願い ベルモット男主夢
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「ふー…」
米花町にある某アパート。
「…とりあえず追ってはなさそうだ」
銀麗の自宅らしいけれど。
「…嘘だと言ってちょうだい」
「あ?追われてたほうがいいのか?」
「違うわよ」
私はクルッと部屋の中を指差した。
あまりにもボロボロすぎる…。
「あなた、本当にお金ないわけじゃないでしょ?」
「ギャンブルで無くなった」
「馬鹿なの?あれだけギャンブルだけはするなと言ったのに、何を聞いていたのよ」
「勝てると思ったんだよ!」
ハリウッド女優の私が、こんなお風呂もトイレもないようなアパートにいるなんて…。
「でもまぁ、寝るだけだから家なんてどこでもいい」
寝るだけって。
「…セフレちゃんたちの家を転々としてるわけ?」
「お前布団使う?一組しかねぇんだけど」
私の言葉を無視し、一組の布団を敷いた。
まさか本当に寝るつもりなの?
「先に手当でしょ。救急箱を持ってきて」
「あ?ねぇよそんなの。傷だって大したことねぇ」
銀麗は布団の上に寝転がり、私に背中を向けた。
「大したことあるないじゃなくて、頭の怪我なんだし炎症起こして大変なことになってからじゃ遅いわよ?」
「…ぅ。でも本当にないしなぁ…」
銀麗は立ち上がり、ガサゴソとその辺を探し始める。
本当にどこにもなさそう。
「…荒療治だけど、仕方ないわね」
私はライターを取り出す。
「ねぇ、ナイフある?」
「ナイフ?」
銀麗はポケットから折り畳み式のナイフを取り出す。
「これでもいいか?」
「えぇ、貸して」
「?おう」
ナイフを渡され、ナイフの刃をライターの火で炙る。
「……」
「されること、わかった?」
段々と顔を真っ青にさせる銀麗に、クスリと笑む。
「…そんなことしなくても大丈夫だよ」
「まだ止まってないでしょ」
「いや止まってる」
「滲み出てきてるわ」
「本当に大丈夫だって!痛いのやだ!」
「子供じゃないんだから我慢しなさい」
額の傷を焼くことで傷を塞ぎ、止血する。
応急処置だから早めにちゃんと手当てをしないといけないけれど。
「ほら、こっち見て」
「嫌だ!」
「痛くしないから」
「息を吐くように嘘を吐くなよ!」
ナイフを持つ手を掴まれて。
「…っ!」
布団の上に押し倒された。
銀麗の、空色の瞳に私が映る。
「……」
「……」
無言の私たち。
ゆっくりと近づいてくる銀麗の顔。
「…血が付きそうなんだけど」
「止まってるから大丈夫だっつってんだろ」
触れそうで触れない唇との距離。
「ベルモット」
「…なによ」
銀麗は視線を外さず、見つめ合ったまま。
「抱きたい」
欲望を口にした。
初めて聞いた言葉。
いつもは私が呼びつけて、なんだかんだ文句を言いながら事に及んでいたけれど。
「どうなんだ」
「…何人?」
「あん?」
「何人の女に吐いた言葉なの?」
私ではない数多の女に、その言葉を吐いたんでしょ?
「一人だよ」
銀麗の視線は私に向いたまま。
「……へぇ」
随分と愛されてる女。
腹立たしい。
殺してやりたい。
「今」
「なに」
銀麗は私の手を掴んでいる手を離し、私の頬に手を添えて。
「今初めて口にした」
そう言った。
「え?」
え?
今、初めて?
一人って言ったのは、私のこと?
「俺が抱きたいと思うのはお前だけだよ」
じゃあ、他の女を抱くのは何故?
