pixiv作品 名探偵コナン
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“……ン……っぁ…あ…ぁ…っ”
–––– 静かな空間に響く
–––– 布が擦れ合う音と
–––– 粘着質な音
“は…ぁ…っちは…っやぁ…っ”
–––– 私を呼ぶ時の声は
–––– 溶けてしまいそうなほど
“ぁ…っも…っィ…っ”
–––– 甘くて 熱い
–––– 艶かしい嬌声
ピピピピピ
「…………」
目覚まし時計の音で、目を覚ました。
ピピピピピ
「……」
隣を見ても、誰も居ない。
夢か。
夢だったのか。
天井に視線を戻して。
ピピピピピ
「……っ最後まで見せてくれよ…!」
煩く鳴り続ける目覚まし時計をそのままに、私はタオルケットを抱え込んで顔を埋めた。
「……はぁ」
出勤して、朝の巡回に行く。
丁度通勤する人たちが多く、混雑しているがラッシュかと聞かれればそうでもない時間帯。
今朝見た夢が忘れられない。
なんならもう一度見たくて寝たら、遅刻ギリギリまで寝てしまって焦った。
「……なんでいいところで起きたんだ私は…」
一番良いところで鳴り響いた目覚まし時計を壊してやろうかとすら思うほど。
“ぁ…っも…っィ…っ”
あと5秒…!
…あと5秒でよかったのに。
あと5秒寝てたかった…。
そうしたら一日頑張れるのに、最悪の気分だよ。
いや、あいつを抱いている夢だから最悪でもないんだが。
目覚めるタイミングが最悪なんだよ。
「…はぁ…今日抱こう…」
『…萩原警部補、無線が入ったままです』
「おっとすまない。つい口に出してしまった」
交差点の死角となる場所の脇道で白バイを停め、バイザーを上げる。
ハンドル中央部にあるスピードメーターに手を置いて。
信号を見る。
赤だ。
停まっている車は数台いて、あの位置からここまでの走行距離と時間を算出して。
「……」
トン トン トン と指でリズムを刻む。
このリズムで距離と時間を測る。
青になる。
走り出す車の中に、一台だけ。
「残念、アウトだ」
スピードを超えた車がいた。
バイザーを下ろし、サイレンを鳴らして。
『そこの赤い車、停まりなさい』
違反車両を追った。
「なーにが“調子に乗りやがって”だよ」
もう少しで手が出るところだった。
「こっちだって遊びで取り締まってるわけじゃないというのに」
停めた違反車両の奴がゴネて大変だった。
交通反則切符の作成をしないといけないが。
「…3万くらいの罰金にしてやろうか」
あまりにも態度が悪かったため、そう零していたら。
「なーに文句言ってんのー?」
と、声が聞こえて。
「!冬華……か……」
振り向いたら頬を突かれたが。
「……」
「ふふ、巡回お疲れ様」
それどころじゃない。
「千速?どうしたの?」
私は冬華の顔から下に視線をずらして。
「…上着を着ろ」
冬華が持ってる上着を取り、押し付けた。
「え、やだよ。今日暑いし、これから聴き込みだし」
「いいから。ワイシャツのボタンも留めろ」
ワイシャツのボタンの上二つを開けているから、留めようとしたら。
「やーだ」
ひょい、と身を躱した。
「おい「冬華!何してんだ、行くぞ」
私の言葉を遮ったのは重悟で。
「はーい。じゃあ千速、また後でね」
手を伸ばせば、その手を掴まれて。
「ま––––
て、とは続けられず。
「油断は禁物ですよ、萩原警部補」
キスをされた。
「…おま…」
私は唇を押さえ、顔が熱くなりながら冬華を睨む。
「あは!顔真っ赤!可愛いなぁ千速は!」
じゃあね、と。
お前は重悟のところへ駆けて行った。
「…お前らなぁ…場所を弁えろよ…」
「横溝さんも顔赤いですよ」
「うるせー」
なんて、重悟を揶揄いながら消えて行った。
「…あいつ…」
キスをされた感触は残ったままで。
「……今朝見た夢を思い出しただろうが…」
熱が再び昂ってしまって。
「……今日絶対に寝かさないからな」
抱き潰すと決めた。
「あ、あいつが好きなプリン」
昼飯時。
あいつは聴き込みに行っているから、今日は私一人。
コンビニにパンと飲み物を買いに行き、いつも売り切れているあいつが好きなプリンを見つけた。
「買っといてやるか」
プリンも一緒に会計してコンビニを出る。
白バイに寄りかかり、スマホを取り出す。
パンと飲み物、プリンの写メを撮ってあいつへ送る。
ピロン
“やた!ありがと千速!”
と、自撮りを送り返してきたが。
“おい、重悟まで写り込んでるぞ”
重悟まで写っていた。
“どの角度にしても写り込んでくるの”
あいつめ、私で遊んでるな。
「…重悟まで写ってたら保存出来ないだろ」
まぁ保存してもいいんだがな。
プリンをサイドボックスに入れ、パンに齧り付く。
ピロン
「ん?」
またあいつからメッセージが来て、開いて見ると。
「…ッ!?!?」
ワイシャツの中の写メが送られてきていた。
汗ばむ胸の谷間と下着の写メだ。
保存 保存 保存。
“ど?興奮した?”
