「雪姫、あんたの携帯鳴ってるわよ〜、また夜久くん？それとも研磨くん？あ！鉄朗くんかもよ〜」

なんで、娘にそんな重要事項突きつけておいて、そんなあっさり現実に戻すんだよ、親！！！

絶縁してやりたいわ！！！

まさか、今の衝撃を分かち合える、悲しいが唯一の人物であろうか……？

おそるおそるスマホをみると、着信相手は夜久衛輔であった。

幼稚園から、中学まで一緒の悪友。午前中編入合否を知らせて、買い物に出かけたのはコイツである。

「衛輔！！！」

「よー、おまえに貸してたバックさぁ、あとで返しにこいよ」

「…………あんたの平和が恨めしい…………」

「はあ？」

思えば、衛輔と音駒高校の下見にもいったんだった……！

中学の友人には「夜久くんと付き合ってんの！？」とか何回言われたか。

友人だって。ていうか、悪友なんだって。
異性の意識？御座いませんが？？それがなんだ。

――そういえば、研磨も音駒なんだっけ？

……まあ、研磨もテツに近いっていうか、ぶっちゃけ気が抜けるのよね。
無害そのもの！って感じだし、田舎暮らしの一年間は、夜中めっちゃオンラインゲームでパーティを組んで荒稼ぎしたものだけど……。元はテツ経由で知り合ったんだっけ？

いや、まあ学年違えばあんまし会えないだろうが。

「ねぇ、あたしさぁ、なんで編入先に第二志望の私立いかなかったかなー。制服可愛いとことかさー」

「いきなり何言ってんだよ。つうかいきなり、目指せスローライフ！っていって田舎高校に行ったかと思えば、やっぱりギブ！！ぷりーず便利！トーキョー帰りたい！って言ってたのおまえじゃん。俺がいるなら生きやすいからとりま音駒かなーとか、雑な判断で編入してきたのお前だろ」

言ったけどさあ。
言ったけどもさぁ？？

こんなこと知ったら過去の自分についても苦情申し立てもしたいじゃないの。
訴えて、殴りたくもなるじゃないの。

都内ならどこでもいいや、ひゃっふー！WiFiスポットとかあるんだぜ！みたいな電波に飢えた脳みそだったんだよ、イカれてたの！！

むしろ、衛輔が冷静に決めるように誘導すべきだと思うね！あーあ、責任転嫁って楽しい！！

はーーーー、どうしよ。衛輔にこの親からのありえな難題、聞いてもらおうかなあ。

でも、どーせ「いいじゃん、おまえの引き取り先が決まってて。良かったな」とかいうに違いないんだよ、あの正直野郎ーーー！

なんであたしと衛輔が親友かって？

あたしの毒舌で一向に気後れしないでやりあえるのがアイツだからだよ！！

だから異性とか一切気にしてないし、周囲が何を勝手に騒ごうと、我々は世間だとか教師だとか知人だとかに容赦というものをナシにしてマイペースにやってきてたのさ。

「なに？編入受かっておいて今更他がいいとかいう感じ？」

「うん、しかもあたしはなんら悪くないのに、親のバカヤローみたいなね」

「……？意味わかんねえ。おまえ、大丈夫か？」

文脈みると、心配してる風に見えるだろーが、ニュアンスは「てめー頭正気か」という感じだ。

我が悪友はいたって普通の日常ライフを送っていると見える。

クソ羨ましい。

あいつにも突然親から、「もっちゃん、あなたにフィアンセよ」とか衝撃の告白でも落ちればいいのに。

そうすれば、ブルータスおまえもか、ってなぐあいであたしと衛輔は悪友として共に、不条理なリアルの打倒へと立ち向かえるのに…………！！

ガッテム、おまえだけ平和なんてどういうことだ、この野郎！

「……いまどき、さぁ……」

「ん？あ、俺からの通話で長電話すんなっていってんだろ。バック明日な、じゃ」

切りやがった……！人が、人生かかった重要事項告げる前に！！
そんなん気にするなら通話アプリでもLINE電話でもしろや！！ばか！！

もう人間なんて信じられない……！
オーケイあたし、信じられるのはオノレのみよ！！

っつーか！！
あたしの平和はどこだーーーーーーーーーーー！！！






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次ターン黒尾サイド。
しばらく可哀想ですが、お付き合いください……！
やっくんが書きやすすぎて予想より長話になりました……←要件だけでガチャんさせるつもりだった