pixiv作品 名探偵コナン
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「…珍しいな」
爆破事件から数日経ったある朝、隣で眠る冬華さんより早く目が覚めた。
いつもは私が起きると、すでに冬華さんは起きていて。
“お…ふぁ……よう…”
“ふふ、おはよ。朝ご飯食べるでしょ?”
“…食べる”
朝飯を用意してくれている。
しかし今日は私が先だ。
朝飯を用意したい気持ちは山々なんだが。
「…本当に整ってるよな」
ほぼ見ることがない冬華さんの寝顔を見ていたい。
まつ毛も長いし、鼻筋も通っている。
口も小さくて顔も小さい。
こんな整っている顔はそうはいないよな。
声だって良い声だが、普段の話し方が私のような男勝り。
まぁ私の前ではワントーン高い女の口調なんだが、そのギャップが最高に良い。
「…冬華さん」
起こさないように頬に触れ、規則正し……くは…ないな?
「…ん?」
少し苦しそうだ。
「冬華さん?」
触れている頬が僅かに熱い気がする。
「…嘘だろ」
頬から首筋に手を移動させて体温を確かめると。
「…熱がある」
やっぱり熱かった。
起こそうと思ったが、まず先に。
「こんな薄着で寝るからだ」
タンクトップに下着という薄着をしていたため。
タンスから私のスウェットを取り出して。
「…よ、っと…」
「…ぅ…ん…」
「あ、起きたか?」
冬華さんの上半身を起こせば、冬華さんが身動いだ。
「……いや、起きてないか」
スウェットの上を着せてからゆっくりと寝かせて。
「…長い足だな」
次はスウェットの下を穿かせて。
「…よし」
あとは布団を被せた。
なかなか起きないものだな。
疲れもあるし、体調の悪さもあるんだと思うが。
「薬を飲ます前に朝飯を食わせないと」
胃に優しい何か…。
「……」
料理が得意ではない私に何が作れる?
冬華さんを起こさないようにベッドから出て、キッチンへ行く。
「……何があるんだ」
冷蔵庫を開けて、卵を手に取ってみる。
…たまご粥か。
スマホを取り出し、“たまご粥 作り方”を検索する。
土鍋はないから普通の鍋で代用して。
「意外と簡単そうだな」
さぁ作ろうと思った時に。
ガチャ
「……おはよ」
「!おはよう」
冬華さんが起きてきた。
すごく体調が悪そうだ…。
「…ねぇ千速、起きたらとんでもなくダサい格好してたんだけども…」
「ダサくない。あんな薄着で寝てるから風邪を引いたんだろ」
「…スウェットなんて初めて着たわ…」
冬華さんは頭痛が痛いようで、コメカミ辺りに手を添えながらソファーに座った。
「頭痛が痛いのか?」
「…頭が痛い、ね。えぇ、少しだけね」
…本当に少しなのか?
「…今たまご粥作るから、それ食って薬飲んで寝た方がいいな」
そう言うと、冬華さんはキッチンにいる私へと視線を向けて。
「作ってくれてるの?」
「あぁ、…まぁ冬華さんより美味く作れるかわからんが」
小さく微笑んで。
「ありがとね、千速」
礼を言ってくるものだから。
「…っ出来るまで横になってろ…!」
どこか照れ臭くて視線を逸らしちまった。
〜♪ 〜♪
「ん、電話きた」
「…誰からだ」
「総監よ」
「……またかあの野郎…」
私の悪態に、冬華さんはクスリと笑って。
「もしもし、おはようございます。総監、怪我の調子はどうですか?」
電話に出た。
怪我の調子はって、自分だって今調子悪いくせに。
ちなみにスマホは、事件翌日すぐに買い直している。
番号とか全部変わってしまったから、とりあえずは私と総監、妃弁護士のを登録したようだ。
…私を一番先に登録してくれたのが何気に嬉しい。
「私ですか?はい、少し風邪を引いたようです」
「…少しじゃないだろ」
で、総監からの電話を聞いていると、気遣ってはくれているようだから安心した。
「いえ、大丈夫です。では本日警視庁へ伺いますね」
「…は?」
前言撤回だ。
あの野郎、やっぱり一回ぶん殴りたい。
「はい、失礼します」
