pixiv作品 名探偵コナン
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「同窓会?」
「…あぁ、今日の夜」
「いつくらいにお知らせが来ていたの?」
「…結構、前から」
「…へぇ?…いいんじゃない?楽しんできて?」
ある日、冬華さんに与えられている個人の執務室にて。
昼飯を食っていた時。
今日の夜に同窓会があることを思い出して、○○さんに告げれば。
「…私別に悪くないだろ」
「誰も悪いなんて言ってないわよ」
ニコニコと笑顔を浮かべたままなんか怒っている…。
「ただ、もっと早くに報告があってもよかったんじゃない?」
「…忘れてた」
冬華さんはデスクに腰をかけ、私はその前にある来客用のソファーに座っている。
「まぁ、せっかくの飲み会なんだし。さっきも言ったけど楽しんできてね。羽目を外し過ぎないように」
「……」
私はジト目で冬華さんを睨んで。
「冬華さ『蒼月警視、いらっしゃいますか?』
私の言葉はノック音に遮られ、冬華さんを呼ぶ声が聞こえてきた。
「千速」
「ん」
ちょいちょいと手招きをされ、私は冬華さんのデスクの下に潜る。
冬華さんとの関係を秘密にしているわけではないが、こうして執務室で二人きりというのがあまり知られたくはないため。
「入れ」
ワントーン低い声の、“警視”になった冬華さん。
「失礼します」
「なんだ、何かあったのか?」
「はい。先日の件なんですが少し動きがありまして」
先日の件?
私が聞いてもいい内容なのか?
「ほう」
少しだけ顔を出し、二人の様子を窺う。
「総監はなんと?」
「……あなたに一任する、と」
「は?」
冬華さんは眉間に皺を寄せて。
「また丸投げか…。私に丸投げしたいのならもっと階級を上げろと伝えておけ」
「伝えられるわけないでしょう…!」
額に手を当て、ため息を零した。
…警視総監からの信頼が暑いんだな、冬華さんは。
「…では!自分はこれで…!」
ピシッと敬礼をし、冬華さんは額に手を当てたままもう片方の手でシッシッと払う仕草をした。
パタンと扉が閉まる音がして。
「もういいか?」
「…えぇ、いいわよ」
二人きりになって、口調が戻った。
私は冬華さんの回転椅子に座って。
「大変だな、警視という階級も」
クルクルと回りながらそう言うと。
「警視が扱うような案件じゃないのよ。私以上の階級の連中が対応すべきなのに、総監の慎重さというか何というか…」
…警察上層部で何かあった、というニュアンスだな。
「あ」
「ん?」
冬華さんは私を見て。
「詮索厳禁」
「しないよ。そんな面倒くさい」
肩を竦め、そう言った。
「ならいいわ。はぁ…私も今日友人を誘って飲みに行こうかしら」
「は?」
「え?なに?」
今度は私が眉間に皺を寄せる。
「……冬華さん、友人いるのかよ」
「んま、失礼な子。いるわよそりゃ」
冬華さんは私に歩み寄ってきて。
「あなたに“大江 忍”という親友がいるように、私にも親友の一人や二人いるっての」
ちゅ、と。
キスをしてきた。
「…なんで忍を知ってるんだよ」
「調べたからに決まってるでしょ。警視である私の恋人を名乗る以上、変な輩との付き合いがないか調べました」
いつの間に調べたんだ…。
忍も言ってなかったし、きっと調べられてることに気付いてないな。
「あ、別に“大江 忍”ちゃんの過去までは調べてないわよ?最近のプライベートを少しだから、そこは信用して」
私は小さく笑って。
「疑ってないから大丈夫だ」
冬華さんの頬に手を添え、誘導するかのように顔を近づけてキスをした。
「ん」
啄むようなキス。
冬華さんは私の両頬に手を当てて。
「…ふ…っ」
深く深く口付けて。
「ン…っんっ」
舌を絡め合わせ、厭らしい音で羞恥心を掻き乱されて。
「…っぁ…っン…っ」
冬華さんの袖を掴み、私からももっと求めようかとした時に。
