本気 しのぶさん百合夢
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「ふぅ…」
白麗さんは白い息を吐き、粉雪が白麗さんを包み込んだと思ったら彼岸花の着物から元の寝巻きへと服装を変えた。
「よいしょ、っと」
気を失っている不死川さんは白麗さんに担がれて。
甘い煙と共に現れた白麗さんのお屋敷に、敷いてある布団へ不死川さんを寝かせた。
「墨で顔に悪戯書きしてやろうかしら」
不死川さんの鼻を摘み、ニヤニヤ笑っている。
「…白麗さん」
「なぁに?」
不死川さんの診察をしながら。
「手加減をしたんですか?」
縁側の柱に背中を預け、煙管を吹かす白麗さんに問いかけた。
白麗さんはチラッと私を見る。
「したわよ」
クスリと笑った。
「…何故手加減を?」
不死川さんのプライドをへし折るかのように、白麗さんは本気を出さなかった。
「…不死川さんは本気の戦いを望んでいたんです」
加減などせず、本気で戦って負けたなら仕方ない。
でも本気すら出されずに負けたなんて、不死川さんはどう思うのだろう。
「本気、ねぇ」
白麗さんは庭へと視線を向けて。
「しのぶは実弥が嫌い?」
「え?」
白麗さんの問いかけ。
「実弥に死んでほしいの?」
また問いかけ。
「ッそんなわけ…ッ!」
ない、と言おうとすれば、白麗さんは私へと視線を戻して。
「私が本気を出していたら、最初の一撃で実弥は死んでいたわ」
そう言った。
「え?」
最初の一撃で?
「ねぇしのぶ。実弥はね?先の数分の戦いで4回死んでるの」
「…!!」
私は目を見開いた。
「まず最初、実弥が技を出してから私の前で膝を付いた時」
あれは私にも見えなかったし、不死川さん自身も驚愕していた。
「二度目は私に刀を奪われ、刀の背を頬に充てられた時」
立ち上がれず、腕も上げられずにいたあの瞬間。
「三度目はとりあえず私から間合いを取って離れた時」
雪の生き物が背後から不死川さんへ襲いかかったあの時。
「最後は雪の狼に気を取られ、前方へ飛び退いて私から視線を外した時」
そうだ。
違和感があると思っていた。
この人。
不死川さんと戦闘開始してから一歩たりとも動いていない。
最後の雪の血鬼術だって、前方へ飛び退くように仕向けた白麗さんの策略。
「実弥自身、あの数分で四度も殺されたことに気付いているかもわからないけれど」
白麗さんは、ふぅ…と甘い煙を吐き出して。
「私が本気を出すってことは、そういうことよ」
小さく笑った。
不死川さんは稽古を望んだわけじゃない。
本気の戦いを望んだ。
でも実際は、戦いにすらならない程の絶望的な力の差があった。
手加減をしたとはいえ、白麗さんは戦闘装束を纏い不死川さんと対峙した。
白麗さんなりの不死川さんへの配慮なのかもしれないと今更ながらに感じて。
「……」
それに気付くのが遅れた自分の未熟さを痛感し、俯けば。
「私が怖い?しのぶ」
また問いかけてきた。
怖い?
白麗さんが?
白麗さんを見る。
僅かに不安そう。
私が白麗さんに恐怖を抱いたと思っているのでしょうか。
でも。
「……そうですね」
怖いわけじゃない。
「いつも二日酔いで真っ青な顔で苦しんでる白麗さんを知ってますから、とんでもないギャップだなと思ってます」
怖くなんてない。
「……いつもではないでしょ」
引き攣った笑み。
でもまた、どこか安心したかのようで。
あなたは不死川さんを殺さず、怪我すらさせず。
不死川さんの命を尊重してくれた。
「あ、一太刀も受けなかったら、実弥を鍛えなくてもいいのよね?」
「…不死川さんとの約束はそうですが、きっと暇が出来たら来ますよ」
強くなるために。
白麗さんに鍛えてもらえたら、絶対に強くなれると確信したでしょうし。
「なにそれ!私の平穏が失われるんだけど!」
迷惑だ、と言わない。
やっぱり白麗さんは優しい人。
「今注射器余ってますし、不死川さんの血液を採っちゃいましょうか」
「…倫理は保ちなさい」
白麗さんは眠る不死川さんの顔を見て。
「実弥の隣で寝たら、起きた時どんな反応するかしらね」
「…怒ると思いますが、それは私が嫌です」
クスクス笑った。
そうして。
「もう少しで陽も昇るし私は寝るけど、しのぶはどうするの?」
「不死川さんを一人にするわけにはいきませんので、私もお泊まりさせていただきます」
「じゃあ川の字になって寝ましょうか。私が真ん中になるから」
「…私がなります」
「ダメに決まってるでしょ?若い女の子を男の隣でなんて寝かせられない」
白麗さんが真ん中で。
「おやすみなさい、白麗さん」
「おやすみ、しのぶ。実弥」
私たちは眠りに就いた。
.