しないわけないだろ。
画面の向こうのあいつは絶対にニヤニヤしてるに違いないが。
“今夜が楽しみだな”
と送れば、返信はなかった。
絶対に“顔が真っ赤だぞ”と重悟に突っ込まれていることだろう。
「あー…くそ…会いたいな…」
勤務先は同じだが部署が違う。
それだけで県警本部内でも会いに行かない限りは顔を合わせることがあまりない。
まぁ、さっきみたいに入口でたまたま会うってことはあるんだがな。
「…しかし」
パンを食いながら空を見上げて。
「…暑いな、今日は」
こんな暑い日の巡回はなかなかにつらいものだ…。
「帰還するか」
16時30分頃。
白バイの巡回を終えるため、県警本部へと進路を変更する。
今日は三件違反車両を取り締まった。
もう少しでゴールド免許だった奴はがっくりと肩を落としていたよ。
信号で停まり、少し体を起こした時だった。
「なんだ?」
サイレンの音が聞こえてきた。
前方の交差点で黒いでかい車と神奈川県警の覆面のパトカーがカーチェイスを繰り広げていた。
どうやらあれを追っているようだな。
『各白バイ緊急配備。海岸通りで黒のセダンが暴走中。 周辺の部隊は直ちに現場へ急行せよ』
丁度 緊急要請の通信も来た。
「こちら 横浜690 追跡に入る」
『了解』
赤色灯を付けて、サイレンを鳴らして黒のセダンを追った。
「『そこの黒いセダン 停まりなさい』」
拡声器で呼びかけても停まる素振りを見せない。
海岸通りは車通りも多く、パトカーで追うには限界がある。
もちろん逃走している黒のセダンもそうだが、相当な運転技術で車と車の間を縫うように逃げている。
「ちっ、危ない運転だな」
スピードを上げて、セダンの横に付けようとした時。
「千速ー!」
あいつの声が聞こえてきた。
後方の覆面パトカーだ。
僅かにスピードを落とし、覆面パトカーと並行して走行する。
「お前たちが追っていたのか」
「あの野郎!部下を刺して逃げやがった!」
重悟がキレ散らかしているが、車両ではなかなかに距離が縮まらない。
「千速!来て!」
「!」
と。
あいつは窓を全開にして身を乗り出したから白バイをパトカーに寄せて。
「お、おい冬華!!」
「お前危ねえだろ!!」
あろうことか、白バイの後ろに乗り移ってきた。
「車じゃ追えない!私はこのまま千速と追うから横溝さんは後から来て!」
「千速と追うって…っ!白バイは原則二人乗り禁止だぞ!」
私は小さく笑って。
「そんなこと言ってる場合ではなかろう重悟!ちゃんと捕まってろよ冬華!」
「うん!行って!」
フルスロットルで黒のセダンを追った。
バイクの操縦技術には自信がある。
前方の車両の隙間を潜り抜けて、黒のセダンの横に付ける。
「諦めて停まれ!」
再び呼びかけても。
「う、うるせー!!来るんじゃねぇ!!」
黒のセダンは窓を開けて怒鳴ってきた。
このままじゃ危険だ。
前方の信号が赤く光っている。
横断歩道を歩き始める人たちもいる中で。
「千速、もうちょっと寄せて」
冬華は白バイをもっと寄せろと言ってきた。
「…何をする気だお前」
…嫌な予感しかしない。
冬華は黒のセダンの窓枠上部を掴んで。
「「…ッ!?!?」」
慌てて窓を閉めようとした時にはすでに遅く…。
「「バ…ッ」」
白バイを足場に、高く膝を振り上げて。
「「ぎゃああああ!!」」
「「バカヤロォォオッッ!!!」」
私と重悟、被疑者どもの絶叫は届かず…。
あいつは飛び膝蹴りで黒のセダンの窓を割って、中へと飛び込んだ。
人間がしてていい身体能力じゃない…。
「バカじゃないのかお前!!何考えてんだよ!!」
「ご、ごめんなさい…つい…」
被疑者確保後、その場であいつを正座させた。
重悟は腕を組み、冬華を叱りつける。
「つい、で走行中の車に飛び膝蹴りをする馬鹿がどこにいる!」
「…め、目の前に…」
「ああ!?」
「ひぃっ」
走行中の車に飛び膝蹴りなんて、誰でも出来る芸当じゃない。
こいつだから出来たということ。
なぜならこいつは、高校時代に空手部に所属していたから。
しかも高一で主将まで務めて、インターハイ三連覇とU18で空手の世界チャンピオンにまで上り詰めた。
オリンピックや世界選手権などの日本代表に選出されたが、一貫として“あくまで部活の一環なので”を譲らず辞退したことがうちの高校の伝説になっていたよ。
そんな激強のこいつが重悟に叱られて縮こまってるのが面白くて、重悟の傍でケラケラ笑っていたら。
「っつうか、千速お前もだぞ」
と言ってきた。
「ああ?私ぃ?なんだよ重悟。私は被疑者を追ってただけだぞ?」
重悟は私と白バイと冬華を交互に見て。
「白バイの二人乗りは原則禁止だ。それなのにお前らときたら…」
「だって千速が乗れって!」
「はー!?私は一言も言ってないが!?お前が勝手に乗ってきたんだろ!!」
「いや言った!!」
「言ってない!」
「言った!」
冬華と睨み合い、罪の擦り付け合いをする。
「だーッ!うるせえ!!言った言わないは関係ねぇんだよ!どれだけの人間に目撃されたと思ってんだ!今頃県警本部は苦情と通報の嵐だぞ!」
重悟はピッと私たちを指差して。
「報告書と始末書とその他諸々の処罰を覚悟しとけ!」
そう言った。
「やーだー!なんでー!?私は被疑者捕まえただけなのにー!」
「なんで私まで!!解せん!!」
定時で上がるつもりが、残業確定になってしまった…。
「……やっと終わった…」
夜22時過ぎ。
報告書と始末書の作成がようやく終わった。
グーッと背中を伸ばして、書類を整えて立ち上がる。
「あいつも終わったかな」
書類を副隊長のデスクに置き、交通課のオフィスを出る。
カツンカツンと足音が響いて、誰ともすれ違うこともなく刑事課のオフィスに着く。
「おーい、冬華「やー!ありがとー!後輩ちゃんのおかげでやっと終わったー!」
「い、いえ私は何も…」
交通課のオフィスを覗いたと同時に、冬華は後輩に抱き着いた。
…ああ?