「「…!!」」
足音が近づいて来るのが聞こえて。
「はぁ…っ」
「ん」
バッと離れ、またデスクの下に潜った。
コンコン
『警視、少しよろしいですか?』
「あ、あぁ、待ってくれ」
冬華さんは息を整えて。
「ちょっと行ってくるから、あなたもそろそろ戻りなさいね」
コソッと私にそう言って。
「……うん」
私は膝を抱え込み、顔を埋めながら頷いた。
「ふふ」
冬華さんの小さく笑う声が聞こえて。
「可愛いわね、本当に」
ちゅ、と。
私の後頭部にキスを落として。
『すまない、待たせた』
『いえ、大丈夫です。それでですね、警視』
執務室から出て行った。
またひょこっと顔を出して、誰もいないことを確認して。
また冬華さんの回転椅子に座る。
「…ちょっと危なかった気がする」
今のキスの危険さに、顔が熱くなった。
あれ以上していたら、求めてしまうところだった気がする。
いや、現に求めようとしてはいたんだが…。
「…はぁ…」
冬華さんを前にすると、普段の私らしさがなくなって。
“女”になってしまう。
「…こんなはずじゃなかったのにな」
私の想像では、私があの人を攻め散らかして鳴かせまくるはずだったのに。
“悪いけど私、ネコちゃんじゃないのよ”
そう言った時のあの人の眼差しに、見事にハマってしまった…。
「…というか、あの人の親友はどんな奴なんだ」
警視という高い階級を持つ冬華さんと対等で居られるような人物。
そして、私以外の人間に気を許すとか。
「……なんかムカつくな」
私より先に冬華さんと出会い、気を許していると思うと苛々してきて。
冬華さんのデスクの上に敷かれているデスクマットに唇を押し当てて。
「……ビビればいいんだ」
口紅を付けてやった。
まぁ、気付くかわからんがな。
可愛いと言う恋人の可愛い悪戯だから、きっと許してくれるはずだ。
同窓会の会場にて。
「千速ー!」
「忍、もう来てたんだな」
「うん。結構集まってきてるよ」
忍と落ち合う。
「冬華さん、だっけ?許可は得られたの?」
「…まぁ、報告漏れで多少は怒られたがなんとかな」
同窓会の会場は居酒屋。
変に緊張せず、リラックス出来るようにという計らいらしい。
小洒落た店じゃなくてよかった。
私はそういう高級感があるような店は苦手だからな。
個室でもないため、窮屈な感じもなくて良い。
「予算が安いわけよね」
「はは、まぁな」
忍が壁際に座り、私はその隣に座る。
すぐ立てるように靴の近くだ。
ゾロゾロと同級生たちが集まって。
「そんじゃ久しぶりに飲むぞーい!かんぱーい!」
「「「かんぱーい!」」」
ということで、飲み会が始まった。
「あ、この料理美味しい」
「酒の肴に丁度良いな」
酒を飲みつつ、腹も満たす。
「萩原お前!警察になったんだって!?」
「あぁ。私に逮捕されるようなことはするなよ?」
「千速になら逮捕されてもいいかも!」
「バカ言うな!」
同級生たちと適当に会話をして、笑って。
同窓会を満喫していた時だった。
「…うわ…何あの人たち…超美人じゃない…?」
「やば…良い女過ぎるだろ…」
同級生たちがザワザワし始めた。
どうやら良い女が居たらしいが、あの人以上の良い女は存在しないと思っているため興味はないので。
そちらを見ずに酒を楽しんでいたら。
「……」
丁度、私たちの席の横を通りかかったから、チラッと見上げて。
「……っ!?」
…思わず二度見。
…おい…嘘だろ…。
「…な、なんでいるんだよ…っ」
同級生たちがザワザワしている“良い女”の正体は。
冬華さんで。
冬華さんの隣には、親友と思しき女もいて。
その女もまた綺麗な顔をしていた。
…冬華さんは横目で私を見て。
「……っ」
小さく笑った。
「今俺に笑いかけてくれたんじゃね!?」
「いや俺だろ!」
私にだよアホども。
「千速?どうしたの?」
焦っている私に気付いたのか、忍が聞いてきた。
