財政があるといっても、実弥も雪姫もあまり贅沢をしない。

　咄嗟に考えたことは、電気代だというあたりは庶民と同じ発想力だが。

「バカいえ。雪姫の消し忘れた風呂の電源も、俺が切ったンだぞ」

「ええー、もしかして……玄弥？」


　合宿が終わるのにしては早すぎると思いつつ、実弥が駐車している間に雪姫が飛び出した。

　いつも買い物の荷物は実弥の担当なので、ナチュラルに買い物袋は社内に置き去りだ。

　雪姫が鍵を回すと、家の鍵は空いていた。

　咄嗟に防犯センサーを見上げたが、警報が鳴った様子もない。

　スマホのセキュリティと連動しているアプリを立ち上げていると、エコバッグをぶら下げた実弥がすぐに合流する。

「大丈夫か！？鬼か！？」

「鍵、開いてるんだけど……」

「合宿もう終わったのかよォ、まさかあいつ逃げ出したんじゃねぇだろうなァ」

　二人共導き出した答えは同じだ。

　そもそも他に不死川家の鍵を持つ者がいない。

「玄弥ー！おかえ……」

「ああ！？なんっでてめぇが家にいンだよ！！」

「よォ！おつかれさーん、ふしがわきょうだい。派手に暴れてたんだってなァ」

　弟が帰宅したのかと、急いで靴を脱いでいた二人は絶句した。

　２メートル近い身長で、実弥専用ミニオンエプロンにおたまを持った鬼殺隊音柱の宇髄天元が、何故か不死川兄妹を出迎えていたのだった。