冬の月
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体育館を出ると、息がたちまち白く染まる。
冬は寒いばかりで好きじゃない、まして部活終わりの日の暮れた時間に自分の彼女を待たせていると。
「……雪姫お待たせ。そんな律儀に外に居ること無いんじゃないの」
「平気平気、ギリギリまで職員室で勉強してたし」
部活終わりの時間には図書館も閉まっている。人気がない場所や教室よりも、職員室を勧めてくれたのは武田先生だけど。彼女の手を握ると、その小さな手はもう悴んでいて、僕の息を吹きかけると手より頬が赤くなる。
「あ、蛍も手を冷やしたらいけないからね!手袋あるから」
「別に、このままでいいんじゃないの」
「でも、影山が爪の手入れとか指先の感覚の為に、ってあれこれ――」
はぁ、とため息をついた。雪姫が悪いんじゃない、同じクラスでもない王様が悪い。
セッターの王様は、指先コントロールであれこれしてるんだろうが……ミドルブロッカーには必要無いとも言い切れはしないけど。
「……ちょっと、オーサマ。人の彼女に変なバレー脳筋知識吹き込むのやめて貰える?迷惑なんですけど」
「はあ?!俺が何したっつーんだよ!!」
「雪姫に対して馴れ馴れしいの、やめてくださーい。ほんと迷惑なんで」
日向と何か、またいつものくだらない言い争いをしていた影山がこっちに走ってこようとしたのを、顎で追い払う。
僕の手の中で、もう彼女の指先の温度も感じられたけど、恥じらってるそんな顔を他の奴に見せたくなんかない。
自分のコートを開いて、その体を巻き込むようにして歩くのは、歩きにくいけど僕の特権だから。
「月島は彼女がいると目に見えてやる気と対抗心が発揮されるよなぁ」
「マネージャーになってもらえば、試合中ずっとやる気がすごい月島が生まれそうだなー」
澤村さんと東峰さんが、もう見慣れたように笑いながら通り過ぎていく。
……なんか放っておくと、本当にやりかねない。
「マネージャーにしたら、僕の戦力はブロッカーてしてもアタッカーとしても落ちますけど、それでも雪姫をマネージャーにしたいですか」
「蛍、いいから。試合中もなるべくこっそり見てる約束守るから、先輩にそんな……」
そう、僕は約束をさせた。身勝手な理由で。
コートの片側で埋もれてしまう、この優しさと可愛い存在が如何に僕の冷静さを奪うのか。
「試合中も練習中も、目の前のデータを判断して僕は動いてますが……雪姫が近くに居ることによって優先順位も、目を配る範囲も広がって試合だけに集中することは不可能です」
出た!月島の惚気が!!逃げろ!と叫びながら田中さんが坂を駆け下りていく。意味が分からない。僕はただ事実を述べただけだ。
「あー……すまん、聞いた俺らが馬鹿だったな。……思ってた以上に嫉妬深いタイプだよな、お前」
「どうも」
大切過ぎて、すぐに回りが見えなくなる。
だから、一番近くで、一番遠くで。
僕はそんな簡単に手放したりしないから。覚悟してよね、この程度で真っ赤になってるようだから。
もっともっと、かがみ込んで本音を囁いていく。
冬も春も、雪姫の隣は僕だけのものだから。
冬は寒いばかりで好きじゃない、まして部活終わりの日の暮れた時間に自分の彼女を待たせていると。
「……雪姫お待たせ。そんな律儀に外に居ること無いんじゃないの」
「平気平気、ギリギリまで職員室で勉強してたし」
部活終わりの時間には図書館も閉まっている。人気がない場所や教室よりも、職員室を勧めてくれたのは武田先生だけど。彼女の手を握ると、その小さな手はもう悴んでいて、僕の息を吹きかけると手より頬が赤くなる。
「あ、蛍も手を冷やしたらいけないからね!手袋あるから」
「別に、このままでいいんじゃないの」
「でも、影山が爪の手入れとか指先の感覚の為に、ってあれこれ――」
はぁ、とため息をついた。雪姫が悪いんじゃない、同じクラスでもない王様が悪い。
セッターの王様は、指先コントロールであれこれしてるんだろうが……ミドルブロッカーには必要無いとも言い切れはしないけど。
「……ちょっと、オーサマ。人の彼女に変なバレー脳筋知識吹き込むのやめて貰える?迷惑なんですけど」
「はあ?!俺が何したっつーんだよ!!」
「雪姫に対して馴れ馴れしいの、やめてくださーい。ほんと迷惑なんで」
日向と何か、またいつものくだらない言い争いをしていた影山がこっちに走ってこようとしたのを、顎で追い払う。
僕の手の中で、もう彼女の指先の温度も感じられたけど、恥じらってるそんな顔を他の奴に見せたくなんかない。
自分のコートを開いて、その体を巻き込むようにして歩くのは、歩きにくいけど僕の特権だから。
「月島は彼女がいると目に見えてやる気と対抗心が発揮されるよなぁ」
「マネージャーになってもらえば、試合中ずっとやる気がすごい月島が生まれそうだなー」
澤村さんと東峰さんが、もう見慣れたように笑いながら通り過ぎていく。
……なんか放っておくと、本当にやりかねない。
「マネージャーにしたら、僕の戦力はブロッカーてしてもアタッカーとしても落ちますけど、それでも雪姫をマネージャーにしたいですか」
「蛍、いいから。試合中もなるべくこっそり見てる約束守るから、先輩にそんな……」
そう、僕は約束をさせた。身勝手な理由で。
コートの片側で埋もれてしまう、この優しさと可愛い存在が如何に僕の冷静さを奪うのか。
「試合中も練習中も、目の前のデータを判断して僕は動いてますが……雪姫が近くに居ることによって優先順位も、目を配る範囲も広がって試合だけに集中することは不可能です」
出た!月島の惚気が!!逃げろ!と叫びながら田中さんが坂を駆け下りていく。意味が分からない。僕はただ事実を述べただけだ。
「あー……すまん、聞いた俺らが馬鹿だったな。……思ってた以上に嫉妬深いタイプだよな、お前」
「どうも」
大切過ぎて、すぐに回りが見えなくなる。
だから、一番近くで、一番遠くで。
僕はそんな簡単に手放したりしないから。覚悟してよね、この程度で真っ赤になってるようだから。
もっともっと、かがみ込んで本音を囁いていく。
冬も春も、雪姫の隣は僕だけのものだから。
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