pixiv作品 名探偵コナン
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「…なぁ、冬華」
「なぁに?」
「明日飲み会あるんだが、行ってもいいか…?」
「ふふ、もちろんよ。そういう付き合いって大事よ」
ある日の夕方。
千速が帰宅して、夜ご飯を食べている時。
交通課の皆さんで飲み会があると言った。
なぜか千速は申し訳なさそうに言うものだから、なんだか可愛くて笑っちゃった。
「…私はお前がいるし断ったんだが…」
「“たまには顔を出せー!”って言われた?」
コクンと無言で頷き、ため息を零した。
「昔は飲み会好きだったのに、嫌いになったの?」
昔は週末になると千速と忍の三人で結構飲み歩いていた。
絶対に千速の隣に座らされて、気持ち良く飲んでたら。
“お前はもうやめとけ”
“えー!まだ飲み足りなーい!”
“もう結構飲んでるよ…明日は冬華二日酔いだね”
千速の介抱かと思いきや、実は私が介抱される側だったり。
それで二人で騒いで忍に怒られたりして。
忙しい合間を縫って、よく出歩いていた。
私はそれが何より楽しかったし、仕事で色々あったから救われていた。
「…酒は好きだが、明日の席にはお前がいない」
「さすがに仕事の飲み会はねぇ」
同窓会とか忍との飲み会なら行くけど、さすがに千速の職場の飲み会には行けない。
「研二君の車で迎えに行ってあげよっか?」
バイクは乗れないから、研二君の形見の車で。
五年のブランクはあれど、そこまで腕は落ちてはいないはず。
「お前」
「ん?」
千速はそんな私をきょとん顔で見て。
「免許証、失効してるんじゃないか?」
首を傾げた。
「え゙?」
え、嘘。
そんなこと全然気にしてなかった…。
「だってほら、五年も寝坊してたし」
「…ちょ、ちょっと見てみる…!」
私は箸を置いて、鞄からお財布を取り出す。
日付を見てみれば…。
「……二年前に切れてる…」
「だろ?警察官の、しかも交通課勤務である私の恋人が無免許運転はさすがになぁ」
警察官じゃなかったら見逃してた、と千速は笑った。
「えー…免許取り直しかー…」
「いるか?免許。私のバイクがあればいいだろ」
「緊急で何かあった時に持ってたほうがいいでしょ」
椅子に戻って、免許を見ながら。
「ちょっとパートで働こうかなぁ」
自動車学校も安くないし、そろそろ社会復帰しないと。
貯金はほら、入院費とかで結構飛んだから。
病院側も、私の症例で論文を書くからとオマケしてくれたんだけどね。
「………」
「ふふ、すごく嫌そう」
と思っていたら、千速はとんでもなく嫌そうな表情を浮かべていたから私はクスクス笑った。
「…私は家に居てほしい」
帰って来た時、おかえりって言ってほしいって。
「午前中だけよ。甘えてばかりいられないし」
「なんでだよ。甘えたっていいだろ」
「自学って高いじゃない?せめてその分くらい自分で稼ぎたいの」
むぅ………っと頬を膨らませ、ジト目で睨みながらハンバーグを食べてる。
……可愛すぎる。
「近くのスーパーで募集してないか後で調べてみよっと」
チラシに求人情報ないかチェックしないとって口にすると。
「……」
「?千速?」
今度は千速が箸を置き、スマホを操作して。
「どう「もしもし、重悟か。私だが今いいか?」
横溝さんに電話を掛けたみたい。
私はそんな様子を見ながら、ハンバーグを食べる。
「確か今月末で会計年度任用職員が一人辞めるよな?」
会計年度任用職員って、非常勤事務補助と呼ばれている県警で働くパートのこと。
つまり…。
「……県警勤務かぁ…」
千速は私を県警で働かせようとしてるってこと。
「あぁ、一人都合が付くんだが」
まぁね?私はね?
探す手間も省けるし、千速と一緒に出勤出来るからいいんだけど。
…ゴリゴリに私情を挟んでもいいのかなって思うわけで。
「それは大丈夫だ」
千速はチラッと私を見て。
「元公認会計士だから」
私の前の職業を口にすると。
『公認会計士!?!?』
横溝さんの驚く声が私まで届いた。
「あぁ、だが前の職場には戻らせない」
『な、なんで前の職場に戻らねぇんだよ!?絶対に前の職場のがいいだろ!!』
確かに前の職場のほうがお給料も高いけど…。
「…理由があるんだよ」
千速はあの時のことを伏せてくれた。
公認会計士として働いていたのは、僅か五年ほど。
高卒で公認会計士の国家試験を突破した時の担任の喜びようがもうね。
“きゃあああ!やったぁああ!冬華ちゃぁあん!!”
“あ、はい…や、やったー!”
“先生の喜び方が凄すぎる…”
先生が喜びすぎて圧倒されちゃったわ。
千速も千速で、警察官採用試験に合格して、警察学校への入学が決まってね。
“…嫌だ行きたくない”
“え?せっかく受かったのに?”
“あのね、冬華。警察官になるには採用試験だけじゃなくて、全寮制の警察学校を卒業しないといけないわけで”
忍は呆れながら。
“千速の行きたくないは、あんたと離れたくないって意味なの”
“あ…”
そう言った。
警察学校は携帯電話も使用制限されるしで、連絡がほぼ取れなくなる。
使えるタイミングはあるみたいだけどね。
まぁ千速は決して模範的なタイプじゃないから。
“…また抜け出してきて、大丈夫なの?”
“同じ部屋の奴に協力してもらったから大丈夫だ”
結構抜け出しては会いに来てくれた。
「とにかく面接が決まり次第…………ふ、わかった。伝えるよ。ああ、じゃあな」
通話を終えて、千速がクスリと笑う。
「?横溝さんはなんて?」
最後、横溝さんになんて言われたのかしら。
「“絶対に採用だから履歴書だけ頼む”だそうだ」
「あらま、私って結構すごい?」
「かなりすごい」
私もクスクス笑う。
「完璧に管理しちゃうけど、いいのかしら」
「ぜひしてくれ。警察が不正など断じて許さん」
と言っても、公認会計士の仕事として務めるわけではないから。
それに、新人の私が出しゃばったことは出来ないしね。
千速は立ち上がり、カレンダーを見て。
「…来月から職場が一緒か」
楽しみが過ぎる…と零した。
「ただ、おかえりーって言ってあげられる日は減るけど…」
「いい。一緒に帰宅出来るんだからな」
「千速が何かやらかして始末書や報告書作成で残業にならなければだけどねぇ」
「ぐ…っ」
来月から仕事。
自動車学校代、頑張って稼がないと!
「あ、千速お風呂沸いてるわよ」
「んー」
食後。
私は食器洗いをして、千速はバイクの特集番組を観ていた。
千速にお風呂が沸いてることを伝えれば、立ち上がって背中を伸ばしてる。
「ほら、入るぞ」
「洗い物が終わったら行くから、先入っててー」
「……」
浴室へはキッチンを通って行かなきゃいけなくて。
「…千速?」
私の後ろを通る際、千速は私の後ろで立ち止まった。
まずいかもしれない…。
この感じ、まずいかもしれない…!