なんだあれ。
自分のコメカミに青筋が浮かぶのがわかる。
「私パソコンはからっきしでさー…このままじゃ日付変わってたよ…」
「いつも苦労してますもんね」
後輩は苦笑を零す。
……あの後輩、多分あいつに好意を抱いてるな。
あいつを見てる時の表情が好きな奴を見てる時のソレだ。
「あ、あの先輩…」
「んー?」
あいつも背中を伸ばし、立ち上がって書類を整える。
あ、やばいなあれ。
あの流れ、絶対に食事に誘う流れだ。
「よ、よかったら今度「冬華ー、終わったかー?」
そうはさせるかと思い、刑事課のオフィスの扉をノックしながらあいつを呼ぶ。
「っ!」
「!千速!お疲れー!終わったの?」
あいつはパァッと表情を明るくさせて。
「あぁ」
私に駆け寄ってきたあいつの肩に手を置いて。
「終わったよ」
後輩のほうを見ながら笑むと、後輩はビクッと肩を震わせて。
「じゃ、じゃあお疲れ様でした!私はこれで失礼しますね!!」
「あ、うんありがとねー!お疲れ様!」
そそくさと帰って行った。
ふぅ、とりあえず阻止出来てよかった。
「あー、疲れたー…」
冬華は肩を鳴らし、深呼吸をして項垂れる。
「!お前が白バイに乗ってきたおかげで私まで大目玉だよ」
「ノリノリだったくせにー」
お前が指を差すから、歩きながら会話をする。
おそらく給湯室へジュースを買いに行くのだろう。
「しっかしお前、走行中の車に飛び膝蹴りって落ちたらどうしようとか思わなかったのか?」
カツンカツンという足音は二人分になって、辺りに響く。
私の質問に。
「千速の操縦技術を信じてるんだから、思うわけないでしょ?」
お前は小さく笑った。
「…まぁ」
真正面から言われると、些か照れ臭いな。
「あ、照れた!照れてるわよね!?」
「う、煩いぞ…!」
また頬を突っつかれる。
「あは!やっぱり千速って可愛いなぁ」
なんて言いながら、給湯室内にある自販機でジュースを買った。
「……」
…よかろう。
私を揶揄うのなら、今朝見た夢の続きをここでしてやろう。
「千速も何か飲––––––
と、振り返ったお前にキスをした。
目を見開き、私を離すために落としそうなったジュースを掴んで給湯台へと置き、その横に座らせて。
「…っちは…っン…っ」
キスをしたままワイシャツの中に手を差し入れた。
こいつが私の手を掴むより早く下着の下に手を入れて、胸の先を指頭で摩ると。
「…ぅ…っン…っ」
ピクっと肩を震わせた。
「…は…っ千速…っここ県警…っ」
「でも誰もいない」
静かな空間に響くのは自販機の電子音と、冬華のくぐもった熱い吐息。
「…声を出せ」
「…っぅ…ばか…っできるわけな…っぃ…ン…っ」
与えられる快楽に、必死に抗っているが。
「そうか」
私は冬華の太腿に手を這わせて、耳元で。
「…じゃあこれにも耐えられるか?」
そう囁き、下着の上から爪でソコを軽く引っ掻くと。
「…っあっあ…っ」
今度はさすがに耐えられなかったようで、今度は強めに肩を震わせた。
「…っちはや…っ」
瞳に薄らと涙を浮かばせて。
快楽に染まり始めるその眼差しに、私の熱まで昂まって。
下着の横から指を忍ばせ、直に触れると。
湿り気を帯びていて。
“濡れてきてるぞ”
吐息を吹き掛けるように耳元で囁くと。
「…っぁ…っぃ…っ言わないでよぉ…っ」
冬華はギュッと私に抱きついてきた。
–––– ああ
–––– たまらない
–––– ゾクゾクする
もっと鳴かせたい。
もっとめちゃくちゃにしてやりたい。
そんな欲望が溢れ出てしまう。
けれどここは県警本部の給湯室。
時間的に人が少ないだけで誰も来ないわけじゃない。
しかしこのスリル感と背徳感が、私をさらに興奮させた。
「…っあ…っぁ…っン…っ」
「…痛いか?」
ゆっくりとナカに指を挿入していく。
「…ぁ…っだ…だい…っぅ…っじょぶ…っ」
些か早急すぎたかと思えば、お前は首を横に振った。
「…ぁ…っあ…っあ…っ」
粘着質な水音と自販機の電子音。
「…っ」
私の耳にかかるお前の熱い吐息と嬌声に、私自身の制御も効かなくなりそうだった。
「…っぁ…っちは…っやぁ…っソコ…や…っ」
「良い、の間違いだろ?」
“イイトコロ”に触れて、緩々とソコを摩り続ければ。
「…ぁ…っぁぁ…っあ…っイ…っきそ…っあ…っ」
お前はすぐにイキそうになって。
「…ん、いいぞ」
生理的な涙を零すお前は。
「…ぁ…っあっン…っンぅ…っン…っんぅう…ッッ!」
ビクンッと大きく身体を震わせて、絶頂を迎えた。
「……ぁ…はぁ…はぁ…っん…っ」
トロンとした表情が何とも言えなくて、キスをしながらゆっくりと指を引き抜いた。
すると。
「ん?」
冬華の背後にある鏡に先ほどの後輩が映っていて、目が合った。
「ん…」
「……」
冬華の唇を解放し、濡れた指先を舐めながら目を細めてやると。
「…っ!?」
後輩は私が気付いていることに気付き、真っ赤な顔のまま慌てるように去って行った。
見られたか。
だがまぁいい。
あの後輩はこいつに好意を抱いていたようだしな。
「……千速…?どうしたの…?」
幸いなのは、こいつが後輩に見られていたことに気付いてないこと。
「いや、何でもないよ」
ワイシャツを整え、給湯台から降りた時に。
「わ…!」
「っと」
「っあ、ありがと」
バランスを崩したため、支えてやる。
「……なんかもう給湯室に来れないかも」
私はこいつが買ったジュースを開けて。
「思い出すから?」
「…っだから言わないでよそういうこと…!」
ニヤリと笑うと、お前はほんのり頬を赤らめて視線を逸らした。