忍にだけ教えておくか…。
「……あれ、そう」
「え?」
私が冬華さんを指して。
「…あの人が…その…こ、恋人だ…」
小さな声で伝えた。
「え!?あの人!?うっそ…っめちゃ綺麗…!」
そうだろうな。
県警で見るようなスーツ姿ではなく、カジュアルな服装で。
それでいて品があり、誰が見ても“良い女”の格好をしているから。
…くそ。
知られたくなかったのに。
あの人の“良い女の部分”を知るのは私だけで有りたかったのに。
「でも、隣の女性もまた綺麗な人…」
「…親友と飲みに行くかも、と言っていたから恐らく親友だろうな」
冬華さんたちはカウンター席に座った。
こちらからも見えるし、向こうからも見える。
何か会話をしているようで。
私に見せるような笑みを浮かべていた。
「……」
「めちゃくちゃ嫉妬してない?千速」
「…あれはするだろ」
忍はどこか楽しげだが、私はそれどころじゃない。
チラッと私を見ては小さく笑うところを見ると、煽ってきてるのもわかるし。
「…ムカつく」
「あは!嫉妬丸出しじゃん!」
ムカつきすぎて、自然と頬が膨らむ。
楽しんで来てって言ってたわりにそれか。
ムカつきながら酒を飲むと。
「失礼しまーす!カルピスです!」
店員が来て、私の前にソフトドリンクを置いた。
「ん?頼んでないが…」
頼んだ記憶がないソフトドリンクに首を傾げると。
「あ、はい!あちらの席の方からです!」
「は?」
と、店員は冬華さんのほうを指した。
ソフトドリンクと冬華さんを交互に見ると、冬華さんはニコニコと笑顔で小さく手を振ってきて。
「…!」
一枚の紙を見せてきた。
…私のグロス付きの。
「…キスマーク付いてない?あの紙」
忍もそれに気付き、首を傾げる。
「だ、誰のだろうな」
私のだよ。
悪戯を仕掛けたのは私だが、何もこんなところに持ってくることないだろうに…。
「で、それは?チューハイ?」
「いや…ただのカルピスだ…」
私はジト目で冬華さんを睨みながらカルピスを一気飲みし、次の酒を注文しようとしたら。
「失礼しまーす!こちらメロンソーダになります!あちらの席の方からです!」
今度はメロンソーダが運ばれてきた。
「…そんなシステムあるのか?」
「いえ、ないんですが綺麗なお姉さんの頼みなので!」
店員の判断で、小洒落たBARみたいなことをしているらしい。
また冬華さんとソフトドリンクを交互に見て。
「ふ…っふふ…っお酒は飲むな、ということかもね…っ」
忍が笑いながらそう言った。
冬華さんをまたジト目で睨むと。
冬華さんの親友と思しき女が○○さんの肩を叩いて止めるように言ってる気がするやり取りをしていて。
「…萩原、知り合いなの?」
「あんなに綺麗なお姉さんと…?ねぇ紹介して!!」
「俺もお知り合いになりたい!」
誰がするかアホども。
同級生たちがずっとザワザワして、私と冬華さんたちを交互に見ている。
「…忍、日本酒を頼んでくれ」
「…え、やめたほうがいいんじゃない…?」
「いいから」
忍に日本酒を頼んでもらい、その間ずっと私と○○さんはジト目で睨み合っていて。
「お、来たか」
店員が日本酒を持ってこちらに向かって来ようとしたのを。
「…!」
冬華さんは引き留め、店員と話して。
私を指して、店員が頷いて。
「失礼しまーす!こちら烏龍茶です!あちらの方からです!」
「……」
「どうしたって今日はもうお酒飲めなさそうだね」
日本酒は冬華さんの手に渡り、私には烏龍茶が運ばれてきた…。
「…カウンター席に座ったのはそのためか」
ニヤニヤしてやがる…。
「…絶対に負けないからな」
次から次へと注文を取ったが。
「カルピスソーダになりまーす!あちらのお客様からです!」
「……」
「…さすがに負けを認めた方がいいと思う」
結局は飲めず…。
ソフトドリンクで我慢するしかなくなった…。
かと言って、不思議と同窓会を楽しめなかったわけでもない。