「今私を抱きたいがための嘘でしょ?」
期待させないで。
–––これ以上、嫉妬をしたくない。
「嘘じゃねぇ」
–––これ以上、おかしくなりたくないの。
「これまでの女たちは抱いてと言われたから抱いたけど、お前は俺の意思で抱きたいと思ってる」
–––これ以上、独占欲に支配されたくないのよ。
「お前は、もう嫌か?お前以外の女を抱いた俺に抱かれるのはもう嫌?」
優しい口調で惑わさないで。
「…そうね。これから先、私以外の女を抱いたあなたに抱かれるのはもう嫌ね」
素直になればいいものを、自分でも可愛くないと思う。
「これから先?」
「これから先」
銀麗は小さく笑って。
「わかった。これから先は、お前以外の女はもう抱かない」
そう言って、触れるだけのキスをしてきた。
いつもならもっと可愛く嫉妬しろってほざくのに。
今は言わない。
「…お前らしくないって笑わないのね」
「笑うところじゃねぇだろ」
「…嫉妬心丸出しだとか、独占欲とかたくさん笑うところがあるじゃない」
「あのなぁ…」
銀麗は私を起こし、ため息を零す。
「それは嫉妬心とか独占欲とかじゃねぇだろ」
「え?」
嫉妬心でも、独占欲でもないのなら。
この渦巻く感情は何だと言うの。
「それはな」
銀麗は、ニッと悪戯に笑って。
「“願い”だよ、クリス」
そう言った。
「…願い…?」
「そうだ。俺に他の女を見ないでほしいっつー“願い”」
銀麗に。
他の女を見ないで、他の女のところに行かないでほしいという。
“願い”
「………」
「腑に落ちた?」
「…別に、そんなことないわ」
悪戯な笑みからケラケラと揶揄うような笑みに変えて。
「叶えますよ、その願い」
「…どうだか。期待しないでおくわ」
嘘。
期待してしまうこの感情の出し方を。
私は知らないから。
嬉しい気持ちを。
鼻で笑うような隠し方しか知らないから。
「それで、だ」
「なによ」
それでもあなたは。
「そろそろ抱きたい」
期待させたことを自覚しているし、私が喜んでいることにも気付いてくれるのね。
「…壁薄そうだから加減してちょうだい」
「薄そうじゃなくて薄いんだよ。でもまぁ、嘘みたいに鳴かせてやらぁ」
と言いつつも。
愛撫はたまらなく優しいもので。
「ン…っン…っ」
「…っ大丈夫か…?」
「だい…じょうぶよ…っぁ…っン…っ」
「ん、ゆっくり動くから…」
銀麗の余裕のない表情を眺めながら。
どこまでも愛おしい男だと思いながら。
私たちは熱を分かち合った。
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「ふー…」
米花町にある某アパート。
「…とりあえず追ってはなさそうだ」
銀麗の自宅らしいけれど。
「…嘘だと言ってちょうだい」
「あ?追われてたほうがいいのか?」
「違うわよ」
私はクルッと部屋の中を指差した。
あまりにもボロボロすぎる…。
「あなた、本当にお金ないわけじゃないでしょ?」
「ギャンブルで無くなった」
「馬鹿なの?あれだけギャンブルだけはするなと言ったのに、何を聞いていたのよ」
「勝てると思ったんだよ!」
ハリウッド女優の私が、こんなお風呂もトイレもないようなアパートにいるなんて…。
「でもまぁ、寝るだけだから家なんてどこでもいい」
寝るだけって。
「…セフレちゃんたちの家を転々としてるわけ?」
「お前布団使う?一組しかねぇんだけど」
私の言葉を無視し、一組の布団を敷いた。
まさか本当に寝るつもりなの?
「先に手当でしょ。救急箱を持ってきて」
「あ?ねぇよそんなの。傷だって大したことねぇ」
銀麗は布団の上に寝転がり、私に背中を向けた。
「大したことあるないじゃなくて、頭の怪我なんだし炎症起こして大変なことになってからじゃ遅いわよ?」
「…ぅ。でも本当にないしなぁ…」
銀麗は立ち上がり、ガサゴソとその辺を探し始める。
本当にどこにもなさそう。
「…荒療治だけど、仕方ないわね」
私はライターを取り出す。
「ねぇ、ナイフある?」
「ナイフ?」
銀麗はポケットから折り畳み式のナイフを取り出す。
「これでもいいか?」
「えぇ、貸して」
「?おう」
ナイフを渡され、ナイフの刃をライターの火で炙る。
「……」
「されること、わかった?」
段々と顔を真っ青にさせる銀麗に、クスリと笑む。
「…そんなことしなくても大丈夫だよ」
「まだ止まってないでしょ」
「いや止まってる」
「滲み出てきてるわ」
「本当に大丈夫だって!痛いのやだ!」
「子供じゃないんだから我慢しなさい」
額の傷を焼くことで傷を塞ぎ、止血する。
応急処置だから早めにちゃんと手当てをしないといけないけれど。
「ほら、こっち見て」
「嫌だ!」
「痛くしないから」
「息を吐くように嘘を吐くなよ!」
ナイフを持つ手を掴まれて。
「…っ!」
布団の上に押し倒された。
銀麗の、空色の瞳に私が映る。
「……」
「……」
無言の私たち。
ゆっくりと近づいてくる銀麗の顔。
「…血が付きそうなんだけど」
「止まってるから大丈夫だっつってんだろ」
触れそうで触れない唇との距離。
「ベルモット」
「…なによ」
銀麗は視線を外さず、見つめ合ったまま。
「抱きたい」
欲望を口にした。
初めて聞いた言葉。
いつもは私が呼びつけて、なんだかんだ文句を言いながら事に及んでいたけれど。
「どうなんだ」
「…何人?」
「あん?」
「何人の女に吐いた言葉なの?」
私ではない数多の女に、その言葉を吐いたんでしょ?