ギュッと抱き締められて。
「…洗い物まだ終わってないんだってば…」
千速の手が、服の中に侵入してくる。
「ねぇ、ちは…やぁ…っ」
千速の名前を言い終える前に胸の先を摘まれて、声が上擦った…。
「…っ待ってって…っ」
服の上から千速の手を掴んだけど…。
「は…っ入らないとは…っ言ってないでしょ…っ」
もう片方の手でズボンのボタンとファスナーを開けられたから、その手も掴んだけども…。
「…っあっン…っんんぅ…っっ」
秘部の小さな突起を摘まれて、私の意思とは関係なく背中が反った。
ああ、もうだめだ…。
こうなった千速は止まらない…。
「…っぁ…っあ…っあ…っ待ってってば…っ」
千速はリップノイズを立てながら、項にキスをしてきたり舐めたり。
それでいて、胸の先と秘部の突起を同時に責められて。
「…っああ…っあっあ…っあ…っイ…っク…っちは…っや…っイク…っ」
耐えらるわけがない…。
「あっあっ…それや…っやだ…っや…っあっあっあっ」
加減とかしてくれないし、洗い物も出来なくて。
「あぁあ…っあ…っ…も…イ…っク…っ」
「ん、イッていいぞ」
小さな突起を弄る指の動きを早められて。
「あぁあっあ…ッイっちゃ…っぅん…ッんン゙ッッ」
ビクンッと大きく身体を震わせて、達しちゃった…。
「…あ…ぁ…」
シンクに手を付き、余韻で震える身体を支える。
「洗い物は私がするから、風呂」
入るぞ…と、耳元で囁かれたら…。
「あ…っもうわかったわよ…っ」
もう入るしかないわよね…。
で…。
「あぁあ…っまたイク…っイ…っあっあ…っ」
「はぁ…可愛い…冬華…」
お風呂でも散々鳴かされました…。
「…腰が痛過ぎる…」
朝、目が覚めた。
キッチンでもイかされ、お風呂でもイかされ…。
ベッドに入ってからもっと凄かった…。
来月から一緒の職場ということにテンションMAXだったみたい…。
当の本人は気持ち良さそうにすよすよと寝てるし…。
「…本当にもう、次の日のことを考えてほしいなぁ」
なんて言いながら、千速の額にキスを落として。
「さて、と。お弁当作らないと」
ベッドから降りた。
「今日は千速飲み会だし、夜ご飯どうしようかな」
朝起きたばかりなのに、夜ご飯のことを考えながら卵焼きを焼く。
その間に隣のコンロではお味噌汁を作って、グリルでお魚を焼く。
ちなみに鮭。
「っと…あ!焦げたぁ!」
卵焼きをひっくり返したら焦げちゃってた…。
でも大丈夫。
「証拠隠滅」
焦げた箇所は幸いにも端っこ。
「あひゅい…」
焼き立てだから熱くて、ヒューヒュー言いながら食べてたら。
「…お…ふぁ……よう…」
千速も起きてきた。
「おはよ」
「何食べてるんだ?」
「…何も食べてないわよ?」
「モグモグしてるだろ」
「顎の運動を少々…」
焦げた卵焼きを持った手を下げて、千速に見つからないように隠したんだけど。
「……」
千速が目を細めたため、これはまずいと思って。
「…卵焼き焦げた箇所食べてただけよ」
自分のミスを自分から申告しました…。
「全部食べた?」
「…熱いからまだ半分しか食べてないわ」
「じゃあ食べたい」
「…もー、焦げたの隠したかったのにー」
なんて言いつつ、可愛いなと思いながらもう半分を千速に食べさせた。
「……」
「なに、どうしたの?」
なんか千速がモグモグと口を動かしながらニヤニヤ笑って私を見てるから、絶対に良からぬことを考えてるに違いないと思って私は眉間に皺を寄せる。
「腰、痛いのか?」
「え?」
千速は無言で腰を摩る仕草をした。
「っ!?」
腰の痛さから、無意識で摩ってたみたい…。
「…誰かさんが加減をしてくれないからね」
「お前たくさんイったよな、昨日は」
「そりゃ…イかされましたから…!」
朝からなんて会話をしてるのかしら私たちは。
「千速、運んで」
「うん」
朝ご飯が出来て、千速に運んでもらう。
「今日は夜ご飯どうするんだ?」
「どうしようか迷ってるのよね」
千速の隣に座り、朝ご飯を食べながら。
「外食に行くなら一報入れてくれよ?」
「えぇ、わかってる。ちゃんと連絡するわ」
千速は多分帰らずそのまま飲み会だろうから、今日は一日中一人。
隅々まで家の掃除をしようかしら。
千速がいるとちょっかいかけてきてなかなか進まないから。
「…はぁ…行きたくない…」
「ふふ、行ったら行ったで楽しいわよ?絶対に」
千速はお酒好きだし、誰よりも楽しめるんじゃないかな。
なんて話してるうちに朝ご飯を食べ終え、片付ける。
「あ、履歴書買いに行かないと」
「また神隠しに遭うなよ?」
「もう遭いません!」
少しだけまったりした時間を過ごし、千速の着替えを手伝って。
「はい、お弁当」
「うん。じゃあ出来るだけ早く帰って来るから」
「えぇ、わかったわ。行ってらっしゃい」
「………」
「………」
「…わかってるだろ?」
「あは!行ってらっしゃい!」
「わかればよろしい。行ってくる」
行ってらっしゃいのキスをして、千速を送り出した。
本当に千速は可愛いな。
千速の好きはすごく伝わるし、すごく大事にしてくれる。
「…ま、まぁ…夜は激しいけど…」
でもそれだけ愛してくれてるってことだものね。
「んーッ!はぁ!」
両手を上げて背中と腰を伸ばして。
「…腰痛いからちょっと寝ようかしら」
まずは少し休もう…。
「あったあった」
本屋さんへ、履歴書を買いにきた。
履歴書とボールペンを手に持って、他に何かないかなぁと見て回る。
漫画の本も、当時は十巻くらいまでしかなかったものが今は三十巻くらいまで出てる。
「…長いなぁ五年は…」
五年という月日の長さに、苦笑いを零す。
だって五年の間にこの漫画の中で、2、3個のストーリーが終わってる。
新しい章が始まって、その新章だって結構クライマックスな感じだろうし。
「……それでも私の時間は五年前のまま」
私が車に轢かれ、意識を失う瞬間の千速の顔は。
きっと一生忘れない。
あの、絶望するかのような…。
「…って、ダメダメ!ネガティブになってる!」
私は頭を振って、レジに向かう。
私はもう起きたんだから、五年前に止まった時間は動き出した。
五年のブランクはゆっくり埋めればいいだけ。
「いらっしゃいませー」
「お願いしまーす」
レジに並び、お会計をしている時。
「ん?」
隣のレジで何やらトラブルが。
外国の方に何か聞かれてるけど、フランス語で話されてるからわからないのね。
「……」
あの外人さん、この作家の本はどこかって聞いてるんだよなぁ…。
…あんまり目立ちたくないけど、仕方ないか。
「ありがとうございます」
会計を終え、隣のレジへと行って。
「この外人さん、この作家さんの本の場所を聞いてますよ」
店員さんに教えてあげた。
「え!?言葉わかるんですか!?」
「あ、はい…まぁ…」
「あ、ありがとうございますありがとうございます!助かります!!」
店員さんはキラキラと輝く笑顔で私の手を取ってお礼をたくさん言ってくれた。
『今、案内してくれるみたいです』
『おー!助かりました!ありがとう!』
フランス語で外国の方にも伝えて、軽く会釈をして本屋さんを出た。
「…緊張したぁ…」
見知らぬ人に声をかけるのは勇気がいる。
「フランス語を勉強しといてよかった」
でも店員さんと外国の方の力になれてよかった。
って、五年もブランクあったのに覚えてたことを褒めてほしい。
「千速に褒めてもらお!」
と、歩き出してすぐ。
「お姉さん、暇?」
声をかけられた。
振り返れば、若い男の子が二人。
大学生くらいかな。
「お姉さん暇じゃないの。ごめんね」
ニコリと笑み、歩き出す。
「……」
あの子たち、ついて来てるんですが…。
「お姉さん絶対暇でしょ」
「俺らも暇なんだよね。昼飯奢るから遊ぼうよ」
「大忙しなのよ。旦那さん待たしてるし」
ちょっと嘘を言っても。
「旦那どこにいんの?」
「会わせてよ」
通用しない…。
「っつかさ、こんな可愛い奥さん一人にするのはダメっしょー」
か、可愛い…。
って、ちょっと喜んじゃダメよ私。
「お姉さん、ちょっと待ってって」
「…ちょっと!」
手を掴まれて、無理やり歩みを止められて。
「待てよ」
「…あのねぇ。そろそろ来ると思うわよ?」
「は?誰が?旦那?」
「いいよ、話し付けてやるよ」
男の子たちは終始強気で笑っていたところに。
サイレンの音が聞こえてきた。
「…来た」
この高低を繰り返すモーターサイレンの音は、白バイから発せられるもので。
千速がサイレンを鳴らしながら来てくれてる合図だ。
…前に横溝さんに叱られたのに、懲りないわよね。
「…なんだ?事故か?」
「そんな音聞こえなかったよな?」
男の子たちは私の手を掴んだままキョロキョロと辺りを見回している。
私は向かって来てる白バイを見つめて。
「…本当、見てたのかなってくらいのタイミングだなぁ」
遠くてわからないけど、きっと今私と千速は目が合ってると思う。
「「…!?」」
千速は私たちの前で白バイを止めた。
「え、俺ら?」
「は?なんで?」
ヘルメットをしたまま白バイから降りて近づいて。
「なんで?お前ら、自分たちが迷惑行為をしているという自覚はないのか?」
私の肩に手を置く。
「はぁ?迷惑行為?どこが?」
「俺らお姉さんに道を聞いてただけですが」
「…なるほどな。では道を聞いていただけなら…」
私の手を掴んでいる男の子の手を払って。
「私のものに気安く触れるな」
私の腰を抱き、男の子たちを睨んだ。
…あーもー。
格好良いなぁもー…。
「け、警察が私情挟んでいいのかよ」
「警察官が恋人を守って何が悪い」
「…やー…」
男の子たちは千速の怒りにタジタジになって。
「お前ら、大学生か?大学名を教えろ」
「…っす、すみませんでした!」
「失礼します!!」
そそくさと逃げて行った。
「大学名を言えないってことは、いけないことをしてるって自覚があったのね」
「…実に不愉快だ」
ナンパ君たちはいなくなったのに、千速はまだ怒ってる。
「ありがと、千速。来てくれるってわかってた」
「ここは白バイの巡回ルートだからな」
タイミングが合ってよかった、と千速は胸を撫で下ろした。
そう。
私は千速に白バイの巡回ルートを聞いて、なるべくその道を歩こうと思ってたの。
もしかしたらすれ違えるかもしれないし、今みたいに助けてくれるかもしれないじゃない?