何故なら。
「なんだかんだ、気にされてるのが嬉しいんでしょ?」
「そ、そんなわけないだろ…っ」
親友と思しき女と一緒に居ても、あの人の中には私が居て。
ああして楽しそうに親友と思しき女と話していても視界には私が入っていると思うと嬉しくて。
「コーラになります。あちらのお客様からでーす!ついでに“もうお酒は諦めなさい”って仰ってましたー!」
「…面白すぎる…」
「…遊ばないの、千速」
酒を注文すればソフトドリンクに代わっているのが段々と面白くなってきて、何回も注文してやった。
日付が変わる少し前。
先に店を出た冬華さんたちを横目で見つつ、同窓会も終わりを告げて。
「じゃあ千速、またね」
「あぁ、またな。忍」
忍と別れ、夜風に当たりながら帰っていたら。
「ん?」
電信柱のライトの下に、冬華さんが立っていた。
待っててくれたのか。
冬華さんはスマホをタプタプいじっていて。
「冬華さん」
「!千速」
名前を呼べば、私に気付きスマホを鞄に入れた。
「待っててくれたんだな」
「えぇ、でももっと遅いかと思ってた」
隣を歩いて。
「…あの紙、わざわざ持って来なくてもよかっただろ」
なんて言いつつ、気付いてくれたのが少し嬉しい。
「こんな可愛い悪戯を仕掛けてくるんだもの、持って行くに決まってるじゃない」
額に入れて飾るわ、と。
冬華さんはクスクスと笑った。
「っそういえば友人は?」
冬華さんと一緒に居た親友と思しき女のことを思い出して聞いてみると。
「ホテルに戻ったわよ」
「ホテル?」
家にではなく?
「たまたま神奈川に用事があったみたいでね。久しぶりに飲みましょうかって話になって」
「そうだったのか」
じゃあ昼に話していたのは、ただ単に口に出しただけで予定はなかったということか。
「なんて名前の人なんだ?」
「結構有名になったから知ってると思うんだけど、妃 英理って名前よ」
妃 英理。
「どこかで聞いたことがあるような…」
「“法曹界の女王”って呼ばれてる弁護士で、十年前の初公判から無敗記録を持ってる敏腕弁護士なの」
そうだ、弁護士だ。
新聞の記事で見たことがある顔だったと今思い出した。
「ほら、毛利の馬鹿…毛利探偵の奥さんなのよ」
「そこまで言って言い直しても遅すぎないか?」
「ふふ、彼もまた同級生でね。まさか英理と毛利君がくっ付くとは思わなかったからびっくり!」
…この人、わりとすごい人物と友人関係にあるんだな。
クスクスと笑いながら話す冬華さんを見つめて。
「…妃弁護士の前でも、今の貴女のようなんだな」
そう言った。
「ん?」
私の前だけだと思っていたから、少しだけ心がざわつく。
「あら?嫉妬?」
クスクスとした笑みが消えて。
「英理に嫉妬してるの?」
目を細め、色を含む眼差しと。
「ね、千速」
緩く曲線を描く唇に息を呑んで。
「…嫉妬…なのか…わからないが…」
心臓辺りの服を握って。
「少しざわつく…」
俯いて、素直に気持ちを口にした。
ザワザワして、落ち着かなくて。
「はぁ…可愛いなぁ…」
早くこのザワつきを何とかしたい。
「来て、千速」
「む…」
周りを見回して、路地へと手を引かれる。
「抱くけどいい?」
「…外だぞ」
「こんな時間、誰も通らないから大丈夫よ」
ブロック塀に押し付けられて。
「……っ」
暗がりで僅かに見える貴女の眼差しに囚われてしまったから。
「ん、良い子」
貴女の首に腕を回すしか選べなくなって。
「…っん…ぅ…っ」
ゆっくりと近づいて来る貴女の艶やかな唇に、自分から求めに行った。
「…ん…ン…」
お互いに啄み、唇の柔らかさを堪能して –––
「…ふ…っ」
舌を絡め合わせ、吐息の甘さを味わって –––
「…ン…っ冬華さん…っ酒の香りがつよ…っい…な…っ」
「ん。千速が面白がって注文してたお酒、全部飲んだからね」
それでシラフみたいでいるのすごいな…。
ザルなのか…この人は…。