笑いながらジュースを飲むと。
「私が買ったジュースなんですがぁ」
と文句を言ってきたため。
「っちょ–––––
引き寄せて、キスをして、ジュースを流し込んでやった。
「…ぅん…っん…っんぅ…っ」
そのまま舌を絡め取り、深く深く口付ける。
「…っは…っはぁ…っ」
含み切れなかった唾液混じりのジュースも、唇を解放してから舐め取ってやった。
「…っもう…!ここ県警本部だってば…!」
また文句を言うお前に、私は目を細めて。
「そうは言っても、お前だって満更ではないだろ?」
問いかけた。
「…はぁ?…そんなわけないでしょ」
目を逸らしながら言うから、顎に手を添えてこちらを向かせて。
「満更でもないから、お前は私を突き放さなかった」
親指で唇を撫でてそう言ってやると。
「…っ」
顔を真っ赤にさせて、涙目になった。
そう。
満更でもないんだよな、こいつも。
こいつは元とは言え、U18 空手の世界チャンピオンだった奴だ。
そんな冬華が本気で拒絶をすれば、私など容易く放り投げることが出来るだろう。
それをしなかったんだから、な。
「そうだろ?冬華」
「…っ知らない!」
お前は自分の顎に添えられている私の手を弾き、背中を向けた。
私はクツクツ笑いながら、先ほどの後輩のことを思い出す。
大丈夫だとは思うが、一応忠告をしておいたほうが良さそうだな。
「そういえば千速、プリンは?」
「プリン?」
何の話かと思えば…。
「…あ…」
「え、まさか…」
私は苦笑いを零して。
「…白バイのサイドボックスに入ったままだ…」
プリンの在処を口にした。
「…今日暑かったし、絶対に傷んでるわよね」
「…悪い。忘れていた…」
素直に謝ると、冬華は私の頬にキスをして。
「今日忙しかったし、仕方ないわよ。プリンにはまたいつか出会えるでしょ!」
私のためにありがとね、と。
笑ってくれた。
はぁ…そういうところなんだよお前は…。
そういうところが愛しくて、ますます依存させる。
「…今日はお前の家に泊まる」
「……もうしないからね」
「………」
「千速?わかった?ねぇ」
「………」
「ねぇ!ちゃんと返事をして!千速!」
より激しく抱いてやった。
翌日、少し早くに県警本部へと出勤する。
昨日の“アレ”を見た後輩に、警告と忠告をするために。
「後輩は、と」
あいつと重悟はいないから、まだ出勤前らしい。
後輩もまだ来てないかと思えば。
「「あ」」
見つけて、声が重なった。
「……ッ」
私を見た途端、顔を真っ赤にさせて逃げようとしたため。
「おいおい、待て待て」
すぐに捕まえ、肩を組むように腕を回す。
「まずはおはよう」
「お…おおおはようございます…っ!!」
次には。
「お前、昨日の“アレ”、誰にも言ってないよなぁ?」
確認。
後輩は信号機みたいに真っ赤な顔から真っ青な顔になって。
「お前が誰かに言った瞬間、お前の大好きな先輩の首が飛ぶからな?わかるよな?」
「わかりますわかりますわかります!!絶対に言いません!!」
「よし。約束したぞ。もし破ったら…」
破っても特に何かするわけではないが、これは脅しだから脅す。
「……ッッ」
後輩は何度も頷いたから、口止め終了でいいな。
「うむ。では私は失礼する」
と、振り返ったら。
「「………」」
あいつが居て。
「朝っぱらから浮気ですか」
目を細めて、私を見据えていた。
まずい…。
後輩と肩を組んでコソコソ話していたのを見られていたとは…。
「…誤解だ」
両手を上げて、降参ポーズを取る私と。
「朝から修羅場だなぁ、千速」
ニヤニヤ笑う重悟。
冬華は眉間に皺を寄せて、私の横を通り過ぎ–––
「痛い痛い痛い!!!馬鹿お前!!加減をしろ!」
ず、手を掴まれ壁に押し付けられて拘束された。
「浮気の現行犯で逮捕!!取調室へ連れて行く!!」
「だから誤解なんだって!重悟!お前からも言ってくれよ!」
重悟に助けを求めるが…。
「…まぁ、頑張れよ千速」
「な…っ重悟 貴様!!」
「キリキリ歩け!」
助けてくれず、取調室へと連れて行かれた…。
「…お前、あの二人には手を出さん方がいいぞ」
「…出せませんよ…絶対に…」
なんて、重悟と後輩が話していたのは知らない。
「故郷のお袋さんが泣いてるぞ!白状しろ!」
「純情ドラマか。誤解だと五回は言ったぞ」
「……」
「……」
「…千速」
「…何も言うな」
END
“……ン……っぁ…あ…ぁ…っ”
–––– 静かな空間に響く
–––– 布が擦れ合う音と
–––– 粘着質な音
“は…ぁ…っちは…っやぁ…っ”
–––– 私を呼ぶ時の声は
–––– 溶けてしまいそうなほど
“ぁ…っも…っィ…っ”
–––– 甘くて 熱い
–––– 艶かしい嬌声
ピピピピピ
「…………」
目覚まし時計の音で、目を覚ました。
ピピピピピ
「……」
隣を見ても、誰も居ない。
夢か。
夢だったのか。
天井に視線を戻して。
ピピピピピ
「……っ最後まで見せてくれよ…!」
煩く鳴り続ける目覚まし時計をそのままに、私はタオルケットを抱え込んで顔を埋めた。
「……はぁ」
出勤して、朝の巡回に行く。
丁度通勤する人たちが多く、混雑しているがラッシュかと聞かれればそうでもない時間帯。
今朝見た夢が忘れられない。
なんならもう一度見たくて寝たら、遅刻ギリギリまで寝てしまって焦った。
「……なんでいいところで起きたんだ私は…」
一番良いところで鳴り響いた目覚まし時計を壊してやろうかとすら思うほど。
“ぁ…っも…っィ…っ”
あと5秒…!