「というか、本屋に行ってたのか?」
「えぇ、履歴書を買いにね」
あ、そうだ!
さっきの出来事を褒めてもらお!
「さっきね、フランス人の方に話をかけられて困ってた店員さんを助けたの」
「フランス人?…お前、フランス語話せるのか?」
さっきの出来事を話すと、私がフランス語を話せることに千速は驚いて。
「日常会話くらいはね。ほかには英語と韓国語なら話せるわよ」
「……いつ勉強してたんだよ…」
凄すぎだろ、と褒めて?くれた?のかしら。
「……」
「なんだ、どうした?」
でも期待した褒め方じゃないから、私は頬を膨らませて千速から視線を逸らした。
「!ああ。よくやった、偉いぞ」
千速は察してくれて、優しく頭を撫でてくれたから。
「ふふ、でしょー?」
嬉しくて笑うと。
「……はぁ……可愛い…」
「あ、痛…っヘルメットが当たった…」
ギュッと抱き締めてくれた拍子に、ヘルメットが頭に当たった。痛かった。
「送るか?」
「大丈夫よ、一人で帰れるから」
「…またナンパされたらどうするんだ」
「そう何回もされないって」
白バイの二人乗りは出来ないし、千速は仕事中だから。
「…気を付けて帰れよ?」
「えぇ、千速もお仕事頑張ってね」
手を振って、千速と別れて。
横断歩道を渡った辺りで。
「お姉さん、今暇?」
「え?」
また声をかけられて。
「待て待て待て!そいつは私のだ!」
また千速が助けてくれた…。
…結果。
「お前さんの恋人、度を超えて過保護じゃねぇか?」
「す、すみません…ご迷惑をおかけして…」
千速はその場で横溝さんに連絡をして、私を送らせた…。
「お時間ありましたらお茶でもどうです?お礼もしたいですし」
と、誘うと、横溝さんは首を横に振ってスマホを見せてきた。
「“お礼で茶を勧められると思うが絶対に乗るな。礼なら私がするから早く帰ってこい”って言われてるんでな」
「…私の行動パターンってわかりやすいですかね?」
もう苦笑いをするしかない…。
「ま、千速にジュースでも奢らせるさ」
そう言いながら、横溝さんはまた私を入れての写真を撮って。
「“無事送り届けたぜ”、と」
写真付きで千速にメッセージを送ったら…。
ヴーッ ヴーッ
「もし『だから重悟!!居座るな!すぐ戻ってこいって言っただろ!』
すぐ千速から通話が来た。
「だからそれが恋人さんを送ってやった奴に取る態度かってんだよ」
『喧しい!ジュース奢ってやるから早く戻れ!冬華に触るな!』
「触ってねぇわ。まだ」
『まだってなんだお前!いい加減にしろ!』
もう千速の習性を利用して楽しんでる模様…。
「お前さんが絡むとたちまち面白いな、千速の奴。じゃあ冬華ちゃん、俺ぁこれで失礼するぞ」
「あ、はい。本当にありがとうございました」
横溝さんは笑いながら、県警へと戻って行った。
「……二回もナンパされるって、私もまだまだいけるみたいね」
ちょっと嬉しかったことは、千速には内緒にしとこ。
「はー、良いお湯だったー」
夜。
適当にご飯を食べ、お風呂に入った。
髪を拭きながらソファーに座り、テレビのチャンネルを変えると。
ピロン
「ん、千速からだ」
千速からメッセージがきた。
“帰りたい”
「ふふ」
まだ飲み会始まったばかりでしょうに。
「『お酒飲んでたら楽しくなるわよ』、と」
久しぶりの飲み会なんだから、楽しんでほしいんだけどなーなんて思いながら。
「そういえばアイスあったはず」
冷凍庫からアイスを出してきて、ソファーに座って食べる。
「…千速が居ないと暇だなぁ」
テレビを観てても話し相手が居ないからつまらない。
飲み会を楽しんでほしいのに、早く帰って来ないかなって思っちゃうのは仕方ないわよね。
「…写メでも送ろっかな」
千速のTシャツに着替えからアイスを食べてる姿を写真撮って、千速に送ると。
ピロン
「あ、千速か……ら……」
千速から返事が来たかと思えば。
“送る相手を間違えてますよ奥さん”
忍からメッセージが来た…。
「『記憶の改ざん手続きを申請します…』」
と送りながら、メッセージの取り消しをしたけれど…。
“残念!受理されませんでした!千速に怒られてくださーい!”
