pixiv作品 名探偵コナン
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「千速、起きて。朝よ」
「…ぅ…」
「起きないならまた抱くわよ?」
「……起きた」
「よろしい」
ある朝。
冬華さんに起こされた。
「今日は私、午後から幹部会議があるから先に出るわね」
「……嫌だ」
「ワガママを言わないの」
冬華さんは、神奈川県警 刑事部の警視。
私よりも6つ年上で、若くして警視の階級を得た超絶優秀な女だ。
何故そんな人が私の家に居るのかと言うと。
私の恋人だから。
恋人になった経緯は、半年前に遡る。
“萩原”
“!…げ…蒼月警視…”
“げ、とはなんだ。失礼な奴だな”
“…何かご用ですか?”
県警の廊下でばったりと出会してしまって。
“白バイを壊しすぎだぞ”
“…で、ですが…”
“ですが、は無しだ。このままだと修理費をお前に請求する形になるから気をつけろ”
“は、はい…”
と、強めに説教をされた後。
“…くそ…あの鬼警視め…”
文句を言いながら給湯室の自販機へ飲み物を買いに行った時。
“…!”
誰も居ない給湯室で、コーヒーを飲むためにお湯を沸かしている冬華さんがいた。
冬華さんはピシッと纏め上げていた髪を解いて、長く綺麗な黒髪をわしゃわしゃと前髪を掻き上げるように手で梳いていて。
“…はぁ…疲れたわね…”
シンクに腰を掛け、普段聞いている男勝りの口調ではなく、ワントーン高い女の口調になっていたのを聞いて。
疲れからか、僅かに伏せられた瞳が何とも言えず色っぽくて。
“好きです、蒼月警視”
“……へ?”
気が付けば、告白をしていた。
所謂、“警視の時”と“一人の時”のギャップにとんでもないくらいハマってしまって。
“…ど、どうしたんだお前…急に…”
蒼月警視は驚いたように私を見つめ、すぐにワントーン低い声の男勝りの口調に戻してしまった。
“ 蒼月警視のギャップにどハマりしました”
“…ギャップ…?”
この日から、鬼だと思っていた蒼月警視が可愛くてしょうがなくなった。
“警視、私のものになってください”
“…しつこい。私は誰のものにもならん諦めろ”
毎日口説いた。
“だから萩原、白バイを傷つけすぎだと何回言えばわかるんだ”
“わかりました、警視。付き合ってください”
“文脈がおかしいんだよお前は”
本当に毎日。
もう一度、あの声と口調で話して欲しくて。
ある時。
“年に一月くらい、白バイの修理費がかからない月があってもいいと思うのだが。どう思う?萩原”
警視が言った言葉に、私は思った。
もしやこれは、チャンスなのでは?と。
“じゃあ今月いっぱい、白バイを傷つけずにいたら私のものになってくれますか?”
多少無理やりでも、賭けを持ち掛けてみた。
“…な、なんでそうなる…”
蒼月警視は呆れるようにため息を零したけれど。
“どうなんですか、蒼月警視”
“……っ”
蒼月警視に詰め寄ると、詰め寄られた分だけ下がって。
“…わ、わかった。いいだろう。だが擦り傷一つも許さんぞ”
と。
私には無理だろうと私を見据え、笑った。
勝ったと思った。
“言質取りましたからね?”
“二言はない”
頭の良いこの人を騙してやった。
私も不敵に笑って、それから一ヶ月。
“お前白バイ乗らないの卑怯だろう!”
“誰も乗るなんて言ってませんよ”
私はデスクワークや免許証関係の事務をこなした。
白バイに乗らなきゃ故障もしないし、傷も付かない。
交通課の仕事は何も巡回だけじゃないからな。
“…巡回行かなくていいのか?”
“はい。白バイ隊員は私だけではないので”
“…く…っ”
なんとか私に白バイに乗らせようとしているが、無駄な足掻きだ。
そして、丁度一ヶ月経った日に。
“警視、言ったことを覚えてますよね?”
