サーモン&ラディッシュ[冨岡夢連載]
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武士なら切腹したい気持ちになったが、現代日本でそんなことをしてもスプラッタ事件にしかならない。
宇髄を先頭に、同級の実弥、義勇、伊黒、後輩の煉獄までが竹刀片手に顔色を変えて雪姫を囲み、全員の視線だけで闖入者は刺し殺せるレベルだった。
だが、残念すぎるのは自称婚約者が、紀元前の生き物より感覚が鈍かったことと、執念だけは一般人より強かったことだ。
成金二聖、実弥たちはもう”なりきんにせい”と呼ぶが(正しい読み方はなりがねにせいだが、対して変わらない)その後もしばしばと訪れて、部内の殺意を育てることだけには役に立っていた。
そこから、元より体に負担をかけてはいけないという空気が、部員は全員成金から雪姫を守るべし、というルールに上書きされ始め。
なんなら宇髄の字で、張り出されたのを見かけた時はさすがに雪姫も無言回収したが、言われるまでもないという同級生たち。
それが申し訳なくて、形だけのマネジを辞めた。
それでも、部員たちは今もルール遵守のまま。
少々細かいことにしつこい伊黒が、「どう接したほうが困らせないか?」と直に聞いてくれたことに、雪姫は笑った。
部内の空気が逆に雪姫を困らせていることを、伊黒ならでは気遣ってくれたのがよく伝わる。
実弥は聞くまでもないという前提で、過保護上等・喧嘩上等のまま自分の面構えも込みで戦闘隊長的なポジションのままだ。
そして義勇が、一番顔に出ていないのに甘やかしでは実弥を越える細やかさを見せる。
何しろ雪姫の最大の秘密を知られた仲だ。
我慢せずに言いたいことは内緒なしに言えという、それは秘密を他言しない二人だけのマイナールール。
成金との婚約を正式に破棄を願い出たら、親の反応は真冬より冷ややかだった。
政略結婚が受け入れられないなら、存在する意味がない。
だから今まで投資した金が無駄になったと。
大学までは金はだしてやるが、冬野の家の人間だとは認めない、そう言い切った。
そして次の日、なんの気なく「ただいま」と帰宅した雪姫へ、不思議そうに聞いたのだ「何故帰ってきたんだ?」と。
一瞬意味がわからなかったが、、絶縁=家に実際に居てはいけない=他人になった、という親の理解をようよう飲み込んで
着の身着のまま外に放り出されて困った所に、義勇の姉の蔦子と義勇が通りがかり、まるで捨て猫でも拾うより簡単に雪姫を家に招いてくれた。
そうして冬野家とは、大量の新品制服と授業費用の関係と、家賃相当の入った銀行口座だけが送られてくる関係となった、実家などもうない。
そして蔦子が笑顔を武器に、空き家だった冨岡家の隣家を雪姫へ貸し出すように手配してくれたお陰で、現在一人暮らし状態――ということは、冨岡家しか知らない。
実弥や宇髄に知られたら、実家と別荘が跡形もなくなるかもしれない。冗談抜きで。