姉妹 リザさん姉妹夢
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「ホークアイ中尉」
「!グラマン中将、おはようございます」
ある日、出勤してすぐにグラマン中将に呼び止められた。
グラマン中将が直接私に話しをかけてくるのが珍しくて、少し驚く。
「おはようさん。ちょっと君に頼みたいことがあってね」
「?はい、どうしました?」
お願いごとも珍しいわね。
でもお優しい方だから無理を仰る方ではない。
「うん。この書類を、アルバート少将に届けてくれるかい?」
「ア、アルバート少将に…ですか…?」
グラマン中将から茶封筒を渡された。
大総統府の印があるから、重要書類でしょうけど…。
マスタング大佐を介さずにアルバート少将と会話出来るかしら…。
「引き受けてもらえるかな?」
郵送でもいいのに、グラマン中将も私とアルバート少将の関係を気にしているから、こうしてきっかけをくれてるのよね。
「…わかりました」
これは決して命令ではなく、グラマン中将の頼み。
きっと断っても大丈夫だと思うけど、やはりグラマン中将も上官だから。
「うんうん、ありがとう」
断ることなんて出来ない。
「マスタング大佐には儂から話しておこう」
「ありがとうございます」
グラマン中将はニコリと笑って。
「彼女は大丈夫だよ」
そう言って、私の肩に手を置いた。
その言葉に私も小さく笑みを浮かべて。
「行ってきます」
「うん」
敬礼をし、東方司令部を出た。
「“お疲れ様です、グラマン中将より書類を預かりましたので”……じゃ、早急すぎるかしら…」
セントラルシティ行きの汽車の中。
アルバート少将に書類を渡すための台詞を考えていた。
いつもはマスタング大佐が間に居てくださるから、ついでに声をかけてもらえるけれど。
…会話ではなく、声をかけてもらえるって。
「お姉ちゃん!それ一口ちょうだい!」
「もー、しょうがないなぁ。一口だけだよ?」
通路を挟んだ隣の座席には、可愛らしい姉妹が座っていて。
仲良さそうに会話をしながらおやつを食べている。
羨ましいと思った。
あの子たちが“普通の姉妹”であることが、すごく羨ましかった。
成長すれば喧嘩もするかもしれない。
それでも。
“喧嘩が出来る”だけ羨ましい。
“上官である前に、君の姉なんだがね”
マスタング大佐の言葉を思い出す。
普通の姉妹ならそうでしょうね。
でも私とアルバート少将は、普通の姉妹ではないから。
“姉さん”なんて気軽に呼べない。
あの日から。
“この人を“姉さん”と呼んではいけない”と。
思わされた。
あの日から。
あのわイシュヴァールの内乱の時から…。
当時、士官候補生だった私。
狙撃の腕を評価され、候補生なのにも関わらずイシュヴァールの内乱に参加させられた。
これから上官の命令は絶対だという場所に身を投じるのだから。
拒否権なんてなかった。
高い場所に身を潜め、息を潜め、気配を消して。
一人、また一人と命を奪った。
人を殺める度に、自分の心もひび割れていく。
マスタング大佐とヒューズ中佐がイシュヴァール人に不意を突かれた時も、私が遠くから狙撃して助けた。
しばらくして。
呆然と焚き火を見つめていた時に、マスタング大佐たちと合流した。
大佐は酷く悲しそうな眼差しを私に向けていた。
ある時父が言っていた言葉。
研究に没頭する姿は何かに取り憑かれたようで。
それでも私は、その大いなる力は多くの人々に幸福をもたらすものだという父の言葉を信じていた。
“錬金術は人に夢や希望を与え、軍はこの国の未来を守る者”
“国民を守るべき軍人が、なぜ国民を殺しているのか”
“人に幸福をもたらすべき錬金術が、なぜ人殺しに使われているのか”
教えてほしい。
どうしてこんな酷い戦いが起こっているのか。
なぜ国民を殺さねばならないのか。
私の問いかけに、マスタング大佐は何も言えないでいた時。
“ここにいたの、マスタング少佐”
姉さんがやってきた。
“…アルバート大佐”
姉さんはすでに大佐になっていて。
その眼差しは強く、揺るぎない信念を秘めているようだった。
どうして?
どうしてそんな強い眼で居られるの?