“…卑怯すぎる。絶対にノーカウントだろ…”
蒼月警視の手を取って。
“私は本気なんだ、本気で貴女が欲しい”
“……っ”
真っ直ぐ見据えると、蒼月警視は押し黙りため息を零して。
“…わかった。負けたよ…”
私の想いに応えてくれた。
最初は口調も普段通りの男勝りな口調だったが。
初夜を迎えるその日。
“悪いけど私、ネコちゃんじゃないのよ”
目を細め、どハマりした女口調と妖艶な笑みを浮かべた冬華さんに逆に押し倒されて。
“…ぅ…っ…ン…っんっ”
“…千速、もっと声を聴かせて?”
耳元で囁かれて、もうおかしくなりそうになった。
県警では私を“萩原”と苗字で呼ぶが、プライベートでは“千速”と名前で呼ぶようになったのもまたヤバくて。
“萩原”
“……”
“……萩原”
“……”
“…千速”
“なんですか、冬華さん”
“…仕事とプライベートは分けなさい”
“二人きりなんだからいいだろ”
二人きりになれば、名前で呼ばれるまで返事はしなかった。
「おいし?」
「美味い」
で、今。
昨日冬華さんが私の家に泊まりに来て、朝飯を作ってくれた。
冬華さんはすでに着替えていて、白いワイシャツとタイトスカートを着ている。
スーツの上着はソファーの背もたれに。
「どこで会議なんだ?」
「警視庁よ。その後食事会もあるだろうし、帰るのは遅くなりそう」
と言いながら、私の頬に手を伸ばして。
「お子ちゃま千速ちゃん」
「む」
私の頬に付いた米粒を取り、そのまま食べた。
「……」
その様子がどこか、なんか、エロって思ってしまって。
「なぁに、なんか顔赤いわよ?」
「…っな、なんでもない!」
○○さんはクスクスと笑った。
…可愛いな、くそ。
県警本部で見る冬華さんは、クスクスなんて笑わない。
クツクツと笑い、どこか落ち着いた笑みを零す。
だから、この可愛らしく笑う冬華さんを見るのはプライベートだけで。
私だけの特権というわけだ。
「可愛いなぁ、千速は」
可愛いのは貴女だよ、冬華さん。
〜♪〜♪
不意に、スマホが鳴った。
「冬華さんじゃないか?」
「あ、ほんとだ」
冬華さんのスマホからで、画面を見た瞬間。
「…うーわ、なんかあったのかな」
眉間に皺を寄せた。
「…誰から」
だ、とは続かず、冬華さんは人差し指を口元に当てた。
「もしもし、おはようございます。こんな朝早くにどうされました?」
ワントーン低い声。
県警での“ 蒼月警視”として電話に出た。
「…はい、はい。はい?」
冬華さんはさらに深く眉間に皺を寄せる。
「…私が、ですか?」
だ、誰からなんだ。
冬華さんが敬語を使う相手だから、警視以上の階級の人間なのは間違いない。
「ですが、総監…」
総監って言ったぞ…。
警視総監から電話が来るのかよ…。
私は冬華さんを見ながら、朝飯を食っていると。
「…!」
冬華さんはまた私に手を伸ばし、私の口の端に付いたソースを親指で拭って。
「…っ」
私を見つめ、目を細めながら小さく舐めた。
…本当に。
自分が如何にヤバいことをしているのかわかってないよな…。
「…なるほど。わかりました」
冬華さんはニコリと笑って。
「従いかねます」
なんか…命令を無視…?したのか…?
警視総監からの…?