…あと5秒でよかったのに。
あと5秒寝てたかった…。
そうしたら一日頑張れるのに、最悪の気分だよ。
いや、あいつを抱いている夢だから最悪でもないんだが。
目覚めるタイミングが最悪なんだよ。
「…はぁ…今日抱こう…」
『…萩原警部補、無線が入ったままです』
「おっとすまない。つい口に出してしまった」
交差点の死角となる場所の脇道で白バイを停め、バイザーを上げる。
ハンドル中央部にあるスピードメーターに手を置いて。
信号を見る。
赤だ。
停まっている車は数台いて、あの位置からここまでの走行距離と時間を算出して。
「……」
トン トン トン と指でリズムを刻む。
このリズムで距離と時間を測る。
青になる。
走り出す車の中に、一台だけ。
「残念、アウトだ」
スピードを超えた車がいた。
バイザーを下ろし、サイレンを鳴らして。
『そこの赤い車、停まりなさい』
違反車両を追った。
「なーにが“調子に乗りやがって”だよ」
もう少しで手が出るところだった。
「こっちだって遊びで取り締まってるわけじゃないというのに」
停めた違反車両の奴がゴネて大変だった。
交通反則切符の作成をしないといけないが。
「…3万くらいの罰金にしてやろうか」
あまりにも態度が悪かったため、そう零していたら。
「なーに文句言ってんのー?」
と、声が聞こえて。
「!冬華……か……」
振り向いたら頬を突かれたが。
「……」
「ふふ、巡回お疲れ様」
それどころじゃない。
「千速?どうしたの?」
私は冬華の顔から下に視線をずらして。
「…上着を着ろ」
冬華が持ってる上着を取り、押し付けた。
「え、やだよ。今日暑いし、これから聴き込みだし」
「いいから。ワイシャツのボタンも留めろ」
ワイシャツのボタンの上二つを開けているから、留めようとしたら。
「やーだ」
ひょい、と身を躱した。
「おい「冬華!何してんだ、行くぞ」
私の言葉を遮ったのは重悟で。
「はーい。じゃあ千速、また後でね」
手を伸ばせば、その手を掴まれて。
「ま––––
て、とは続けられず。
「油断は禁物ですよ、萩原警部補」
キスをされた。
「…おま…」
私は唇を押さえ、顔が熱くなりながら冬華を睨む。
「あは!顔真っ赤!可愛いなぁ千速は!」
じゃあね、と。
お前は重悟のところへ駆けて行った。
「…お前らなぁ…場所を弁えろよ…」
「横溝さんも顔赤いですよ」
「うるせー」
なんて、重悟を揶揄いながら消えて行った。
「…あいつ…」
キスをされた感触は残ったままで。
「……今朝見た夢を思い出しただろうが…」
熱が再び昂ってしまって。
「……今日絶対に寝かさないからな」
抱き潰すと決めた。
「あ、あいつが好きなプリン」
昼飯時。
あいつは聴き込みに行っているから、今日は私一人。
コンビニにパンと飲み物を買いに行き、いつも売り切れているあいつが好きなプリンを見つけた。
「買っといてやるか」
プリンも一緒に会計してコンビニを出る。
白バイに寄りかかり、スマホを取り出す。
パンと飲み物、プリンの写メを撮ってあいつへ送る。
ピロン
“やた!ありがと千速!”
と、自撮りを送り返してきたが。
“おい、重悟まで写り込んでるぞ”
重悟まで写っていた。
“どの角度にしても写り込んでくるの”
あいつめ、私で遊んでるな。
「…重悟まで写ってたら保存出来ないだろ」
まぁ保存してもいいんだがな。
プリンをサイドボックスに入れ、パンに齧り付く。
ピロン
「ん?」
またあいつからメッセージが来て、開いて見ると。
「…ッ!?!?」
ワイシャツの中の写メが送られてきていた。
汗ばむ胸の谷間と下着の写メだ。
保存 保存 保存。
“ど?興奮した?”