すでに遅くて、私が誤爆したメッセージのスクショを千速に送ったスクショが送られてきて…。
間も無く。
ヴーッ ヴーッ
「もしもし…」
『…私が言いたいことはわかるよな?』
「わ、わかります…送り先を間違えたんです…」
『忍だったからよかったが、他の奴に送ってたら大変だったぞ…』
「は、はい…ごめんなさい…」
千速から通話が来ました…。
「ぅ〜…起きて待ってようかと思ったけど…眠い…」
もう少しで日付が変わる時間帯。
千速はまだ帰って来ていない。
出来るだけ早く変えるって言ってたのになーと思いつつ、楽しめてるようでよかったっていう安心もある。
立ち上がり、先に寝ようと寝室へ行こうとした時。
ピンポーン
インターホンが鳴った。
「あ、帰ってきたかな」
小走りに玄関へ行き、ドアを開ける。
「おかえりー、って…」
「や、夜分遅くにすみません!小隊長を送り届けにきました!」
玄関先に居たのは若い女の子で、千速の部下のよう。
「あ、わざわざすみません…うわベロンベロン…」
「ぅ…冬華…」
「はいはいここに居ますよ」
千速は自分で歩けないくらい酔ってて。
「なんか来月が楽しみすぎるって仰ってて…めちゃ飲んでました…」
また羽目を外したらしい…。
「そうなんですね…本当すみません…」
「いえ、では自分はこれで」
部下の子は敬礼をして、タクシーに乗って帰って行った。
「…っ千速、ちょっと歩いて…っ」
それを見送り、千速の腕を肩に回して家の中に入る。
力の入っていない人間を支えるのはなかなか大変。
「ふぅ…」
千速を玄関に座らせて、鍵を閉めて振り返ると。
「千速?」
千速は立ち上がっていて。
少し酔いが覚めたのかと思って、千速の顔の前で手を振ると。
「っわ…!ちょっと!ちは––––––
その手を掴まれて、引き寄せられて、キスをされた。
「んぅ…っン…っ」
アルコールの香りが強く、私まで酔ってしまいそうなほど深い口付けに変わって。
千速を離そうにも、両手で両頬を固定されて離せない。
「…ふ…っん…っんぅ…っ」
よろけた拍子にドアへと押し付けられ、舌を絡め取られた。
…ちょっと待ってほしい。
こんな玄関先で。
「ぁ…っあ…千速…っちょっと待って…っ」
キスから解放され、首筋へと舌を這わせられて。
千速の胸を押してもその手を掴まれ、頭上で拘束された。
片手だけ拘束されてるのに、なんでこんなに力が強いのよ…。
「ちは…っあっあ…っここじゃ…っやだって…っ」
空いてる手がスウェットの中に侵入し、胸の先を摘まれて肩が震える。
玄関先での行為は嫌だって言ってるのにこの酔っ払いには通用しない。
「…冬華…可愛い…」
「あ…っね…ぇ…っちはや…っ」
スウェットを捲られ、露わになった胸の先を口に含まれた瞬間。
「っあん…っあ…っやだ…っ」
また身体が震えた。
誰か千速を止めて…。
いえ、こんな姿は見られたくないけども…。
「も…っベッド…いこ…っ千速…っ」
ここでするならベッドに行きたいと言っても。
「やだ」
今度はスウェットのズボンの中に手を侵入させてきて。
「…っあっあっ」
秘部の突起に触れられた。
千速はお腹に舌を這わせ、下がると同時にズボンも下げてきて。
「…あ…っ待って!…千速!!」
いつの間にか拘束が解けていたことに気付き、されることを理解して千速の頭を押さえても。
「あぁあっ」
千速は止まらず、ソコをねっとりと舐められた。
意思に反して背中が反ってしまう。
「あっあ…っあ…っや…っめ…っあぁ…っも…っ」
粘着質な水音が玄関に響く。
ダメだ。
もうダメだ。
抗えない。
千速に与えられる快楽に、もう抗えない。
「あ…っちはやぁ…っも…イク…ッイ…ッヴ…ッ」
ビクンと大きく身体が震えて…私はイッた…。
のにも関わらず…。
「ああ…っあっちはや…っまってまってまってぇ…!」
千速は止めてくれず…。
あろうことか、秘部にある小さな突起を吸われて。
「あぁあっあ…っそれ…ッむり…ッイクイクイク…ッイ…ッッ」
もう一度達してしまっても…。
「…ココ好きだろ?」
指を挿入されて。
「あっあっあ…っあ…っやだ…っも…っやだぁ…っ」
動かされながら。
「またイ…っちゃ…っイッちゃう…っあっあっあぁあっイ…ッあ…っ…っああッッ」
吸われて続けたら、誰でもおかしくなるわよ…。
「…あ…ぁ…」
三度目の絶頂で、ズリズリとドアに背中を預けたまま座り込む。
達した余韻が強くて、痙攣が治らない。
「冬華…」
千速は千速でまだ足りなさそうだし…。
千速に抱き締められ、キスをされそうになったけど。
「む」
口をスウェットの裾で拭いてあげる。
だって…ねぇ…?
スウェットに千速のルージュが付いた。
「…ベッドに連れてってほしい」
もう足に力が入らないから立てない…。
けれど私の願いは届かず…。
「も…っや…っやぁん…っああっあっ」
「…可愛い…可愛すぎる…」
玄関先で、抱かれまくり…鳴されまくりました…。
翌日。
「……こ、これは一体…な…なにご…と…だ…」
目を覚ました場所は玄関で。
「…ん」
目を覚ました千速の声で、私も起きた。
「「……」」
千速と私は数秒見つめ合って。
「……くるしゅうない…表を上げよ」
千速は土下座した。
「はぁ…」
私は少し体を動かして、壁に背中を預ける。
「だ…大丈夫…か…?」
「…大丈夫に見えますか」
きっと何も覚えてないわよね…。
ベロンベロンだったし…。
「い、いや…その…すま…すまな…い…」
二日酔いで顔が真っ青なのか、今の現状に真っ青にさせてるのか。
…きっと後者ね。
「わ…私が…した…ん…だよ…な…」
「…あなた以外に誰もいませんよ」
ほら、覚えてない。
あんなに激しく、気を失うまで抱かれたのに。
「…とにかく、朝ご飯は作れません」
「いやいい、それはいい」
奇跡的に千速は今日非番だから、お弁当はいらない。
まぁ次の日が非番だから羽目を外したんだろうけど。
「…その…」
「ん?」
千速はオロオロしながら。
「さ…触ってもいいですか…?」
接触許可を求めてきた。
「…もうしばらくしたくない」
「や、違う。その、場所移動を…だな…」
玄関先だものね。
私はジト目で千速を睨んで。
「ん」
両手を伸ばし、抱っこを求めた。
すかさず千速はお姫様抱っこをしてくれて、リビングへ運んでくれた。
「…着替え持ってくるか?」
「動けるようになったらシャワー浴びるから大丈夫」
「…じゃあ何か飲む…?」
「お水飲みたい」
「わかった、持ってくる」
「ありがと」
「いや…」
千速は私の前に屈み、私より視線を低くして色々気遣ってくれる。
私に触らないように、ソファーに手を置いて。
「…こ、この口紅は…」
「あなたの口を拭いた時に付きました」
「…そう…か…うん…すまない…」
申し訳なさそうに見上げてくる姿がもう、怒られてるワンちゃんのようで可愛い。
「千速、二日酔いじゃないの?」
「…頭痛くて目が覚めたんだが…お前の姿を見て吹っ飛んだ…」
まぁ…ペローンって全部出てる状態で気を失ってたと思うからびっくりするわよね…。
「本当にごめん…」
シュン、と気を落としてる千速を見てキュンとしちゃう。
「反省してるならよし!」
そんな千速の頭を撫でてあげて、笑いかけると。
「…っ」
千速は私を抱き締めようと反応したけど、理性と根性でそれを止めて下唇を噛んでいる。
「朝ご飯、ちょっと遅くなるけど作るから待ってね」
「…いや、私が作るから…っお前は休んでてくれ…」
と、立ち上がる時にまた私に触ろうとしたのを耐えて、ギュッと拳を握ってキッチンへ行った。
「……」
私はそんな千速を横目で見て。
「…もう抱き締めてくれないのかな」
そう零した瞬間。
「わっ!」
「そんなわけないだろ!ただ今は触られたくないかと思って…!」
すぐ駆け寄ってきて、抱き締めてくれた。
「ふふ」
私も千速を抱き締め返して。
「覚えてないことが残念ねぇ?」
そう言うと。
「…言わないでくれ…泣きそう…」
私を抱いた記憶がないことに、本当に泣きそうになっていた。
「いやー、すごかったなぁ。すごい激しかったぁ」
から、ちょっと揶揄ってあげると。
「……っ」
「う、うそうそうそ!ごめんごめんごめん!」
嘘ではないけど、本当に泣きそうになっちゃったから謝った。
それから千速は、“忘れた記憶を思い出す方法”をめちゃ検索してた。
「絶対に思い出したい…」
「…思い出されるのも恥ずかしいんだけどね」
昨日と一昨日と、もう一ヶ月分は鳴されたと思うから。
「しばらくはお預けですよ」
「………はい」
しばらくはしないという約束をした。
あんなの毎回されてたら身が保たないわよ、本当に…。
「あ、おい。腰痛いんだから休んでろ」
「でも洗濯とか掃除しないと…」
「私がやる。座っててくれ」
その日は千速はいつも以上に優しくて。
「あ、湿布貼るか?湿布貼ったら良くなるかな…」
「だいぶ楽になってきたから大丈夫よ。ありがと」
いつも以上に労わってくれました。
END
「…なぁ、冬華」
「なぁに?」
「明日飲み会あるんだが、行ってもいいか…?」
「ふふ、もちろんよ。そういう付き合いって大事よ」
ある日の夕方。
千速が帰宅して、夜ご飯を食べている時。
交通課の皆さんで飲み会があると言った。
なぜか千速は申し訳なさそうに言うものだから、なんだか可愛くて笑っちゃった。
「…私はお前がいるし断ったんだが…」
「“たまには顔を出せー!”って言われた?」
コクンと無言で頷き、ため息を零した。
「昔は飲み会好きだったのに、嫌いになったの?」
昔は週末になると千速と忍の三人で結構飲み歩いていた。
絶対に千速の隣に座らされて、気持ち良く飲んでたら。
“お前はもうやめとけ”
“えー!まだ飲み足りなーい!”