「えぇ、絶対に嫌ですね。すごく嫌です」
すごく嫌がっている…。
な、何があったんだ…。
「あ、電波が…あー…電波がぁ…」
と言いながら、冬華さんは通話を終えた。
「冬華さん?」
「最悪…!絶対に幹部会議の時にまた言われるじゃん!」
立ち上がり、ソファーのところへ行ってソファーにダイブした。
「何があったんだ?」
恐らく聞いたとしても。
「…警察上層部の“アブナイ話”よ」
教えてはくれないだろうな。
「…帰れるんだよな?」
「わからないわ。警視総監に会わなければ帰れるけど…」
絶対に待ち伏せされてる、と嘆いている。
「まぁ帰れたとしても夜中だろうし、自分ちにそのまま帰るから待ってなくていいわよ?」
今度は私が眉間に皺を寄せる。
「…なんで自分ちなんだよ」
「え?」
冬華さんはきょとんと私を見る。
「…こ、この家に帰ってこればいいだろ」
私は視線を逸らしながらそう言うと、○○さんはニヤニヤと笑いながら。
「…夜もそのくらい素直だったらなー」
なんて言ってきた。
「…っはぁ!?ば…っか…っ!!」
一気に顔が熱くなる私。
「千速は声を我慢しすぎなのよね。もっとエロい声聴きたいんだけど」
「…っだ、出せるかそんな…っ声なんて…っ!」
身体を見られて、触れられるだけでも恥ずかしくて死んでしまいそうになるのに。
声なんぞ出した日には次の日から冬華さんの顔を見れなくなると思う。
「あは!まぁ、快楽に流されそうになってる千速も可愛いんだけどね」
…多分だが。
この人は私の尊厳を守ってくれているんだろうな。
愛撫が優しいし、その…イ…キはするんだが…快楽に溺れるようなことがない。
私がネコではないのがわかっているからこそ、加減をしてくれている。
激しいセックスではなく、本当に緩く…優しくて…。
もどかしいとさえ思ってしまうほど…で…。
イ……ク……は…イク…ん…だが…どこか足りない…とも…思って…しまって…だな…。
「さーてと。私はそろそろ出るわね。本当、今日帰れるかわからないから先に寝てて」
冬華さんは立ち上がり、スーツの上着を着て。
クルクルクル、と器用に長い髪を纏め上げてバレッタで留めた。
「じゃあ行って……千速?」
玄関で、冬華さんの腕を掴んで。
「ま、待ってるからな。起きて待ってるから、早く帰って来てくれ」
そう伝えると。
「……可愛すぎるんですけど」
「…っ」
冬華さんは顔を赤くさせて、私に顔を近づけてきたから。
「ん…」
「ん」
触れるだけのキスをした。
「出来るだけ早く帰るから。あなたは遅刻しないように!」
「わ、わかってる…!」
冬華さんはふわりと笑い、先に家を出た。
一歩外に出れば、凛と背筋を正して笑みを消す。
警視という階級に恥じないように、男が多い警察上層部に負けないように。
私は冬華さんとキスをした唇に触れて。
「……やばいな、本当」
小さく笑った。
「…返事がない」
昼頃、昼飯としてパンを食べながら冬華さんにメッセージを送るも返事が来ない。
「まぁ会議中かもしれんしな」
幹部会議がどのくらいの時間がかかるのかわからんが。
あの人は警視という階級で忙しい人だから。
それに、もしかしたら警視総監に捕まるかもしれないとも言っていたし。
スマホを閉じ、空を見上げながらパンを齧る。
「…あの人は私のことが好きなのだろうか」
私のゴリ押しで交際まで持って行ったが。
あの人から“好き”という言葉を聞いたことがない。
…まぁ本当にゴリ押しで無理やり恋人になってもらったからな。
恋愛感情ではなく、仕方なく交際してくれているのかもしれん。
スマホを見ても、まだ返信はない。
「…結構くるな、既読が付かないのは」
聞いてみたい気もするが、聞くのが怖い。
私はもう一度メッセージを送り、スマホをポケットに入れて。
「…巡回行くか」
食べかけのパンをゴミ箱に捨てた。
「……まだ帰って来ない」
夜。
日付が変わったが、冬華さんはまだ帰らない。
連絡をしてもやはり既読にならない。
「……何かあったのか?」
スマホを両手で握り、俯く。
あの人は強い人だ。
