恋愛偏差値の計り方、ここテストに出ます



　伊黒小芭内（２６）は、スマホの振動に素早く画面を確認した。

　そろそろ彼女からの連絡か、と思えば通知バナーには悪友の名前と「小芭内over night!!」という最高にツマラナイ内容が見えた。

　冬野の性格的に、既に一人呑みして相当にススんでいるようだと判断して伊黒は席を立った。

　何しろ単なる悪友だけではなく、後輩の彼女を紹介されたという弱みまで握られている。拒否権などない。

　周囲にまたそそくさと帰宅かと冷やかされながら、電車の時刻をスマホで確認する。

　向こうの都合で空港に適度に近い駅なのは、毎度のことだ。


「不死川、もしかしたら後で呼ぶかもしれん」

「あ？あの人か？」


　同僚は察しがいい。

　とはいえ、伊黒から積極的に指名したことでおよそ検討がつくのだろう。


「どうも今夜はそうとう長いことになりそうだ」

「伊黒、キー置いてけ。自分の車置いたら、代行代わりにおまえんとこに車も車庫に置いといてやらぁ」


　外見にそぐわぬきめ細かい配慮に感謝して、伊黒はキーを放った。

　さて、今日は午前中に帰宅できるだろうか。



テキスト１


「おっそーい、伊黒ーー、とりま揚出しと焼き鳥頼んでおいた」

「これでも最速で乗り換えたんだ……って、今どんだけ呑んでる冬野」

「んー、生を大ジョッキで２杯のあと、コークハイを２杯目？」

「眼の前に見えるのは日本酒に見えるが？」

「だから、ビールとコークハイからの日本酒だってば」


　うわばみの友人だとは分かっているが、一人呑みにしてはペースが早すぎる。

　ちゃんぽん呑み。しかも経験上、呑みながら自分は食べないスタイル。

　伊黒は小さくため息をついた。

　冬野雪姫は伊黒の悪友で、付き合いは友達として一番長い。

　遡れば小学校から何度もクラスを一緒になって、この歳になるまでなんだかんだと付き合いが続いているいる内の数少ない友人である。