「…っ」
服の中に侵入してきた冬華さんの手に、また息を呑む。
「期待してる?」
耳元で囁かれて。
「っぅあ…っして…ない…ぁ…っ」
ゾクゾクと背筋が痺れた。
…まぁそれからは…。
いつもみたいに優しく緩やかな愛撫で。
狂いそうになるのを必死に耐えながら。
「…っも…っむり…だ…っイ…っイク…っ」
「えぇ、いいわよ」
ゆっくりと導かれて。
「…っイ…っン…っん゙ッ!」
静かに達した…。
「…ぁ…はぁ…はぁ…冬華さ…ん…っ」
「大丈夫、預けて」
余韻で震え、上手く力が入らない私の身体を冬華さんが支えてくれて。
私は私で冬華さんの背中に腕を回し、余韻に耐えている状態。
「ん…ん…」
「ん」
事後、必ずしてくる啄むキスからの舌を絡める深いキスをして。
「治った?」
離れれば、透明の糸が私たちを繋いだ。
「…治った…」
余韻が治り、冬華さんの支えがなくても大丈夫になった。
「…警視という階級の奴が、こんな道端でヤるなんて有りなのか?」
路地から出てそう言うと。
「えー?そんな私に惚れて猛アタックしてきたのは誰かしら?」
「…ぅ…」
痛いところを突かれた。
「ほら、何も言えなくなった」
「や、喧しい…!さっさと帰るぞ…!」
口では絶対に勝てる気がしないのに、私はよくこの人を落とせたよな。
意外とこの人も、私のことを気にしてくれていたのだろうか。
〜♪〜♪
「ん?」
「電話か?」
不意に冬華さんのスマホが鳴って、画面を見た瞬間冬華さんはとんでもなく嫌そうな顔をした。
「…また総監からか?」
「いえ、本部長から」
うちの県警の本部長かららしい。
「はい、冬華です。どうしました?」
ワントーン低い“ 蒼月警視”の声になった。
すごいな。
プライベートとちゃんと使い分けている。
「え゙?今からですか?」
…どうやら呼び出しのようだ。
「今からは無理です。とんでもない量の酒を飲みましたので。え?その割には酔った感じがない?…酒は強いので酔わないんですよ」
冬華さんは足を止めて。
「…ですから、今からは無理ですと言っているでしょう」
「!」
私へと手招きをしたから、冬華さんの近くへ行くと。
ギュッと抱き締められて。
「あ、電波が。あー、また電波がぁ…」
また電波のせいにして通話を強制終了させた…。
「……このポンコツがぁ」
「暴言だが暴言に聞こえない便利な言葉だよな」
冬華さんはため息を零して。
「一人で帰れる?」
そう問いかけてきた。
「なに?行くのか?」
「えぇ、行ってくるわ」
…これだから頼られるんだろうな。
こうして通話を終えても、結局は引き受けてくれたりするから。
今も恐らくは本部長も“ 冬華なら来てくれる”と思ってるはずだ。
「…私も行く」
「あなたは帰って寝なさい。身体つらいでしょ?」
「ぐ…っでも…」
言いかけたところで冬華さんは人差し指で私の唇に触れて。
「すぐ帰るから。ね?」
と、微笑まれてしまえば何も言えなくなって。
「…わかった」
そう言うしかなくなった。
「タクシー呼んであげるわね」
「……」
冬華さんはスマホでタクシーを呼んで。
「じゃあ後でね、千速」
「……あぁ」
「あは!すごく不機嫌!ちゃんと帰るからね?」
「…待ってる」
タクシーで、一人で帰った。
だが冬華さんはすぐには帰って来なくて。
空が白んで来た頃、私も眠さの限界が来て先に寝ようとした矢先に。
ガチャ、とドアが開いて。
「冬華さん…?」
「!まだ起きてたの?」
冬華さんはどこか機嫌悪そうに帰宅した。
「…何かあったのか…?」
「んーん、大丈夫よ」
しかし、私を見るや否や優しく笑って。
「ごめんね、遅くなって。さ、寝ましょ」
「…お、おい冬華さん…」
冬華さんは着替えもせず、上着を脱いでそのままベッドに入った。
「…何があったんだ?」
「何にもないわよ。大丈夫って言ったでしょ?」
私もその隣に身を沈めると、冬華さんは私を抱き締めてくれて。
