狂おしい秘密
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狂おしい秘密(お題箱より)
何かが変だ。煉獄の本能が囁く。
夕暮れの日差しを反射して、眩しい笑顔を見せるいつもの彼女はそこには居ない。
視線を避けるような仕草、何処と無く無防備な後ろ姿。全く、雪姫らしくない。
「なぁー煉獄、お前さぁ、だーいじなお姫サマになーんかしちゃったンじゃないのォ?」
「無粋な発言はやめてもらおうか!俺はきちんと立場を明らかにしてから、雪姫に相応しい男であると決めている!!」
機微に敏い宇髄にも、既に朝からからかわれる始末。しかし、煉獄に心当たりは無い。
元柱の娘である雪姫と、煉獄が想いあっているのは周知のこと。鬼殺隊全員とはいわないが、男女の事に興味の無い不死川でさえ進展は耳にしている程だ。
宇髄にいじられるのも、普段の事である。
「あー、そんならお姫サマの方が、なんか隠し事でもあんのかなー」
「雪姫に限ってそんな事は……!!」
「マジかー、じゃー雪姫にお見合い話が沢山きてるっつーのはオレの聞き違いかねー」
そんな事は、煉獄には初耳だ。
照り返す夏の日差しがオレンジ色をはらんで、何か不吉な前触れのように陽を傾けていく。
「後生大事なのは見てりゃ分かるけど、段取り重視してたら逃すモンがあんじゃねーのか」
「そうだな!助かったぞ、宇髄!!」
即断即決の男は、熱い風をなびかせて走り去る。8月の灼熱の空気が、刹那にして炎柱と共に消えた。
「あーオレってば、なんていい男よ?……ちょっと煉獄にゃ、勿体ねぇ。なんて思ってたんだけど……惚れ合ってる者を引き裂くなんて地味にダセェことはオレには向いてねーわ」
煉獄は、想いはいつも直ぐに口に出してしまう。それでも今は柱として言えなかった言葉があった。
その狂おしい感情は、鬼殺隊には不向きだから。だが、言わずして想う相手を手放すことなど出来はしない。
「話があるのだが!!」
前触れなく、屋敷の扉を開けると土鍋で米を炊いていた彼女は、驚いて振り返る。
その背中の「滅」の文字。今夜消すのは、彼女の秘密と煉獄の隠してきたもの。
「煉獄さん……」
「済まない、火急の事ゆえ突然家にきた。君にお見合いが来ていると聞いて、それを断ってもらう為に駆けつけてきた」
「……なんでその事を」
おそらくまだ何も公になっていない。元忍びの友人には感謝だ。
「鬼殺隊としてでも、柱としてでもなく、煉獄杏寿郎個人としての本心を云わせてくれ……鬼殺隊は、柱は、鬼から人を守る。だが、俺は不器用で大勢にばらまけるほど『心』は持って居ない。せいぜい、家族と、雪姫というただ1人の女性を愛する事しかできない。愛されているか不安にさせたり、頼りにならないのは未だ俺が未熟で君への想いがきちんと伝えていないせいだ。必ず最後まで雪姫を俺で満たしたい。それは俺の我儘だろうか」
大事だからこそ、飢餓に似たこの想いをぶつける事にどこか不安があった。
守りたい、一生側に居たい。どんなものからも守りたい。そんなエゴを押し付けてしまう。
それでも、ただこの一生に愛するのは目の前のこの人だけなのだから。
「元柱の娘だからと、無理に縁談にいかないでくれ……俺との絆を断ち切らないでくれ」
「うん……秘密にしてて、ごめ、なさい……」
階級が上がらずに悩んでいた彼女が、親からの言いつけに弱いのは確かで。それは、これから2人で立ち向かえばいい。
何者にも、この愛は邪魔はさせないのだから。
抱きしめたその体は、その全てが愛おしい。
夏の夜気が、二人の熱に触れて、熱を帯びる。