何かあったというよりは、会議が長引いて夕食会も長引いて。
警視総監に取っ捕まったって思うんだが。
さすがにここまで既読にならないと精神的にしんどい。
「もう一度連絡をしてみるか…」
メッセージアプリを開き、冬華さんの名前をタップして。
「『いつ終わる?』と」
ホーム画面を見ただけでわかるように短文にした。
はぁ…返事くれよ…冬華さん…。
まだ、でもいいし何でもいいから。
ガチャ
「!!」
不意に、玄関のドアが開く音が聞こえた。
「冬華さん…!」
玄関へ行き、出迎えると。
「ただいま、千速」
冬華さんは靴を脱ぎ、力無く笑った。
「…お、おかえり」
…とんでもなく疲れてるな、これは。
それはそうだろう。
今思えば、帰ってきてくれってのは結構なワガママだよな…。
「疲れたー…」
そのままソファーへ倒れ込む。
アルコールの香りが強い。
「…スマホ、見てなかったか?」
もっと労いたかったが、この不安を払拭したい。
メッセージの返信がないまま帰宅してきたことに、私らしくなくショックを受けているから。
冬華さんは顔をこちらに向けて。
「ごめん千速…。スマホ、行きの電車の中に忘れちゃったのよ…」
ため息を零した。
「は?」
思わずきょとん顔をする私。
「警視庁から駅に電話して、落とし物センターに届いてるのを確認出来たから帰りに取りに行こうと思ってたの…」
そしたら思いの外長引いてしまって、受け付け時間が過ぎてしまった、と。
「明日っ、と。もう今日ね。今日朝イチで取りに行こうかなって…」
なんだよ。
なんだよそれ。
「多分、たくさん連絡くれたでしょ?ごめーん…」
ちゅ、とキスをしてきたから。
「…っ千速?」
ギュウッと頭を抱き締めた。
よかった。
既読にならない理由がそんなことでよかった。
メッセージの返信がない理由がそれでよかった。
「…はぁ…」
「心配した?」
冬華さんも抱き締め返してくれて。
「…心配というより、返事がないことが結構しんどかった」
「ぅ…っごめんごめんごめーん!」
私が悪いー!と、ウリウリと頭を擦り寄せてくれた。
「ねぇ千速、来て」
「ん?」
冬華さんは体を起こし、ポンポンと隣を叩くから座ると。
「…っ!」
押し倒された。
「キスしてもいい?」
その問いかけに。
「…嫌だと言うとでも?」
「だって私、お酒臭いでしょ?」
確かにアルコールの香りが強いが。
「…酔わせてくれよ、貴女に」
そんなの関係ない。
冬華さんは目を見開き、徐々に顔を赤くして。
「…やば…今の…」
片手で口を覆い隠した。
私は冬華さんの首に腕を回して。
「…私は貴女が好きだから、貴女にされて嫌なことは何一つとしてないぞ」
目を細めた。
私はこちら側ではないのだが。
この人を前にするとどうにも崩れてしまう。
求めてしまう。
望んでしまう。
「……はぁ…可愛すぎ…」
“可愛い”と口にはしてくれるが、“好き”だとは言ってくれないもどかしさ。
「今日は声、聴かせてくれるかな?」
「…っン…っんぅ…っだ、出させてみろ…っ」
「…今日は煽りまくるじゃん。後悔しないでよ?」
私は貴女が好きだから。
どうか。
貴女の口からも同じ言葉が出てきますように。
「…っン…っぁ…っン…っ」
「…我慢出来るのも今のうちよ?」
たとえ、どんなに煽っても。
貴女は優しいから私の尊厳を守ってくれる。
たとえ、めちゃくちゃにしてくれと頼んでも。
きっと優しい愛撫で緩やかに導いてくれるのだろう。
「あ…っあっあ…っま…って…っあ…っあ…っ」
と思ってたのが間違いだった…。
かなり激しい愛撫にさすがに我慢出来ず…。
「…好きよ、千速」
耳元で愛を囁かれれば…。
「…っイ…っイク…ッイ…ッ」
たまらず、背中を反らして達してしまった…。
「ふ、ふふ…っ可愛すぎてヤバいんだけど…っ」
「…う、うるさい…っ!」
ギュウッと冬華さんにしがみ付き、達した余韻に耐えていた。
“…好きよ、千速”
その言葉が頭から離れなくて。
「もう一回いい?」
「もうしないからな!」
ずっと冬華さんの胸に顔を埋めたまま。
ニヤニヤしそうになるのにも耐えていたのは言うまでもない。
END