「…はぁ…おち…つ…く…」
「…冬華さん?」
そのまま眠りに就いた。
疲労も相まって酒も入っているから余計に眠かったんだろうな。
私はスゥスゥと寝息を立てる冬華さんの額に口付けを落として。
「おやすみ、冬華さん」
私も冬華さんを抱き締めながら眠りに就いた。
翌日。
「重悟、蒼月警視のことだが何か知らないか?」
冬華さんは警視庁に呼び出されて自宅謹慎を言い渡された。
何を聞いても“何でもないから大丈夫”と言って教えてくれなくて。
同じ刑事課である重悟に聞いてみると。
「…何も聞いてねぇのか?」
「あぁ。あの人教えてくれないんだよ…」
重悟は周りを見て、手招きをされたから付いて行く。
中庭であまり人気のない場所で。
「…昨日の夜な、大変だったんだぞ…」
「なに?」
重悟に聞かされたのは。
「…□□県の警視長が来てて、時間も時間だし蒼月警視はもう来ないって何回も言ったんだが“いいから呼べ”としつこくてな…」
「…それで?」
重悟もそこに居合わせたようで、本部長とお手上げ状態だったらしく。
「いざ呼んだら呼んだで、蒼月警視に説教垂れ出して…」
「…蒼月警視に…」
酒を飲んでいたことや、女が警視という階級にいることへの嫌味などなど。
「この時間にわざわざ呼び出して言うことではないって本部長と俺が間に入ったんだが…」
「…だが?」
重悟はため息を零して。
「…ついに蒼月警視がブチギレた」
そう言った。
「……“黙れよクソジジイ、殺すぞこら”って言っちゃって…」
殴り掛かろうとしたのを本部長が羽交締めで止めて、重悟が警視長を宥めつつ冬華さんの視界から外れるように誘導したと。
「……それで警視庁への呼び出しを食らった、と…」
冬華さんが自宅謹慎になった理由はそれか…。
だから帰ってきた時不機嫌だったのか…。
「…本部長も一緒に警視総監のところに行って、事の顛末を話した上で三日間の謹慎処分になったってわけさ」
「謹慎で済んだってことは、総監は酌量してくれたんだな」
“気持ちはわかるが言葉に出しちゃダメだぁ…”
と、本部長も言っていたらしい。
「…大変なんだな、あの人も」
「上層部のご機嫌取りとかしねぇから、余計に目を付けられるんだろうな」
私と重悟は苦笑を零して。
「ありがとな、重悟」
「おう。もし家に行くなら、“刑事課一同はあんたの味方だ”って伝えといてくれ」
「わかった、伝えて……なんで交際してること知ってるんだよ…」
誰にも言ってないのに…。
「見てたらわかるぞ?蒼月警視のお前を見てる時の眼差しが、すげぇ優しいからな」
「……ぅ…」
…それは知らなかったが…。
そうか…優しい眼差しなのか。
「…い、一応…黙っててくれ」
「誰にも言わねぇから安心しろ」
重悟はニッと笑って、私の肩に手を置いた。
私も小さく笑い、スマホを見て。
「……」
「なんだ、どうした?」
「…いや、蒼月警視からメッセージが来てた」
「どんな?」
重悟がスマホを覗き込もうとしたが。
「見るなお前!セクハラだぞ!」
「スマホ見ただけでセクハラってなんだよ!」
スマホをポケットに入れて、覗き見を防止した。
冬華さんから来たメッセージとは…。
“ひまー。早く来て千速ー、ひまー”
という内容と共に。
「…ホーム画面に設定したい」
ワイシャツとパンツ姿で、ソファーで横になっている冬華さんの写メが送られてきていた。
この人、年齢の割にエロい身体してて本当にけしからん。
「…早退しようかな」
「サボりか?」
「まだ居たのかお前!働け!」
「お前もな!」
…そうして私は。
定時で仕事を終えて、適当に食い物を買ってから冬華さんの自宅へと向かった。
「…本当に額に入れたのか」
「これから毎日チューしようと思ってる」
「……」
「自分のグロスに嫉妬?可愛すぎるんですけど!」
「喧しい!直ちに捨てろ!」
「絶対に嫌!」
END