雷鳴と鷹 リザさん百合夢

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「えぇ。今日はこのまま上がるわね。え?クレミン准将から?ああ、放っておいていいわ。」

夕方、汽車が来るまでの時間にセイフォード少将は東部へと連絡を入れた。

私たちが北に居る時にクレミン准将から連絡があったみたいで、セイフォード少将は眉間に皺を寄せていたわ。

「本当にしつこいなぁ」

電話を終えて、ベンチに座ってため息を零す。

「中央はセイフォード少将が居ないと回らないようですね」

「私の仕事は全部東部に回してもらってるはずなのに、回らないって何?って話よね」

ベンチの背もたれに背中を預け、苛立っているのがよくわかるわ…。

「はぁ…もう退職届けを受理してほしいわ…」

「退職されたら私たちが困りますよ」

「そう?」

アイリさんは足を組み、膝に肘を付け手に顎を乗せて。



「私が退職したら、リザの身の回りのお世話を全部してあげるわよ?」



つまるところ、主婦になってあげる。

と、アイリさんが言うものだから。

「……………」

何も言えないでいると。

「ほら迷った」

「…っ」

クスクスと笑われてしまった。

…だって。

アイリさんが退役したら…専業主婦になってくれるんでしょ?

帰宅すれば必ず居て、毎日“おかえり”って言ってくれる。

……退職してもいいかもしれないなんて思わされちゃう。

「まぁ、やる事がたくさんあるから辞められないんだけどね」

そう言いながら、アイリさんはどこか遠くを見つめた。

アイリさんが背負っているものは、きっと計り知れないくらい重いもの。

一緒に背負ってあげたいけれど、私一人では足りないくらい重いもので。

だからこそ。

アイリさんの背中は凄く格好良いんでしょうね。

…本来なら、私みたいな尉官が手を伸ばしても届かないくらい遠い人なのに。

こんなに近くに、ましてや恋人だなんて。

「…それ以前に、退職届けを受理してくれませんから」

「そうよねぇ…はぁーあ…退職届けを受理してくれないって…私を過労死させる気かしら…」

私は辺りを見回し、人が近くに居ないことを確認して。

「?どうし…………」

軍に対してぶちぶち文句を言っているアイリさんへとキスをする。


「専業主婦になっていただけるのもいいですが、やはり私は格好良いアイリさんの背中を見ていたいです」


士官候補生の時から憧れていた。


“雷鳴の錬金術師”


あなたが振り向かずとも安心して戦えるように。

あなたの背中は、私が大佐たちと共に守るから。

「…待ってください、アイリさん」

「なぁに、リザからのキスはOKの合図じゃないの?」

もう一度周りを見渡せば、ちらほらと人も増えてきて。

軍人である私たちをチラチラ見て来る人も…。

「…人がたくさん居ます」

「バレなきゃいいのよ」

「バレますよ…こちらをチラチラ見てますし、軍服は何かと目立つんですからね」

アイリさんの口に人差し指を当て、軽く押し返す。

「………」

アイリさんは目を細め、私のその手を取ったと同時に汽車が来て。

「乗るわよ、リザ」

「あ、はい」

私の手を引いたまま汽車へと乗車して。

汽車の扉の前で…。

「ッアイリさ……んぅ…っ」

…キスをされた。


待って、待って。

見られてる。

見られてますから、アイリさん。

「…っん…ン…っ」

離れようにも居る場所が狭くて離れられない。

周りの人たちは私たちに釘付けになって見てる…。

「…は…っはぁ…っはぁ…っ」

汽車の扉が閉まり、ようやく解放されたわよ…。

アイリさんは窓の外を見つめ、外に居る人たちに笑顔で手を振っている…。

「…アイリさん、場所を弁えてくれないと困ります…!」

「困るだけでしょ?それに、リザからしてきたんだからあなたにも非があるわよ?」

アイリさんは私の腰を抱き、引き寄せて。





「私を外で煽らない方が、あなたの身の為だということを覚えておいてね?」





耳元でそう囁かれた…。



ああ、もう。


本当にこの人は…。


どこまで好きにさせれば気が済むのだろうか…。


身と心が持ちませんよ… アイリさん…。



END
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