゴミではなく小指をぶつけたカラーボックスのことだったらしい。
ニコニコと笑顔のまま片手でカラーボックスをアパートの外へと持ち出していく真島の後ろ姿にななしは『ははは』と乾いた笑いが零れた。
つい先日指を切ってしまった時も真島はグランドの包丁をすべてプラスチックにすると言ったり、小さな怪我に包帯を使おうとしたり…とてつもない過保護っぷりを披露してくれた。
今日もたんに小指をぶつけただけなのに、カラーボックスを危険物だと判断し捨てることを選んだらしい。
少しばかり過保護すぎるのではないか、ここまでされなくても大丈夫なにの…と、大袈裟な真島を見つめた。
『あ、あの…いいんですか?』
「ん?別に思い入れもないしええで。それよりななしが怪我せん方が万倍もええやろ」
『真島さんのお家なんだからアタシが暮らしやすいじゃなく、貴方が暮らしやすいようにしてあげてください。カラーボックスだって必要ですよぅ』
「俺に必要なのはななしだけや。別に他はなくても困らん。むしろそんななくても困らんもんで一番必要なもんが傷つくんやったらなんも置かん方がマシや」
『ま、真島さん…いいんですか?』
「ええに決まっとる」
『ふふっ、少し過保護すぎますよぅ』
「嫌か?」
『んー、嫌じゃないです。寧ろ嬉しいけど…自分の事も大事にしてあげて欲しいなぁ』
「ななしは優しいのぉ」
優しいのは絶対に真島さんの方だ。
そう言ってやろうと口を開くななしだったが、言うよりも先に再び真島に抱きしめられてしまった。
『(まぁ…過保護なのは悪いことでは無いのだけど…)』
愛されていると、大切にされていると分かるため過保護にされる事自体は悪いことでは無い。
寧ろななしにとっては喜ぶべきことだ。
ただ真島は少し度が過ぎる。
このままではいつか恋人でなく、立ち位置がお父さんなってしまう日が来るかもしれない。
『パパって呼んじゃいますよ』
「……それもアリかもしれへん」
『え!?』
どこか満更でもなさそうに笑っている真島にななしは苦笑いを零した。
真島と共に彼が住むアパートに帰ってきていたななしは訪れる痛みと衝撃にその場に蹲っていた。
打ち付けた箇所は足の小指。
歩く勢いそのままにぶつけた小指はジンジンと熱を持ち涙が零れそうな程痛む。
『痛い…』
ななしが小指をぶつけたのはこのアパートに置いてある数少ない家具で茶色のカラーボックス。
真島の吸うタバコとライター、グランドで使うであろう名刺入れや蝶ネクタイが適当に置かれている。
恋人のアパートの中で唯一生活感のあるカラーボックスだが、小指をぶつけた今だけは恨めしくて仕方ない。
小指を抑えなんとか耐えるが痛いものは痛い。
そのうち我慢ならず膝を抱えるようにしてその場に倒れななしは痛みを発散するようにゴロゴロと転げ回った。
『うー、痛いーっ』
「ななし、さっきからどないしたん…ななし!?」
トイレから戻ってきた真島は涙を浮かべ地面を転げ回るななしを見るやいなや血相を変えて彼女へと駆け寄った。
「何があったんや!ななし」
『うっ、真島さんっ、このカラーボックスに小指をぶつけちゃって』
その場にしゃがみこんだ真島に支えられ、ぶつけた方の足を緩く上げたななし。
脈打ちドクドクと痛むが爪も割れていないし、血も出ていない。
痛みはなかなか引かないが大きな怪我でなかった事は不幸中の幸いだと、ななしはホッと深く息をついた。
「可哀想に赤うなってもうとるやんけ…」
『で、でもだんだんマシになって来ました…はぁ、良かったぁ』
「良くないわ。ななしの綺麗な足に痕でも付いたらどないすんねん!」
『ふふっ、痕にはなりませんよ。傷はなさそうですし』
「せやけど少し腫れとるように見えるで」
『多分今だけでもう少ししたら腫れも引くかと思います』
「ほうか。それまで俺に出来ることがあればええんやけどな」
『大丈夫。そのお心遣いだけで充分ですよ』
「ななしはホンマに我慢強い子やで」