“もう結構飲んでるよ…明日は冬華二日酔いだね”
千速の介抱かと思いきや、実は私が介抱される側だったり。
それで二人で騒いで忍に怒られたりして。
忙しい合間を縫って、よく出歩いていた。
私はそれが何より楽しかったし、仕事で色々あったから救われていた。
「…酒は好きだが、明日の席にはお前がいない」
「さすがに仕事の飲み会はねぇ」
同窓会とか忍との飲み会なら行くけど、さすがに千速の職場の飲み会には行けない。
「研二君の車で迎えに行ってあげよっか?」
バイクは乗れないから、研二君の形見の車で。
五年のブランクはあれど、そこまで腕は落ちてはいないはず。
「お前」
「ん?」
千速はそんな私をきょとん顔で見て。
「免許証、失効してるんじゃないか?」
首を傾げた。
「え゙?」
え、嘘。
そんなこと全然気にしてなかった…。
「だってほら、五年も寝坊してたし」
「…ちょ、ちょっと見てみる…!」
私は箸を置いて、鞄からお財布を取り出す。
日付を見てみれば…。
「……二年前に切れてる…」
「だろ?警察官の、しかも交通課勤務である私の恋人が無免許運転はさすがになぁ」
警察官じゃなかったら見逃してた、と千速は笑った。
「えー…免許取り直しかー…」
「いるか?免許。私のバイクがあればいいだろ」
「緊急で何かあった時に持ってたほうがいいでしょ」
椅子に戻って、免許を見ながら。
「ちょっとパートで働こうかなぁ」
自動車学校も安くないし、そろそろ社会復帰しないと。
貯金はほら、入院費とかで結構飛んだから。
病院側も、私の症例で論文を書くからとオマケしてくれたんだけどね。
「………」
「ふふ、すごく嫌そう」
と思っていたら、千速はとんでもなく嫌そうな表情を浮かべていたから私はクスクス笑った。
「…私は家に居てほしい」
帰って来た時、おかえりって言ってほしいって。
「午前中だけよ。甘えてばかりいられないし」
「なんでだよ。甘えたっていいだろ」
「自学って高いじゃない?せめてその分くらい自分で稼ぎたいの」
むぅ………っと頬を膨らませ、ジト目で睨みながらハンバーグを食べてる。
……可愛すぎる。
「近くのスーパーで募集してないか後で調べてみよっと」
チラシに求人情報ないかチェックしないとって口にすると。
「……」
「?千速?」
今度は千速が箸を置き、スマホを操作して。
「どう「もしもし、重悟か。私だが今いいか?」
横溝さんに電話を掛けたみたい。
私はそんな様子を見ながら、ハンバーグを食べる。
「確か今月末で会計年度任用職員が一人辞めるよな?」
会計年度任用職員って、非常勤事務補助と呼ばれている県警で働くパートのこと。
つまり…。
「……県警勤務かぁ…」
千速は私を県警で働かせようとしてるってこと。
「あぁ、一人都合が付くんだが」
まぁね?私はね?
探す手間も省けるし、千速と一緒に出勤出来るからいいんだけど。
…ゴリゴリに私情を挟んでもいいのかなって思うわけで。
「それは大丈夫だ」
千速はチラッと私を見て。
「元公認会計士だから」
私の前の職業を口にすると。
『公認会計士!?!?』
横溝さんの驚く声が私まで届いた。
「あぁ、だが前の職場には戻らせない」
『な、なんで前の職場に戻らねぇんだよ!?絶対に前の職場のがいいだろ!!』
確かに前の職場のほうがお給料も高いけど…。
「…理由があるんだよ」
千速はあの時のことを伏せてくれた。
公認会計士として働いていたのは、僅か五年ほど。
高卒で公認会計士の国家試験を突破した時の担任の喜びようがもうね。
“きゃあああ!やったぁああ!冬華ちゃぁあん!!”
“あ、はい…や、やったー!”
“先生の喜び方が凄すぎる…”
先生が喜びすぎて圧倒されちゃったわ。
千速も千速で、警察官採用試験に合格して、警察学校への入学が決まってね。
“…嫌だ行きたくない”
“え?せっかく受かったのに?”
“あのね、冬華。警察官になるには採用試験だけじゃなくて、全寮制の警察学校を卒業しないといけないわけで”
忍は呆れながら。
“千速の行きたくないは、あんたと離れたくないって意味なの”
“あ…”
そう言った。
警察学校は携帯電話も使用制限されるしで、連絡がほぼ取れなくなる。
使えるタイミングはあるみたいだけどね。
まぁ千速は決して模範的なタイプじゃないから。
“…また抜け出してきて、大丈夫なの?”
“同じ部屋の奴に協力してもらったから大丈夫だ”
結構抜け出しては会いに来てくれた。
「とにかく面接が決まり次第…………ふ、わかった。伝えるよ。ああ、じゃあな」
通話を終えて、千速がクスリと笑う。
「?横溝さんはなんて?」
最後、横溝さんになんて言われたのかしら。
「“絶対に採用だから履歴書だけ頼む”だそうだ」
「あらま、私って結構すごい?」
「かなりすごい」
私もクスクス笑う。
「完璧に管理しちゃうけど、いいのかしら」
「ぜひしてくれ。警察が不正など断じて許さん」
と言っても、公認会計士の仕事として務めるわけではないから。
それに、新人の私が出しゃばったことは出来ないしね。
千速は立ち上がり、カレンダーを見て。
「…来月から職場が一緒か」
楽しみが過ぎる…と零した。
「ただ、おかえりーって言ってあげられる日は減るけど…」
「いい。一緒に帰宅出来るんだからな」
「千速が何かやらかして始末書や報告書作成で残業にならなければだけどねぇ」
「ぐ…っ」
来月から仕事。
自動車学校代、頑張って稼がないと!
「あ、千速お風呂沸いてるわよ」
「んー」
食後。
私は食器洗いをして、千速はバイクの特集番組を観ていた。
千速にお風呂が沸いてることを伝えれば、立ち上がって背中を伸ばしてる。
「ほら、入るぞ」
「洗い物が終わったら行くから、先入っててー」
「……」
浴室へはキッチンを通って行かなきゃいけなくて。
「…千速?」
私の後ろを通る際、千速は私の後ろで立ち止まった。
まずいかもしれない…。
この感じ、まずいかもしれない…!