通話を終えて。
「今日「そんなに体調悪いのに、警視庁へ行くのか?」
冬華さんの言葉を遮るように言うと。
「えぇ、先日の爆破事件について警視庁でも追ってくれているから」
その会議に、と。
冬華さんはソファーで横になりながら言った。
「あの日から、というか交際を始めてから半年以上経ってるのに冬華さんの休みが一日もないのは何故なんだ」
「あったでしょ?三日間も」
「あれは謹慎であって休みじゃない」
こんな働き詰めで、何故倒れないんだ。
それ以前に、労働基準法というものを無視するにも程があるだろ。
「本当、優秀って罪よね」
などとほざいてクスクス笑っている。
「バカを言うな。今日は絶対に休まないとダメだ」
「千速が作ってくれてるお粥を食べれば元気出るわ」
「…っ」
…だめだな。
何を言っても警視庁へ行く気だ。
「…睡眠薬でも入れるかな」
「聞こえてるわよ」
冬華さんは笑って。
「そんなに心配しなくても大丈夫よ。ただの風邪なんだし」
と、立ち上がって体を伸ばした。
「……」
私が着せたスウェットも、この人にかかればたちまち品が出る。
というか、品がありすぎて逆に違和感だよ。
似合わないわけじゃないが…こんな安いものを着るような人じゃないんだよな。
「それよりこのスウェットよ。いつの間に着せたの?」
「さっきだよ。着せられたことにも気付かないくらい深く寝てたってことは余程疲れてるってことだろ」
しまった。
話していて卵を入れるタイミングを逃した。
「……まぁ、食えないことはないよな」
お粥を茶碗によそいテーブルに置くと、冬華さんはお粥の前に座った。
パカッと卵を割ってお粥に落とした。
「ふふっ、ありがと」
お粥と私を交互に見て、またクスクスと笑った。
「…味は保証しないぞ」
「美味しくないわけないでしょ」
卵の黄身を割って、少し掻き混ぜてから口へ運ぶ。
「ん、おいしー」
「…ならよかった」
気を使ってくれたのかもしれんが、不味そうに食ってる様子はない。
「…結構熱があるぞ」
お粥を食ってる冬華さんの額に手を当てる。
「薬飲むからすぐ下がるわ」
「節々痛くないのか?」
「めちゃ痛い」
「……喉は?」
「唾飲むだけでも痛い」
「……」
ジト目で睨むと、冬華さんは苦笑いを零して。
「大丈夫だってば。心配しすぎよ?」
子供じゃないんだから、と。
そう言った。
「…とりあえず熱を測ってみてくれ」
「えー…まぁいいけど、そんな高くないと思うけどね」
と測ってみた結果。
「……39度」
「え、体温計壊れてない?」
「貴女の体が壊れてるんだよ」
これは市販の薬より病院だな。
「それ食ったら病院だ」
「いえ「インフルエンザだったらどうするんだよ。みんなに移すつもりか?」
腰に手を当てて言うと。
「…ぅ…」
さすがに黙った。
「病院で検査して、インフルエンザじゃなかったら警視庁へ行けばいい」
「でも「でもじゃない。これは譲らないからな。もし病院に行かないなら今すぐ救急車を呼ぶ」
スマホで119を押し、画面を見せる。
「…っわかりました!行きますよ!」
冬華さんは頬を膨らませながら、警視総監へと電話をかける。
「もしもし、はい、私です。今日なんですが、警視庁へ行く前に病院へ行けと煩く言ってくる恋人さんがおりまして…」
煩く、は余計だろ。まったく。
「え?…あ、はい…その、そうです。萩原千速です」
「…ん?」
今、私の名前を出したな。
「あー…それは…ふふ、大丈夫ですよ。総監はそういう人ではないのは理解していると思いますので」
私を見て、小さく笑っている。
「はい、では結果が分かり次第また連絡致します。失礼します」
通話を終えて、またソファーに横になった○○さんに。
「私のことを話していたのか?」
問いかける。
「えぇ。“君の恋人は神奈川県警 交通課の彼女かい?”って言われて」
“現場に来た彼女、僕に向かって走って来たけど絶対に僕を殴ろうとしてたよね?自分だけ逃げたと思われたのかな…?”