しないわけないだろ。
画面の向こうのあいつは絶対にニヤニヤしてるに違いないが。
“今夜が楽しみだな”
と送れば、返信はなかった。
絶対に“顔が真っ赤だぞ”と重悟に突っ込まれていることだろう。
「あー…くそ…会いたいな…」
勤務先は同じだが部署が違う。
それだけで県警本部内でも会いに行かない限りは顔を合わせることがあまりない。
まぁ、さっきみたいに入口でたまたま会うってことはあるんだがな。
「…しかし」
パンを食いながら空を見上げて。
「…暑いな、今日は」
こんな暑い日の巡回はなかなかにつらいものだ…。
「帰還するか」
16時30分頃。
白バイの巡回を終えるため、県警本部へと進路を変更する。
今日は三件違反車両を取り締まった。
もう少しでゴールド免許だった奴はがっくりと肩を落としていたよ。
信号で停まり、少し体を起こした時だった。
「なんだ?」
サイレンの音が聞こえてきた。
前方の交差点で黒いでかい車と神奈川県警の覆面のパトカーがカーチェイスを繰り広げていた。
どうやらあれを追っているようだな。
『各白バイ緊急配備。海岸通りで黒のセダンが暴走中。 周辺の部隊は直ちに現場へ急行せよ』
丁度 緊急要請の通信も来た。
「こちら 横浜690 追跡に入る」
『了解』
赤色灯を付けて、サイレンを鳴らして黒のセダンを追った。
「『そこの黒いセダン 停まりなさい』」
拡声器で呼びかけても停まる素振りを見せない。
海岸通りは車通りも多く、パトカーで追うには限界がある。
もちろん逃走している黒のセダンもそうだが、相当な運転技術で車と車の間を縫うように逃げている。
「ちっ、危ない運転だな」
スピードを上げて、セダンの横に付けようとした時。
「千速ー!」
あいつの声が聞こえてきた。
後方の覆面パトカーだ。
僅かにスピードを落とし、覆面パトカーと並行して走行する。
「お前たちが追っていたのか」
「あの野郎!部下を刺して逃げやがった!」
重悟がキレ散らかしているが、車両ではなかなかに距離が縮まらない。
「千速!来て!」
「!」
と。
あいつは窓を全開にして身を乗り出したから白バイをパトカーに寄せて。
「お、おい冬華!!」
「お前危ねえだろ!!」
あろうことか、白バイの後ろに乗り移ってきた。
「車じゃ追えない!私はこのまま千速と追うから横溝さんは後から来て!」
「千速と追うって…っ!白バイは原則二人乗り禁止だぞ!」
私は小さく笑って。
「そんなこと言ってる場合ではなかろう重悟!ちゃんと捕まってろよ冬華!」
「うん!行って!」
フルスロットルで黒のセダンを追った。
バイクの操縦技術には自信がある。
前方の車両の隙間を潜り抜けて、黒のセダンの横に付ける。
「諦めて停まれ!」
再び呼びかけても。
「う、うるせー!!来るんじゃねぇ!!」
黒のセダンは窓を開けて怒鳴ってきた。
このままじゃ危険だ。
前方の信号が赤く光っている。
横断歩道を歩き始める人たちもいる中で。
「千速、もうちょっと寄せて」
冬華は白バイをもっと寄せろと言ってきた。
「…何をする気だお前」
…嫌な予感しかしない。
冬華は黒のセダンの窓枠上部を掴んで。
「「…ッ!?!?」」
慌てて窓を閉めようとした時にはすでに遅く…。
「「バ…ッ」」
白バイを足場に、高く膝を振り上げて。
「「ぎゃああああ!!」」
「「バカヤロォォオッッ!!!」」
私と重悟、被疑者どもの絶叫は届かず…。
あいつは飛び膝蹴りで黒のセダンの窓を割って、中へと飛び込んだ。
人間がしてていい身体能力じゃない…。
「バカじゃないのかお前!!何考えてんだよ!!」
「ご、ごめんなさい…つい…」
被疑者確保後、その場であいつを正座させた。
重悟は腕を組み、冬華を叱りつける。
「つい、で走行中の車に飛び膝蹴りをする馬鹿がどこにいる!」
「…め、目の前に…」
「ああ!?」
「ひぃっ」
走行中の車に飛び膝蹴りなんて、誰でも出来る芸当じゃない。
こいつだから出来たということ。
なぜならこいつは、高校時代に空手部に所属していたから。
しかも高一で主将まで務めて、インターハイ三連覇とU18で空手の世界チャンピオンにまで上り詰めた。
オリンピックや世界選手権などの日本代表に選出されたが、一貫として“あくまで部活の一環なので”を譲らず辞退したことがうちの高校の伝説になっていたよ。
そんな激強のこいつが重悟に叱られて縮こまってるのが面白くて、重悟の傍でケラケラ笑っていたら。
「っつうか、千速お前もだぞ」
と言ってきた。
「ああ?私ぃ?なんだよ重悟。私は被疑者を追ってただけだぞ?」
重悟は私と白バイと冬華を交互に見て。
「白バイの二人乗りは原則禁止だ。それなのにお前らときたら…」
「だって千速が乗れって!」
「はー!?私は一言も言ってないが!?お前が勝手に乗ってきたんだろ!!」
「いや言った!!」
「言ってない!」
「言った!」
冬華と睨み合い、罪の擦り付け合いをする。
「だーッ!うるせえ!!言った言わないは関係ねぇんだよ!どれだけの人間に目撃されたと思ってんだ!今頃県警本部は苦情と通報の嵐だぞ!」
重悟はピッと私たちを指差して。
「報告書と始末書とその他諸々の処罰を覚悟しとけ!」
そう言った。
「やーだー!なんでー!?私は被疑者捕まえただけなのにー!」
「なんで私まで!!解せん!!」
定時で上がるつもりが、残業確定になってしまった…。
「……やっと終わった…」
夜22時過ぎ。
報告書と始末書の作成がようやく終わった。
グーッと背中を伸ばして、書類を整えて立ち上がる。
「あいつも終わったかな」
書類を副隊長のデスクに置き、交通課のオフィスを出る。
カツンカツンと足音が響いて、誰ともすれ違うこともなく刑事課のオフィスに着く。
「おーい、冬華「やー!ありがとー!後輩ちゃんのおかげでやっと終わったー!」
「い、いえ私は何も…」
交通課のオフィスを覗いたと同時に、冬華は後輩に抱き着いた。
…ああ?