「ふぅ…」
白麗さんは白い息を吐き、粉雪が白麗さんを包み込んだと思ったら彼岸花の着物から元の寝巻きへと服装を変えた。
「よいしょ、っと」
気を失っている不死川さんは白麗さんに担がれて。
甘い煙と共に現れた白麗さんのお屋敷に、敷いてある布団へ不死川さんを寝かせた。
「墨で顔に悪戯書きしてやろうかしら」
不死川さんの鼻を摘み、ニヤニヤ笑っている。
「…白麗さん」
「なぁに?」
不死川さんの診察をしながら。
「手加減をしたんですか?」
縁側の柱に背中を預け、煙管を吹かす白麗さんに問いかけた。
白麗さんはチラッと私を見る。
「したわよ」
クスリと笑った。
「…何故手加減を?」
不死川さんのプライドをへし折るかのように、白麗さんは本気を出さなかった。
「…不死川さんは本気の戦いを望んでいたんです」
加減などせず、本気で戦って負けたなら仕方ない。
でも本気すら出されずに負けたなんて、不死川さんはどう思うのだろう。
「本気、ねぇ」
白麗さんは庭へと視線を向けて。
「しのぶは実弥が嫌い?」
「え?」
白麗さんの問いかけ。
「実弥に死んでほしいの?」
また問いかけ。
「ッそんなわけ…ッ!」
ない、と言おうとすれば、白麗さんは私へと視線を戻して。
「私が本気を出していたら、最初の一撃で実弥は死んでいたわ」
そう言った。
「え?」
最初の一撃で?
「ねぇしのぶ。実弥はね?先の数分の戦いで4回死んでるの」
「…!!」
私は目を見開いた。
「まず最初、実弥が技を出してから私の前で膝を付いた時」
あれは私にも見えなかったし、不死川さん自身も驚愕していた。
「二度目は私に刀を奪われ、刀の背を頬に充てられた時」
立ち上がれず、腕も上げられずにいたあの瞬間。
「三度目はとりあえず私から間合いを取って離れた時」
雪の生き物が背後から不死川さんへ襲いかかったあの時。
「最後は雪の狼に気を取られ、前方へ飛び退いて私から視線を外した時」
そうだ。
違和感があると思っていた。
この人。
不死川さんと戦闘開始してから一歩たりとも動いていない。
最後の雪の血鬼術だって、前方へ飛び退くように仕向けた白麗さんの策略。
「実弥自身、あの数分で四度も殺されたことに気付いているかもわからないけれど」
白麗さんは、ふぅ…と甘い煙を吐き出して。
「私が本気を出すってことは、そういうことよ」
小さく笑った。
不死川さんは稽古を望んだわけじゃない。
本気の戦いを望んだ。
でも実際は、戦いにすらならない程の絶望的な力の差があった。
手加減をしたとはいえ、白麗さんは戦闘装束を纏い不死川さんと対峙した。
白麗さんなりの不死川さんへの配慮なのかもしれないと今更ながらに感じて。
「……」
それに気付くのが遅れた自分の未熟さを痛感し、俯けば。
「私が怖い?しのぶ」
また問いかけてきた。
怖い?
白麗さんが?
白麗さんを見る。
僅かに不安そう。
私が白麗さんに恐怖を抱いたと思っているのでしょうか。
でも。
「……そうですね」
怖いわけじゃない。
「いつも二日酔いで真っ青な顔で苦しんでる白麗さんを知ってますから、とんでもないギャップだなと思ってます」
怖くなんてない。
「……いつもではないでしょ」
引き攣った笑み。
でもまた、どこか安心したかのようで。
あなたは不死川さんを殺さず、怪我すらさせず。
不死川さんの命を尊重してくれた。
「あ、一太刀も受けなかったら、実弥を鍛えなくてもいいのよね?」
「…不死川さんとの約束はそうですが、きっと暇が出来たら来ますよ」
強くなるために。
白麗さんに鍛えてもらえたら、絶対に強くなれると確信したでしょうし。
「なにそれ!私の平穏が失われるんだけど!」
迷惑だ、と言わない。
やっぱり白麗さんは優しい人。
「今注射器余ってますし、不死川さんの血液を採っちゃいましょうか」
「…倫理は保ちなさい」
白麗さんは眠る不死川さんの顔を見て。
「実弥の隣で寝たら、起きた時どんな反応するかしらね」
「…怒ると思いますが、それは私が嫌です」
クスクス笑った。
そうして。
「もう少しで陽も昇るし私は寝るけど、しのぶはどうするの?」
「不死川さんを一人にするわけにはいきませんので、私もお泊まりさせていただきます」
「じゃあ川の字になって寝ましょうか。私が真ん中になるから」
「…私がなります」
「ダメに決まってるでしょ?若い女の子を男の隣でなんて寝かせられない」
白麗さんが真ん中で。
「おやすみなさい、白麗さん」
「おやすみ、しのぶ。実弥」
私たちは眠りに就いた。
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