と、言っていたらしい…。
「……バレてたのか」
「あんなに憎悪を醸し出していたらねぇ」
冬華さんもあれを見てたんだもんな。
けれど、総監からのお咎めはなしだから。
結局はこの人の関係で、私にまで甘くなってるのかもしれんな。
総監のお気に入りだし、冬華さんは。
…ムカつく。
「じゃあ支度して病院行ってくるわね」
病院まで送りたいが、病体ではバイクの冷風で悪化させてしまうかもしれないしな。
「あぁ、私は出勤だから帰ってきた時はいないからな。結果を連絡してくれ」
「えぇ、わかったわ」
顔を近づければ、顔を遠ざけられた。
「……」
「今キスしたら風邪が移るかもしれないでしょ?」
「…移ったっていい」
むぅ…と頬を膨らませると、冬華さんはクスリと笑って。
「本当、可愛い子」
額にキスをしてくれた。
「…額じゃない」
「ここは風邪が治ったらね?」
と、私の唇に人差し指を当てた。
「……直ちに直してくれ」
「ふふ、頑張ります」
そうして、今日は別々に家を出た。
「よぉ、お疲れさん」
「!重悟か。お疲れ。どうした?何か用か?」
巡回へ行く前、重悟が声をかけてきた。
ヘルメットを脇に抱え、重悟へ向き直る。
「まぁ用事っちゃあ用事なんだがよ」
「?なんだよ」
重悟は腕を組んで。
「蒼月警視って、普段は女口調なのか?」
問いかけてきた。
「…はぁ?なんでまた」
なんでそんなことを聞いてくるんだ。
そんなことを聞いてどうするんだよ。
「いやな?ほら、お前さんがギャン泣きしてた時によ」
「ギャン泣きって言うな!…その時に…?」
なんか変なこと言ってたか?あの人。
「ほら、あの時」
あの時。
“今病院で手当を受けてます。あちらに救急車が来てますので、警視も手当てを”
重悟が冬華さんへ手当てを促して。
“私以上の負傷者がいるでしょ?そちらを優先してちょうだい”
……冬華さんが…。
“…いませんよ。警視と総監がみんなをいち早く逃してくれたので、怪我人はあなたと総監だけです”
……冬華さんが…。
“…そう…わかったわ。横溝、しばらく現場をお願いね。手当てを終えたらすぐに行くわ”
ワントーン高い女口調で、重悟にそう告げていたな…そういえば…。
「俺が知ってる強かな警視じゃなくて、か弱い女の警視だったから驚いちまった…」
重悟は頬を掻き、苦笑いを零した。
「……」
「だから、ここでは厳格でお前さんみたいな男勝りの口調だが、お前の前でだけは違うのかと思ってな」
単純な疑問だ、と重悟は続けた。
「…いいか?重悟」
「お、おう…」
私は腰に手を当て、息を吐き出して。
「あの現場では色々な音や声が飛び交っていたから、幻聴を聞いたんだよお前は」
重悟の肩に手を置き、ニコリと笑った。
「…んなわけ「重悟、お前は幻聴を聞いた」
ワントーン高い女の口調を知るのは、私と妃弁護士だけでいい。
正直、可能なら妃弁護士の記憶も消したいくらいなんだよ。
あの人の、女の部分を知っているのは私だけでありたい。
「…ちは「もう一度言うぞ?重悟、お前は、幻聴を、聞いただけなんだ」
ジト目で重悟を睨み胸倉を掴むと、重悟はたじろいで。
「…わ、わかった…わかったわかった…俺は幻聴を聞いただけだ。忘れるよ…」
両手を上げて降参ポーズをした。
「わかればいい」
うんうん、と納得して重悟を解放した。
「…お前惚れすぎだろ」
「当たり前だ。あんな良い女に惚れない奴いるのか?」
「…惚れてもいいのか?」
「はっはっ、重悟お前は本当に私を怒らすのが上手いな!ぶっ飛ばすぞ!」
「お前こそ5秒で自分の言動を忘れるな!」
重悟は冗談をちゃんと拾ってくれるから面白い。
「ったく。そのお前がベタ惚れしてる警視がまだ出勤してねぇんだが、なんか知ってるか?」
「あの人は風邪を引いて今は病院だ」