なんだあれ。
自分のコメカミに青筋が浮かぶのがわかる。
「私パソコンはからっきしでさー…このままじゃ日付変わってたよ…」
「いつも苦労してますもんね」
後輩は苦笑を零す。
……あの後輩、多分あいつに好意を抱いてるな。
あいつを見てる時の表情が好きな奴を見てる時のソレだ。
「あ、あの先輩…」
「んー?」
あいつも背中を伸ばし、立ち上がって書類を整える。
あ、やばいなあれ。
あの流れ、絶対に食事に誘う流れだ。
「よ、よかったら今度「冬華ー、終わったかー?」
そうはさせるかと思い、刑事課のオフィスの扉をノックしながらあいつを呼ぶ。
「っ!」
「!千速!お疲れー!終わったの?」
あいつはパァッと表情を明るくさせて。
「あぁ」
私に駆け寄ってきたあいつの肩に手を置いて。
「終わったよ」
後輩のほうを見ながら笑むと、後輩はビクッと肩を震わせて。
「じゃ、じゃあお疲れ様でした!私はこれで失礼しますね!!」
「あ、うんありがとねー!お疲れ様!」
そそくさと帰って行った。
ふぅ、とりあえず阻止出来てよかった。
「あー、疲れたー…」
冬華は肩を鳴らし、深呼吸をして項垂れる。
「!お前が白バイに乗ってきたおかげで私まで大目玉だよ」
「ノリノリだったくせにー」
お前が指を差すから、歩きながら会話をする。
おそらく給湯室へジュースを買いに行くのだろう。
「しっかしお前、走行中の車に飛び膝蹴りって落ちたらどうしようとか思わなかったのか?」
カツンカツンという足音は二人分になって、辺りに響く。
私の質問に。
「千速の操縦技術を信じてるんだから、思うわけないでしょ?」
お前は小さく笑った。
「…まぁ」
真正面から言われると、些か照れ臭いな。
「あ、照れた!照れてるわよね!?」
「う、煩いぞ…!」
また頬を突っつかれる。
「あは!やっぱり千速って可愛いなぁ」
なんて言いながら、給湯室内にある自販機でジュースを買った。
「……」
…よかろう。
私を揶揄うのなら、今朝見た夢の続きをここでしてやろう。
「千速も何か飲––––––
と、振り返ったお前にキスをした。
目を見開き、私を離すために落としそうなったジュースを掴んで給湯台へと置き、その横に座らせて。
「…っちは…っン…っ」
キスをしたままワイシャツの中に手を差し入れた。
こいつが私の手を掴むより早く下着の下に手を入れて、胸の先を指頭で摩ると。
「…ぅ…っン…っ」
ピクっと肩を震わせた。
「…は…っ千速…っここ県警…っ」
「でも誰もいない」
静かな空間に響くのは自販機の電子音と、冬華のくぐもった熱い吐息。
「…声を出せ」
「…っぅ…ばか…っできるわけな…っぃ…ン…っ」
与えられる快楽に、必死に抗っているが。
「そうか」
私は冬華の太腿に手を這わせて、耳元で。
「…じゃあこれにも耐えられるか?」
そう囁き、下着の上から爪でソコを軽く引っ掻くと。
「…っあっあ…っ」
今度はさすがに耐えられなかったようで、今度は強めに肩を震わせた。
「…っちはや…っ」
瞳に薄らと涙を浮かばせて。
快楽に染まり始めるその眼差しに、私の熱まで昂まって。
下着の横から指を忍ばせ、直に触れると。
湿り気を帯びていて。
“濡れてきてるぞ”
吐息を吹き掛けるように耳元で囁くと。
「…っぁ…っぃ…っ言わないでよぉ…っ」
冬華はギュッと私に抱きついてきた。
–––– ああ
–––– たまらない
–––– ゾクゾクする
もっと鳴かせたい。
もっとめちゃくちゃにしてやりたい。
そんな欲望が溢れ出てしまう。
けれどここは県警本部の給湯室。
時間的に人が少ないだけで誰も来ないわけじゃない。
しかしこのスリル感と背徳感が、私をさらに興奮させた。
「…っあ…っぁ…っン…っ」
「…痛いか?」
ゆっくりとナカに指を挿入していく。
「…ぁ…っだ…だい…っぅ…っじょぶ…っ」
些か早急すぎたかと思えば、お前は首を横に振った。
「…ぁ…っあ…っあ…っ」
粘着質な水音と自販機の電子音。
「…っ」
私の耳にかかるお前の熱い吐息と嬌声に、私自身の制御も効かなくなりそうだった。
「…っぁ…っちは…っやぁ…っソコ…や…っ」
「良い、の間違いだろ?」
“イイトコロ”に触れて、緩々とソコを摩り続ければ。
「…ぁ…っぁぁ…っあ…っイ…っきそ…っあ…っ」
お前はすぐにイキそうになって。
「…ん、いいぞ」
生理的な涙を零すお前は。
「…ぁ…っあっン…っンぅ…っン…っんぅう…ッッ!」
ビクンッと大きく身体を震わせて、絶頂を迎えた。
「……ぁ…はぁ…はぁ…っん…っ」
トロンとした表情が何とも言えなくて、キスをしながらゆっくりと指を引き抜いた。
すると。
「ん?」
冬華の背後にある鏡に先ほどの後輩が映っていて、目が合った。
「ん…」
「……」
冬華の唇を解放し、濡れた指先を舐めながら目を細めてやると。
「…っ!?」
後輩は私が気付いていることに気付き、真っ赤な顔のまま慌てるように去って行った。
見られたか。
だがまぁいい。