その瞳の先に、何が見えているの?
わからなかった。
姉さんがどうして絶望もせずに居られるのか。
知りたかった。
姉さんは私がマスタング大佐の後ろにいたせいか、私には気付いてなくて。
“国家錬金術師を含む全ての軍人に撤退命令が出たわ”
“撤退命令?なぜです?まだ終わっていないのでは…”
“それは…、、、ッッ!?”
ヒューズ中佐の問いかけに、マスタング大佐へと顔を向けた時に。
“……リザ……どうしてここに……”
私に気付いて、目を見開いた。
“知り合いですか?”
ヒューズ中佐が首を傾げ、マスタング大佐が眉間に皺を寄せる。
“…狙撃の腕が良くて、ここに連れて来られたようだ”
大佐の言葉に、姉さんは目を閉じ下唇を噛んで。
“…そう…”
感情を殺して。
“…ね“下を向かないで、前を見て”
私に、強い眼差しを向けた。
“一歩二歩先じゃなく、必ず訪れるだろう未来を見なさい”
未来。
未来に希望なんてある?
こんな惨劇を引き起こした軍に、未来なんて。
そんな未来よりも何よりも。
抱き締めて欲しかった。
抱き締めて、背中を摩って。
“大丈夫”と言って欲しかった。
姉さんは私の肩に手を置いて。
“…頼んだわよ、ロイ”
“…あぁ”
マスタング大佐にそう告げ、去って行った。
そしてその日。
“…あれが君の姉の…“焔の錬金術”を消すためだけに組み立てられた錬金術だよ”
降り注がれる広範囲の落雷に。
全ての軍人は恐怖した。
それが姉さんの手によって発動されたものだと知って。
父への憎しみを理解した。
同時に。
ああ、もう姉さんって呼んではいけない遠い存在になってしまったんだと改めて感じた瞬間だった。
「……“前を見て”、か…」
今思えば、アルバート少将なりの励ましだったのかもしれないわね。
私は物思いに耽りながら、窓枠に肘を置いて。
「…惨劇を繰り返さない“未来”にするには、まだまだ時間がかかりそうね、姉さん…」
ここには居ないアルバート少将へと語りかけた。
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「ホークアイ中尉」
「!グラマン中将、おはようございます」
ある日、出勤してすぐにグラマン中将に呼び止められた。
グラマン中将が直接私に話しをかけてくるのが珍しくて、少し驚く。
「おはようさん。ちょっと君に頼みたいことがあってね」
「?はい、どうしました?」
お願いごとも珍しいわね。
でもお優しい方だから無理を仰る方ではない。
「うん。この書類を、アルバート少将に届けてくれるかい?」
「ア、アルバート少将に…ですか…?」
グラマン中将から茶封筒を渡された。
大総統府の印があるから、重要書類でしょうけど…。
マスタング大佐を介さずにアルバート少将と会話出来るかしら…。
「引き受けてもらえるかな?」
郵送でもいいのに、グラマン中将も私とアルバート少将の関係を気にしているから、こうしてきっかけをくれてるのよね。
「…わかりました」
これは決して命令ではなく、グラマン中将の頼み。
きっと断っても大丈夫だと思うけど、やはりグラマン中将も上官だから。
「うんうん、ありがとう」
断ることなんて出来ない。
「マスタング大佐には儂から話しておこう」
「ありがとうございます」
グラマン中将はニコリと笑って。
「彼女は大丈夫だよ」
そう言って、私の肩に手を置いた。
その言葉に私も小さく笑みを浮かべて。
「行ってきます」
「うん」
敬礼をし、東方司令部を出た。
「“お疲れ様です、グラマン中将より書類を預かりましたので”……じゃ、早急すぎるかしら…」
セントラルシティ行きの汽車の中。
アルバート少将に書類を渡すための台詞を考えていた。
いつもはマスタング大佐が間に居てくださるから、ついでに声をかけてもらえるけれど。
…会話ではなく、声をかけてもらえるって。
「お姉ちゃん!それ一口ちょうだい!」
「もー、しょうがないなぁ。一口だけだよ?」
通路を挟んだ隣の座席には、可愛らしい姉妹が座っていて。
仲良さそうに会話をしながらおやつを食べている。
羨ましいと思った。