時間的に、混雑してなければそろそろ結果がわかりそうだが。
「まじかよ。検査結果はどうなんだ?連絡来たか?」
「いや、まだ来てない。結果次第では警視庁へ行くらしいぞ」
「…あの人大丈夫なのか?過労で倒れたりしたら…」
過労、か。
「その結果、風邪を引いたんだろうさ」
過労で免疫力が低下していたからウイルスの攻撃に負けたんだろう。
「私としては風邪が治るまで寝ていてほしいんだが」
「…まぁ、大人しく休む人じゃあねぇよなぁ…」
「そうなんだよな…」
はぁ、と重悟と二人でため息を零した時に。
ピロン
スマホが鳴った。
「ん?結果が出たか?」
スマホを確認すれば。
『ただの風邪でした』
の文字が。
「ただの風邪か」
「よかったな」
「良くない。ただの風邪ならあの人は警視庁へ行くんだから」
私はタプタプとスマホをいじって。
「『警視庁へ行くのか?』と」
送ると。
「…お前当たり前のようにタメ口なんだな」
メッセージを覗き見ていた重悟がまた驚いていた。
「当たり前だろ。私たちは交際してるんだからな。というか見るなよ!!」
重悟からスマホを遠避ける。
女のスマホを覗くとは何たる不届き者だ。
ピロン
『今日はお休みいただいたから、このまま自分の家に帰るわ。しばらく接近禁止令を発令します』
休みをもらえたのはいいが。
「…はぁ?」
「……お、ブチギレか?」
自分の家に帰るのならまだしも、接近禁止令だ?
「『喧しい。帰りに行く。鍵をかけたって合鍵があるんだから無駄な抵抗はせずに大人しく寝ていろ』」
『駄目よ、千速。今の風邪を舐めてたら痛い目に遭うわよ?』
「『風邪を舐めてるわけじゃない。ただ看病しに行くって言ってるんだよ』」
『移したくないのよ』
「『移らない』」
『そんな保障ないでしょ?良い子だから言うことを聞いて』
「『子供扱いするな』」
『千速』
「絶対に行「貸せ!!まどろっこしい!!」
メッセージでラリーをしていたら、重悟にスマホを奪われて。
「おい重「蒼月警視っすか!?横溝ですが!!千速を送り込んで看病させますんで諦めてください!」
…冬華さんに電話をかけて捲し立てている。
「ああ!?移したくない!?もう遅いでしょう!あんたら朝一緒だったんだろ!?だったらもう遅いのでそれも諦めてください!…と千速が言ってました」
「急に裏切るなお前!!」
重悟は私の肩に手を置いて。
「とにかく、蒼月警視は働きすぎなので休むには良い機会でしょう。ゆっくり休んでください。お大事に」
私にスマホを返してきた。
「……冬華さん」
『あ、千速?ふふっ、横溝が…っあははっおも…っおもしろ…っくて…っ!』
爆笑してる…。
「…なんか食い物買って行くから。待っててくれ」
『ふふっ、えぇわかったわ。千速の家で休ませてもらうわね』
「わかった。くれぐれも薄着で寝るなよ?」
『はいはい、わかってますよ』
通話を終えて、スマホをポケットに入れる。
「警視はなんて言ってた?」
「…爆笑してたぞ。お前に捲し立てられたのが面白かったんだろうな」
重悟の説得?のおかげで、冬華さんの接近禁止令が解けてホッとした。
「…で?どんな口調だったんだ?」
「最初は“あ、千速?”って高い声だったが」
ミジンコ一匹分も似てない冬華さんの声真似をしながら。
「俺だってわかった瞬間男勝りになったぞ」
ケラケラ笑った。
「わかってるだろうな?重悟」
また重悟をジト目で睨むと。
「…わぁったよ。俺ぁ何も聞いてない…」
また両手を上げて降参ポーズをした。
もしかしたら冬華さん本人からも釘を刺されるかもしれんがな。
そうして。
「よし。では私は巡回へ行く」
「あぁ、気ぃ付けて行けよ?白バイアタックしたら定時で帰れねぇからな!?」
「わ、わかってるよそんなこと!」
お互いにジト目で睨みながら、仕事へと戻った。