ギュッと抱き締められて。
「…洗い物まだ終わってないんだってば…」
千速の手が、服の中に侵入してくる。
「ねぇ、ちは…やぁ…っ」
千速の名前を言い終える前に胸の先を摘まれて、声が上擦った…。
「…っ待ってって…っ」
服の上から千速の手を掴んだけど…。
「は…っ入らないとは…っ言ってないでしょ…っ」
もう片方の手でズボンのボタンとファスナーを開けられたから、その手も掴んだけども…。
「…っあっン…っんんぅ…っっ」
秘部の小さな突起を摘まれて、私の意思とは関係なく背中が反った。
ああ、もうだめだ…。
こうなった千速は止まらない…。
「…っぁ…っあ…っあ…っ待ってってば…っ」
千速はリップノイズを立てながら、項にキスをしてきたり舐めたり。
それでいて、胸の先と秘部の突起を同時に責められて。
「…っああ…っあっあ…っあ…っイ…っク…っちは…っや…っイク…っ」
耐えらるわけがない…。
「あっあっ…それや…っやだ…っや…っあっあっあっ」
加減とかしてくれないし、洗い物も出来なくて。
「あぁあ…っあ…っ…も…イ…っク…っ」
「ん、イッていいぞ」
小さな突起を弄る指の動きを早められて。
「あぁあっあ…ッイっちゃ…っぅん…ッんン゙ッッ」
ビクンッと大きく身体を震わせて、達しちゃった…。
「…あ…ぁ…」
シンクに手を付き、余韻で震える身体を支える。
「洗い物は私がするから、風呂」
入るぞ…と、耳元で囁かれたら…。
「あ…っもうわかったわよ…っ」
もう入るしかないわよね…。
で…。
「あぁあ…っまたイク…っイ…っあっあ…っ」
「はぁ…可愛い…冬華…」
お風呂でも散々鳴かされました…。
「…腰が痛過ぎる…」
朝、目が覚めた。
キッチンでもイかされ、お風呂でもイかされ…。
ベッドに入ってからもっと凄かった…。
来月から一緒の職場ということにテンションMAXだったみたい…。
当の本人は気持ち良さそうにすよすよと寝てるし…。
「…本当にもう、次の日のことを考えてほしいなぁ」
なんて言いながら、千速の額にキスを落として。
「さて、と。お弁当作らないと」
ベッドから降りた。
「今日は千速飲み会だし、夜ご飯どうしようかな」
朝起きたばかりなのに、夜ご飯のことを考えながら卵焼きを焼く。
その間に隣のコンロではお味噌汁を作って、グリルでお魚を焼く。
ちなみに鮭。
「っと…あ!焦げたぁ!」
卵焼きをひっくり返したら焦げちゃってた…。
でも大丈夫。
「証拠隠滅」
焦げた箇所は幸いにも端っこ。
「あひゅい…」
焼き立てだから熱くて、ヒューヒュー言いながら食べてたら。
「…お…ふぁ……よう…」
千速も起きてきた。
「おはよ」
「何食べてるんだ?」
「…何も食べてないわよ?」
「モグモグしてるだろ」
「顎の運動を少々…」
焦げた卵焼きを持った手を下げて、千速に見つからないように隠したんだけど。
「……」
千速が目を細めたため、これはまずいと思って。
「…卵焼き焦げた箇所食べてただけよ」
自分のミスを自分から申告しました…。
「全部食べた?」
「…熱いからまだ半分しか食べてないわ」
「じゃあ食べたい」
「…もー、焦げたの隠したかったのにー」
なんて言いつつ、可愛いなと思いながらもう半分を千速に食べさせた。
「……」
「なに、どうしたの?」
なんか千速がモグモグと口を動かしながらニヤニヤ笑って私を見てるから、絶対に良からぬことを考えてるに違いないと思って私は眉間に皺を寄せる。
「腰、痛いのか?」
「え?」
千速は無言で腰を摩る仕草をした。
「っ!?」
腰の痛さから、無意識で摩ってたみたい…。
「…誰かさんが加減をしてくれないからね」
「お前たくさんイったよな、昨日は」
「そりゃ…イかされましたから…!」
朝からなんて会話をしてるのかしら私たちは。
「千速、運んで」
「うん」
朝ご飯が出来て、千速に運んでもらう。
「今日は夜ご飯どうするんだ?」
「どうしようか迷ってるのよね」
千速の隣に座り、朝ご飯を食べながら。
「外食に行くなら一報入れてくれよ?」
「えぇ、わかってる。ちゃんと連絡するわ」
千速は多分帰らずそのまま飲み会だろうから、今日は一日中一人。
隅々まで家の掃除をしようかしら。
千速がいるとちょっかいかけてきてなかなか進まないから。
「…はぁ…行きたくない…」
「ふふ、行ったら行ったで楽しいわよ?絶対に」
千速はお酒好きだし、誰よりも楽しめるんじゃないかな。
なんて話してるうちに朝ご飯を食べ終え、片付ける。
「あ、履歴書買いに行かないと」
「また神隠しに遭うなよ?」
「もう遭いません!」
少しだけまったりした時間を過ごし、千速の着替えを手伝って。
「はい、お弁当」
「うん。じゃあ出来るだけ早く帰って来るから」
「えぇ、わかったわ。行ってらっしゃい」
「………」
「………」
「…わかってるだろ?」
「あは!行ってらっしゃい!」
「わかればよろしい。行ってくる」
行ってらっしゃいのキスをして、千速を送り出した。
本当に千速は可愛いな。
千速の好きはすごく伝わるし、すごく大事にしてくれる。
「…ま、まぁ…夜は激しいけど…」
でもそれだけ愛してくれてるってことだものね。
「んーッ!はぁ!」
両手を上げて背中と腰を伸ばして。
「…腰痛いからちょっと寝ようかしら」
まずは少し休もう…。
「あったあった」
本屋さんへ、履歴書を買いにきた。
履歴書とボールペンを手に持って、他に何かないかなぁと見て回る。
漫画の本も、当時は十巻くらいまでしかなかったものが今は三十巻くらいまで出てる。
「…長いなぁ五年は…」
五年という月日の長さに、苦笑いを零す。
だって五年の間にこの漫画の中で、2、3個のストーリーが終わってる。
新しい章が始まって、その新章だって結構クライマックスな感じだろうし。
「……それでも私の時間は五年前のまま」
私が車に轢かれ、意識を失う瞬間の千速の顔は。
きっと一生忘れない。
あの、絶望するかのような…。
「…って、ダメダメ!ネガティブになってる!」
私は頭を振って、レジに向かう。
私はもう起きたんだから、五年前に止まった時間は動き出した。
五年のブランクはゆっくり埋めればいいだけ。
「いらっしゃいませー」
「お願いしまーす」
レジに並び、お会計をしている時。
「ん?」
隣のレジで何やらトラブルが。
外国の方に何か聞かれてるけど、フランス語で話されてるからわからないのね。
「……」
あの外人さん、この作家の本はどこかって聞いてるんだよなぁ…。
…あんまり目立ちたくないけど、仕方ないか。
「ありがとうございます」
会計を終え、隣のレジへと行って。
「この外人さん、この作家さんの本の場所を聞いてますよ」
店員さんに教えてあげた。
「え!?言葉わかるんですか!?」
「あ、はい…まぁ…」
「あ、ありがとうございますありがとうございます!助かります!!」
店員さんはキラキラと輝く笑顔で私の手を取ってお礼をたくさん言ってくれた。
『今、案内してくれるみたいです』
『おー!助かりました!ありがとう!』
フランス語で外国の方にも伝えて、軽く会釈をして本屋さんを出た。
「…緊張したぁ…」
見知らぬ人に声をかけるのは勇気がいる。
「フランス語を勉強しといてよかった」
でも店員さんと外国の方の力になれてよかった。
って、五年もブランクあったのに覚えてたことを褒めてほしい。
「千速に褒めてもらお!」
と、歩き出してすぐ。
「お姉さん、暇?」
声をかけられた。
振り返れば、若い男の子が二人。
大学生くらいかな。
「お姉さん暇じゃないの。ごめんね」
ニコリと笑み、歩き出す。
「……」
あの子たち、ついて来てるんですが…。
「お姉さん絶対暇でしょ」
「俺らも暇なんだよね。昼飯奢るから遊ぼうよ」
「大忙しなのよ。旦那さん待たしてるし」
ちょっと嘘を言っても。
「旦那どこにいんの?」
「会わせてよ」
通用しない…。
「っつかさ、こんな可愛い奥さん一人にするのはダメっしょー」
か、可愛い…。
って、ちょっと喜んじゃダメよ私。
「お姉さん、ちょっと待ってって」
「…ちょっと!」
手を掴まれて、無理やり歩みを止められて。
「待てよ」
「…あのねぇ。そろそろ来ると思うわよ?」
「は?誰が?旦那?」
「いいよ、話し付けてやるよ」
男の子たちは終始強気で笑っていたところに。
サイレンの音が聞こえてきた。
「…来た」
この高低を繰り返すモーターサイレンの音は、白バイから発せられるもので。
千速がサイレンを鳴らしながら来てくれてる合図だ。
…前に横溝さんに叱られたのに、懲りないわよね。
「…なんだ?事故か?」
「そんな音聞こえなかったよな?」
男の子たちは私の手を掴んだままキョロキョロと辺りを見回している。
私は向かって来てる白バイを見つめて。
「…本当、見てたのかなってくらいのタイミングだなぁ」
遠くてわからないけど、きっと今私と千速は目が合ってると思う。
「「…!?」」
千速は私たちの前で白バイを止めた。
「え、俺ら?」
「は?なんで?」
ヘルメットをしたまま白バイから降りて近づいて。
「なんで?お前ら、自分たちが迷惑行為をしているという自覚はないのか?」
私の肩に手を置く。
「はぁ?迷惑行為?どこが?」
「俺らお姉さんに道を聞いてただけですが」
「…なるほどな。では道を聞いていただけなら…」
私の手を掴んでいる男の子の手を払って。
「私のものに気安く触れるな」
私の腰を抱き、男の子たちを睨んだ。
…あーもー。
格好良いなぁもー…。
「け、警察が私情挟んでいいのかよ」
「警察官が恋人を守って何が悪い」
「…やー…」
男の子たちは千速の怒りにタジタジになって。
「お前ら、大学生か?大学名を教えろ」
「…っす、すみませんでした!」
「失礼します!!」
そそくさと逃げて行った。
「大学名を言えないってことは、いけないことをしてるって自覚があったのね」
「…実に不愉快だ」
ナンパ君たちはいなくなったのに、千速はまだ怒ってる。
「ありがと、千速。来てくれるってわかってた」
「ここは白バイの巡回ルートだからな」
タイミングが合ってよかった、と千速は胸を撫で下ろした。
そう。
私は千速に白バイの巡回ルートを聞いて、なるべくその道を歩こうと思ってたの。
もしかしたらすれ違えるかもしれないし、今みたいに助けてくれるかもしれないじゃない?