「一人だよ」
銀麗の視線は私に向いたまま。
「……へぇ」
随分と愛されてる女。
腹立たしい。
殺してやりたい。
「今」
「なに」
銀麗は私の手を掴んでいる手を離し、私の頬に手を添えて。
「今初めて口にした」
そう言った。
「え?」
え?
今、初めて?
一人って言ったのは、私のこと?
「俺が抱きたいと思うのはお前だけだよ」
じゃあ、他の女を抱くのは何故?
「今私を抱きたいがための嘘でしょ?」
期待させないで。
–––これ以上、嫉妬をしたくない。
「嘘じゃねぇ」
–––これ以上、おかしくなりたくないの。
「これまでの女たちは抱いてと言われたから抱いたけど、お前は俺の意思で抱きたいと思ってる」
–––これ以上、独占欲に支配されたくないのよ。
「お前は、もう嫌か?お前以外の女を抱いた俺に抱かれるのはもう嫌?」
優しい口調で惑わさないで。
「…そうね。これから先、私以外の女を抱いたあなたに抱かれるのはもう嫌ね」
素直になればいいものを、自分でも可愛くないと思う。
「これから先?」
「これから先」
銀麗は小さく笑って。
「わかった。これから先は、お前以外の女はもう抱かない」
そう言って、触れるだけのキスをしてきた。
いつもならもっと可愛く嫉妬しろってほざくのに。
今は言わない。
「…お前らしくないって笑わないのね」
「笑うところじゃねぇだろ」
「…嫉妬心丸出しだとか、独占欲とかたくさん笑うところがあるじゃない」
「あのなぁ…」
銀麗は私を起こし、ため息を零す。
「それは嫉妬心とか独占欲とかじゃねぇだろ」
「え?」
嫉妬心でも、独占欲でもないのなら。
この渦巻く感情は何だと言うの。
「それはな」
銀麗は、ニッと悪戯に笑って。
「“願い”だよ、クリス」
そう言った。
「…願い…?」
「そうだ。俺に他の女を見ないでほしいっつー“願い”」
銀麗に。
他の女を見ないで、他の女のところに行かないでほしいという。
“願い”
「………」
「腑に落ちた?」
「…別に、そんなことないわ」
悪戯な笑みからケラケラと揶揄うような笑みに変えて。
「叶えますよ、その願い」
「…どうだか。期待しないでおくわ」
嘘。
期待してしまうこの感情の出し方を。
私は知らないから。
嬉しい気持ちを。
鼻で笑うような隠し方しか知らないから。
「それで、だ」
「なによ」
それでもあなたは。
「そろそろ抱きたい」
期待させたことを自覚しているし、私が喜んでいることにも気付いてくれるのね。
「…壁薄そうだから加減してちょうだい」
「薄そうじゃなくて薄いんだよ。でもまぁ、嘘みたいに鳴かせてやらぁ」
と言いつつも。
愛撫はたまらなく優しいもので。
「ン…っン…っ」
「…っ大丈夫か…?」
「だい…じょうぶよ…っぁ…っン…っ」
「ん、ゆっくり動くから…」
銀麗の余裕のない表情を眺めながら。
どこまでも愛おしい男だと思いながら。
私たちは熱を分かち合った。
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