恋愛電波シグナル
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熱を帯びた風が、流れずに顔にまとわりつく。その重苦しい空気に、思わずため息を吐いた。
「……すっごい邪魔」
先程まで、盛大に騒いでいた友人たちの熱気も、その原因の大元である彼氏――黒尾鉄朗の熱量も、雪姫には気が重い。
友人から、彼氏彼女という関係の名称が変わったばかりの立場とはいえ、雪姫にとって何故そんなに目まぐるしく変化していくのか、今ひとつ理解が出来なかった。
――気持ちが変化したわけじゃないのに。
友達からのちょっかいは、嫉妬羨望好奇心のあらゆる感情のミックスされた質問ばかり。まだ、それらは何となく理解は出来る。
だが、友人から彼氏に変わった黒尾の変化が全くわからない。今までと同じ感覚で周囲と接しているのに、他のクラスメイトと距離が近いだの無防備だのと、短い休み時間すら囲いこまれるようにガードされるせいで、こうした男女別れる体育の時間の合間に大勢に冷やかされる。
[恋愛電波の受信シグナル]
「ちょっといいですか、黒尾さん」
「突然他人行儀になんでしょうか、雪姫さん」
「そろそろウザイんですけど?」
部活前の着替え中に、黒尾のジャージがカーテンのようにかけられて、却って身動きがとれず着替えごときに15分もとられる始末。
「ウザ……ウザイって言われたの、まさか俺?!」
「いや、他に誰がいるのかと」
そんな馬鹿な!と膝から崩れ落ちる黒尾の頭を、珍しく見下ろす光景にそのつむじを押してみる。
「嫌われてやんのー!ブロックも恋もしつこいんじゃねぇのー?」
「しつこいんじゃないんですぅ〜粘り強いんですぅ〜!悔しいならやっくんも可愛いカノジョ作ってみなさいよ」
「うっせえ!雪姫が可愛いのは雪姫の力であって、おまえの手柄でもなんでもないだろうが!」
部活の開始前から黒尾と言い合う夜久は、1年の時から変わらずの仲である。
大体がバレー部員しか通らないこの通路で、誰から自分の着替えなんぞを隠そうというのか。むしろ隠す相手は黒尾のみなのではないかと、首を傾げた。
「あ、やっくん、それ新発売の!」
「おぉ、新しいフレーバーな!」
いやそんな馬鹿な、大事なカノジョからウザイなんてそんなハズは……とまだショックから立ち直れないでいる黒尾のつむじから手を離して、その長身を跨ぐ。
「それ、半分――」
「いやいやいや、カレシの俺が黒尾さん呼ばわりなのに、夜久はやっくんとか!なんでくん呼びなのか、異議を申し立てまーす!!オブジェクション、オブジェクション!!そして雪姫と半分こなんて許しませーん!!」
「……やっくんのくんは、ーーくんのくんじゃなくて、夜久のくでしょ。そもそもやっくん呼びは黒尾が言い始めたのが移ったんじゃん」
以前は問題がなかったことも、こうして黒尾が目くじらを立てるせいで些細な口論になる。
「ほんと、ちょっとウザイ」
「うざ……!またそんなウザイとか……!!何故、付き合ってからそんな冷たいのっ……!」
黒尾としては、さめざめと泣いてやりたいレベルの対応だ。
元々、しっかりしているようでぬけていることの多い雪姫を、友達の時代は直接言う権利がないと自制してきたのだ。過去に何度か、シャツから下着が透けそうな時にジャージを羽織らせたり、ジュース半分わけっこなのを見越して雪姫が欲しそうなものを率先して選んで周りにガンと圧を飛ばしてきた。
彼氏として、やっとそのブレーキを外せるのにあからさまに鬱陶しい顔をされると流石の黒尾の鉄のハートでもダメージはズタズタである。
「なんでそんなにうるさくなったの?彼女になると、ルールが出来てそんなにやっちゃいけないこと増えるの?」
――だが、このもどかしい気持ちは正しく伝わってないわけで。
嫉妬の空振りで雪姫を羽交い締めにしたいわけではない。ただ、他の男に触れさせたくない、そうっと包みながら護りたい。それだけなのに。
「あーっと……ルールとかじゃなくてね?」
確かに黒尾のジェラシーが反射で出ているのは事実だ。
その細い首筋を、指でなぞって。熱を出し、追って。
「だからその、大切なワケですよ。自分の可愛いカノジョとなれば尚更――」
「それがわかんない。私、ずっと黒尾は『特別』の枠にいて、なにも変わってないよ?」
――なんだこの、天然小悪魔は。人目がなかったら押し倒されたいのか。ヤバい、落ちてるのに更に落ちる。どこまで人を惚れさせるのか。
こっちは上気する顔を覆っているのに、男前発言した当の本人はけろりとしている。
全然自覚が足りていない、いつもそうして無邪気な様子で黒尾の心臓を貫いていくのに。
熱くなっていく顔は、もうどうやっても隠せはしない。
「――大好きなの、分かってる?」
「私も大好きだけど、伝わってる?」
「……ちょっと、俺の電波が遠いみたいだわ。心臓がバクバクしててね」
風邪ひいた?と、的外れな心配をする雪姫のその手は背伸びをしても黒尾には届くはずがない。
抱き寄せて、好きのシグナルをもっともっと。
伝えていくから、離れずにもっと傍に。
この鼓動の高鳴りは、いつまでも止まないから。
--------キリトリ線--------
ドギマギさせる天才の黒尾さんは、ありきたりだし、どうせこのあとたくさん書くと思うので、敢えて振り回してみました。このあともまた、ネタによって振り回したりされたりしてみようと思います。
敢えて、三人称一元、途中でバトンタッチさせてみましたが、読み返して視点変化があれなら書き直しするかもです。