「というか、本屋に行ってたのか?」
「えぇ、履歴書を買いにね」
あ、そうだ!
さっきの出来事を褒めてもらお!
「さっきね、フランス人の方に話をかけられて困ってた店員さんを助けたの」
「フランス人?…お前、フランス語話せるのか?」
さっきの出来事を話すと、私がフランス語を話せることに千速は驚いて。
「日常会話くらいはね。ほかには英語と韓国語なら話せるわよ」
「……いつ勉強してたんだよ…」
凄すぎだろ、と褒めて?くれた?のかしら。
「……」
「なんだ、どうした?」
でも期待した褒め方じゃないから、私は頬を膨らませて千速から視線を逸らした。
「!ああ。よくやった、偉いぞ」
千速は察してくれて、優しく頭を撫でてくれたから。
「ふふ、でしょー?」
嬉しくて笑うと。
「……はぁ……可愛い…」
「あ、痛…っヘルメットが当たった…」
ギュッと抱き締めてくれた拍子に、ヘルメットが頭に当たった。痛かった。
「送るか?」
「大丈夫よ、一人で帰れるから」
「…またナンパされたらどうするんだ」
「そう何回もされないって」
白バイの二人乗りは出来ないし、千速は仕事中だから。
「…気を付けて帰れよ?」
「えぇ、千速もお仕事頑張ってね」
手を振って、千速と別れて。
横断歩道を渡った辺りで。
「お姉さん、今暇?」
「え?」
また声をかけられて。
「待て待て待て!そいつは私のだ!」
また千速が助けてくれた…。
…結果。
「お前さんの恋人、度を超えて過保護じゃねぇか?」
「す、すみません…ご迷惑をおかけして…」
千速はその場で横溝さんに連絡をして、私を送らせた…。
「お時間ありましたらお茶でもどうです?お礼もしたいですし」
と、誘うと、横溝さんは首を横に振ってスマホを見せてきた。
「“お礼で茶を勧められると思うが絶対に乗るな。礼なら私がするから早く帰ってこい”って言われてるんでな」
「…私の行動パターンってわかりやすいですかね?」
もう苦笑いをするしかない…。
「ま、千速にジュースでも奢らせるさ」
そう言いながら、横溝さんはまた私を入れての写真を撮って。
「“無事送り届けたぜ”、と」
写真付きで千速にメッセージを送ったら…。
ヴーッ ヴーッ
「もし『だから重悟!!居座るな!すぐ戻ってこいって言っただろ!』
すぐ千速から通話が来た。
「だからそれが恋人さんを送ってやった奴に取る態度かってんだよ」
『喧しい!ジュース奢ってやるから早く戻れ!冬華に触るな!』
「触ってねぇわ。まだ」
『まだってなんだお前!いい加減にしろ!』
もう千速の習性を利用して楽しんでる模様…。
「お前さんが絡むとたちまち面白いな、千速の奴。じゃあ冬華ちゃん、俺ぁこれで失礼するぞ」
「あ、はい。本当にありがとうございました」
横溝さんは笑いながら、県警へと戻って行った。
「……二回もナンパされるって、私もまだまだいけるみたいね」
ちょっと嬉しかったことは、千速には内緒にしとこ。
「はー、良いお湯だったー」
夜。
適当にご飯を食べ、お風呂に入った。
髪を拭きながらソファーに座り、テレビのチャンネルを変えると。
ピロン
「ん、千速からだ」
千速からメッセージがきた。
“帰りたい”
「ふふ」
まだ飲み会始まったばかりでしょうに。
「『お酒飲んでたら楽しくなるわよ』、と」
久しぶりの飲み会なんだから、楽しんでほしいんだけどなーなんて思いながら。
「そういえばアイスあったはず」
冷凍庫からアイスを出してきて、ソファーに座って食べる。
「…千速が居ないと暇だなぁ」
テレビを観てても話し相手が居ないからつまらない。
飲み会を楽しんでほしいのに、早く帰って来ないかなって思っちゃうのは仕方ないわよね。
「…写メでも送ろっかな」
千速のTシャツに着替えからアイスを食べてる姿を写真撮って、千速に送ると。
ピロン
「あ、千速か……ら……」
千速から返事が来たかと思えば。
“送る相手を間違えてますよ奥さん”
忍からメッセージが来た…。
「『記憶の改ざん手続きを申請します…』」
と送りながら、メッセージの取り消しをしたけれど…。
“残念!受理されませんでした!千速に怒られてくださーい!”