あの子たちが“普通の姉妹”であることが、すごく羨ましかった。
成長すれば喧嘩もするかもしれない。
それでも。
“喧嘩が出来る”だけ羨ましい。
“上官である前に、君の姉なんだがね”
マスタング大佐の言葉を思い出す。
普通の姉妹ならそうでしょうね。
でも私とアルバート少将は、普通の姉妹ではないから。
“姉さん”なんて気軽に呼べない。
あの日から。
“この人を“姉さん”と呼んではいけない”と。
思わされた。
あの日から。
あのわイシュヴァールの内乱の時から…。
当時、士官候補生だった私。
狙撃の腕を評価され、候補生なのにも関わらずイシュヴァールの内乱に参加させられた。
これから上官の命令は絶対だという場所に身を投じるのだから。
拒否権なんてなかった。
高い場所に身を潜め、息を潜め、気配を消して。
一人、また一人と命を奪った。
人を殺める度に、自分の心もひび割れていく。
マスタング大佐とヒューズ中佐がイシュヴァール人に不意を突かれた時も、私が遠くから狙撃して助けた。
しばらくして。
呆然と焚き火を見つめていた時に、マスタング大佐たちと合流した。
大佐は酷く悲しそうな眼差しを私に向けていた。
ある時父が言っていた言葉。
研究に没頭する姿は何かに取り憑かれたようで。
それでも私は、その大いなる力は多くの人々に幸福をもたらすものだという父の言葉を信じていた。
“錬金術は人に夢や希望を与え、軍はこの国の未来を守る者”
“国民を守るべき軍人が、なぜ国民を殺しているのか”
“人に幸福をもたらすべき錬金術が、なぜ人殺しに使われているのか”
教えてほしい。
どうしてこんな酷い戦いが起こっているのか。
なぜ国民を殺さねばならないのか。
私の問いかけに、マスタング大佐は何も言えないでいた時。
“ここにいたの、マスタング少佐”
姉さんがやってきた。
“…アルバート大佐”
姉さんはすでに大佐になっていて。
その眼差しは強く、揺るぎない信念を秘めているようだった。
どうして?
どうしてそんな強い眼で居られるの?
その瞳の先に、何が見えているの?
わからなかった。
姉さんがどうして絶望もせずに居られるのか。
知りたかった。
姉さんは私がマスタング大佐の後ろにいたせいか、私には気付いてなくて。
“国家錬金術師を含む全ての軍人に撤退命令が出たわ”
“撤退命令?なぜです?まだ終わっていないのでは…”
“それは…、、、ッッ!?”
ヒューズ中佐の問いかけに、マスタング大佐へと顔を向けた時に。
“……リザ……どうしてここに……”
私に気付いて、目を見開いた。
“知り合いですか?”
ヒューズ中佐が首を傾げ、マスタング大佐が眉間に皺を寄せる。
“…狙撃の腕が良くて、ここに連れて来られたようだ”
大佐の言葉に、姉さんは目を閉じ下唇を噛んで。
“…そう…”
感情を殺して。
“…ね“下を向かないで、前を見て”
私に、強い眼差しを向けた。
“一歩二歩先じゃなく、必ず訪れるだろう未来を見なさい”
未来。
未来に希望なんてある?
こんな惨劇を引き起こした軍に、未来なんて。
そんな未来よりも何よりも。
抱き締めて欲しかった。
抱き締めて、背中を摩って。
“大丈夫”と言って欲しかった。
姉さんは私の肩に手を置いて。
“…頼んだわよ、ロイ”
“…あぁ”
マスタング大佐にそう告げ、去って行った。
そしてその日。
“…あれが君の姉の…“焔の錬金術”を消すためだけに組み立てられた錬金術だよ”
降り注がれる広範囲の落雷に。
全ての軍人は恐怖した。
それが姉さんの手によって発動されたものだと知って。
父への憎しみを理解した。
同時に。
ああ、もう姉さんって呼んではいけない遠い存在になってしまったんだと改めて感じた瞬間だった。
「……“前を見て”、か…」
今思えば、アルバート少将なりの励ましだったのかもしれないわね。
私は物思いに耽りながら、窓枠に肘を置いて。
「…惨劇を繰り返さない“未来”にするには、まだまだ時間がかかりそうね、姉さん…」
ここには居ないアルバート少将へと語りかけた。
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