あの後輩はこいつに好意を抱いていたようだしな。
「……千速…?どうしたの…?」
幸いなのは、こいつが後輩に見られていたことに気付いてないこと。
「いや、何でもないよ」
ワイシャツを整え、給湯台から降りた時に。
「わ…!」
「っと」
「っあ、ありがと」
バランスを崩したため、支えてやる。
「……なんかもう給湯室に来れないかも」
私はこいつが買ったジュースを開けて。
「思い出すから?」
「…っだから言わないでよそういうこと…!」
ニヤリと笑うと、お前はほんのり頬を赤らめて視線を逸らした。
笑いながらジュースを飲むと。
「私が買ったジュースなんですがぁ」
と文句を言ってきたため。
「っちょ–––––
引き寄せて、キスをして、ジュースを流し込んでやった。
「…ぅん…っん…っんぅ…っ」
そのまま舌を絡め取り、深く深く口付ける。
「…っは…っはぁ…っ」
含み切れなかった唾液混じりのジュースも、唇を解放してから舐め取ってやった。
「…っもう…!ここ県警本部だってば…!」
また文句を言うお前に、私は目を細めて。
「そうは言っても、お前だって満更ではないだろ?」
問いかけた。
「…はぁ?…そんなわけないでしょ」
目を逸らしながら言うから、顎に手を添えてこちらを向かせて。
「満更でもないから、お前は私を突き放さなかった」
親指で唇を撫でてそう言ってやると。
「…っ」
顔を真っ赤にさせて、涙目になった。
そう。
満更でもないんだよな、こいつも。
こいつは元とは言え、U18 空手の世界チャンピオンだった奴だ。
そんな冬華が本気で拒絶をすれば、私など容易く放り投げることが出来るだろう。
それをしなかったんだから、な。
「そうだろ?冬華」
「…っ知らない!」
お前は自分の顎に添えられている私の手を弾き、背中を向けた。
私はクツクツ笑いながら、先ほどの後輩のことを思い出す。
大丈夫だとは思うが、一応忠告をしておいたほうが良さそうだな。
「そういえば千速、プリンは?」
「プリン?」
何の話かと思えば…。
「…あ…」
「え、まさか…」
私は苦笑いを零して。
「…白バイのサイドボックスに入ったままだ…」
プリンの在処を口にした。
「…今日暑かったし、絶対に傷んでるわよね」
「…悪い。忘れていた…」
素直に謝ると、冬華は私の頬にキスをして。
「今日忙しかったし、仕方ないわよ。プリンにはまたいつか出会えるでしょ!」
私のためにありがとね、と。
笑ってくれた。
はぁ…そういうところなんだよお前は…。
そういうところが愛しくて、ますます依存させる。
「…今日はお前の家に泊まる」
「……もうしないからね」
「………」
「千速?わかった?ねぇ」
「………」
「ねぇ!ちゃんと返事をして!千速!」
より激しく抱いてやった。
翌日、少し早くに県警本部へと出勤する。
昨日の“アレ”を見た後輩に、警告と忠告をするために。
「後輩は、と」
あいつと重悟はいないから、まだ出勤前らしい。
後輩もまだ来てないかと思えば。
「「あ」」
見つけて、声が重なった。
「……ッ」
私を見た途端、顔を真っ赤にさせて逃げようとしたため。
「おいおい、待て待て」
すぐに捕まえ、肩を組むように腕を回す。
「まずはおはよう」
「お…おおおはようございます…っ!!」
次には。
「お前、昨日の“アレ”、誰にも言ってないよなぁ?」
確認。
後輩は信号機みたいに真っ赤な顔から真っ青な顔になって。
「お前が誰かに言った瞬間、お前の大好きな先輩の首が飛ぶからな?わかるよな?」
「わかりますわかりますわかります!!絶対に言いません!!」
「よし。約束したぞ。もし破ったら…」
破っても特に何かするわけではないが、これは脅しだから脅す。
「……ッッ」
後輩は何度も頷いたから、口止め終了でいいな。
「うむ。では私は失礼する」
と、振り返ったら。
「「………」」
あいつが居て。
「朝っぱらから浮気ですか」
目を細めて、私を見据えていた。
まずい…。
後輩と肩を組んでコソコソ話していたのを見られていたとは…。
「…誤解だ」
両手を上げて、降参ポーズを取る私と。
「朝から修羅場だなぁ、千速」
ニヤニヤ笑う重悟。
冬華は眉間に皺を寄せて、私の横を通り過ぎ–––
「痛い痛い痛い!!!馬鹿お前!!加減をしろ!」
ず、手を掴まれ壁に押し付けられて拘束された。
「浮気の現行犯で逮捕!!取調室へ連れて行く!!」
「だから誤解なんだって!重悟!お前からも言ってくれよ!」
重悟に助けを求めるが…。
「…まぁ、頑張れよ千速」
「な…っ重悟 貴様!!」
「キリキリ歩け!」
助けてくれず、取調室へと連れて行かれた…。
「…お前、あの二人には手を出さん方がいいぞ」
「…出せませんよ…絶対に…」
なんて、重悟と後輩が話していたのは知らない。
「故郷のお袋さんが泣いてるぞ!白状しろ!」
「純情ドラマか。誤解だと五回は言ったぞ」
「……」
「……」
「…千速」
「…何も言うな」
END