すでに遅くて、私が誤爆したメッセージのスクショを千速に送ったスクショが送られてきて…。
間も無く。
ヴーッ ヴーッ
「もしもし…」
『…私が言いたいことはわかるよな?』
「わ、わかります…送り先を間違えたんです…」
『忍だったからよかったが、他の奴に送ってたら大変だったぞ…』
「は、はい…ごめんなさい…」
千速から通話が来ました…。
「ぅ〜…起きて待ってようかと思ったけど…眠い…」
もう少しで日付が変わる時間帯。
千速はまだ帰って来ていない。
出来るだけ早く変えるって言ってたのになーと思いつつ、楽しめてるようでよかったっていう安心もある。
立ち上がり、先に寝ようと寝室へ行こうとした時。
ピンポーン
インターホンが鳴った。
「あ、帰ってきたかな」
小走りに玄関へ行き、ドアを開ける。
「おかえりー、って…」
「や、夜分遅くにすみません!小隊長を送り届けにきました!」
玄関先に居たのは若い女の子で、千速の部下のよう。
「あ、わざわざすみません…うわベロンベロン…」
「ぅ…冬華…」
「はいはいここに居ますよ」
千速は自分で歩けないくらい酔ってて。
「なんか来月が楽しみすぎるって仰ってて…めちゃ飲んでました…」
また羽目を外したらしい…。
「そうなんですね…本当すみません…」
「いえ、では自分はこれで」
部下の子は敬礼をして、タクシーに乗って帰って行った。
「…っ千速、ちょっと歩いて…っ」
それを見送り、千速の腕を肩に回して家の中に入る。
力の入っていない人間を支えるのはなかなか大変。
「ふぅ…」
千速を玄関に座らせて、鍵を閉めて振り返ると。
「千速?」
千速は立ち上がっていて。
少し酔いが覚めたのかと思って、千速の顔の前で手を振ると。
「っわ…!ちょっと!ちは––––––
その手を掴まれて、引き寄せられて、キスをされた。
「んぅ…っン…っ」
アルコールの香りが強く、私まで酔ってしまいそうなほど深い口付けに変わって。
千速を離そうにも、両手で両頬を固定されて離せない。
「…ふ…っん…っんぅ…っ」
よろけた拍子にドアへと押し付けられ、舌を絡め取られた。
…ちょっと待ってほしい。
こんな玄関先で。
「ぁ…っあ…千速…っちょっと待って…っ」
キスから解放され、首筋へと舌を這わせられて。
千速の胸を押してもその手を掴まれ、頭上で拘束された。
片手だけ拘束されてるのに、なんでこんなに力が強いのよ…。
「ちは…っあっあ…っここじゃ…っやだって…っ」
空いてる手がスウェットの中に侵入し、胸の先を摘まれて肩が震える。
玄関先での行為は嫌だって言ってるのにこの酔っ払いには通用しない。
「…冬華…可愛い…」
「あ…っね…ぇ…っちはや…っ」
スウェットを捲られ、露わになった胸の先を口に含まれた瞬間。
「っあん…っあ…っやだ…っ」
また身体が震えた。
誰か千速を止めて…。
いえ、こんな姿は見られたくないけども…。
「も…っベッド…いこ…っ千速…っ」
ここでするならベッドに行きたいと言っても。
「やだ」
今度はスウェットのズボンの中に手を侵入させてきて。
「…っあっあっ」
秘部の突起に触れられた。
千速はお腹に舌を這わせ、下がると同時にズボンも下げてきて。
「…あ…っ待って!…千速!!」
いつの間にか拘束が解けていたことに気付き、されることを理解して千速の頭を押さえても。
「あぁあっ」
千速は止まらず、ソコをねっとりと舐められた。
意思に反して背中が反ってしまう。
「あっあ…っあ…っや…っめ…っあぁ…っも…っ」
粘着質な水音が玄関に響く。
ダメだ。
もうダメだ。
抗えない。
千速に与えられる快楽に、もう抗えない。
「あ…っちはやぁ…っも…イク…ッイ…ッヴ…ッ」
ビクンと大きく身体が震えて…私はイッた…。
のにも関わらず…。
「ああ…っあっちはや…っまってまってまってぇ…!」
千速は止めてくれず…。
あろうことか、秘部にある小さな突起を吸われて。
「あぁあっあ…っそれ…ッむり…ッイクイクイク…ッイ…ッッ」
もう一度達してしまっても…。
「…ココ好きだろ?」
指を挿入されて。
「あっあっあ…っあ…っやだ…っも…っやだぁ…っ」
動かされながら。
「またイ…っちゃ…っイッちゃう…っあっあっあぁあっイ…ッあ…っ…っああッッ」
吸われて続けたら、誰でもおかしくなるわよ…。
「…あ…ぁ…」
三度目の絶頂で、ズリズリとドアに背中を預けたまま座り込む。
達した余韻が強くて、痙攣が治らない。
「冬華…」
千速は千速でまだ足りなさそうだし…。
千速に抱き締められ、キスをされそうになったけど。
「む」
口をスウェットの裾で拭いてあげる。
だって…ねぇ…?
スウェットに千速のルージュが付いた。
「…ベッドに連れてってほしい」
もう足に力が入らないから立てない…。
けれど私の願いは届かず…。
「も…っや…っやぁん…っああっあっ」
「…可愛い…可愛すぎる…」
玄関先で、抱かれまくり…鳴されまくりました…。
翌日。
「……こ、これは一体…な…なにご…と…だ…」
目を覚ました場所は玄関で。
「…ん」
目を覚ました千速の声で、私も起きた。
「「……」」
千速と私は数秒見つめ合って。
「……くるしゅうない…表を上げよ」
千速は土下座した。
「はぁ…」
私は少し体を動かして、壁に背中を預ける。
「だ…大丈夫…か…?」
「…大丈夫に見えますか」
きっと何も覚えてないわよね…。
ベロンベロンだったし…。
「い、いや…その…すま…すまな…い…」
二日酔いで顔が真っ青なのか、今の現状に真っ青にさせてるのか。
…きっと後者ね。
「わ…私が…した…ん…だよ…な…」
「…あなた以外に誰もいませんよ」
ほら、覚えてない。
あんなに激しく、気を失うまで抱かれたのに。
「…とにかく、朝ご飯は作れません」
「いやいい、それはいい」
奇跡的に千速は今日非番だから、お弁当はいらない。
まぁ次の日が非番だから羽目を外したんだろうけど。
「…その…」
「ん?」
千速はオロオロしながら。
「さ…触ってもいいですか…?」
接触許可を求めてきた。
「…もうしばらくしたくない」
「や、違う。その、場所移動を…だな…」
玄関先だものね。
私はジト目で千速を睨んで。
「ん」
両手を伸ばし、抱っこを求めた。
すかさず千速はお姫様抱っこをしてくれて、リビングへ運んでくれた。
「…着替え持ってくるか?」
「動けるようになったらシャワー浴びるから大丈夫」
「…じゃあ何か飲む…?」
「お水飲みたい」
「わかった、持ってくる」
「ありがと」
「いや…」
千速は私の前に屈み、私より視線を低くして色々気遣ってくれる。
私に触らないように、ソファーに手を置いて。
「…こ、この口紅は…」
「あなたの口を拭いた時に付きました」
「…そう…か…うん…すまない…」
申し訳なさそうに見上げてくる姿がもう、怒られてるワンちゃんのようで可愛い。
「千速、二日酔いじゃないの?」
「…頭痛くて目が覚めたんだが…お前の姿を見て吹っ飛んだ…」
まぁ…ペローンって全部出てる状態で気を失ってたと思うからびっくりするわよね…。
「本当にごめん…」
シュン、と気を落としてる千速を見てキュンとしちゃう。
「反省してるならよし!」
そんな千速の頭を撫でてあげて、笑いかけると。
「…っ」
千速は私を抱き締めようと反応したけど、理性と根性でそれを止めて下唇を噛んでいる。
「朝ご飯、ちょっと遅くなるけど作るから待ってね」
「…いや、私が作るから…っお前は休んでてくれ…」
と、立ち上がる時にまた私に触ろうとしたのを耐えて、ギュッと拳を握ってキッチンへ行った。
「……」
私はそんな千速を横目で見て。
「…もう抱き締めてくれないのかな」
そう零した瞬間。
「わっ!」
「そんなわけないだろ!ただ今は触られたくないかと思って…!」
すぐ駆け寄ってきて、抱き締めてくれた。
「ふふ」
私も千速を抱き締め返して。
「覚えてないことが残念ねぇ?」
そう言うと。
「…言わないでくれ…泣きそう…」
私を抱いた記憶がないことに、本当に泣きそうになっていた。
「いやー、すごかったなぁ。すごい激しかったぁ」
から、ちょっと揶揄ってあげると。
「……っ」
「う、うそうそうそ!ごめんごめんごめん!」
嘘ではないけど、本当に泣きそうになっちゃったから謝った。
それから千速は、“忘れた記憶を思い出す方法”をめちゃ検索してた。
「絶対に思い出したい…」
「…思い出されるのも恥ずかしいんだけどね」
昨日と一昨日と、もう一ヶ月分は鳴されたと思うから。
「しばらくはお預けですよ」
「………はい」
しばらくはしないという約束をした。
あんなの毎回されてたら身が保たないわよ、本当に…。
「あ、おい。腰痛いんだから休んでろ」
「でも洗濯とか掃除しないと…」
「私がやる。座っててくれ」
その日は千速はいつも以上に優しくて。
「あ、湿布貼るか?湿布貼ったら良くなるかな…」
「だいぶ楽になってきたから大丈夫よ。ありがと」
いつも以上に労わってくれました。
END
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