サーモン&ラディッシュ[冨岡夢連載]
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③
力の加減は充分にした、逆に加減をしないと竹刀でも殺せる自信がある。
不死川が叩きのめした集団を一箇所へ放り出した。
「てめぇらのツラぁ覚えたからなァ、二度とここいらに足踏み入れてみろ。千切るぞ」
何処をとも言ってはいないが、その恫喝で意味は通じる。
痣と打ち身だけの姿で、打ち据えられた全員が無言でこくこくと頷く。
義勇は打ち据えるだけに留めているが(それでも殺傷力はある)不死川のやり方は、拳固で骨までヒビくらい入っていそうだ。
いや、しかし、外見だけでは分からない部分をあますことなくボコボコにしている宇髄のやり口のほうがえげつないのか。
「これだからお前らは、信用しない、信用しない。取りこぼしが居ただろうが」
「二度言うことかよ、伊黒!」
「まあ、実際取りこぼしていたのは、すまん」
「何をいい子ちゃんしてやがる、冨岡ぁ!!!」
伊黒が数人、気絶している人間を引きずってきて合流した。
登校してすぐ宇髄が校舎裏に行くのは、何もサボりだけではなく。
雪姫をストーキングする成金から、金やらなにかを握らされた連中が密かに潜り込んでいるのを燻り出す日課なのだ。
しかしそれを当の本人に知られたら気に病むことは必須。
なので、内々にはしているのだが、うっかり外部に漏れて大会出場権をとられた宇髄の二の舞だけは避けるべく、けして他言しませんという宣誓を動画で納めるのと、念書と住所を書かせたものに拇印まで取るのは伊黒の案だ。
「面白くねえ」
「雪姫に知られない為だ」
「こいつらのことじゃねえよ、てめぇだ、冨岡!!」
「?」
「授業終わりのチャイムでクラウチングスタートでもしてんのか、てめぇ。今日も俺の取り分が少ねぇじゃねえか!!」
「暴れたりないのを人のせいにするな、部活で発散しろ」
「そういう話じゃねーだろうが!!」
不死川の怒りのポイントがわからないので、義勇は「頼むからほどほどにしろよー」と2階からヒソヒソと声をかけてくる顧問に一礼した。
全員が外にいるわけにはいかないので、今頃は宇髄が雪姫を教室の外で出待ちしているはずだ。
次の授業の化学で実験があるために、ジャージに着替えているので、そうしたときの出待ちは義勇か宇髄になっている。
何故だか知らないが不死川による断固拒否と、伊黒の「品性を疑われたくない」との申告で、雪姫の警護はローテが出来つつあった。
三年である宇髄が卒業したら、中等部から煉獄が高等部へ上がってくるので問題はないだろうと、雪姫本人が知らない間に来年度まで折り込み済み。
過保護だ、と雪姫は既に言っている。
しかしそれは義勇を、部員たちを分かっていない。
過保護でいたいのだ。頼まれずとも。
何もしなくてもいいと言われても、自分がやれることを探し続ける姿に
部員に知られないように、顔色が真っ青でも笑顔で振る舞う姿に
試合をする姿を、熱を帯びたその視線で追われれば
どれほどかやりたくても出来ない、その辛さが我慢してきたのかわかってしまったから。
何も知らない人間たちは家の財力に頼っていると雪姫を責める、そういうものに一言も言い返さない勁さ。
そして、その責められる家から”必要ない”と出されても、泣いて蹲ることを自分に良しとしない。
何より押しかけてくる、自称許嫁が金で雇ってるゴミどもに何を依頼したかなど雪姫には知らせたくなかった。
知ったあとの部活内が、あまりに殺伐としていたせいで部長が要らない廃材を集めてきて、全員無心で廃材を叩きのめしていたほどだ。
不死川に至っては素手のせいで、帰宅中は雪姫にバレないようにズボンのポケットから手をしまったままだった。