何かが変だ。煉獄の本能が囁く。
夕暮れの日差しを反射して、眩しい笑顔を見せるいつもの彼女はそこには居ない。
視線を避けるような仕草、何処と無く無防備な後ろ姿。全く、雪姫らしくない。
「なぁー煉獄、お前さぁ、だーいじなお姫サマになーんかしちゃったンじゃないのォ?」
「無粋な発言はやめてもらおうか!俺はきちんと立場を明らかにしてから、雪姫に相応しい男であると決めている!!」
機微に敏い宇髄にも、既に朝からからかわれる始末。しかし、煉獄に心当たりは無い。
元柱の娘である雪姫と、煉獄が想いあっているのは周知のこと。鬼殺隊全員とはいわないが、男女の事に興味の無い不死川でさえ進展は耳にしている程だ。
宇髄にいじられるのも、普段の事である。
「あー、そんならお姫サマの方が、なんか隠し事でもあんのかなー」
「雪姫に限ってそんな事は……!!」
「マジかー、じゃー雪姫にお見合い話が沢山きてるっつーのはオレの聞き違いかねー」
そんな事は、煉獄には初耳だ。
照り返す夏の日差しがオレンジ色をはらんで、何か不吉な前触れのように陽を傾けていく。
「後生大事なのは見てりゃ分かるけど、段取り重視してたら逃すモンがあんじゃねーのか」
「そうだな!助かったぞ、宇髄!!」
即断即決の男は、熱い風をなびかせて走り去る。8月の灼熱の空気が、刹那にして炎柱と共に消えた。
「あーオレってば、なんていい男よ?……ちょっと煉獄にゃ、勿体ねぇ。なんて思ってたんだけど……惚れ合ってる者を引き裂くなんて地味にダセェことはオレには向いてねーわ」
煉獄は、想いはいつも直ぐに口に出してしまう。それでも今は柱として言えなかった言葉があった。
その狂おしい感情は、鬼殺隊には不向きだから。だが、言わずして想う相手を手放すことなど出来はしない。
「話があるのだが!!」
前触れなく、屋敷の扉を開けると土鍋で米を炊いていた彼女は、驚いて振り返る。
その背中の「滅」の文字。今夜消すのは、彼女の秘密と煉獄の隠してきたもの。
「煉獄さん……」
「済まない、火急の事ゆえ突然家にきた。君にお見合いが来ていると聞いて、それを断ってもらう為に駆けつけてきた」
「……なんでその事を」
おそらくまだ何も公になっていない。元忍びの友人には感謝だ。
「鬼殺隊としてでも、柱としてでもなく、煉獄杏寿郎個人としての本心を云わせてくれ……鬼殺隊は、柱は、鬼から人を守る。だが、俺は不器用で大勢にばらまけるほど『心』は持って居ない。せいぜい、家族と、雪姫というただ1人の女性を愛する事しかできない。愛されているか不安にさせたり、頼りにならないのは未だ俺が未熟で君への想いがきちんと伝えていないせいだ。必ず最後まで雪姫を俺で満たしたい。それは俺の我儘だろうか」
大事だからこそ、飢餓に似たこの想いをぶつける事にどこか不安があった。
守りたい、一生側に居たい。どんなものからも守りたい。そんなエゴを押し付けてしまう。
それでも、ただこの一生に愛するのは目の前のこの人だけなのだから。
「元柱の娘だからと、無理に縁談にいかないでくれ……俺との絆を断ち切らないでくれ」
「うん……秘密にしてて、ごめ、なさい……」
階級が上がらずに悩んでいた彼女が、親からの言いつけに弱いのは確かで。それは、これから2人で立ち向かえばいい。
何者にも、この愛は邪魔はさせないのだから。
抱きしめたその体は、その全てが愛おしい。
夏の夜気が、二人の熱に触れて、熱を帯びる。
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