「……すっごい邪魔」
先程まで、盛大に騒いでいた友人たちの熱気も、その原因の大元である彼氏――黒尾鉄朗の熱量も、雪姫には気が重い。
友人から、彼氏彼女という関係の名称が変わったばかりの立場とはいえ、雪姫にとって何故そんなに目まぐるしく変化していくのか、今ひとつ理解が出来なかった。
――気持ちが変化したわけじゃないのに。
友達からのちょっかいは、嫉妬羨望好奇心のあらゆる感情のミックスされた質問ばかり。まだ、それらは何となく理解は出来る。
だが、友人から彼氏に変わった黒尾の変化が全くわからない。今までと同じ感覚で周囲と接しているのに、他のクラスメイトと距離が近いだの無防備だのと、短い休み時間すら囲いこまれるようにガードされるせいで、こうした男女別れる体育の時間の合間に大勢に冷やかされる。
[恋愛電波の受信シグナル]
「ちょっといいですか、黒尾さん」
「突然他人行儀になんでしょうか、雪姫さん」
「そろそろウザイんですけど?」
部活前の着替え中に、黒尾のジャージがカーテンのようにかけられて、却って身動きがとれず着替えごときに15分もとられる始末。
「ウザ……ウザイって言われたの、まさか俺?!」
「いや、他に誰がいるのかと」
そんな馬鹿な!と膝から崩れ落ちる黒尾の頭を、珍しく見下ろす光景にそのつむじを押してみる。
「嫌われてやんのー!ブロックも恋もしつこいんじゃねぇのー?」
「しつこいんじゃないんですぅ〜粘り強いんですぅ〜!悔しいならやっくんも可愛いカノジョ作ってみなさいよ」
「うっせえ!雪姫が可愛いのは雪姫の力であって、おまえの手柄でもなんでもないだろうが!」
部活の開始前から黒尾と言い合う夜久は、1年の時から変わらずの仲である。
大体がバレー部員しか通らないこの通路で、誰から自分の着替えなんぞを隠そうというのか。むしろ隠す相手は黒尾のみなのではないかと、首を傾げた。
「あ、やっくん、それ新発売の!」
「おぉ、新しいフレーバーな!」
いやそんな馬鹿な、大事なカノジョからウザイなんてそんなハズは……とまだショックから立ち直れないでいる黒尾のつむじから手を離して、その長身を跨ぐ。
「それ、半分――」
「いやいやいや、カレシの俺が黒尾さん呼ばわりなのに、夜久はやっくんとか!なんでくん呼びなのか、異議を申し立てまーす!!オブジェクション、オブジェクション!!そして雪姫と半分こなんて許しませーん!!」
「……やっくんのくんは、ーーくんのくんじゃなくて、夜久のくでしょ。そもそもやっくん呼びは黒尾が言い始めたのが移ったんじゃん」
以前は問題がなかったことも、こうして黒尾が目くじらを立てるせいで些細な口論になる。
「ほんと、ちょっとウザイ」
「うざ……!またそんなウザイとか……!!何故、付き合ってからそんな冷たいのっ……!」
黒尾としては、さめざめと泣いてやりたいレベルの対応だ。
元々、しっかりしているようでぬけていることの多い雪姫を、友達の時代は直接言う権利がないと自制してきたのだ。過去に何度か、シャツから下着が透けそうな時にジャージを羽織らせたり、ジュース半分わけっこなのを見越して雪姫が欲しそうなものを率先して選んで周りにガンと圧を飛ばしてきた。
彼氏として、やっとそのブレーキを外せるのにあからさまに鬱陶しい顔をされると流石の黒尾の鉄のハートでもダメージはズタズタである。
「なんでそんなにうるさくなったの?彼女になると、ルールが出来てそんなにやっちゃいけないこと増えるの?」
――だが、このもどかしい気持ちは正しく伝わってないわけで。
嫉妬の空振りで雪姫を羽交い締めにしたいわけではない。ただ、他の男に触れさせたくない、そうっと包みながら護りたい。それだけなのに。
「あーっと……ルールとかじゃなくてね?」
確かに黒尾のジェラシーが反射で出ているのは事実だ。
その細い首筋を、指でなぞって。熱を出し、追って。
「だからその、大切なワケですよ。自分の可愛いカノジョとなれば尚更――」
「それがわかんない。私、ずっと黒尾は『特別』の枠にいて、なにも変わってないよ?」
――なんだこの、天然小悪魔は。人目がなかったら押し倒されたいのか。ヤバい、落ちてるのに更に落ちる。どこまで人を惚れさせるのか。
こっちは上気する顔を覆っているのに、男前発言した当の本人はけろりとしている。
全然自覚が足りていない、いつもそうして無邪気な様子で黒尾の心臓を貫いていくのに。
熱くなっていく顔は、もうどうやっても隠せはしない。
「――大好きなの、分かってる?」
「私も大好きだけど、伝わってる?」
「……ちょっと、俺の電波が遠いみたいだわ。心臓がバクバクしててね」
風邪ひいた?と、的外れな心配をする雪姫のその手は背伸びをしても黒尾には届くはずがない。
抱き寄せて、好きのシグナルをもっともっと。
伝えていくから、離れずにもっと傍に。
この鼓動の高鳴りは、いつまでも止まないから。
--------キリトリ線--------
ドギマギさせる天才の黒尾さんは、ありきたりだし、どうせこのあとたくさん書くと思うので、敢えて振り回してみました。このあともまた、ネタによって振り回したりされたりしてみようと思います。
敢えて、三人称一元、途中でバトンタッチさせてみましたが、読み返して視点変化があれなら書き直しするかもです。
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