その作業を終えて、斜めから視線を受けていることに気が付くと、テツだった。

にっこりはいらねーよ、まだ初対面装わないといけないのに、なにを満面の笑みを咲かせてるんだおめーは！

気が付かないふりをして、ふんとその視線断ち切ってやる。

あいつーーー、さては親から地獄のいいなずけ申告されてないのか？
あのダークイベント未体験？！！それだけでも処刑したいんですけど？？

どうすんの電話じゃなく、同じ学校になったね？ってだけなのか、あいつ……。

そうじゃなきゃ、あんな風にのほほんで笑ってくるとか考えられないし。

うちの親も、多分とかあやふやだったし、この問題で悩んでるのはまさかのあたしだけだってのか！

あの低音ボイス黒尾め！！奴のショタ期から一緒にいたが、なんであんなセクハラボイスに育ったのかさっぱりわからん！！

じゃなくて。それはいいんだよ、今は！！

なおさら、密かに連絡しないことにはしょうがないじゃないの！
なんか、あたしばっか振り回されてるんですけど。 腹に拳でぐーぱんしてやろうかな。

「あ……っ！」

うん？

声がして、見るとテツの隣の女子生徒が、床に崩れ落ちていた。

え、貧血ですか？
神からデバフ降ってきました？あるよね〜！あるある。
じゃなーーい！！

「先生、保健室につれていきましょう！！」

挙手して思わず叫んでしまったが、この際気にしてらんないっての！

「そ、そうだな……」

「えーっと、でもそうとう具合悪そうだし！！そこの名前知らないけど図体デカいタレ目と寝癖の酷い隣の男子！あなたも手伝って！階段で転んだりしたら大変でしょ！？いいですね、先生！！」

まだ保健委員とかクラス委員とか決める前だったけど、あたしがつかつか言って倒れた子に手を貸しつつ、念押ししてそらっとぼけて呼んだテツに反対側を支えさせる。

「じゃあセンセイ！保健室連れて寝かせてから戻ってきます！！」

具合悪い人を助ける人間にしては生き生きとしすぎたか？まあ、しゃーない。

倒れた子には悪いけど、この子を口実にテツと接触完了だ！！！

教師もあたしの勢いに押されたか、なんかそのまま気圧されてるのをいいことに、テツと一緒に倒れた子を運ぶ。