「…ただいま」
夕方。
胃に優しそうなものとゼリーとスポドリを買って、帰宅した。
冬華さんからの返事はなく、静かに寝室へ行けば。
「…寝てるのか」
私のスウェットを着て、私のベッドで寝息を立てていた。
朝のような、つらそうな息遣いではなくスゥスゥと規則正しい寝息でホッとする。
ベッドに腰を掛け、冬華さんの首筋に手を当てる。
「…まだ熱いな」
薬の力で熱は下がっていると思うが、まだ熱い。
「…ん」
「!」
冬華さんが身動いで。
「……すまん、起こしたか」
ゆっくりと目を開いた。
「…おかえり、千速」
「ただいま、冬華さん」
冬華さんは私へ手を伸ばしたからその手を取ると。
「起きなくていいよ」
体を起こして。
「あなたが帰ってきたら起きようと思ってたの」
小さく笑った。
「スウェット着たんだな」
「薄着で寝るなって言ったでしょ?私はこういうの持ってないから借りちゃった」
「大いに結構」
こんな姿も私しか見れないんだからな。
冬華さんと一緒にリビングへ行く。
「熱はどうだ?」
「今は薬の力で落ち着いてるわ」
節々の痛みも治っているようだ。
だが薬が切れればまた痛み出すだろう。
「そうか。胃に優しそうなのを色々買ってきてるから、好きなのを食ってくれ」
「またたくさん買ってきたわねぇ」
冬華さんは袋の中身を見てクスクス笑う。
「このゼリーをいただこうかしら」
「ん。夜は煮込みうどんを作る」
煮込みうどんに必要な材料も、検索して買ってきている。
また検索をしながら作れば多分大丈夫だ。
と思っていると。
「私が作るわ。材料買ってきてくれたんでしょ?」
冬華さんがゼリーを咥えながらキッチンに立った。
「いや、冬華さんは寝てろ。私だってそのくらい作れるんだから」
「えー?風邪を引いてる私の料理食べたくない?」
「そんなことは言ってないだろっ」
冬華さんの料理は好きだが、今は休んでいてほしい。
「じゃあほら、作るから持ってきて」
「…う…」
買ってきた材料をキッチンへ持って行く。
「千速も煮込みうどんでいいの?」
「煮込みうどん“が”いい」
「あは!ありがと」
ちゅ、とまた額にキスを落としてくれた。
「……」
「そんな顔をしたって風邪が治るまで唇にはしません」
「風邪などそう簡単に移らない」
「移るわよ。意外と簡単に風邪って移るの」
冬華さんの腕を掴んで、ジト目で睨む。
「…千速」
交差する視線は、お互い譲らないという意思が見えるが。
「…もう。困った子ねぇ」
ちゅ、と。
珍しく冬華さんが折れて唇にキスをしてくれた。
しかし。
「!……」
「…っふ…っ」
離れようとした冬華さんだが、私は冬華さんの首に腕を回して舌を差し入れる。
一瞬驚きを見せ、けれどすぐに目を細めて私の両頬に手を添えて。
「ん…っン…っぁ…っ」
それはもう深い口付けに変わった。
厭らしい水音を辺りに響かせて、自分のくぐもった声に羞恥を感じながら。
「…っは…っぁ…っ」
抱き上げられ、キッチンに座らされて。
「……これ以上は止まらなくなるんだけど」
間近にある冬華さんの綺麗な顔に、私は小さく笑って。
「…誘ったのは私なんだから止まらなくていい」
両頬に手を添え、キスをした。
「…どうしてこんなに可愛いのかしら…やばいなぁもう…」
…無理をさせたくないのにさせてしまった罪悪感はあるが、それでも冬華さんに触れられる嬉しさのほうが勝ってしまったのは言うまでもない。
…そして、まぁ当然。
「……ちょ…ちょっと少し休むわね…」
「す、すまん…布団持ってくる…」
ソファーで横になった冬華さんに布団をかけて。
…煮込みうどんは私が頑張って作った。
翌朝起きれば。
「…喉が痛いかもしれない…」
「ほらー!だから言ったでしょ!病院よ!」
しっかり移ったのも…。
言うまでもない…。
END