『ん〜、真島さんっ』
合わせてしゃがんだ真島は両腕で目の前にいるななしをぎゅっと抱きしめた。
力強く逞しい腕に抱きしめられたまま真島に後頭部をさすさすと撫でられるとそれだけでジンジンとしていた小指の痛みも薄れていく。
ななしは痛みを和らげる真島の魔法の様な手が心地よくて、うっとりと目を細めた。
『真島さん、ありがとう。随分痛み引きました』
「ホンマか?我慢してへんか?」
『本当です。もうパッシー君並に走れますよ!』
「ふっ、そないな事せんでもええ。せやから大人しいしとってな」
『ふふっ、確かにそうですね。大人しくしときます』
「ほな、ちょっとだけ待っとってやななし。"ゴミ"の処分だけしてくるさかい」
『あ、はい。ゴミ出しならアタシもなにかお手伝いしましょうか?』
「ん?かまへん。ここで待っといて。数秒で終わるさかい」
『分かりました』
真島の腕が離れていくのはとても寂しいが、ゴミ出しならば仕方がない。
直ぐに終わると言っているのだからこの場で待っていようとななしはその場で三角座りし待機する。
『…あれ…でも今日は確か…』
真島がガサゴソと準備をする姿を横目に見ながらそもそも今日が収集日出ないことを思い出したななし。
真島が言うゴミの処分がどういう事なのかを確かめるべく彼の行動を見ていると、カラーボックスの中にある小物を取り出し窓枠へ並べ始めた。
そのまま全ての小物を取り出し並べ終えたあと、置かれていたカラーボックスそのものを持ちあげた真島。
『えっ、あ、ゴミってまさかっ』
「おう、こんなもんもう要らんやろ。ここはななしが健やかに過ごせる場所でないと意味ないしな」
『え…えー!?い、いいんですか!?』
「人の女に傷つけたんやさかいケジメつけなアカンやろ?人も物も変わらへん」
『な…なるほど?』
どうやら真島が言っていたゴミとは、想像していた家庭ゴミではなく小指をぶつけたカラーボックスのことだったらしい。
ニコニコと笑顔のまま片手でカラーボックスをアパートの外へと持ち出していく真島の後ろ姿にななしは『ははは』と乾いた笑いが零れた。
つい先日指を切ってしまった時も真島はグランドの包丁をすべてプラスチックにすると言ったり、小さな怪我に包帯を使おうとしたり…とてつもない過保護っぷりを披露してくれた。
今日もたんに小指をぶつけただけなのに、カラーボックスを危険物だと判断し捨てることを選んだらしい。
少しばかり過保護すぎるのではないか、ここまでされなくても大丈夫なにの…と、大袈裟な真島を見つめた。
『あ、あの…いいんですか?』
「ん?別に思い入れもないしええで。それよりななしが怪我せん方が万倍もええやろ」
『真島さんのお家なんだからアタシが暮らしやすいじゃなく、貴方が暮らしやすいようにしてあげてください。カラーボックスだって必要ですよぅ』
「俺に必要なのはななしだけや。別に他はなくても困らん。むしろそんななくても困らんもんで一番必要なもんが傷つくんやったらなんも置かん方がマシや」
『ま、真島さん…いいんですか?』
「ええに決まっとる」
『ふふっ、少し過保護すぎますよぅ』
「嫌か?」
『んー、嫌じゃないです。寧ろ嬉しいけど…自分の事も大事にしてあげて欲しいなぁ』
「ななしは優しいのぉ」
優しいのは絶対に真島さんの方だ。
そう言ってやろうと口を開くななしだったが、言うよりも先に再び真島に抱きしめられてしまった。
『(まぁ…過保護なのは悪いことでは無いのだけど…)』
愛されていると、大切にされていると分かるため過保護にされる事自体は悪いことでは無い。
寧ろななしにとっては喜ぶべきことだ。
ただ真島は少し度が過ぎる。
このままではいつか恋人でなく、立ち位置がお父さんなってしまう日が来るかもしれない。
『パパって呼んじゃいますよ』
「……それもアリかもしれへん」
『え!?』
どこか満更でもなさそうに笑っている真島にななしは苦笑いを零した。